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マリ

更新日 2019年04月10日

1 概況
(1)サハラ砂漠南部,マリ北部(キダル州,ガオ州,トンブクトゥ州,タウデニ州,メナカ州)は,広大な国境(全長約7,000Km)及び起伏の激しい砂漠の地形に加え,自治・独立を求めるベルベル系のトゥアレグ人による度重なる反乱によって,1960年の独立以降中央政府の統治が十全に及ばない状態が長く続き,2000年代以降,イスラム過激派組織の侵入を許してきました。
(2)2012年1月以降,トゥアレグ人武装集団「アザワド民族解放運動(MNLA)」とマリ軍との間で戦闘が散発的に発生すると,同年3月に首都バマコにおいて,トゥーレ政権(当時)の北部問題への対応及び汚職等に不満をもった一部マリ軍兵士が騒乱を起こしました。こうした中,同年4月,混乱に付け入る形で,当初はMNLAと協力関係にあったイスラム過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQMI(フランス語)/AQIM(英語))」,「西アフリカの一神教と聖戦集団(MUJAO)」,「アンサール・ディーン(AD)」等のアラブ人やトゥアレグ人によるイスラム過激派諸グループが勢力を伸張させ,同年7月にはMNLAを排撃の上これに取って代わり,厳格なイスラム法に基づいた支配を試みました。
(3)2013年1月,北部地域を占拠したイスラム過激派組織が更なる南進を試みたことから,マリ暫定政府(当時)の要請を受けたフランス軍,アフリカ主導マリ国際支援ミッション(AFISMA)及びマリ軍が軍事作戦を開始し,イスラム過激派組織の大半を北部の主要都市から排除しました。
(4)しかしながら,イスラム過激派組織の一部は,引き続きマリ北部,更には中部に転移・浸透し,国連PKO部隊「マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA)」やマリ軍等に対する自爆テロ,地雷,簡易爆発装置及びロケット砲等による攻撃を続けています。
(5)マリ北部のイスラム過激派組織は,2017年,中部における黒人種プル(フラニ)族主体の「マシナ解放戦線(FLM)」と合流して「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」を組織し,北部のみならず中部においてもその勢力を伸張させつつあり,民間人の被害も増加しています。
(6)また,首都バマコにおいては,2015年3月にレストラン襲撃事件が,11月にはホテル襲撃事件が,2017年6月にはリゾート施設襲撃事件が発生し,多くの外国人等が犠牲となりました。これらの事件は,いずれも欧米人をはじめとする外国人が頻繁に利用する場所を狙っていることから,犯行グループの標的は外国人であると考えられるところ,今後,そうした場所には宿泊したり近付いたりしないようにするとともに,夜間の外出を控える必要があります。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)アル・カーイダ系:「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」
 2017年3月,下記アからオまでのイスラム過激派組織が,単一の新テロ集団「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」を結成するべく,マリのトゥアレグ人であるアンサール・ディーン(AD)の首領イヤド・アグ・ガリを長として統合し,アル・カーイダのアイマン・ザワヒリ指導者に忠誠を誓う声明ビデオを発表しました。同組織は,同年6月,バマコ東郊におけるリゾート施設「カンガバ・キャンプメント・コンプレックス」の襲撃事件においても犯行声明を発出しています。
ア イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQMI(フランス語)/AQIM(英語))
 2007年の結成以降,誘拐や麻薬の密売に関与しています。2012年には,マリ北部トンブクトゥに進出・占拠しました。その後はマリ北部を活動拠点の一つとしており,2013年1月以降の仏軍等による軍事掃討作戦により弱体化したものの,現在もマリ北部のトゥンブクトゥ等で活動を続けています。
イ 西アフリカの一神教と聖戦集団(MUJAO)
 2011年,AQMIから分裂し,結成されました。2012年,マリ北部ガオを占領。麻薬の密売,誘拐事件に関与。2013年1月以降の軍事作戦で弱体化するも,一部構成員がガオ州を中心に残存し,テロ攻撃を継続。2013年8月にはモクタール・ベル・モクタール(MBM)の血判部隊と統合し,アル・ムラビトゥーンを結成しました。
ウ アンサール・ディ-ン(AD)
 イスラム法シャリーアに基づく厳格な統治を主張しており,トゥアレグ族のイヤド・アグ・ガリを指導者として活動。2012年,マリ北部キダル周辺を占拠しましたが,2013年のフランス軍等による軍事作戦後はアルジェリアとの国境付近に撤退しました。しかしながら,2015年には北部地域においてキダルのMINUSMA基地等に対する攻撃を行っているほか,中部でテロを行っているFLM等との関係があるとされています。
エ アル・ムラビトゥーン(Al-Mourabitoun)
 2013年8月,MUJAOとMBM率いる血判部隊(注:2013年1月の在アルジェリア邦人に対するテロ事件や同年5月にニジェールで発生した2件のフランス権益に対するテロ事件に関与したとされています。)が合併したイスラム過激派組織。2015年11月のバマコにおけるホテル襲撃事件では,AQMIと共同で犯行を行った旨発表しています。
オ マシナ解放戦線(FLM)
 2015年1月のセグー州ナンパラ及びモプチ州テネンクーにおけるテロ攻撃で突如出現したサラフィスト・ジハーディスト主義組織。マシナ帝国の復興を目的としているといわれ,メンバーに多くのプル族出身者がおり,マリ中部でマリ軍,警察,官憲等に対する攻撃を行っています。指導者はマリ人プル族のアマドゥ・クファで,2018年11月に発出されたビデオメッセージにおいて,JNIM全体の長たるイヤド・アグ・ガリと並んで登場し,対仏闘争と対邪教闘争をプル族に呼びかけました。なお,プル族はマリを始め西アフリカ一帯に人口が多いものの,傑出した指導者はおらず集団的なまとまりは有していないことから,現在のところFLMはプル族の集団的示威活動組織とは考えられていません。
(2)ISIL系:「大サハラにおけるイスラム国(ISGS)」
 元MUJAOの広報官でアル・ムラビトゥーンのメンバーでもあった西サハラ出身のサハラーウィ率いるイスラム過激派組織で,2016年にISILに忠誠を誓っており,主にマリ,ニジェール,ブルキナファソの国境地帯を活動範囲としています。2017年10月にニジェール領内で発生し,米特殊部隊とニジェール兵が殺害された襲撃事件につき,犯行声明を発出しています。
(3)その他(反政府北部武装勢力)
 イスラム過激派グループとは別に,マリ政府に対し独立,連邦制又は自治を求めているアザワド民族解放運動(MNLA),アザワド統一上級会議(HUCA),アラブ・アザワド運動(MAA分離派)などの反政府北部武装勢力がマリ北部の各地で活動をしています。

3 誘拐事件の発生状況
 2018年中,外国人の誘拐事件は新たに確認されていませんが,JNIMにより,これまでに誘拐された被害者のメッセージビデオが度々公開されています。同年6月には,2016年12月にマリ北部のガオ州において誘拐されたフランス人女性,2017年2月にマリ南部のシカソ州において誘拐されたコロンビア人女性を撮影したビデオが放映され,フランス人女性はフランス当局に対して解放に向けた支援を呼びかけています。また,現在も拘束している人質として,上記2名のほかに,ルーマニア人,オーストラリア人,スイス人の名前を挙げています。誘拐事件の背景には,ジハーディスト組織の資金が逼迫している状況があるとの見方もあり,今後も誘拐事件が発生する可能性があるところ,十分注意する必要があります。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 これまでに,マリにおいてテロ事件による日本人の被害は確認されていませんが,首都バマコ市内において,2015年3月,同年11月,2016年3月(未遂),更に2017年6月にテロ事件が発生し,多くの外国人が殺害されています。
 このような状況を十分に認識し,テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう,海外安全ホームページや報道等により最新の治安情報の入手に努め,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

テロについて

「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが,一般には,特定の主義主張に基づき,国家等にその受け入れを強要し,又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は,このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず,外務省が,報道等の情報等に基づき,海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり,本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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