ケニア
テロ・誘拐情勢
更新日 2024年08月07日
1 概況
(1)近年、ソマリアを拠点とするイスラム過激派組織「アル・シャバーブ(AS)」は、ATMIS(アフリカ連合ソマリア暫定ミッション)に参加するケニアに対し攻撃を活発に仕掛けており、ケニアの治安を脅かしています。
(2)2019年1月15日、ナイロビ所在の高級ホテル「Dusit D2」等からなる複合施設が襲撃され、外国人を含む21名が死亡するテロ事件が発生しました。本件は、多数の外国人が利用する複合施設を標的とした襲撃であり、ASは、1月16日に発出した声明において、米国大統領がエルサレムをイスラエルの首都であると宣言したことに対する報復である旨を主張しました。
(3)上記の襲撃事件のほか、ASは、ソマリアとの国境に接するケニア東部地域で、治安部隊を標的としたテロ攻撃を頻繁に繰り返しているほか、2013年9月に、ナイロビに所在する大型商業施設ウェストゲート・ショッピングモールを襲撃(67名が死亡)し、2015年4月には東部ガリッサで大学を襲撃(148名が死亡)するなど、大規模テロを敢行しています。
(4)また、AS以外にも「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」が関係するとみられる事件として、2016年9月に、沿岸部の都市モンバサにおいて、モンバサ中央警察署に対する女性3人によるナイフや火炎瓶による襲撃事件が発生し、警察官2名が負傷しています。
(5)さらに、犯行主体については捜査中ですが、2019年1月26日には、ナイロビ中心部のビジネス街で手製爆発物(IED)が爆発し、2名の負傷者を伴った事件が発生しています。
(6)近年、ナイロビや沿岸部での警備は強化され、治安機関の情報収集能力やテロ対処能力は、過去に比べ格段に向上したとされますが、2021年11月及び2022年1月、危険人物として複数名のテロ容疑者が公開指名手配されるなど、依然としてケニア全土において、テロの脅威が存在します。また、治安機関等も、引き続き、テロの脅威は存在すると指摘しています。
(7)2022年8月27日、ASはケニア総選挙について言及し、ケニア政府が2011年以降ソマリアに派遣中のケニア国防軍が撤退しない限り、ケニア国内でテロを継続する旨の声明を発表しました。また、2023年10月7日、イスラム過激派組織ハマスがイスラエルへの攻撃を行ったことにより、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫し、「アル・カーイダ(AQ))及びISILは、それぞれイスラエル権益や在外大使館、米軍関連施設等を標的にすべきことを声明や機関誌において主張しました。これらの情勢を受け、ASがテロ攻撃を活発化させる懸念があり、ケニア国内においても、十分な警戒が必要です。
2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
「1 概況」のとおり。
3 誘拐事件の発生状況
(1)過去には、ケニア国内の強盗集団やAS等による国際機関、NGO団体等の職員及び外国人を狙った身代金目的の誘拐事件が発生しましたが、治安機関の能力向上等の効果もあって、しばらく外国人に対する誘拐事案は認められませんでした。
(2)しかし、2017年1月、邦人NGO関係者がナイロビにおいて拉致され、暴行を受けた上、金品を奪われる事案が発生し、また、2018年11月にキリフィ郡においてイタリア人女性NGO活動家が武装グループによって誘拐され、約1年半後に解放される事件が発生しました。加えて、2019年4月にも、北東部ガリッサ郡において、キューバ人医師2名が武装集団に誘拐され、その後ソマリア領内に拉致されたとされていますが、現在も未解決のままとなっています。
(3)一般的に、誘拐事件は一旦発生すると、解放への交渉が難航する上に、最終的に人質が殺害されるケースがみられます。また、解決した場合でも非常に長期化するケースが散見されます。平素から危機意識を持って予防に心掛けることが重要です。
4 日本人・日本権益に対する脅威
(1)現在のところ、ケニアにおいて、日本人・日本権益を直接の攻撃対象とするテロの脅威は確認されていませんが、上記1(2)の「Dusit D2」襲撃事件では、欧米系企業のみならず日系企業も所在する複合施設が標的となっています。今後も外国人の多く利用するホテルやショッピングモール、レストラン等で同様のテロ攻撃が発生する可能性があり、その場所に居合わせた日本人も被害に巻き込まれることが強く懸念されます。
(2)また、近年、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロが発生しており、チュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。加えて、こうした過激思想・主張に影響を受けた単独犯によるローンウルフ型テロも発生しており、日本人も様々な事件に巻き込まれるおそれがあります。
(3)誘拐については、犯行主体にかかわらず、身代金の要求が目的である場合が多いことから、旅行者を含めた邦人が広く標的とされる可能性があります。
(4)テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。