感染症(SARS・鳥インフルエンザ等)関連情報
第2回重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する講演会の概要
平成15年5月2日
領事移住部政策課
2日、SARSに関し、海外進出企業を対象に第2回講演会を実施したところ、概要以下の通り(参加者約200名)。
- 全体概要
- (1)
- 冒頭、三好領政長から、危険情報、現地医療事情、個別の邦人援護案件から得た教訓につき説明した後、小原国立国際医療センター国際協力局医師よりSARSに関し医学的観点からの講演を行った。
- (2)
- その後、企業としての対応策として、小島(株)日立製作所リスク対策部長及び佐藤(株)トヨタ自動車グローバル人事部海外安全担当主査より、それぞれの企業におけるSARS対策について講演を行った。
- 三好課長による講演
- (1)海外安全情報発出
- 現在までに3つの波があった。まず第1波は4月2日にWHOが初めて出した海外安全情報を受け、香港・広東省に不要不急の渡航延期のお勧めをした時、第2波は4月20日に中国政府が再調査結果を発表したのを受け、4月22日に北京に不要不急の渡航の延期のお勧めをした時、第3波は4月28日に在北京大使館より留学生を対象に「お知らせ」を発出、翌29日に外務省から北京市の在留邦人向けメッセージを出し、中国全土に危険情報を出した時である。ハノイについて危険情報を解除あるいはトロントの危険情報を引き下げられたのは、1つの光であった。
今後も迅速且つ適切に対応していきたい。
- (2)現地の医療事情
- 国によってまちまちであるが、現在、在外公館において邦人の感染者が発生した場合の対応マニュアルを作って、HP等に載せるようにしている。医学上、防疫上の観点からは、現地で治療を行うことが原則と考えている。
- (3)邦人の個別案件
- これまでのところ、隔離されているのは、在留邦人よりは旅行者に多い。邦人で感染が疑われた場合には直ぐに現地公館に連絡がいくよう、現地政府と調整しているところである。
- 小原医師による講演
SARSに関する一般知識、広東省において実施した邦人への健康相談の様子(特に、発症した際の対応の仕方について高い関心が寄せられたこと等)、及びベトナムのSARS対策(特に院内感染対策の重要性)等の説明があった
- 小島部長及び佐藤主査による企業としての対応策
- (1)(株)日立製作所
- 現在では、中国・香港に対しては「原則渡航禁止」、右以外の全世界に対しては「不急の渡航は禁止」という方針をとり、派遣はかなり押さえられている。一方、受け入れに対する措置についての判断は、派遣より困難である。 今年初めに研修のためにある国から20名を受け入れることが決定していたが、成田に到着後送り返したケースもあった。
- 慎重な対策はとりあえず1ヶ月間続ける。1ヶ月するとSARSが終息するという意味ではなく、感染の傾向がつかめるとの考えによるものである。SARS対策は長期戦が懸念されるが、1ヶ月毎の見直しを基本にするべきだと考えている。
- (2)(株)トヨタ自動車
- 情報収集と必要な対策をとってきた。渡航上の措置としては、社員の気持ちと会社の立場の両方を考慮しつつ、予防を心がけた対策をとっている。出張については、伝播地域へは不可欠な出張のみとし、伝播地域駐在員の家族についてはその意向を汲んだ措置をとっている。基本的には、中国の駐在員家族はほとんど帰国している。また連休を利用し帰国することも勧めた結果、拠点によっては全員帰国しているケースもある
- 質疑応答
- (1)
-
- 問:
- 4月25日の朝日新聞に、大手玩具メーカーが中国で生産している玩具を紫外線で消毒する措置を採った旨掲載されていたが、そもそも紫外線でウイルスを消毒できるのか、また右措置は必要な措置といえるのか。
- 答:
- 紫外線でウイルスは死ぬので、消毒法としては適当である。しかしながらWHOの指針ではそこまでやる必要はなく、実際的にも触れただけで感染することはないと言われている。
- (2)
-
- 問:
- 坂口厚労大臣が中国に医師を派遣すると言っていたが、日本の医師は中国で指導するだけなのか、医療行為まで行いうるのか。
- 答:
- 日本の医師を何処に派遣するか等具体的なことについてはまだ決まったわけではなく、坂口厚労大臣の発言は基本的なラインを示したものと認識している。実際には中国で医療行為を行うためには、現地政府の理解が必要だろう。中国の医療システムは基本的には信頼に足るものであるため、原則として現地で治療して頂くことになると考えている。
- (3)
-
- 問:
- 潜伏期間にも感染はするのか。
- 答:
- 感染力が強いのは、症状がピークを迎えた時から終盤にかけてである。潜伏期間中は絶対感染しないとは言い切れないが、感染力は弱い。
- (4)
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- 問:
- 連休中の帰国者に対して、どのような措置をとっているのか。
- 答:
- 中国(香港を含む)から帰国する人に対しては機内で問診票を配布し、健康状態及び日本での連絡先を記入して貰うとともに、健康カードを配布し、10日間は自己規制するよう注意喚起している。
- (5)
-
- 問:
- なぜ中国全土に危険情報を出したのか。
- 答:
- 連休に入って人の移動が予想されること及び中国においては奥地でも感染者が少しずつ増加しているため、「念のため」発出したということである。
- (6)
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- 問:
- 北京の現状はどうなってるのか。危険情報をまた引き上げるのか否か。
- 答:
- 難しい問題であるが、現在、邦人の方がどのようなリスクにさらされているのか注視している。今のところ北京では連日100人単位で感染者が増加しており、近い将来レベル3(渡航中止勧告)を出す可能性も排除されない。
- (7)
-
- 問:
- 健康カードでは、10日間自宅待機するよう勧告しているとのことであるが、これは強制なのか。
- 答:
- 強制力のあるものではない。
- (8)
-
- 問:
- 外国でSARSの症状が出た場合、直ぐに指定病院に行くのがいいのか、それとも現地大使館に連絡をし、指示を仰ぐ方がいいのか。
- 答:
- いきなり現地の病院には行かず、ホットライン等でアドバイスを得た後に指定病院に行く方がいい。
- (9)
-
- 問:
- 漂白剤で消毒するとはどうすればいいのか。
- 答:
- 100倍に薄めて布を浸し床や家具を拭く。手は拭いてはいけない。
- (10)
-
- 問:
- トヨタでは、連休明けに社員を天津に帰すことを考えているのか。
- 答:
- 連休明けの最新情報を見て決定する。
(了)
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