海外邦人事件簿|Vol.34 連携プレーの列車内泥棒

Vol.33のシベリア鉄道に引き続き、今回も列車にまつわるエピソードを紹介します。最近は世界各国の列車での旅風景を紹介するテレビ番組も増えています。個人旅行をされる方々にとって、時間と空間が満喫できる列車の旅は確かに魅力的なものですが、一方で、列車という特殊な環境を利用した犯罪にも注意しなければなりません。

『ベルギーからオランダに向かう列車に一人で乗っていた日本人旅行者Aさん。Aさんが一人で座っていると、一人の男性がAさんの向かい側に座ってきた。しばらくして、その男性はAさんの目の前で携帯電話をかけ始めた。次の駅でその男性は降りたが、Aさんが男性の座っていた席に目をやると、先ほど男性が使っていた携帯電話が置きっぱなしになっていた。Aさんは、急いで男性に渡してやろうと、その携帯電話を手にとって、男性を追いかけた。何とか、男性に手渡すことができ、ホッとして席に帰ってきたAさん。そこで、自分の手荷物がなくなっていることに気が付いた。』

忘れた携帯電話を手渡し席に帰ると、自分の手荷物がなくなっていた

『イタリア国内を列車で移動中の日本人旅行者Bさん。ミラノの駅に停車中、一人の外国人が窓の外からしきりに窓をたたき、Bさんに何かを伝えようとしていた。Bさんは、その外国人の言動を読みとろうと、窓側に視線を釘付けにしていた。しばらくして、その外国人は何事もなかったかのように、Bさんの視界から消えていった。Bさんは、何がおこったのか意味がわからないまま、もとの座席に視線を移すと、自分の荷物が盗まれていた。』

犯罪手口は、日進月歩です。犯罪者は常に新たな手口を開発し、その成功事例が各地の犯罪者に伝わり、普及していくものです。特に列車内での犯罪は、実に巧妙な手口が次から次へと生まれ、その度に多くの日本人渡航者が煮え湯を飲まされています。

座席に視線を移すと、自分の荷物が盗まれていた。

ここに挙げた事例も、列車という乗り物の特徴を利用した手口ですが、いずれも実行犯とは別にターゲットの注意を引く役が存在し、互いがタイミングを図りながら、連携プレーで犯罪を実行するという共通点があります。しかも、気が付いたときは、犯人はもうその列車にいないという場合がほとんどですから困ったものです。

こうした犯罪から身を守れるか否かは、とっさの状況判断ももちろん大事ですが、予備知識の有無にも大きく左右されます。そして何よりも、普段から自分の荷物の存在を常に意識しておくという心構えが重要になってきます。

あなたのスキを狙っている犯罪者がいることを忘れずに。

(2005年4月4日掲載)

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