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カザフスタン
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年05月31日

1 概況
 2022年1月、アルマティを中心としたカザフスタン全土で騒擾が発生し、軍・治安当局職員19人を含む238人が犠牲となりました。事件発生直後から発令されていた「非常事態宣言」、「テロ警戒レベル赤(最高度)」は同年2月7日までに全て解除されましたが、当地におけるイスラム過激派以外の治安攪乱要因が改めて浮き彫りとなったほか、騒擾時に治安機関や武器店等から強奪された銃器の多くが未だに回収されておらず治安対策上の懸念要因となっています。
 イスラム過激派によるテロは、西部のアクトベで2016年6月6日に発生した事件以降発生していませんが、準備・未遂段階での摘発は毎年報告されているほか、当局は過激主義プロパガンダに対する取締りやテロ組織の資金源となる違法な薬物取引の摘発を続けており、専門家は現状を「テロに向けた準備段階・潜伏期」と指摘しています。また、国家保安委員会幹部は2023年9月の国際会議で、カザフスタンにおけるテロの脅威が高止まりしている旨発言しています。
 2021年8月にアフガニスタン全土を掌握した「タリバーン」について、カザフスタン政府は2005年3月15日以降「カザフスタンで活動が禁止されているテロ組織等」に指定していましたが、2023年12月29日に指定を解除しました。ただし、カザフスタンはアフガニスタンとは国境を接していないながらも、「タリバーン」と協力関係にある急進的勢力の中にはアフガニスタンから中央アジアに跨がる統一国家樹立を目標とする組織も存在しており、テロリストがウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン等を経てカザフスタンに潜入する可能性も指摘されています。
 カザフスタン国内には約2万人の過激主義者がいるとされています。また、約500人のカザフスタン人が外国人戦闘員としてシリアやイラクに渡航したとされ、カザフスタン政府は2019年から帰還者に対する社会復帰作戦「ジュサン」を実施しています。
 カザフスタンでは、結婚目的で少女を誘拐する略奪婚の慣習が広く存在し、特に南部ではその傾向が顕著であるとされています。また、2023年8月には、結婚目的の少女誘拐に関する確実な統計データは存在しないものの、2019年以降200件超が刑事事件として記録されているとの報道がなされています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)カザフスタンで活動が禁止されているテロ組織等
 カザフスタンでは現在、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」を含む21のテロ組織等(注)の活動が禁止されていますが、2021年中、これらの組織等によりカザフスタン国内で実際にテロ事件が引き起こされた例は、確認されていません。
(2)2023年中のテロ組織等との関連が疑われる事件の例
 ア 国際テロ組織の説教師の影響下にあったシムケント住民2人に対し、テロ宣伝の罪で禁固7年の判決。2人はSNSを通じてテロリズムの思想を広めつつ、テロ活動が活発な地域への渡航を目指し、国外の過激派との連携構築を図っていた(6月14日国家保安委員会発表)。
 イ 警察と国家保安委員会が「ヒズブ・ウト・タハリール」及びISILの信奉者各1人を、テロリズムの宣伝及び禁止されている組織の思想流布の疑いで拘束。それぞれの自宅の捜索で禁止されている宗教書等を押収(10月30日内務省発表)。
 ウ 2013年からテロ組織の構成員としてシリアに滞在していたカザフスタン人男性が自主的に投降し、トルコ経由でカザフスタンに送還(11月11日国家保安委員会発表)。
 エ 国家保安委員会は、カザフスタンの世俗体制の転覆を狙って過激思想を拡散し、支持者を募っていた過激派宗教団体構成員12人をテロ宣伝、過激派団体の創設・指導・活動参加の疑いで一斉に拘束。住居の捜索で禁止された文献等を押収(11月15日国家保安委員会発表)。

(注)Al-Qaeda(「アル・カーイダ」)、The Kurdistan People’s Congress(「クルド労働者党」)、The Islamic Movement of Uzbekistan(「ウズベキスタン・イスラム運動」)、The East Turkistan Islamic Movement(「東トルキスタン・イスラム運動」)、Asbat al-Ansar(「アスバット・アル・アンサール」)、The Muslim Brotherhood(「ムスリム同胞団」)、Boz Gourde(「ボズ・グルード」)、Jamaat mujahideen of Central Asia(「中央アジアのジャマート・ムジャヒディン」)、Lashkar-e-Toiba(「ラシュカレトイバ」)、The Social Reform Society(「社会変革協会」)、Hizb ut-Tahrir-al-Islami(「ヒズブ・ウト・タハリール」)、Aum Shinrikyo(「オウム真理教」)、The East Turkestan Liberation Organization(「東トルキスタン解放機構」)、The Islamic Party of Turkestan(「トルキスタン・イスラム党」)、Jund al-Khilafah(「ジュンド・アル・ヒラファ」)、Trust. Education. Life(「トラストエデュケーションライフ」)、Tablighi Jamagat(「タブリーギ・ジャマート」)、At-Takfir Wal-Hijra(「タクフィール・ワル・ヒジュラ」)、Islamic State(ISIL)、Front of An-Nusra(「アル・ヌスラ戦線」)、Aikyn incar(「ヤクン・インカル」)

3 誘拐事件の発生状況
 カザフスタンの統計当局が公表した2023年中の誘拐事件発生登録件数は49件、被害者数は56人(カザフスタン国籍者52人、独立国家共同体(CIS)諸国籍1人、外国籍者1人、無国籍者2人)でした。
 2022年11月、カラガンダ州でインド国籍の男性に対する金銭目的の誘拐事件が発生しましたが、警察の特殊作戦により人質は救出され、2023年9月、犯行に関与したウズベキスタン人5人に対して7~8年の禁固刑が言い渡されました。
 2023年8月、最大都市アルマティでタジキスタン人男性を誘拐して身代金2万ドルを要求したとして、同じくタジキスタン人6人が逮捕されました。
(注)CIS諸国
加盟国:アゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ベラルーシ、モルドバ、ロシア
準加盟国:トルクメニスタン

4 日本人・日本権益に対する脅威
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。


テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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