- (イ)危機管理担当は、直接、身体・生命に係わるリスク。社員、関係者の安全を確保し、企業の信用を維持、企業の防衛を行う。
海外安全担当の職務は、(a)対応体制の整備、(b)予防啓蒙活動。
-
- (a)
- 体制としては、本社はグローバル人事部が担当。海外拠点に正・副安全責任者を配置。
- (b)
- 日頃は、各国の治安情報を分析すると共に、会社方針を社内イントラネットに掲載、危険な国には「出張不可」表示を出張申請システムに盛込むなどの工夫をしている。啓蒙活動として、出張者に航空券を渡す際に注意メモを添えたり、安全に関するセミナーを実施するなどしている。
- (ロ)有事に備えた仕組み
-
会社として組織的な対応が必要な場合は対策本部を設置(本部長は人事担当副社長)。有事の備えとして、連絡網や対応マニュアルを備えている。
-
(ハ)最近の対応事例
-
- (a)
-
2001年9月米国同時多発テロでは、日本時間21時頃発生と同時に会社に電話し、残っていた者から米国28拠点に勤務する社員の安否確認を行った。翌日11時に米国人を含む約2万2千人の安否確認を完了。対策本部を設け、出張など会社方針の決定、生産管理等を行なった。
- (b)
-
本年8月5日インドネシア・ジャカルタのマリオットホテルにおける爆発事件に際しては、安否確認(現地社員を含む)、出張規制、出張者ホテル選択(警備状況・経営形態から)を行った。出張は全面的には止めずに行動規制を行った。
- (c)
- 本年9月外務省からサウジアラビアでのテロ可能性の情報を入手した際、出張の一部規制と一段の行動規制を行った。
- (二)企業として行うべきこと
-
事態発生初期は安否確認、情報収集、分析、当面の対応を決定。長期的には、事業に関する会社の方針を決める。対応に際して、冷静に対応する一方、被災を受けた者を思いやる事が大事。現地社員と一体となった安全対策が必要。
- (ホ)被害回避
-
関係者に「リスクの存在と対処」を周知徹底し、情勢など積極的な情報開示を行い、有事の際は必要最小限の組織で迅速に対応する。報道関係者への対応は広報部に一元化。会社として安全配慮の姿勢を示すことが重要。
-
(ヘ)今後の課題
-
リスクの拡大・多様化、社会通念の変化、海外事業の拡大、社員のグローバル化などを念頭に置き仕組み・対応を進化させることが大事。
- (ト)外務省の情報、危機管理コンサルタント
-
外務省は海外の治安に関する情報・勧告をタイミング良く発出。数年前に比べると遙かに情報量が増え且つ的確に発信しており、企業にとっては対応を決める上での指針。危機管理コンサルタントは、企業の立場に立った見解・アドバイスを提供する点から有益。緊急事態は一つとして同じことはなく、常に新しいことばかり。