アイルランド
テロ・誘拐情勢
更新日 2025年06月27日
1 概況
近年、アイルランドではイスラム過激派組織の存在は確認されておらず、テロ事件も発生していません。
北アイルランド問題をめぐり、テロ活動を放棄していない組織がありますが、アイルランド国内での近年の活動は、資金や武器の調達等に限られています。
また、ギャング組織間の抗争に起因するものや、身代金、わいせつを目的とした誘拐事件が発生しています。
2 これまでの経緯と最近の治安情勢等
(1)リパブリカン分派
現在、アイルランドのテロ情勢は落ち着いていますが、これまでの歴史的経緯等から、隣接する北アイルランドを拠点とするいくつかの組織が確認されます。1960年代後半から北アイルランド紛争が活発となり、アイルランドの独立を目指す武装組織であるアイルランド共和軍(Irish Republican Army:以下「IRA」)が分裂して、テロ活動が激化しましたが、1998年のベルファスト合意成立により、同紛争が終わりました。その後、事態は沈静化していますが、引き続きテロ暴力活動を放棄していない組織もあり、一般に「リパブリカン分派」(Dissident Republican)と呼ばれています。これらの組織は、南北アイルランド統一という看板を掲げ、現在も北アイルランドにおいて、英国軍や北アイルランドの治安当局に対してテロ活動を行っていますが、近年のアイルランド国内での活動は、資金や武器の調達等に限られています。主要組織として、「継続IRA」、「真のIRA」、「新IRA」が挙げられます。
(2)イスラム過激派組織
アイルランドではイスラム過激派組織の存在は確認されておらず、これらの組織によるテロも発生していません。しかし2010年の「アラブの春」以降、イラクやシリアなどの紛争地に渡航し、戦闘行為に参加した者の帰国が確認されているほか、これらの過激派組織に経済的支援をしたアイルランド人が逮捕されています。
3 誘拐事件の発生状況
中央統計局によると、2023年6月から2024年6月までの間に166件のギャング組織間の抗争に起因するものや、身代金、わいせつを目的とした誘拐事件が発生しています。テロや政治目的の誘拐事件は起きていません。誘拐の手口としては、現金輸送を担当する警備会社の警備員や金融機関勤務の者の家族・親戚等を誘拐・監禁し、現金を要求するものが多く報告されています。
4 日本人・日本権益に対する脅威
現在のところ、アイルランドにおいて、テロによる日本人の被害は確認されていません。
他方、テロによる日本人の被害は、渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアを始めとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。