海外邦人事件簿|Vol.24 中高年者の自然体験ツアーに降りかかる災難

日本は言わずと知れた世界一の長寿国です。しかも、ただ長寿というだけではなく、健康で元気なお年寄りの多さでも、世界有数の国と言えるでしょう。

昨年(2003年)は、70歳を越えるプロスキーヤー、三浦雄一郎さんがエベレスト登頂の世界最高齢記録を達成し、世界をあっと言わせました。三浦さんの父、敬三さんにおかれては、齢99歳にしてモンブランでのスキー滑降を成功させています。三浦ファミリーは別格としても、近年の日本人高齢者のバイタリティには感動すら覚えるものがあります。

一方で、高齢者の海外旅行の形態も、大きく様変わりしてきました。最近では、一般の高齢者の方々でも、トレッキングやスキューバダイビングなど、大自然を体験するメニューが海外旅行に組み込まれている例も多く見られます。それに伴い、海外ツアー、とりわけ自然体験ツアーでの事故が増加しているのが現状です。

『中米コスタリカの森林を探索中の日本人高齢者ツアー一行(6名)。森林の中に架かる吊り橋を歩行中、突然、吊り橋を支えていたワイヤーが切れ、反動で5名が谷に投げ出された。3名は比較的軽傷であったが、60代の2名が骨折や内臓損傷等の重傷を負い、入院を余儀なくされた。』

吊り橋を支えていたワイヤーが切れ、反動で5名が谷に投げ出された

『ハワイに旅行中の60代のご夫婦。日本での経験は比較的浅かったが現地インストラクターの指導のもと、スキューバダイビングに挑戦した。二人でかなりの深みまで潜ったところ、妻の様子が急におかしくなった。インストラクターが急いで水中から救出し、病院に直行したが、まもなく死亡した。』

スキューバダイビングでかなりの深みまで潜ったところ、妻の様子が急におかしくなった

昨年は、ヨーロッパの記録的な猛暑も影響し、アルプス登山での滑落事故が相次ぎましたが、その中の多くは50歳以上の中高齢者でした。

ほとんどの事例は不慮の事故には違いありませんが、中には高齢者であるがゆえの事故も少なくありません。元気を過信して、無理なスケジュールを組んだことが、予想もしない災難に見舞われることにもなりかねません。高齢者になればなるほど、自らの体力と相談しながら、安全な旅行計画を立てることも大切でしょう。

山登りは下山を終えたときが到着点といいます。海外旅行も同じく、健康のうちに帰国して、初めて成功と言えるのではないでしょうか。

(2004年7月12日掲載)

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