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アイルランド
テロ・誘拐情勢

更新日 2023年04月12日

1 概況
 近年、アイルランドではテロや暴力的破壊活動等の事件は発生していません。
 北アイルランド問題をめぐり、テロ活動を放棄していない組織がありますが、アイルランド国内での近年の活動は、資金や武器の調達等に限られています。
 イスラム過激派組織の存在は確認されていません。
 誘拐事件は発生していますが、テロや政治目的のものはありません。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)リパブリカン分派
 1960年代後半から北アイルランド紛争が激化し、アイルランド共和軍(Irish Republican Army:以下「IRA」)が分裂して、IRA暫定派がテロ活動を激化させましたが、IRA等の停戦宣言等を経て1998年のベルファスト合意が成立し、同紛争に終止符が打たれました。その後、事態は沈静化していますが、引き続きテロ暴力活動を放棄していない組織もあります。IRA暫定派から派生した「継続IRA」及び「真のIRA」が代表的で、一般に「リパブリカン分派」(Dissident Republican)と呼ばれています。これらの組織は、南北アイルランド統一という看板を掲げ、現在も北アイルランドにおいて、英国軍や北アイルランドの治安当局に対してテロ活動を行っていますが、近年のアイルランド国内での活動は、資金や武器の調達等に限られています。

ア 継続IRA(Continuity Irish Republican Army:CIRA)
 1996年にIRA暫定派から分離し、主に北アイルランドで警察官及び警察施設を標的として散発的なテロ攻撃活動を行っており、2013年頃には、北アイルランドにおいて、簡易爆発装置を使用したテロ事件を頻繁に起こしていました。その後、主要メンバーが逮捕されたことが影響し、特に目立った活動は見られなかったものの、2016年、ベルファスト北部においてパイプ爆弾を使用した攻撃を行っています。
 アイルランドにおいては、報道によれば、2012年12月、内部抗争の続くCIRAのうちリムリックを拠点にするグループが、クリスマス休暇のために同地へ帰省予定の英国軍兵士を殺害する計画を立てたものの、事前に察知されて頓挫しました。
 また、2020年2月、英国の欧州連合(EU)離脱に際して爆弾テロを計画していたことを明らかにしています(北アイルランドとスコットランド間を航行するフェリーに乗船予定だったトラックに爆弾を設置したとの犯行予告があったものの、未遂に終わったとされています。)。

イ 真のIRA(Real Irish Republican Army)
 1997年にIRA暫定派から分離し、主な標的を英国軍、北アイルランド警察及びその関連施設としていますが、近年は標的を「アイルランド占領に積極的に関与し、又は占領を支援する者」と改め、政治、司法、商業、経済関係分野へと攻撃対象を拡大しています。2012年7月、北アイルランド・ロンドンデリーを拠点とする武装自警組織「反麻薬共和行動」等と合併し、「アイルランド共和軍」と称する新たな組織(通称「新IRA」)を設立したとされています。
 2018年1月、他のIRA分派組織が停戦表明したのに対し、武装闘争を継続する方針を表明し、2019年にロンドンの物流拠点、グラスゴー大学等5か所に爆発物の入った小包が送付された事件(3月)、ロンドンデリーにおいて女性ジャーナリストが殺害された事件(4月)等に関与したとされています。2020年8月、英国保安局(MI5)及び北アイルランド警察は、「新IRA」の幹部ら10名を逮捕したほか、上記女性ジャーナリスト殺害事件に絡み、「新IRA」のメンバーを逮捕しました。こうした中でも、「新IRA」による活動は継続して確認されており、2021年4月には、ロンドンデリーにおける警察官の車両爆撃未遂事件、2022年11月にはストラベーンにおける警察車両爆破事件が発生しています。

(2)イスラム過激派組織
 アイルランドではイスラム過激派組織の存在は確認されておらず、これら組織によるテロも発生していません。しかし2010年のアラブの春以降、イラクやシリアなどの紛争地に渡航し、戦闘行為に参加した者の帰国が確認されているほか、これらの過激派組織に経済的支援をしたアイルランド国民が逮捕されています。

3 誘拐事件の発生状況
 中央統計局によると、2022年1月から9月までの間に116件の誘拐事件が発生していますが、いずれもギャング組織間の抗争に起因するものや、身代金、わいせつ、人身売買を目的とした一般犯罪であり、テロや政治目的の誘拐事件は起きていません。誘拐の手口としては、現金輸送を担当する警備会社の警備員や金融機関勤務の者の家族・親戚等を誘拐・監禁し、現金を要求するもの(Tiger Kidnapping)が多いです。なお、日本人の誘拐は、現在まで確認されていません。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年では、単独犯によるローンウルフ型テロや、一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等のソフトターゲットを標的としたテロが世界各地で頻発しており、こうしたテロの発生を未然に防ぐことは困難です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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