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タジキスタン
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年05月31日

1 概況
(1)タジキスタン治安当局の発表によると、2023年4月、タジキスタンのゴルノ・バダフシャン自治州ヴァンジ郡のアフガニスタン国境地域において、イスラム武装組織「ジャモアット・アンサルロー」のメンバーがタジキスタン側に越境し、同年8月にも、同州ダルヴォズ郡のアフガニスタン国境地域において、同派のメンバーが越境する事案が発生しましたが、いずれも治安部隊が越境した同派メンバー全員を殺害したとされます。そのほか、2023年にイスラム過激派によるテロは確認されていません。
 しかし、2018年はハトロン州ダンガラ付近における外国人自転車旅行客殺害事件(7月)やフジャンド刑務所暴動事件(11月)等が、2019年にはヴァフダト刑務所暴動事件(5月)やウズベキスタンとの国境に位置する国境ポスト襲撃事件(11月)等が発生し、いずれの事件でも、関与の真偽及びその程度は明らかではありませんが、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」が事件関与の犯行声明を発表しています。
タジキスタン当局は、2014年から2019年にかけてISILに参加した当国出身者は約2,000人であると推計しており、中東や欧州においてはタジキスタン出身者がテロ実行犯となったり、テロ計画に関与したりして逮捕される事例が多数確認されており、依然として予断を許さない状況にあります。
 
(2)以前から、タジキスタン南部に隣接するアフガニスタン北部には多数のイスラム過激派が集結していると言われており、タジキスタン・アフガニスタン国境は緊迫状態が続いていました。そのような情勢の中、2021年のアフガニスタン政情不安の影響で、アフガニスタン国境付近のアフガニスタン側地域を「タリバーン」が統治を始めた一方、タジキスタン側は国境警備を更に強化しており、国境付近は非常に緊迫しています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)タジキスタン政府は、ISILや「タリバーン」等、次の17団体をテロ組織として指定し、取り締まりを強化しています。
(ア)「アル・カーイダ(AQ)」、(イ)「東トルキスタン・イスラム運動」、(ウ)「トルキスタン・イスラム党(旧ウズベキスタン・イスラム運動)」、(エ)「タリバーン」、(オ)「ムスリム同胞団」、(カ)「ラシカル・エ・タイバ」、(キ)「イスラムグループ(ジャマート・イ・イスラミ・パキスタン)」、(ク)「ジャマート・タブリゴット」、(ケ)「自由タジキスタン」、(コ)「ヒズブット・タフリール」、(サ)「ジャモアット・アンサルロー」、(シ)「サラフィー」、(ス)「グループ24」、(セ)「ISIL」、(ソ)「ヌスラ戦線」、(タ)「イスラム復興党」、(チ)「タジキスタン国民同盟(PMT)」
(2)なかでも、ISILは、2015年1月、アフガニスタン、パキスタン及びその周辺の土地を含む地域に「ホラーサーン州」の設立を宣言しました。同年3月には、ISILに参加するタジキスタン人戦闘員が、タジキスタンで戦闘を行うと主張する動画をインターネット上に投稿し、同年5月には、元内務省特殊部隊(OMON)司令官がISILに参加しました。その後、以下のような事件が発生しています。いずれの事件でも、関与の真偽及びその程度は明らかではありませんが、ISILが犯行声明を発表しています。
 (ア)2018年7月にはドゥシャンベ市から南東約100kmに位置するダンガラ郡において、自転車で旅行中の外国人観光客7名が車で襲撃され、その後ナイフで刺され、4名が死亡する事件。
 (イ)2018年11月、フジャンド刑務所における囚人の暴動により囚人21名、看守2名が殺害される事件。
 (ウ)2019年5月、ドゥシャンベ市から東方約15kmに位置するヴァフダト刑務所において、ISILに参加した罪で服役中の囚人約30名が暴動を起こし、看守3名及び囚人29名が殺害される事件。
 (エ)2019年11月、20名から成る武装グループが、ウズベキスタンとの国境にある国境ポストを襲撃し、治安当局関係者2名及び犯人グループ15名が殺害され、残りの5名が逮捕される事件。
 (オ)2022年5月、アフガニスタン北東部からタジキスタン領内のタジキスタン軍事拠点を砲撃する事件。
(3)タジキスタン内戦時代の反政府統一戦線の野戦司令官が率いる「ジャモアット・アンサルロー」は2010年9月、ソグド州内務局施設に対する自爆テロを行っています。これに対し、タジキスタン治安当局は、指定テロ組織に関与した罪やシリアでの戦闘に傭兵を斡旋した罪等で、「ジャモアット・アンサルロー」のメンバーを逮捕するなど取締りを強めてきました。2023年4月及び8月、「ジャモアット・アンサルロー」のメンバーがアフガニスタンからタジキスタン側に越境する事案が発生しましたが、タジキスタン治安当局によって殺害されたと治安当局は発表しています。
(4)2015年9月には、ドゥシャンベ市及びヴァフダット市で、イスラム復興党メンバーの元国防次官率いる反政府グループが内務省施設を襲撃する事件が発生しました。その後、ドゥシャンベ市から東方約130キロに位置するロミット渓谷にて、犯行グループとタジキスタン治安機関との間の攻防戦が続き、同月16日、首謀者死亡の末、事件は終結しました。

3 誘拐事件の発生状況
 2023年、日本人を含む外国人を標的とする誘拐事件は発生していません。過去にはタジキスタン南部のアフガニスタン国境沿いで麻薬販売に絡む誘拐事件が発生しています。2014年には、外国人の子供を標的とした誘拐未遂事件が発生したとの情報もあります。また、背景は不明ですが、同年12月には、アフガニスタン国内のイスラム過激派によるタジキスタン国境警備隊員の誘拐事件も発生しました。2016年3月にはダルヴォズ郡内のタジキスタン・アフガニスタン国境付近において、アフガニスタン武装集団による襲撃事件が発生し、トルコの企業道路建設業者のタジキスタン人労働者2名が誘拐されましたが、後日解放されています。タジキスタン・アフガニスタン国境付近における誘拐事件のほとんどは麻薬売買に伴う金銭トラブルが原因とされていますが昨今の政治情勢不安の影響もあることから注意が必要です。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 タジキスタンにおいては、1998年7月に秋野元国連タジキスタン監視団(UNMOT)政務官他が殉職して以来、テロによる日本人・日本権益を直接標的としたテロ事件の被害は確認されていません。
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。


テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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