エルサルバドル
テロ・誘拐情勢
更新日 2025年02月05日
1 概況
(1)エルサルバドル共和国においては、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」等のイスラム過激派等のテロ組織、反政府組織や国際的なテロ組織の関連組織の活動は確認されていません。
(2)一方、当国最高裁判所は、2015年8月24日、手榴弾の投擲や路線バス車両への放火等、残虐な行為を行ったとして犯罪集団「マラス」をテロ組織として指定しました。「マラス」には「マラ・サルバトルーチャ(MS13)」、「スレーニョス(18S)」、「18R(レボルシオナリス)」などの大組織から、構成員の少ない組織まで多数存在し、様々な犯罪に関与していると見られています。また、犯罪行為で得た資金をフォーマルセクターに投資することで、マネーロンダリングを行っています。
「マラス」が起こしたとみられている事件としては以下が挙げられます。
・高級ホテルへの手榴弾の投擲や財務省前での車両爆発事案(2015年)
・治安部隊との銃撃戦(警察官が死亡。)(2018年)
・強奪した車両を使用した爆発事件(負傷者が発生。)(2018年)
・短期間での大量殺人事件(2020年4月25日から27日間で51人、2021年11月9日から11日間で47人、2022年3月25日から27日間で76人。被害者には多数の一般人を含む。)
(3)また、一部組織では、メキシコ、グアテマラやホンジュラス内の犯罪組織とSNSを使用して犯罪に関する連絡、調整等を行っているという情報もあります。
(4)なお、誘拐事件は過去に年平均十数件程度発生していましたが、いずれも被害者の近親者による金銭目的によるもので、2023年以降は発生していません。
2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
「マラス」の代表的な3組織は以下のとおりとなっています。活動状況に関しては、上記「1 概況」のとおりとなっています。
※総構成員及び収監人数は、2021年の数値であり、最新の数値については、エルサルバドルの法律(情報公開法)により、「マラス」の情報公開が制限されているため公表されていませんが、例外措置体制下で主要幹部を始め多くの構成員が拘束されているとみられる。
(1) MS13:構成員45,911名(うち収監者 刑務所9,266名、留置所905名)、364もの派閥が存在し、エルサルバドル国内14県中13県で活動。
(2) 18S:構成員13,809名(うち収監者 刑務所3,060名、留置所156名)、28の派閥が存在し、エルサルバドル国内14県中13県で活動。
(3) 18R: 構成員15,790名(うち収監者 刑務所2,750名、留置所122名)24の派閥が存在し、エルサルバドル国内14県中7県で活動。
(4) 「ミラダ・ロカ」、「マオ・マオ」、「マラ・マキナ」等:総構成員1,294人(うち収監者 刑務所387名、留置所11名)、活動範囲等は不明。
3 誘拐事件の発生状況
エルサルバドル国内の誘拐事件は、年々減少しており、2023年及び2024年は1件も発生しませんでした。過去の事件は、全て被害者の近親者による金銭目的の誘拐でした。なお、「マラス」が誘拐に関与する場合は、被害者の殺害を目的としたものであるとされています。
4 日本人・日本権益に対する脅威
現在のところ、エルサルバドルにおいて、テロ・誘拐による日本人の被害は確認されていません。
他方、テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアを始めとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。