レバノン
テロ・誘拐情勢
更新日 2025年01月28日
1 概況
(1)2023年10月のガザ情勢を受けて、レバノン南部国境地帯でヒズボッラー及び親パレスチナ勢力とイスラエルの間で攻撃の応酬が発生しました。特に、2024年9月17日及び18日には、ヒズボッラー関係者が使用するポケベル・無線機がイスラエルの工作により同時爆発し、レバノンで多数の死傷者が発生しました。また、イスラエル国防軍の攻撃により、ヒズボッラーの最高指導者ナスラッラー書記長を含め、同組織幹部が相次ぎ殺害されました。これらを契機とし、両者の攻撃の応酬が激化し、レバノン南部、ベカー県、バールベック・ヘルメル県、ベイルート南部郊外ダーヒエ地区、ベイルート市内等へのイスラエル国防軍による空爆が頻繁に実施され、国内に多数の死傷者が出ました。
(2)2024年11月27日午前4時にイスラエル政府及びレバノン政府との間で停戦が発効しました。それ以後はベイルートを含むレバノン北部へのイスラエルからの攻撃はありませんが、レバノン南部では未だイスラエル国防軍が駐留しており、局所的にイスラエル国防軍からの攻撃が行われ、その抵抗としてヒズボッラーが威嚇攻撃をするなど、互いに停戦違反を主張しています。なお、戦況激化時はレバノン南部及びベカー等からの避難民がベイルート市内にあふれましたが、停戦発効後はその多くが帰還し、ベイルート市内は平穏を取り戻しています。
(3)レバノンでは、2024年中に国際的なイスラム過激派組織やその支持者によるテロ事件の発生はありませんでした。2024年6月、在レバノン米国大使館前で、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)を示すアラビア文字を衣服に付けた犯人による発砲事件が起こりましたが、治安当局により検挙されています。
(4)過去数年と同様、2024年も、パレスチナ難民キャンプにおける武力衝突が複数確認されています。過去には近隣で勤務中の当局者が流れ弾の被害に遭うなど、キャンプ外にも被害が及んでいます。
(5)レバノン人やシリア人富裕層をターゲットとした金銭目的の誘拐事件が各地で発生しています。また、2024年4月にはキリスト教系政党幹部がシリア人による車両強盗目的の誘拐殺人事件の被害に遭っています。近年、外国人が被害に遭う誘拐事案も発生しています。2023年5月、サウジアラビア人が誘拐され、シリアに移送されましたが、国軍の介入により無事解放されました。
(6)軍・治安機関は、引き続き治安維持活動に重要な役割を果たしていますが、経済・財政危機のあおりを受け、予算や兵士の給料が激減するなど苦境に見舞われ、国軍や警察組織は多くの離職者を出しています。2025年1月、約2年ぶりに新大統領が選出され、その後、新首相の指名と新内閣の樹立が発表されましたが、社会・経済の改善見通しは不透明であり、治安面に及ぼす悪影響が懸念されます。
2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)2023年10月以降、レバノン南部国境地帯を中心に、攻撃の応酬が続いており、2024年12月7日の世界保健機関の発表によれば、死者4,134人、負傷者16,690人、国内困窮者220万人以上が発生しています。
(2)レバノン全域において、平素から、国軍や治安機関によるテロリストの検挙が発表されており、警戒が必要です。
(3)パレスチナ難民キャンプでは、パレスチナ治安部隊がレバノン国軍等と連携して治安維持にあたっていますが、2024年中、南部アイン・ヘルワ、北部トリポリなどのパレスチナ難民キャンプにおいて武力衝突が発生し、死傷者や物損被害が生じています。
3 誘拐事件の発生状況
レバノン国内で過去に日本人が誘拐された事例はありません。他方、過去に、外国人が身代金目的誘拐の被害に遭う事案が各地で発生しています。また、夜間に、銃器を持った犯人が、外国人を脅迫した上、車両で連れ去る事件が確認されています。
ベカー県、バールベック・ヘルメル県、北レバノン県トリポリ、アッカール県等においては、レバノン人及びシリア人が身代金目的で誘拐される事件が発生しており、警戒が必要です(警察の介入によりいずれも人質は無事解放)。
4 日本人・日本権益に対する脅威
現在のところ、レバノン国内において、日本人及び日本権益を標的とした脅威情報は確認されておりませんが、テロに巻き込まれる可能性は排除されません。2022年2月にはベイルート南部郊外でテロ未遂事案が発生しており、もし攻撃が成功していれば多数の死傷者を伴う惨事になっていた可能性があったとされています。
また、2023年10月以降、国内情勢は極めて流動化かつ不安定化し、2024年11月に停戦が合意しましたが、南部地域など、未だイスラエルからの攻撃が発生している場所もあります。
国連での投票行動をめぐって日本に危害を加える旨のソーシャルメディア上の投稿がなされるなど、情勢によっては日本への反感が高まり攻撃の標的とされる可能性もあります。ニュースや当館からの案内を常に確認し、警戒を怠らないようにしてください。
近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。