パラグアイ
テロ・誘拐情勢
更新日 2024年09月30日
1.概況
(1)パラグアイ治安当局は、現在まで国内におけるテロ組織の存在を認めていません。しかしながら、2010年4月にパラグアイ北部で発生した警察官殺害事件等を契機に、「パラグアイ人民軍(EPP)」を自称する反政府武装組織の活動が活発化し、コンセプシオン県、サン・ペドロ県及びアマンバイ県西部はEPPの勢力圏となっています。また、EPPから派生した「武装農民グループ(ACA)」や「マリスカル・ロペス軍(EML)」を名乗る組織も活動しており、2023年にもEPPの関連が疑われる事件が2件発生しています。
(2)2019年8月パラグアイ政府は、「ヒズボラ」、「アル・カーイダ」、「ハマス」、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」を正式に国際的テロ組織として指定しています。2023年からイスラエル・パレスチナ紛争などにより緊張状態が続いていることから、特にブラジル・アルゼンチンと国境を接する三か国国境地帯において注意が必要とされています。
2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)EPPは、元々コンセプシオン県及びサン・ペドロ県の地域等で農民運動を行っていた指導者層から構成されており、左派的思想により、貧富の差の拡大を進める政府、大企業、大規模牧場経営者等を敵視しています。警察官を誘拐し受刑中の同組織幹部の釈放を要求する等の事案もありますが、主に、金銭目的と見られる誘拐を繰り返しています。2015年1月には、コンセプシオン県ウブ・ジャウ市において、牧場経営者であったドイツ人夫婦を誘拐の上殺害する事件を起こし、2020年9月には、コンセプシオン県とアマンバイ県の県境付近で元副大統領を誘拐する事件を起こしています。
2022年以降警察による掃討作戦が行われたことにより、EPP幹部の多くが逮捕・殺害されましたが、EPPへの関連が疑われる事件が現在でも発生していることから、引き続き注意が必要です。
(2)また、パラグアイ、ブラジル、アルゼンチンの三か国国境地帯は、パラグアイ側の国境管理が脆弱であり、かつ三か国間の連携が十分でないことなどから、テロ組織関係者が比較的容易に出入国できる状況であると言われています。パラグアイ側のシウダ・デル・エステ市及びその周辺には、イスラム教徒のコミュニティが点在しており、一部はイスラム過激派組織に資金援助等を行っているとの情報もありますが、具体的な活動は確認されていません。
3.誘拐事件の発生状況
(1)治安当局によれば2023年に4件の誘拐事件が発生しており、そのいずれもがEPPの関与が認められない金銭目的の誘拐事件とされており、前述のとおりEPPが関わる事件以外にも誘拐事件の発生が続いています。その多くは金銭的に裕福と見られる家庭や経営者等を標的としており、国籍にかかわらず、資産家や大規模農場経営者等の家族が被害に遭っています。
(2)「短時間誘拐事件」(被害者を一時的に拘束し、ATM(現金自動預払機)等で現金を引き出させた後に解放するもの)も発生しており、過去には日本人も被害に遭っています。現金や資産などの取引に関する情報が第三者に漏れ出て、誘拐事件のターゲットとなることもあるため、こういった情報の取り扱いには注意が必要です。
4.日本人・日本権益に対する脅威
1992年に、隣国のアルゼンチンでイスラエル大使館が爆破されるなど、中南米においてもテロは発生する可能性があります。また、中東における緊張の高まりにより、特にブラジル及びアルゼンチンと国境を接する三か国国境付近では、シーア派イスラム原理主義の「ヒズボラ」に関連したテロへの警戒が必要とされています。
これまでに、日本人及び日本権益を標的とした脅威情報は確認されていませんが、近年、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所を標的としたテロが世界各地で頻発しており、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等はテロの標的となりやすく、常に注意が必要です。また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。