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テロ・誘拐情勢

2018年02月15日

1.概況
 2017年,ベネズエラでは,反政府組織による無差別テロやイスラム過激派を含む国際テロ組織による活動は確認されていません。また,コロンビアとの国境地域では,コロンビア革命軍(FARC)がコロンビア政府と和平合意したことにより,その勢力が縮小傾向にあります。しかし,他のコロンビア反政府武装ゲリラ,パラミリタリー,ベネズエラの過激派組織であるボリバル解放戦線(FBL)及びこれらの組織から離脱した者を含む不特定多数の誘拐組織や麻薬密売組織による身代金目的の誘拐や麻薬関連犯罪が発生しています。

2.各組織の活動状況又は各地域の治安情勢
(1)コレクティーボ
 コレクティーボとは,元々は1970年代に主に貧困地区において福祉活動や治安維持を担うため結成された自警団組織が,その後,麻薬取引や誘拐,人身売買等により暴力組織として変貌したものです。現在は,その支配地域では治安機関も介入できなくなる程,勢力を拡大しており,殺人,強盗,誘拐事件が頻発し,麻薬取引等も公然と行われています。故チャベス前大統領の統治期においては,政府から金銭や武器等の供給を受け,野党系の議員や集会・デモ等に参加している反政府支持者に対して集団で暴行に及んだり,時には拳銃等を発砲する等,極めて危険な行為を繰り返しています。また,チャベス前大統領の死後,現政権を批判する動きも出るなど,状況は複雑化しています。

(ア)トゥパマロ(自警団・社会福祉団体・武装組織)
 トゥパマロは,1970年代にカラカス首都区西部の貧民街「1月23日」地区で結成された自警団組織です。同組織は,同地区内において,暴力や麻薬取引を公然と行っていた犯罪者集団を追い出した後,自らが各種犯罪に手を染めてきました。政府から社会福祉団体として認定されており,2004年10月に行われた地方選挙で政府側が圧勝してからは,首都圏警察の人事にも,政府側の立場で介入するなど,その活動領域を広げています。
 2014年2月~6月,全国の学生らを中心とした反政府デモ(「青年の日」デモ)や2017年4月~7月に行われた反政府デモが頻発した際は,バイクの集団でデモ現場へ赴き,鉄パイプや拳銃等を使用して反政府支持団体に対し暴行を加えました。

(イ)ラ・ピエドゥリータ
 トゥパマロを母体として2005年に政府(チャベス前大統領)を支持するために,カラカス首都区の貧民街である「1月23日」地区で結成された組織です。リーダーのバレンティン・サンタナを中心とした約40人の組織ですが,下部組織を含めれば100名以上の動員能力があり,同地区には,警察も手出しができず,事実上,「1月23日」地区を支配しています。同組織は,反政府系のデモにバイクの集団で乗り込み,その支持者に暴行を加えるほか,デモを煽るために,警官隊に対し拳銃等を発砲するなど,過激な行為を行っています。近年は,武装した同組織のメンバーが殺人,誘拐,恐喝等の凶悪犯罪を引き起こしています。

(ウ)カラパイカ革命運動
 トゥパマロを母体として,「1月23日」地区で結成された暴力的組織です。結成直後は,過激な活動を敢行していましたが,2005年1月以降,暴力的活動は見られなくなり,表立った活動を行っていません。他方,2014年及び2017年,トゥパマロと同様に反政府勢力と衝突することがありました。

(エ)ボリバル解放戦線(FBL)
 ゲリラ組織に最も近い性質を持った組織で,2000年頃からその活動が表面化し始めました。これまで,同組織の存在自体をベネズエラ政府は認めていませんでしたが,現在は認知しています。コロンビアとの国境地帯を中心に活動しており,コロンビア政府との和平合意に同意していないコロンビア革命軍(FARC)の残党や国民解放軍(ELN),また,これらと結びついたベネズエラの誘拐組織及び麻薬密売組織と手を組み,主に,牧場主や農場主に対する脅迫・強請を行っています。近年は,組織的な誘拐事件,麻薬密売等を敢行することでその活動資金を得ています。

(2)その他
(ア)バンデラ・ロハ(赤旗)
 バンデラ・ロハは,2001年8月頃から,ベネズエラ最大の労働組合であったベネズエラ労働者総連盟(CTV)指導部選挙をめぐり,民主行動党(AD党)と共闘し,当時のチャベス前大統領に対する抗議運動の拡大を全面に打ち出しました。2002年には,チャベス大統領辞任要求運動に積極的に参加しましたが,2004年の大統領罷免国民投票でチャベス前大統領が信任されて以降は,表立った活動を行っておらず,近年は,特に目立った過激な違法行為は行っていません。

(イ)ロムロ・ガジェゴス
 ベネズエラの小説家ロムロ・ガジェゴスの思想を標榜し,チャベス大統領が推進した社会主義路線の阻止を目的に,反政府系の弁護士によって結成された少数組織です。人や施設等に危害を加えることを目的としていないと見られており,活動の中心は,ビラ等による政府批判です。2017年中,同組織は表立った活動を行っておらず,過激な違法行為は行われませんでした。

3.誘拐事件の発生状況
 身代金目的の誘拐や「短時間誘拐」(被害者を一時的に拘束し,被害者の自宅に侵入してその金品を強奪した後,解放するもの)が,特にカラカス首都圏において顕著に発生しています。
 2017年の誘拐発生件数は,被害届が提出されたものは304件であり,このうち,コロンビアとの国境地帯において8件発生しています。2016年と比較して,全国での発生は減少していますが,ベネズエラでは,警察官が,誘拐犯と共謀している場合が多いほか,身代金を支払うことは違法となるため,被害者の親族等は,被害者の生命を優先させ被害届を出さないのが実情です。専門家の調査によれば,毎月,平均約300件の誘拐事件が発生しているとされており,富裕層や外国人が狙われる傾向があります。
 誘拐を敢行するのは,貧民街をアジトにする完全に組織化された誘拐犯グループです。以前は,誘拐犯罪の被害者の多くは,コロンビアとの国境付近で牧場・農場を経営する経営者とその家族,また,カラカス首都圏周辺の実業家及びその家族,外国からの移住者等,裕福な階層でした。しかし,ここ数年,都心部の商人,学生,専門職職員,公務員等あらゆる層に拡大し,また,多くの外国人が被害に遭っており,十分な注意が必要です。

4.日本人・日本権益に対する脅威
 2017年,日本人がテロの直接の標的となった事例は確認されていませんが,日本人を含む外国人が多数居住する地区でも,凶悪事件が発生していますので,日本人が不測の事態に巻き込まれる可能性は排除できません。
 誘拐については,過去に日本人が被害に遭った事件も発生しており,今後も,犯罪組織等の標的となる可能性は排除できません。特に,身代金目的の誘拐はコロンビアとの国境地域で,短時間誘拐は,カラカス首都圏,ミランダ州及び地方のマラカイボ,バレンシア等の地方の大都市周辺で多発しているため,警戒が必要です。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが,一般には,特定の主義主張に基づき,国家等にその受け入れを強要し,又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は,このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず,外務省が,報道等の情報等に基づき,海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり,本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。