海外邦人事件簿|Vol.27 熱烈プロポーズにほだされて?

一昔前ならともかく、今や国際結婚は日本人にとってさほど珍しいものではありません。年間1,700万人の方が海外に出かける時代です。それぞれが海外でかけがえのない出会いを経験し、ある人は結婚というゴールにたどり着く。私たち外務省職員の中にも、国際結婚で幸せな家庭を築いている方も大勢います

一方で、幸せなはずの国際結婚が、時には思いもよらぬ悲劇を生むこともあるのです。

『中東のとある国を旅行中のAさん。滞在中に現地の学生から「日本人の方ですか」と声をかけられ、うなずいたところ、その若者は親切そうに観光案内を買って出た。その若者は一見、Aさん好みのタイプだったこともあり、案内役をお願いした。一通りの観光を終えると、若者はAさんを自宅に招待し、ご馳走でもてなし、宿の提供を申し出た。Aさんはこの申し出も受け入れ、しばらく宿を借りることにしたが、それから間もなく、若者はAさんに結婚を申し込んだ。Aさんは承諾し一緒に日本に向かったものの、しばらくして、相手から離婚を迫られた。』

若者はAさんに結婚を申し込み、Aさんは承諾し一緒に日本に向かった

もし、あなたが異国の地で不安な中、親切な外国人男性に好意を抱き、しかもその男性から求婚されたらどうしますか。大抵の日本人女性は躊躇するでしょうが、今の時代、「その場の勢いで」という積極的な方もいないとは限りません。

件の若者の言動が、純粋な気持ちからのものであれば問題はないのですが、中には、不純な動機からいわゆる「偽装結婚」を企てる者もいるのです。特に日本のビザの取得が非常に難しい国には、いろいろな手段でビザを取得しようと企てる者もいます。日本人女性と結婚する、あるいは交際をして、交際相手に身元保証人になってもらうというやり方も、その一つに他なりません。

日本人女性と結婚する、あるいは交際をして、交際相手に身元保証人になってもらう

フランスの作家スタンダールは、恋愛を「結晶作用」と称しました。日本流に言えば、さしずめ「痘痕(あばた)もえくぼ」ということでしょうか。いずれの言葉も、恋愛中は、冷静に相手の本質を見抜くことが如何に難しいかということを物語っています。

ましてや、始めから相手を騙すことが目的で近づいてくる者であれば、美辞麗句の限りを尽くし、何としてもあなたの心に結晶を植え付けようとするでしょう。結婚という生涯の大イベントをビザ取得の道具にされたら、たまったものではありません。

海外に限らず相手を知るということは、けだし難しいものです。

(2004年9月6日掲載)

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