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テロ・誘拐情勢

2016年03月01日

1.概況
(1)サハラ砂漠南部、マリ北部3州(キダル州、ガオ州、トンブクトゥ州)は、広大な国境(全長7,000Km)及び起伏の激しい砂漠の地形、自治、独立を求める遊牧民トゥアレグ族による度重なる反乱によって、1960年の独立以降中央政府の統治が十全に及ばない状態が長く続き、2000年代以降、イスラム過激派組織の侵入を許してきました。
(2)2012年以降のトゥアレグ族武装集団「アザワド民族解放運動(MNLA)」とマリ軍との戦闘、トゥーレ政権(当時)の北部問題への対応及び汚職等に不満をもった一部マリ軍兵士による騒乱といった混乱に乗じて、複数のイスラム過激派組織が北部3州において勢力を伸張させ、厳格なイスラム法に基づいた支配を試みました。
(3)2013年1月、北部地域を占拠したイスラム過激派組織が更なる南進を試みたことから、マリ暫定政府(当時)の要請を受けたフランス軍、アフリカ主導マリ国際支援ミッション(AFISMA)及びマリ軍が軍事作戦を開始し、イスラム過激派組織の大半を北部の主要都市から排除しました。
(4)しかしながら、イスラム過激派組織の一部は引き続きマリ北部に残り、「国連マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)」及びマリ軍等に対して、自爆テロ、地雷、簡易爆発装置及びロケット砲等によるテロ攻撃を続けています。
(5)また、2015年3月には首都バマコにおいてレストラン襲撃事件が、8月には中部モプチ州セバレにおいてホテル襲撃事件が、11月には再びバマコにおいてホテル襲撃事件が発生し、外国人も多く犠牲となりました。これらの事件はいずれも欧米人を始めとする外国人が頻繁に利用する場所を狙っていることから、外国人を標的としたテロであったとみられています。
(6)さらに、これまで比較的治安維持が保たれていた中部地域でも治安の悪化が見られ「マシナ解放戦線(FLM)」を名乗るグループによるマリ軍等に対する襲撃事件も発生しています。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQIM)
 2007年の結成以降、誘拐や麻薬の密売に関与しています。2012年には、マリ北部トンブクトゥに進出、占拠し、マリ北部を活動拠点の一つとしていました。2013年1月以降の仏軍等による軍事掃討作戦により弱体化しましたが、現在も同地で活動を続けています。
(2)アル・ムラービトゥーン(Al-Mourabitoune)
 2013年8月、それまでサヘル地域で活発に活動していたAQIMの分派である「西アフリカ聖戦統一運動(MUJAO)」と、AQIMを離脱したムフタール・ベルムフタール率いる「覆面部隊」が統合し、新たなイスラム過激派組織「アル・ムラービトゥーン」が結成され、2015年末以降は、再びAQIMの傘下グループとして活動を継続しています。
(3)マシナ解放戦線(FLM)
 2015年1月のセグー州ナンパラ及びモプチ州テネンクーにおけるテロ攻撃で知られるようになったイスラム過激派組織で、マリ中部でマリ軍、警察、官憲等に対する攻撃を行っています。メンバーにプル族(注:マリを中心に西アフリカ一帯に分布する民族)出身者が多いこと、また、アンサル・ディ-ンと関係を有することが指摘されていますが、その実態は不明な部分が多いとされています。
(4)アンサル・ディ-ン(Ansar Dine)
 厳格なイスラム法(シャリーア)に基づく統治を主張しており、トゥアレグ族のイヤード・アグ・ガリを指導者として活動しています。2012年、マリ北部キダル周辺を占拠しましたが、2013年、フランス軍等による軍事作戦後は、アルジェリアとの国境付近に撤退しました。しかしながら、2015年中には北部地域においてキダルのMINUSMA基地等に対する攻撃を行っているほか、中部でテロを行っているFLM等との関係が疑われています。

3.誘拐事件の発生状況
 近年、マリにおいて邦人に対する誘拐事件の発生は確認されていません。
 しかし、2016年1月7日にマリ北部トゥンブクトゥで、同地に長年住むスイス人女性がAQIMに誘拐される事件が発生しました。また、隣国ブルキナファソにおいても2016年1月15日マリ国境に近いジボで、同地に長く住むオーストラリア人医師夫婦がアル・ムラービトゥーンに誘拐される事件が発生しています。イスラム過激派組織が資金獲得のために誘拐を繰り返しているとの見方もあり、十分注意する必要があります。

4.日本人・日本権益に対する脅威
 近年、日本人,日本権益を標的としたテロ・誘拐事件は発生していません。しかしながら、2015年以降、イスラム過激派組織による外国人を標的としたテロ攻撃事件が首都バマコや、セバレで発生するなど、マリ国内においてイスラム過激派組織の活動の南下、拡散がみられています。従来テロ活動の中心であったマリ北部地域のみならず、首都バマコや他の中部、南部においてもテロや非対称攻撃に対する注意、警戒が必要となっています。
 このような情勢を十分に認識して、誘拐、脅迫、テロ等に遭わないよう、また、巻き込まれることがないよう、海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め、日頃から危機管理意識を持つとともに、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。