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メキシコ

2019年03月08日

1 概況
 メキシコでは,国際テロ組織の活動は,現在のところ確認されていません。ただし,2015年11月にISILが発表した攻撃対象国リスト60カ国の中にはメキシコが含まれており,ISIL,またはその共鳴者によるテロの標的となる可能性は皆無とは言えない状況にあります。これに対しメキシコ政府は,ISILの脅威は国際的現実であると捉え,国境,各国大使館,空港,港等の警備を強化する旨発表しています。
その他,反政府組織は近年活発な武装活動は行っていませんが,麻薬カルテル等による抗争・犯罪が多発しています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)人民革命軍(EPR)
 1990年代に誕生した組織で,従来,治安当局及び米国権益を狙った攻撃を主としていましたが,2007年7月及び9月にメキシコ石油公社(PEMEX)のベラクルス州にあるパイプライン爆破事件等を敢行しました。メキシコ政府が断固として交渉しないという一貫した政策を取ったことで,EPRは武力行動を得策ではないと考えている模様であり,最近では目立った活動や,一般市民を巻き添えにするような行動はとっていません。
 一方で,EPRの分派である「反乱人民革命軍」(ERPI)は,2014年9月に,ゲレロ州イグアラ市において発生したアヨツィナパ教員養成学校生徒の行方不明事件に関し,行方不明生徒を襲撃した犯罪組織を粛清するための部隊を創設したと発表するなど,引き続き活動は継続しています。

(2)サパティスタ民族解放軍(EZLN)
 1994年にチアパス州で武装蜂起した組織で,近年は散発的な政府批判を中心に活動しています。テロ集団とは一線を画しており,テロ攻撃を行う過激性は有していないと見られています。ただし,2012年12月,チアパス州においてメンバー数万人による大規模なデモ行進を行っています。また,2018年の大統領選に独立系候補者を出馬させようとしましたが,充分な支持を得ることができず出馬を断念しています。

(3)その他
 「人民革命武装戦線」(FARP),「5月23日ハラミジスタ・コマンド」等といった組織が存在しますが,政府の機能を麻痺させるだけの力や,無差別テロや自爆テロ等を行う過激性は有していないと見られています。
テロリスト・反政府組織による活動で主立ったものは確認されない一方で,複数の対立する武装した麻薬組織(いわゆる「麻薬カルテル」)による各組織間の銃撃戦や,政府機関・警察署等に対する襲撃等が頻繁に発生しています。活動地域については,主として北部国境地域や太平洋側の主要港湾などですが,麻薬密売やみかじめ料の要求等犯罪活動の幅を広げており,大都市や観光地においても活発に活動しています。各組織の利権をめぐる対立・抗争に巻き込まれないよう日頃の情報収集及び警戒が必要です。

3 誘拐事件の発生状況
(1)全般的な傾向と対策
 メキシコ全土では,組織的犯罪として誘拐が横行し,身代金を目的としたビジネスとしても定着しています。2018年における誘拐被害届出件数は981件であり,2017年の1,148件から減少しました。
ただし,上記件数はあくまで治安当局に届出があったものであり,国立統計地理情報院(INEGI)によると,2017年には約8万件の誘拐被害があったと推計されています。当地では治安当局に対する不信感等から,犯罪被害の全てが当局に届出されている訳ではなく,届出がなされているのは全被害件数の1割程度であるという統計結果もあります。よって,統計上では知り得ない潜在的な誘拐事件も多く発生している可能性が高いことを念頭に置く必要があります。
 地域別では,メキシコ州で最も多く発生しており,次いでベラクルス州,タマウリパス州の順に発生件数が多くなっています。誘拐は,ほとんどが身代金目的の誘拐であり,かつては警戒が厳重な富裕層が標的となることが主立ったものでしたが,最近は中流階級も狙われるなど標的が拡大しています。また,外国人が被害に遭うこともあります。
 誘拐犯は,犯行を行う前に必ず標的とする人物の事前調査を一定期間行うことから,自らの身は自ら守る心構えを常に維持することが重要です。具体的には,目立たない(犯罪者は標的を選ぶ際,目立つ人物に目をつける傾向がある),行動を予知されない(行動のパターン化は,犯罪者の襲撃計画を立てやすくする),用心を怠らない(初心を忘れず,定期的に気持ちを引き締める機会を持つ,自分だけは大丈夫とは決して思わない)といった基本的な姿勢が求められます。また,自分に関する情報(身分・行動予定等)の秘匿に努めてください。特にSNS等インターネット上での個人情報の取り扱いについては十分注意してください。
(その他,対策についての詳細は「海外における脅迫・誘拐対策Q&A」( http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_04.html )を参照してください)。

(2)短時間誘拐とバーチャル誘拐
 いわゆる身代金目的の誘拐の他,特段標的を絞らず偶発的に行われる「短時間誘拐(express kidnap)」,及び,実際は誘拐していないものの誘拐を装って金銭をだまし取る「バーチャル誘拐(virtual kidnap)」があります。
短時間誘拐に関しては,メキシコ全国で発生しています。犯人はタクシー運転手を装い,あるいは無理やり被害者を車に乗せて車内に閉じ込めたうえ凶器等で脅迫し,ATMへ連れて行き,キャッシュカードあるいはクレジットカードで現金を引き出したうえ,所持品を奪うという手段が多く見られます。当地では,ATMでの現金の引き出しに限度額としておよそ6,000ペソ(約300米ドル)の制限があるため, 2度現金を引き出させるまで被害者を翌日まで拘束したり,残高が少なかった場合には,家族にも金銭を要求したりすることがあります。
 流しのタクシー(Libre)が使用される傾向にあることから,タクシーを利用する場合には,流しのものではなく,予約制の登録されたタクシー(SitioあるいはRadio taxi)やホテル専属の観光タクシー(Turismo)等の利用をお勧めします。また,車両予約をした場合は運転手の氏名,車種,ナンバープレートの情報を事前に入手し乗車前に確認する等の対策にも留意してください。スマートフォン等で利用できる配車サービスのアプリケーション(UBER等)は,運転手の氏名・顔・車種・ナンバーを事前に確認することが可能であり比較的安全とされていますが,運転手による強姦や強盗という被害も散見されます。こちらも運転手や車両を確実に確認する,利用する時間帯や場所等を考慮する等の対策が必要です。
 バーチャル誘拐に関しては,基本的に見知らぬ電話には出ない,電話に出てしまっても,少しでも疑わしい内容であれば電話を切ることが重要です。万が一,誘拐したと偽る脅迫電話を受けた際は,誘拐された被害者が実際に誘拐されているかどうか,事実の確認をまず行ってください。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 現在,メキシコの反体制組織による直接的な脅威は低いものの,「反ネオリベラリズム」を唱え,米国系企業に対して反対しているグループが存在することから,日本企業を含む外国権益への脅威の可能性は完全には排除できません。
これまでに,メキシコにおいてテロによる日本人の被害は確認されていませんが,近年,シリア,チュニジア及びバングラデシュにおいて日本人が殺害されるテロ事件が発生しています。また,テロは,日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており,特に,近年では単独犯によるテロや,一般市民が多く集まる公共交通機関等(ソフトターゲット)を標的としたテロが頻発していることから,こうしたテロの発生を予測したり未然に防ぐことが益々困難となっています。このようにテロはどこでも起こり得ること及び日本人が標的になり得ることを十分に認識し,テロの被害に遭わないよう,海外安全ホームページや報道等により最新の治安情報の入手に努め,
 状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが,一般には,特定の主義主張に基づき,国家等にその受け入れを強要し,又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は,このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず,外務省が,報道等の情報等に基づき,海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり,本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。

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