外務省 海外安全ホームページ|セミナー・シンポジウム報告|「危機管理リレー・セミナー」(大阪、名古屋、福岡、札幌)の開催について

セミナー・シンポジウム報告

「危機管理リレー・セミナー」(大阪、名古屋、福岡、札幌)の開催について

  1. 外務省では、2003年10月31日から11月14日にかけて、海外進出企業の危機管理担当者等を対象とした「危機管理リレー・セミナー」を、5都市(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌)にて開催しました。
  2. 本セミナーは、海外におけるテロの脅威への関心が高まる中で、海外に渡航・滞在する日本人、日本企業にとって、テロから身を守るための方策を講じることが益々重要となっていることから、テロ関連情報及びテロ対策に関する情報の提供や啓発活動の一環として毎年東京、大阪で実施してきたものです。今回は、東京、大阪の他に、3都市を加え、全国5都市にてリレー形式で開催しました。
  3. ここでは、東京以外の4都市でのセミナーにおける企業関係者の講演を御紹介します。〔東京におけるセミナーはこちら〕  「海外でのテロ事件:発生前と発生時の危機管理対策」と題し、11月7日札幌、12日名古屋、13日大阪、14日福岡において、企業関係者1名(岡本主税松下電器海外安全対策室長(札幌、大阪、福岡)、佐藤勝雄トヨタ自動車グローバル人事部海外安全担当主査(名古屋))、危機管理会社Kroll International INCの講師1名(影山正ディレクター・オブ・オペレーション(札幌)、坂出國雄アソシエイト(名古屋、大阪、福岡))、滝崎成樹外務省邦人特別対策室長の計3名を講演者として、講演会形式で、当省と各地の経済連合会等の共催にてセミナーを開催しました。当日は、札幌で約40名、その他の3都市で各70名以上の方々に御参加頂きました。
本文目次
参考
広報資料
  1. 松下電器産業海外安全室 岡本主税室長(札幌、大阪、福岡)
    (イ)
    米国のような国と日本では危険の種類と度合いが違うこともあり、日本人が利用する情報として一番活用しやすいのは外務省の危険情報。当社では、外務省の情報に対する基本的な解釈と、進出先の地域や当社固有の事情を踏まえて、独自の通達を行っている。基本的に外務省の危険情報を松下グループでは、一段階レベルを上に読み換えて対応している。
    (ロ)
    一般市民にとって、テロへの積極的な対策はない。ひたすら危険なところに行かない、即ち「君子危うきに近寄らず!」がテロ対策のキーワードになる。毎年、海外で500人前後の日本人が亡くなるが、最も多いのは病気と交通事故によるもので、テロによるものは1%前後で非常に少ない。ただ、強者は期限を通告してから攻撃開始するが、多くの場合テロリストは弱者であり、弱者は何時攻撃してくるか判らない状況で攻撃を行うので恐い。巻き添えにならないようにすべきである。日本政府がイラクに自衛隊を派遣することになれば、日本人と日本企業もイスラム過激派によるテロ攻撃の対象になり得る。ラマダンや選挙のような時期は注意し、テロの標的と思われる国の大使館、それらの国系列のホテル、多くの人が集まるような場所、宗教施設等の場所には近づかないよう注意している。
    (ハ)
    テロは避けられないが、起こった際の対応が重要。心構えが為されていないと、対応に失敗し、社会的信用を落としかねない。  出張者がインドネシアやフィリピンに行く際には、携帯電話を手渡し、周辺で何か発生した場合は現地の方から報告するよう指導している。
    (ニ)
    11/9(日本時間)のサウジ・リヤドにおけるテロの際には、松下の社員の無事が確認できた段階で、社長、副社長他にiモードを使って報告。タイトルは「サウジで爆発があるも被害なし」とし、最後に「なお、事態に変化があれば、再度報告します」として第一報を入れる。この報告で経営トップは安心できるようだ。このような報告を行うのにiモードは一番良い方法。被害者が発生した場合には、iモードではなく、電話で直接伝える。
    (ホ)
    分厚いマニュアルはめくるだけで終わりとなることが多い。冊子ではなく電子データで項目毎に1ページにし、HP上に掲載しておく。但し、HPは必ずしも必要な人が見ているとは限らない。情勢が動いている国やその近隣国には、適当なタイミングで、旬な時に必要なマニュアルをEメールで送付するのが良い方法。  車を盗まれても、保険でカバーができ、クレジットカードも事前2ヶ月、事後1ヶ月カバーしてくれる。このように財産は襲われたときに放棄しても取り返せるが、身体の安全は取り返せないので、無駄な抵抗はしない方がよい。最近、中国で松下の社員がタクシーから降りた際に、携帯電話を取られそうになり、抵抗したため、ナイフで刺されるという事件も発生した。このような際に役立つのが外務省も常々強調している3原則「目立たず、行動を予知させず、何時も用心を怠らない」に加え、いざ襲われた場合は「騒がず、反撃せず、相手の要求に従う」べきである。
    (ヘ)
    副社長が委員長となり、リスクマネジメント委員会を社内に常設している。一つ間違うと企業の存亡にかかわることもあるため重要視している。そして、海外会社の事業計画の中にリスクマネジメントを1ページ入れさせている。それが本社監査部門の重要な監査項目にもなっており、国内外グローバルなリスク管理を目指している。
  2. トヨタ自動車グローバル人事部海外安全担当 佐藤勝雄主査(名古屋)
    (イ)危機管理担当は、直接、身体・生命に係わるリスク。社員、関係者の安全を確保し、企業の信用を維持、企業の防衛を行う。 海外安全担当の職務は、(a)対応体制の整備、(b)予防啓蒙活動。
    (a)
    体制としては、本社はグローバル人事部が担当。海外拠点に正・副安全責任者を配置。
    (b)
    日頃は、各国の治安情報を分析すると共に、会社方針を社内イントラネットに掲載、危険な国には「出張不可」表示を出張申請システムに盛込むなどの工夫をしている。啓蒙活動として、出張者に航空券を渡す際に注意メモを添えたり、安全に関するセミナーを実施するなどしている。
    (ロ)有事に備えた仕組み

    会社として組織的な対応が必要な場合は対策本部を設置(本部長は人事担当副社長)。有事の備えとして、連絡網や対応マニュアルを備えている。

    (ハ)最近の対応事例
    (a)
    2001年9月米国同時多発テロでは、日本時間21時頃発生と同時に会社に電話し、残っていた者から米国28拠点に勤務する社員の安否確認を行った。翌日11時に米国人を含む約2万2千人の安否確認を完了。対策本部を設け、出張など会社方針の決定、生産管理等を行なった。
    (b)
    本年8月5日インドネシア・ジャカルタのマリオットホテルにおける爆発事件に際しては、安否確認(現地社員を含む)、出張規制、出張者ホテル選択(警備状況・経営形態から)を行った。出張は全面的には止めずに行動規制を行った。
    (c)
    本年9月外務省からサウジアラビアでのテロ可能性の情報を入手した際、出張の一部規制と一段の行動規制を行った。
    (二)企業として行うべきこと

    事態発生初期は安否確認、情報収集、分析、当面の対応を決定。長期的には、事業に関する会社の方針を決める。対応に際して、冷静に対応する一方、被災を受けた者を思いやる事が大事。現地社員と一体となった安全対策が必要。

    (ホ)被害回避

    関係者に「リスクの存在と対処」を周知徹底し、情勢など積極的な情報開示を行い、有事の際は必要最小限の組織で迅速に対応する。報道関係者への対応は広報部に一元化。会社として安全配慮の姿勢を示すことが重要。

    (ヘ)今後の課題

    リスクの拡大・多様化、社会通念の変化、海外事業の拡大、社員のグローバル化などを念頭に置き仕組み・対応を進化させることが大事。

    (ト)外務省の情報、危機管理コンサルタント

    外務省は海外の治安に関する情報・勧告をタイミング良く発出。数年前に比べると遙かに情報量が増え且つ的確に発信しており、企業にとっては対応を決める上での指針。危機管理コンサルタントは、企業の立場に立った見解・アドバイスを提供する点から有益。緊急事態は一つとして同じことはなく、常に新しいことばかり。

講演者略歴
  • 岡本主税(おかもと ちから)
  • 松下電器産業株式会社 国際人事センター海外安全対策室 室長
    1968年
    松下電器貿易株式会社入社
    1988年
    松下電器産業株式会社と合併し松下電器産業株式会社に主に欧州向け輸出営業を担当
    1988年~89年
    欧州松下電器 企画課長
    1989年~95年
    ノルウェー松下電器 社長
    1995年~99年
    CIS中近東アフリカ本部 企画部長
    1999年~
    現職
  • 佐藤勝雄(さとう かつお)
  • トヨタ自動車 グローバル人事部海外安全担当主査
    1972年
    トヨタ自動車販売(株)入社 海外営業に従事(欧州・アフリカ)
    1975年
    ベルギー駐在(~1978年 3年間)
    1994年
    南アフリカ駐在(~1996年 3年間)
    1997年
    グローバル人事部にて「海外安全」担当 現在に至る

危機管理セミナー INDEXページの先頭へ戻る