アルゼンチン
テロ・誘拐情勢
更新日 2024年09月30日
1 概況
(1)近年、アルゼンチン国内で治安当局がテロと認定する事件は発生していませんが、過去には1992年及び1994年に、ブエノスアイレス市で発生したイスラエル大使館及びイスラエル共済組合会館爆破事件が発生しています。
(2)2018年11月、ブエノスアイレスG20サミット前には、レバノン系アルゼンチン人がテロを計画していたとして逮捕されており、いわゆるホームグロウン、ローンウルフ型テロは、欧米諸国と同様に発生し得ることから、引き続き注意が必要です。
(3)国内各地において、ネオナチのシンパがシナゴーグ(ユダヤ教会)や同性愛者等に対する襲撃を計画して、度々警察に摘発されています。無用のトラブルに巻き込まれないためにも、イスラエルやユダヤ教の関連施設、いわゆるLGBT関連の集会・デモ等には近付かないようにしてください。
(4)アルゼンチン国内では、小規模な爆弾事件や、爆弾を設置したとする脅迫事件が継続的に発生しています。これらの小規模爆弾事件については、主に政府関係施設や官憲等を標的にしていると思われるものが多い一方、アナーキストと見られる勢力による、主要観光地における爆発物設置未遂事件や、主要鉄道駅や一般商業施設に対する脅迫事件も発生しています。また、2023年10月には、イスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突に連動し、在アルゼンチン米国大使館、在アルゼンチン・イスラエル大使館及びホルヘ・ニューベリー空港に脅迫的なメッセージを含む爆破予告がなされた事例もあり、引き続き注意が必要です。
(5)アルゼンチンでは、いわゆる「短時間誘拐」が、ブエノスアイレス市内及び近郊地域において発生しています。短時間誘拐の手口は、銃器等で被害者を脅迫して拘束し、ATMで現金を引き出させる、あるいは被害者から家族等に連絡させ、比較的少額の身代金を受け取って、被害者を解放するというものです。短時間誘拐は、被害金額が少額である反面、誰もが被害者になり得ることから、十分注意する必要があります。また、家族等を誘拐したように装い、SNSや電話により身代金を騙し取る詐欺被害も発生しており、併せて注意する必要があります。
2 各組織の活動状況または各地域の治安状況
アルゼンチン、ブラジル及びパラグアイが国境を接する三か国国境地帯には、イスラム過激派組織ヒズボラを支援するレバノン系住民が存在しているとみられ、2018年3月には同組織を支援していたとして逮捕者も出ていますので、引き続き注意が必要です。
3 誘拐事件の発生状況
(1)アルゼンチン検察局の統計によると、2023年、国内で発生した誘拐事件は18件であり、ほとんどがブエノスアイレス州で発生し、貧困層が多い人口密集地であるラ・マタンサ市、ロマス・デ・サモラ市等のブエノスアイレス市周辺南部から西部にかけて集中しています。最近の5年間で比較すると減少傾向にありますが、引き続き注意が必要です。
(2)なお、上記統計の件数には、いわゆる「短時間誘拐」が全て含まれる訳ではありません。アルゼンチン検察当局は、被害者の拘束時間の長短に関わらず、身柄と引き替えに金品等を要求する事件を「誘拐」に分類する一方、被害者を脅迫してATMから現金を引き出させる手口は「強盗」に分類しているため、一部は「強盗」として計上されます。このような背景から、後者の手口は「連れ回し強盗」などと呼称されています。
(3)また、外国人が被害者となったケースは、中国人の違法カジノ経営者、コロンビア人富豪一家などが狙われたケースがあるものの、いずれも人身売買や薬物密輸等の組織犯罪に関わる国内外のマフィアの利権獲得競争や内部抗争等に起因するものであり、日本人を含む外国人が、誘拐事件の対象として特段狙われる傾向はありません。しかしながら、誰でも短時間誘拐の被害者になる可能性があることから、夜間から早朝にかけては、一人で外を出歩かない等の基本的な防犯対策に注意する必要があります。
4 日本人・日本権益に対する脅威
これまでに、アルゼンチンにおいてテロによる日本人の被害は確認されていませんが、近年、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所を標的としたテロが世界各地で頻発しており、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等はテロの標的となりやすく、常に注意が必要です。また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロはどこでも起こり得ること、日本人もテロ・誘拐の標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等から最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。