アルジェリア
テロ・誘拐情勢
更新日 2024年06月09日
1 概況
(1)アルジェリアでは、2013年1月、同国南東部イリジ県のイナメナス付近において天然ガスプラントが襲撃され、日本人10名を含む多数の外国人が犠牲となりました。
(2)アルジェリア政府は、テロリストに対する掃討作戦を継続しており、同事件後から2023年12月までに、テロリスト1,000人以上が、治安当局により殺害、逮捕され、または自ら投降しています(そのうち700人以上は、イスラム過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ」(AQIM)関係者とされています。)。その結果、アルジェリア国内に残存するテロリストの数は減少し、テロリストの攻撃能力や活動地域は限定的となってきています。
(3)テロリストは、主に、カビリー地方、中部、及び国境地帯の山間部に潜伏し、小型の武器を携行して治安当局の警戒網をすり抜けながら移動しているとされます。
(4)首都アルジェでは、特に厳重な警戒態勢が敷かれています。2021年には、アルジェの空港付近において手製爆弾が発見されるなどの事案が発生しています。
(5)また、シリア、イラクで「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)に参加したアルジェリア人戦闘員が多数帰還し、新たなテロの脅威となることが懸念されています。治安当局は、国内はもとより、国境全域に対する警戒態勢の強化を図っていますが、長大な国境・沿岸線をもつアルジェリアにとって、これらの全てを監視することは困難であり、密入国者に紛れて戦闘員が帰還する危険性も指摘されています。
(6)2023年中にテロ事件の発生は報じられていません。
2 各組織の活動状況及び各地域の治安情勢
(1)イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQIM)
2007年に首都アルジェにおいて国家機関・国連機関を狙った大規模自爆テロを敢行しましたが、それ以降は、治安当局による掃討作戦・取締強化により活動範囲は縮小し、現在は北東部の山岳地帯(カビリー地方)を中心に活動しています。AQIMの指導者ドルークデルは、2020年6月にフランス軍によって殺害され、その後、新たな指導者が指名されていますが、掃討作戦の継続によりその活動も限定的になってきています。
(2)イスラムとムスリムの支援団(JNIM)
サヘル地域で活動するアル・カーイダ系の5つのテログループが2017年3月に統合して結成されました。サヘル地域の地元部族(トゥアレグ族)等とのつながりを活かし、アルジェリアとの国境地帯を含むマリ、リビア、ニジェール、ブルキナファソを中心に、広域で活動しています。この組織には、2013年1月のイナメナス事件の実行犯の流れを汲むグループも参加しています。
(3)その他
カビリー地方の独立を目指す「カビリー分離独立運動」(MAK)、イスラム主義に基づく反政府勢力「ラシャド運動」(いずれも欧州に拠点を置く)が、2021年5月にアルジェリア政府からテロ組織として指定されています。2021年3月の民衆デモに関与した疑い等により多数の関係者が逮捕されていますが、実際の関与については不透明な部分が多く、組織の実態については明らかになっていません。
3 誘拐事件の発生状況
日本人が被害に遭った事案は確認されていません。2023年中、アルジェリア人が被害に遭った誘拐事件が10件報道され、犯行目的はいずれも身代金や性的動機等でした。
4 日本人・日本権益に対する脅威
アルジェリアでは、過去、日本人10名が犠牲となったイナメナス事件のような日本権益へのテロ攻撃や観光目的の外国人に対する誘拐・殺害事件が発生しており、今後も日本人・日本権益がテロ等の標的となることが懸念されます。
また、世界的な傾向として、近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。 また、これまで邦人の被害は確認されていませんが、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努めてください。