海外邦人事件簿|Vol.08 緊急事態、あなたの安否は誰が知る

一昨年(2002年)10月のバリ島で発生した爆発テロ事件。死者数は202人、日本人2名の方の尊い命もその犠牲となる大惨事でした。

バリ島は、多くの日本人観光客で賑わう人気のリゾート地です。それも手伝って、事件直後から、バリ島や周辺の国々を旅行していた(と思われる)肉親の身を案じた御家族からの電話が外務省に殺到しました。私共も懸命に安否確認を行ったのですが、その中で最も難航したのは行き先や宿泊先を決めないで旅行していた方々の安否確認でした。何せ家族にも居所が分からないため、どこを探したらいいのか見当もつきません。

外務省では国内の旅行会社を通じ旅行者の安否を調べ、現地の日本総領事館でも島内の全てのホテルの宿泊者名簿を確認しましたが、それでも家族から照会のあった方々全ての安否は依然として確認できません。

家族からの電話が外務省に殺到

結局は旅行者本人の帰国や無事の知らせが本人から家族のもとに届くのを待つしか手がなく、安否確認作業が終了したのは事件から1か月以上もたった後でした。

一昔前は、日本人観光客が多く訪れる観光地や主要都市での緊急事態といえば、地震などの災害に限られていたものですが、9.11テロ事件以降、昨年のイスタンブールでの事件なども記憶に新しく、大惨事に繋がる事件がいつどこで起こるかわからないという物騒な世の中になっています。

バックパック一個を背負って旅をする、本人でさえ明日の予定は風まかせという若者の個人旅行者が増えています。自由な時間と空間を堪能することは旅の醍醐味でもありますが、その安否を案じている御家族がいることも心の片隅に留めておくことも大切です。特に大きな事件や災害が世界のどこかで起こったときは、自分の身は全く安全でも、子供の居場所のわからない親御さんにとっては、惨事に巻き込まれているかと心配でしょうがないものです。

「便りのないのが良い便り」というのは、通信手段の発達していなかった昔の話。特に家族から連絡のとれない個人旅行者の方々は、緊急時はもちろん、定期的に無事を留守宅に知らせることも自由な旅のルールです。

バックパック一個を背負って旅をする

(2004年3月8日掲載)

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