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英国
テロ・誘拐情勢
更新日 2026年04月30日
1 概況
英国では、過激化した個人等によるテロ活動の脅威が高まっています。2026年4月30日、英国政府は、英国に対するテロに係る脅威評価を5段階中の上から3番目の「SUBSTANTIAL」(相当)から2番目の「SEVERE」(深刻)に引き上げました。近年はパレスチナ関連の逮捕も急増し、2025年度のテロ関連逮捕者数は3,061人となっています(前年比1,186%増)。また、北アイルランドでもテロ事案が継続して発生しています。
2 近年のテロ情勢
ア イスラム過激派等によるテロ
(ア)英国では、2005年7月のロンドンにおける連続爆弾テロ並びに2007年6月のロンドン及びグラスゴー空港における自動車爆弾テロが発生した後、イスラム過激派による大規模テロの発生はしばらくみられなかったものの、2017年にロンドン及びマンチェスターで合計5件のテロが発生して以降、2021年まで毎年テロが発生しました。なお、2021年10月にエセックス州リー・オン・シーにおいて発生した下院議員殺害テロや、同年11月にリバプール女性病院の敷地内駐車場において発生したタクシー爆破テロは、いずれもナイフや自作の爆発物を用いて被疑者が単独で実行したものとみられており、英国においては、自己過激化した個人によるローン・オフェンダー型テロが脅威として認識されています。
(イ)2022年から2024年は、イスラム過激派や過激思想に感化された者等によるテロの発生はみられませんでしたが、2025年10月2日、イングランド北西部のマンチェスターにおいて、シナゴーグを標的とした車両突入及びナイフ使用の殺傷事案が発生し、同日、英治安当局(テロ対策警察)は、本件をテロ事件と認定する旨の発表を行いました。現場で実行犯とみられるシリア系英国籍の男が警察により射殺されたほか、一般市民2人が死亡し、3人が重傷を負う被害が発生しました。同事件は、ユダヤ教の祭日である贖罪日(ヨム・キプール)にユダヤ人コミュニティを狙った犯行として実行されたとみられています。
(ウ)英国に対するテロに係る脅威評価レベル等
英政府は「危機的(Critical)」、「深刻(Severe)」、「相当(Substantial)」、「平穏(Moderate)」、「低(Low)」の5段階でテロ脅威を評価しており、情勢の変化に応じて随時更新しています。脅威レベルは、2017年5月及び同年9月のテロ発生後、それぞれ数日間、「深刻」から最高度の「危機的」に引き上げられたほか、2020年11月から2021年2月までの間、予防的措置として、「相当」から「深刻」に引き上げられました。先述のとおり、2021年に2件のテロが1か月以内に発生したこと等を踏まえ、2021年11月、それまでの「相当」から「深刻」に引き上げられ、2022年2月、テロの脅威が事件発生前の状態に戻ったとして、「相当」に引き下げられました。直近では、2026年4月30日に脅威評価レベルが「深刻」(今後6か月以内にテロ攻撃が発生する可能性が極めて高い(an attack is highly likely in the next 6 months))に引き上げられています。
(エ)テロ事件関連の逮捕者数
英内務省によれば、2025年度、テロ関連で3,061人が逮捕されており、前年比で1,186%増となりました。逮捕された者のうち、2,819人(92%)が親パレスチナ団体「パレスチナ・アクション」の関係者でした。
イ 北アイルランド関連テロ
(ア)北アイルランドのテロ情勢は、過去十数年間に飛躍的に改善し、死傷者数、テロ発生件数は大幅に減少しましたが、英国との和平路線に反対するリパブリカン過激派の分派等はテロを継続しています。
(イ)北アイルランドにおけるテロの脅威度は、2010年の公表開始以来「深刻」が維持されてきましたが、治安情勢の改善を受け、2022年3月、「相当」に引き下げられました。その後、2023年2月に発生した警察官に対する銃撃事件等を受け、同年3月に再度「深刻」に引き上げられ、2024年3月に「相当」に引き下げられました。
3 各組織の活動状況・各地域の治安情勢
(1)イスラム過激派
英国は、米国と並んでISIL等の国際テロ組織対策で積極的な役割を果たしており、
テロリストの最大の標的の一つとなっているところ、ISIL及びアルカイダは、英国を含む欧米を攻撃するのに当たり、欧米在住の支持者を利用する戦術を採っているとされています。
近年の英国におけるテロは、ISIL、アルカイダ等の過激思想に触発された個人や小グループによるローン・オフェンダー型のものが多く、容易に入手可能なナイフや車両を使用する事件、市販の物品を材料に製造された即席爆弾(IED)を使用する事件等が検挙されています。また、これまでに英国からシリア・イラク等の紛争地域に約900人が渡航し、現地で戦闘に参加したとされ、そのうち約半数は帰国したとみられており、こうした者によるテロも強く懸念されています。
(1) 北アイルランド関連過激派組織
ア 暫定アイルランド共和軍(PIRA)
リパブリカン過激派については、暫定アイルランド共和軍(PIRA)の平和路線化が進み、2005年7月、PIRAは武装闘争の放棄を宣言しました。同年9月、独立国際武装解除委員会はPIRAの武装解除が完了したことを確認しており、PIRAは組織的な犯罪活動及び準軍事的活動を停止しています。過激派組織の動向を監視する独立監視委員会が2010年11月に公表した第25次報告書(2010年3月1日から8月31日までの評価)において、PIRAの平和路線は堅調であるとされ、以降状況に変化はないとされています。
イ 停戦に反対するリパブリカン過激派の分派グループ(真のIRA、新しいIRA)
2012年にRIRA(真のIRA)は、暴力的な自警団組織であるリパブリカン反薬物自警団(RAAD)及び独立系の武装リパブリカン・グループと統合し、単に「IRA」と自称する新組織(便宜上、「新しいIRA」と呼ばれる。)を立ち上げ、主として警察官等治安機関関係者を対象としたテロ事件を敢行しています。2023年2月22日、北アイルランド・オーマにおいて、休日にサッカー指導をしていた北アイルランド警察の警部が銃撃を受け重傷を負った事件について、北アイルランド警察は、新しいIRAの本事件への関与を主眼に捜査を行っており、新しいIRAが本件犯行を自認したとの報道がみられます。
ウ ロイヤリスト系準軍事組織
2010年にアルスター防衛協会(UDA)が武装解除したことで主要3団体の武装解除が完了し、近年目立った動きはみられないものの、北アイルランド議定書をめぐる議論の進展次第では再び暴徒化するおそれは排除できないとする指摘があります。
(2) 各地域の治安情勢等
ア 2023年10月7日に発生した、イスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突以降、ロンドンをはじめ主要都市において抗議デモが行われ、指定テロ組織であるハマスへの支持を表明する物件の掲示等、対テロ法違反容疑により複数の抗議デモ参加者等が逮捕されています。
イ 2024年7月29日にリバプール北方のサウスポートで発生した児童等殺傷事件について、犯人は実際にはルワンダ出身の両親を持つウェールズ地方カーディフ生まれのアフリカ系英国人の少年であったものの、「小型船舶で英国にやってきたイスラム教徒の難民申請者である」との虚偽の情報がSNS上で広がり、翌30日にサウスポートで行われた極右勢力によるデモが暴動に発展しました。以降、ロンドンを含む英国各地で暴動が発生し、亡命希望者を収容するホテルやイスラム教モスク等が狙われました。同年9月6日時点で1,380人が逮捕され、863人が訴追されました。なお、英国当局は、暴動事案の引き金になった本件をテロ事案とはみなしていません。
ウ 2025年6月9日、北アイルランドのバレミーナにおいてルーマニア系移民少年による性的暴行事件への抗議活動に端を発し、一部若者が覆面に手袋をして暴徒化し、警察や家屋の襲撃を始めました。抗議行動の発生から36時間以内で、規制に当たった32人の警察官が負傷する事態に発展しました。暴動は北アイルランドで拡散し、鎮静化まで約2週間を要しました。暴徒の攻撃対象は、比較的新たに移住した人々であり、現地警察当局(北アイルランド警察:PSNI)は、人種差別とSNSによる群集心理が発生要因であると指摘しています。
4 誘拐事件の発生状況
英内務省によると、2025年度のイングランド及びウェールズにおける誘拐・不法監禁の発生件数は8,024件で、そのうち1,171件が児童誘拐です。
なお、日本人を標的とした誘拐事件及びテロ目的の誘拐事件の発生は確認されていません。
5 日本人・日本権益に対する脅威
英国内の日本権益に対する具体的なテロ計画等は確認されていませんが、テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアを始めとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが世界各地で頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等はテロの標的となりやすく、常に注意が必要です。また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

