1. ホーム
  2. 地図からの選択
  3. テロ・誘拐情勢
  4. ロシア

ロシア
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年05月07日

1 概況
(1)ロシアでは、2022年2月のウクライナ侵略開始以降、ロシアが違法に「併合」したウクライナ領被占領地域のみならず、国内各地において無人機の飛来、送電・鉄道インフラの破壊等の事案が発生していますが、露治安当局はこれらを全て「『ウクライナ民族主義者』や『ウクライナ特務機関』によるテロ」であるとしています。
(2)露内務省が作成する犯罪統計によれば、2023年にロシア国内において認知された「テロ行為」は410件(2022年127件)、「テロの性格を有する犯罪」は2,382件(2022年2,233件)と増加していますが、これらの統計の数値には前述の「『ウクライナ民族主義者』等によるテロ」とされるものが含まれることに留意が必要です。
(3)イスラム過激派組織によるテロ情勢に関しては、過去多くのテロ事件が発生してきた北コーカサス地方をはじめ、以前に比べて安定しているとされてきましたが、2024年3月22日には、モスクワ郊外のコンサート会場にて140名以上が死亡するテロ事件が発生し、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」が犯行声明を発出しています。現在もテロ計画・準備が水面下で行われていることがうかがえることや、テロを企図する勢力が残存している可能性があることなどからも、テロの脅威は依然として存在しており、引き続き警戒すべき状況といえます。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)北コーカサス地方
 北コーカサス地方では、治安機関等による掃討作戦が行われていますが、引き続き過激派勢力が残存しているとされ、2023年中も一部地域で武力衝突に伴う死傷者が発生しています。また、2018年には2月にダゲスタン共和国で、5月にチェチェン共和国でそれぞれ正教会の聖堂が襲撃されるテロ事件が発生しています。
(2)北コーカサス地方以外の地域
 2024年3月22日、モスクワ中心部から北西約20kmのコンサート会場「クロッカス・シティー・ホール」において銃撃テロ事件があり、多数の死傷者(死亡者は140名以上)が出ています。本件についてはISILが犯行声明を出し、ロシア領内での攻撃を今後も続けるとの警告をしました。
 また、2017年4月にはサンクトペテルブルク市内の地下鉄において中央アジア出身者による爆弾テロが発生し多数の死傷者が出たほか、シリア等の戦闘地域からのテロ戦闘員の帰還の脅威等も指摘されています。2019年12月にはモスクワの連邦保安庁(FSB)本部を狙った銃撃事件が発生し、同庁職員1名が死亡、他の治安機関職員4名及び民間人1名が負傷しました。本件について露当局はテロ事件と断定していないものの、大きな社会的反響がありました。その他にも、2021年12月にモスクワ州の修道院附属学校で元生徒が手製爆破装置を爆発させ12人が負傷(犯人は死亡)した事件、2022年9月にウドムルト共和国の学校で同学校の卒業生の男が銃を発砲し17人が死亡した事件といった無差別殺傷事件が発生しています。
 ロシア国内では、モスクワをはじめとする全国各地で爆発物や銃器等を用いたテロ計画の摘発事案が続いており、この中には、人が大勢集まる場所や学校、政府庁舎、エネルギー関連施設等を狙ったテロ計画の摘発事案等も含まれています。また、こうしたテロ計画の摘発に加え、ISIL等イスラム過激派組織の支持者によるリクルート活動の摘発事案等も複数報道されているほか、爆発物、銃器等の押収事案も依然として多数発生していますので、引き続き警戒が必要です。

3 誘拐事件の発生状況
 内務省の犯罪統計によれば、2023年に発生した誘拐事件は413件でした。2020年(411件)、2021年(382件)、2022年(393件)と比較しても依然として高い水準にあります。犯行の態様は、武装勢力が政府関係者や一般住民を誘拐するケースや、犯罪組織がビジネス利権絡みで敵対勢力の関係者等を誘拐するケースのほか、身代金目的、金銭トラブル、恋愛感情のもつれから異性の若者を誘拐したケースなど様々です。外国人の誘拐については、中央アジアやコーカサスのCIS諸国の国民が狙われたものが中心となっており、日本人・日本企業が標的となった誘拐事件は確認されていません。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。


テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
page TOP