海外邦人事件簿|Vol.06 「知らない」ことが予期せぬ大事件に

ホームページをご覧の皆さんもご存知のとおり、南米チリのイースター島には有名な歴史遺産、モアイ像があります。丘陵にモアイ像が並び立っている荘厳な風景は写真などでもよく目にしますが、この他にも島内には一見して大地に放置されているように見える大小多くの像が存在します。

昨年(2003年)、一人の日本人青年がチリのイースター島に観光旅行に訪れた際の出来事です。この旅行者は、転がっているモアイ像の一つに、旅の記念と軽い気持ちでサインを彫り込んでしまいました。それを見つけた現地の方が警察に通報。その青年は警察によって即日逮捕されました。逮捕容疑は「国立遺産法違反」。

モアイ像はイースター島の人々にとっての共有の財産です。それを見知らぬ観光客に傷つけられたとなると、単なる法律違反以上の感情を持たれても不思議ではありません。実際、この事件を取り上げた現地の新聞では、日本人観光客のモラルの欠如を現地の方々が厳しく非難していると報じていました。

転がっているモアイ像の一つに

この事件は、その国・地域の法律や慣習に不勉強で、住民への配慮を欠いた行為が取り返しのつかない問題に発展する典型例ですが、これに限らず、海外ではその国独特のルールがあり、それを無視した行動が時として予想もしない事件を引き起こしてしまうことは頻繁にあります。

『米国に滞在していた邦人家族。家族でデパートに買い物に訪れていたところ、子供が駄々をこねたため、母親が平手で頭をたたいて叱りつけた。この現場を近くで見ていた買い物客が警察に通報し、警察官が駆けつけ、幼児虐待で逮捕された。』

『昆虫好きの日本人が現地で採集した珍しい昆虫を日本に持ち帰ろうとしたところ、世界遺産指定地域内の保護対象の昆虫であったため、直ちに空港で身柄を拘束された。』

これらの他にも、例えばシンガポールではチューインガムの持ち込みが禁止されている、ゴミのポイ捨てが罰金刑の対象になるなど、日本では馴染みのない規制も海外では当たり前のように存在します。

警察官が駆けつけ、幼児虐待で逮捕された

現地の法律、宗教、習慣などをしっかり理解して行動することの大切さを物語るこれらの事例は、単に国際交流や相互理解のためのみならず、安全に生活するために不可欠な教えに他なりません。

(2004年3月2日掲載)

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