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テロ・誘拐情勢

2018年04月24日

1.概況
(1)イスラム過激派によるテロ
英国を含む欧州は,引き続きイスラム過激派,又はイスラム過激主義に感化された者によるテロの脅威にさらされています。英国では,2005年7月,ロンドン市営地下鉄車両内及びロンドン市内を走行中の市営バス内において連続自爆テロ事件が発生し,52人が死亡(加えて自爆犯4名も死亡)したほか,2007年6月には,ロンドン中心部の繁華街及び英国北部のグラスゴー空港で自動車爆弾(自動車にガスボンベ,ガソリン,大量の釘,起爆装置等を搭載したもの)を用いたテロ未遂事件が発生しました。また,2017年には,次の5件の事件が相次いで発生しました。
ア 3月22日(水)午後2時,ロンドンのウェストミンスター橋において,暴走車両が歩道に乗り上げ,通行人を次々となぎ倒した後,車両を乗り捨てた実行犯1名がナイフを振り回し,英議会敷地内への侵入を試みた後,警察官に射殺されました。この事件では,警備に当たっていた警察官を含み,4人が死亡,約50人が負傷しました。
イ 5月22日(月)午後10時,マンチェスターのコンサート会場において,実行犯1名が手製爆発物を起爆し,その場で死亡。22人が死亡,約120人が負傷しました。
ウ 6月3日(土)午後10時,ロンドン橋において,暴走車両が歩道に乗り上げ,通行人を次々となぎ倒した後,車両を乗り捨てた実行犯3名がバラ・マーケット周辺でナイフを振り回し,通報により駆けつけた警察官に射殺されました。この事件では,8名が死亡,約50名が負傷しました。
エ 同月に,ロンドンのモスク付近で,車両により歩行者に突撃し,1名が死亡する事案が発生しました。実行犯1名は,その場で逮捕されました。
オ 9月には,十分に爆発しなかったことから死者は出なかったものの,ロンドンの地下鉄内において爆発事件が発生しました。実行犯1名は,その後,逮捕されました。これらの事件を受け,武装警察官の増員配置を行うなど,各種の治安対策が積極的に講じられてきており,特に,上記イ及びオの事件の発生後には,英国政府は,英国における国際テロの脅威度を「危機的」(5段階評価の最高度)に引き上げ,警察力を補うため,一定の重要施設の警備に武装兵を動員しました。なお,一定の捜査を終えた後,脅威度は再び,「深刻」に戻されました。
この他にも,テロ対策法違反での事件検挙が複数報道されており,依然として英国におけるテロの脅威が続いていることを示しています。特にシリア,イラク情勢に関して,850人以上の英国人がこれらへ渡航し戦闘に参加したと言われており,この戦闘員が英国に帰還した後,国内でテロ活動を行うことが懸念されていますが,既にそのうち一定数が英国に帰還していると言われています。また,アル・カーイダ,ISIL等の思想に感化された個人が単独又は小グループでテロを行うローン・ウルフ型のテロも,引き続き,強く懸念されています。英国は国際テロ対策において軍事面を含め積極的な貢献をしていることから,イスラム過激派の最大の攻撃対象の一つとなっています。
(2)北アイルランドに関連したテロ
かつて北アイルランドにおいて英国からの分離等に向けて過激な闘争を行っていたアイルランド共和軍(IRA)は,2005年の武装闘争放棄宣言以降,組織的な犯罪活動及び準軍事的活動を停止しています。また,ロイヤリスト系準軍事組織についても,2010年中に主要な団体の武装解除が完了しており,2017年中も目立った動きは見られませんでした。両派の和平路線の進展により,テロ情勢は10年間で飛躍的に改善されました。
しかし,和平路線に反対するIRAの分派や独立系グループは,テロを継続しています。テロの場所は北アイルランドに限定されており,攻撃は警察等の治安機関を対象としていましたが,2016年中は北アイルランド・東ベルファストにおいて,刑務所職員に対する爆弾事件を敢行したこと等を踏まえ,英国政府は, 2016年5月,英国本土における北アイルランドに関連するテロの脅威度を「平穏」(5段階評価の上から4番目)から「相当」(5段階評価の上から3番目)に引き上げました。その後,2018年3月,再び,「平穏」に引き下げられましたが,北アイルランドにおける脅威度は「深刻」(5段階評価の上から2番目)で変わりません。

2.各組織の活動状況
(1)イスラム過激派
多くのイスラム人口を擁する英国では,イスラム教を正しく理解しない若い世代がソーシャル・メディア等を通じて過激派組織の危険な思想に接し,影響を受けて過激化し,過激派組織を支援したりテロを実行したりすることが懸念されています。また,シリアやイラクに渡航してアル・カーイダ等の危険な思想に感化され,実戦の知識と経験を積んだテロリストとなって英国に帰還し,大規模なテロを起こすことが強く懸念されています。2017年中は,テロ関連での逮捕が約300件あり(前年度比46人増)引き続き,多数の者が検挙されている状況にあると言えます。
(2) 北アイルランド関連過激派組織
ア CIRA(アイルランド共和軍継続派)
組織内部における権力闘争が継続しているものの,引き続き活発で,治安機関に対するテロ攻撃を敢行しています。メンバーは,脅迫,武装強盗,誘拐,密輸等広範な重大犯罪に関与しているとされています。
イ RIRA(真のアイルランド共和軍)
RIRAには2つの分派が存在し,両組織とも治安機関関係者を対象にしたテロ攻撃を敢行しており,極めて重大な脅威となっていました。2012年7月にRIRAの一部が北アイルランドの暴力的な自警団であるリパブリカン反薬物自警団(RAAD: Republican Action Against Drugs)及び独立系武装リパブリカン・グループと統合し,IRAと名乗る新たなグループ(便宜上,新しいIRAと呼ばれています)を結成しました。

3.誘拐事件の発生状況
日本人を標的とした誘拐事件の発生は確認されていません。

4.日本人・日本権益に対する脅威
これまでに,英国においてテロによる日本人の被害は確認されていませんが,近年,シリア,チュニジア,バングラデシュにおいて日本人が殺害されるテロ事件が発生しています。また,テロは,日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており,特に,近年では単独犯によるテロや,一般市民が多く集まる公共交通機関等(ソフトターゲット)を標的としたテロが頻発していることから,こうしたテロの発生を予測したり未然に防ぐことが益々困難となっています。
 このようにテロはどこでも起こり得ること及び日本人が標的となり得ることを十分に認識し,テロの被害に遭わないよう,海外安全ホームページや報道等により最新の治安情報の入手に努め,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

<2018年3月末現在>

(注記) 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが,一般には,特定の主義主張に基づき,国家等にその受け入れを強要し,又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は,このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず,外務省が,報道等の情報等に基づき,海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり,本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。