海外邦人事件簿|Vol.35 「お願いです、私の父を捜して下さい!!!」

最近は若者のバックパッカーのみならず、年配の方でも、「ちょっと○○に1か月くらい行ってくる。」と言って、気ままな海外一人旅をする人が増えています。ご家族も国内旅行のようなつもりで「はい、いってらっしゃい。」と気軽に送り出すようです。

この年配の男性も同じでした。ご家族はこの男性がどこを旅行しているのか、或いは、どこに滞在しているのか知りませんでした。気ままな旅なので、勿論携帯電話も持っていません。唯一の連絡手段は、時たま届く「今、○○○にいるよ。うん、元気だよ。また連絡するね。」というメールだけでした。ご家族はそれだけで、安心していました。

しかし、実家で事件が起きました。元気だったお祖母さんが倒れたのです。危篤です。大至急長男であるこの男性に帰ってきてもらわなければなりません。娘さんからメールを何回も送ったのですが、この男性からはメールはおろか電話もかかってきません。そこで、外国だ!外務省だ!となったわけです。

しかし、いくら外務省でも、どこにいるかわからない人を捜すことは不可能です。少なくとも、何時ごろ、どの国のどの町に滞在していたといった情報がないかぎり、外務省としてもお手上げです。そこでご家族に、この男性が出発前に自宅から渡航予定国に電話をかけた形跡がないか、渡航国のホテルなどでこの男性のクレジットカードが使用された形跡(クレジット会社を通じて)がないか、友人にメールや手紙などが届いていないか等を調べてもらいましたが、残念ながら何の手がかりも見つかりませんでした。

元気だったお祖母さんが危篤です。父にメールを何回も送ったのですが、メールはおろか電話もかかってきません。

結局、このご家族は旅行中の男性と連絡をとることができませんでした。

昨年末のスマトラ沖大地震及びインド洋津波被害の際にも、外務省に3千数百人の方から自分の家族が被災地に行っているとの安否照会がありました。しかし、ほとんどが、タイのどこにいるかわからない、インドに行くと言って出かけた、インドネシアに行ったらしい、といったあいまいな情報だったため、安否の確認は困難を極めました。

近年では2001年の9.11米国同時多発テロ事件、2002年のバリ島で発生した爆発テロ事件、昨年末の津波被害など、日本人が巻き込まれる大事件が起きており、その他スペインの爆発テロ事件など一歩間違えれば多くの日本人が巻き込まれたであろう事件がいつどこで起きるかわからない世の中になっています。

安否照会がありましたが、ほとんどがあいまいな情報だったため、安否の確認は困難を極めました。

誰にも邪魔されない自由気ままな旅は楽しくエキサイティングだとは思いますが、海外での事件・事故のニュースを見てあなたの安否を案ずるご家族がいることをお忘れなく!!

大事な家族に心配をかけないよう出発前には、日程と滞在先のホテルを残し、また、海外でも利用できる携帯電話を持つなどし、安否を確認する手段を確保しておくことがこれからの旅には必要なことです。

では、楽しい海外旅行に行ってらっしゃい!

(2005年5月2日掲載)

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