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メキシコ
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年04月02日

1 概況
 メキシコでは、国際テロ組織の活動は、現在のところ確認されていません。ただし、2015年11月に「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)が発表した攻撃対象国リスト60カ国の中にはメキシコが含まれており、ISIL、またはそのシンパによるテロの標的となる可能性は皆無とは言えません。
 その他、当国内の反政府組織は近年活発な活動は行っていませんが、麻薬カルテル等犯罪組織による抗争や凶悪犯罪が多発しています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)反政府組織
 メキシコの反政府組織として、「人民革命軍(EPR)」、「反乱人民革命軍(ERPI)」、「サパティスタ民族解放軍(EZLN)」、「人民革命武装戦線(FARP)」、「5月23日ハラミジスタ・コマンド」等が存在します。これら組織は過去に過激な活動を行っていましたが、近年は目立った活動は確認されておらず、政府機能を麻痺させるだけの力や無差別テロ・自爆テロ等行う危険性は有していないと見られています。
(2)麻薬カルテル等犯罪組織
 テロリスト・反政府組織による主立った活動が確認されない一方で、複数の対立する武装麻薬組織(いわゆる「麻薬カルテル」)や、それらと同盟関係にある地元密着型犯罪グループによる各組織間の銃撃戦や、政府・治安機関に対する襲撃等が頻繁に発生しています。活動地域については、主として北部国境地域や太平洋側の主要港湾、米国につながる内陸の主要幹線道路沿いの地域などですが、麻薬の密造や密輸、密売等の麻薬関連犯罪や人身売買、誘拐、恐喝、「通行料」や「場所代」といったみかじめ料の要求等、その犯罪活動の幅は広く、大都市や観光地においても活動しています。各組織の利権をめぐる対立・抗争に巻き込まれないよう日頃の情報収集及び警戒が必要です。

3 誘拐事件の発生状況
(1)全般的な傾向と対策
 メキシコ全土では、組織的な犯罪として誘拐が横行し、身代金を目的としたビジネスとしても定着しています。2023年における誘拐被害届出件数は456件であり、2022年の497件、2021年の625件と比較すると減少しています。
 ただし、上記件数はあくまで治安当局に届出があったものであり、2022年の国立統計地理情報院(INEGI)の発表によると、犯罪被害に対する警察または検察等への被害申告は、全体の10.9%であったとされており、これは犯人からの報復への恐れ等により、被害者が届出を行わないということが理由として考えられます。そのため、統計の数値では知り得ない潜在的な誘拐事件が非常に多く発生しているであろうことを念頭に置く必要があります。
 発生数は、件数別では、メキシコ州(69件)が最も多く、次いでチワワ州(48件)、モレロス州(29件)であり、人口10万人当たりの発生率では、モレロス州(10万人あたり1.47人)、チワワ州(10万人あたり1.28人)、コリマ州(0.68人)の順になっています。誘拐は、ほとんどが金銭目的の誘拐であり、かつては富裕層が標的となることが主立ったものでしたが、最近は中流階級も狙われるなど標的が拡大しています。また、外国人が被害に遭うこともあります。
 誘拐犯は、犯行を行う前に標的とする人物の事前調査を一定期間行います。自らの身は自ら守る心構えを常に維持し、具体的には、目立たない(犯罪者は標的を選ぶ際、目立つ人物に目をつける傾向がある)、行動を予知されない(行動のパターン化は、犯罪者の襲撃計画を立てやすくする)、用心を怠らない(初心を忘れず、定期的に気持ちを引き締める機会を持つ、自分だけは大丈夫とは決して思わない)ことが重要です。また、自分や家族に関する情報(身分・行動予定等)の秘匿に努め、SNS等インターネット上での個人情報の取り扱いについては十分注意してください。
(その他、対策についての詳細は「海外における脅迫・誘拐対策Q&A」( http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_04.html )をご参照ください。)

(2)短時間誘拐とバーチャル誘拐
 いわゆる身代金目的の誘拐の他、特段標的を絞らず偶発的に行われる「短時間誘拐(express kidnap)」及び、実際は誘拐していないものの誘拐を装って金銭をだまし取る「バーチャル誘拐(virtual kidnap)」があります。
 短時間誘拐に関しては、メキシコの全国各地で発生しています。犯人は無理やり被害者を車に乗せて車内に閉じ込めたうえ凶器等で脅迫してATMへ連れて行き、キャッシュカードまたはクレジットカードで現金を引き出したうえ、所持品を奪うという手段が多く見られます。当地では、ATMでの1日あたりの引き出し限度額があり、およそ6,000~7,000ペソ(約300~350米ドル)の制限があるため、二度現金を引き出させるために被害者を翌日まで拘束したり、残高が少なかった場合には、家族にも金銭を要求したりすることがあります。
 こうした犯罪には、流しのタクシー(Libre)が使用されることもあるため、タクシーを利用する場合には、登録された予約制のタクシー(SitioあるいはRadio taxi)やホテル専属の観光タクシー(Turismo)等の利用をお勧めします。また、車両の予約をした場合は、運転手の氏名・車種・ナンバープレートの情報を事前に入手し、乗車前に確認する等の対策をとるようにしてください。
 スマートフォン等で利用できる配車サービスのアプリケーション(UBER等)は比較的安全とされていますが、運転手による強姦や強盗被害が過去に発生しています。乗車前に運転手の氏名・顔・車種・ナンバーを事前に確認すると共に、誰を迎えに来たのかを聞き、確実に自分が呼んだ車であることを確認してください。また、利用時間帯や場所等を考慮し、乗車中は常に自分の居場所を確認する等の対策も必要です。
 バーチャル誘拐に関しては、基本的に見知らぬ電話には出ない、電話に出てしまっても、少しでも疑わしい内容であれば電話を切ることが重要です。手口の一例としは、ホテルの客室等に治安当局や犯罪組織を名乗る者から電話が掛かってきて、言葉巧みに、または脅迫されて個人情報を聞き出されます。その後、電話を常時通話状態にさせられる、SNSを乗っ取られる等して外部との連絡が不可能な状況にされてしまいます。この状況下で犯人は被害者の家族に対して誘拐したと脅迫電話を掛け、家族は被害者と連絡が取れないために誘拐されたと信じてしまい、犯人の要求した金額を銀行口座に振り込んでしまうというものです。万が一、誘拐したと偽る脅迫電話を受けた際は、誘拐された被害者が実際に誘拐されているかどうか、事実の確認をまず行ってください。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 現在、メキシコの反体制組織による直接的な脅威は低いものの、組織犯罪や一般犯罪も含めて、日本企業を含む外国権益への脅威の可能性は完全には排除できません。
 これまでに、メキシコにおいてテロによる日本人の被害は確認されていませんが、テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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