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ペルー
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年05月15日

1.概況
(1)ペルーでは、「センデロ・ルミノソ(SL)」及び「トゥパク・アマル革命運動(MRTA)」の二大テロ組織が1980年代から活発なテロ活動を行っていました。しかし、1990年初頭以降、ペルー政府によるテロ対策の結果、両組織の主要幹部がほぼ逮捕、あるいは死亡するなど、SL、MRTAともに組織は弱体化しました。しかしながら、テロリストの一部は、セルバ(森林地帯)に潜伏し、麻薬密輸を資金源に現在も活動を続け、頻繁に拉致や治安機関に対する武力攻撃を続けています。
(2)現在、ペルー政府はテロ・麻薬対策のためにアヤクチョ州・クスコ州・フニン州・ワンカベリカ州の4州8郡に及ぶ一部地域(アプリマック・エネ及びマンタロ川渓谷周辺:通称「VRAEM地域」)に対し、非常事態宣言を発出しています。同地域における非常事態宣言は今後も継続される見通しです。
(3)イスラム過激派等の国際テロ組織の活動はこれまで確認されていませんでしたが、2019年7月、イスラム過激派等に感化され独自に活動していた、ペルー人男性が、パンアメリカンゲームズ競技大会中に会場への自動車爆弾による攻撃を企図していたとして当局に逮捕されています。また2014年10月にはシーア派民兵組織ヒズボラのメンバーが逮捕されました。容疑者は、ペルーの治安警備状況を組織に報告するために滞在していたと供述しており、イスラム過激派等の国際テロ組織の活動について、今後も注意する必要があります。
(4)2023年中の身代金目的による誘拐事件の認知件数は14件(前年比 同数)でした。他方、被害者を拳銃で脅し、キャッシュカードの暗証番号を聞き出し、ATMで現金を引き出させた後に解放するような短時間誘拐も増加傾向にあります。さらに、当局によると、被害者からの届出がなく、当局が把握できていないケースも相当数にのぼるとみられていることから、警察統計や報道に取り上げられている以上の事件が発生しているものとみられ、引き続き注意する必要があります。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)「センデロ・ルミノソ」(SL)
SLは、2002年3月の米大使館前における自動車爆弾事件以降、リマ市内では宣伝行為以外の活動は確認されていません。しかし、非常事態宣言発出地域内では、現在も頻繁に拉致や、軍や警察の治安部隊を狙った武装襲撃を繰り返し行っており、例年治安当局側に犠牲者が出ています。そのため、これらの危険地域には立ち入ることがないよう、特に注意する必要があります。
2021年5月には、フニン州サティポ郡においてSLによる飲食店内の客に対する無差別銃撃事件が発生し、児童を含む16名の死者が発生しています。
(2)「トゥパク・アマル革命運動」(MRTA)
MRTAは、在ペルー日本大使公邸占拠人質事件や、数々の誘拐事件を引き起こしてきたものの、メンバーが次々と逮捕されるなどして2000年以降表立った活動はありません。しかし、現在は首都において組織再編のための活動を行っていることに加え、近年、服役していたメンバーが順次釈放されていることなどからも、引き続き十分な注意が必要です。

3.誘拐事件の発生状況
(1)1990年初頭まで国内テロ組織による誘拐事件が多発していたものの、政府が誘拐対策を強化した結果、身代金目的によるテロ組織による犯行は劇的に減少しました。
(2)VRAEM地域の周辺地域では、SLによる地域外の人間や、警察の内通者と疑われた一般人に対する拉致・殺害事件が後を絶ちません。これらの事件は一般の誘拐事件としては除外され計上されていない点に注意する必要があります。
(3)国家警察誘拐捜査課が2023年に認知した誘拐事件(身柄を拘束し身代金を要求するいわゆる典型的誘拐)件数は14 件(前年比同数)であり、全てリマ市内での発生で、被害者はいずれもペルー人でした。当局によると、被害者側が警察に通報することなく、独自に犯人と交渉し、身代金を支払い解決しているケースが相当数にのぼるとみられ、実際には警察の認知件数以上の誘拐が発生している可能性があります。また、強盗目的の短時間誘拐も首都圏を中心に多数発生しているものの、ペルーでは金銭目的の短時間誘拐は誘拐ではなく強盗の一形態として取り扱われており、強盗事件数に含まれていることから、その実数は不明です(注:短時間誘拐とは、被害者を人気のない場所へ連れ去り、所持品を強奪する手口、被害者を連れ回しATMで現金の引き出しを強制し、これを強奪する手口等の犯罪を示します)。

4.日本人・日本権益に対する脅威
 1996年の日本大使公邸占拠事件以降、日本人・日本権益を標的としたテロ事件は発生していません。しかし、同事件以前の1980年代後半から1990年代初頭にかけては、日本国大使館が爆弾テロの標的になったほか、日系企業もテロの対象になりました。また、1991年、リマ市北方のワラルにおいて、国際協力事業団(現JICA)の専門家3名がテロリストに殺害された事件も発生しています。
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報等に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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