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アルジェリア
テロ・誘拐情勢

更新日 2022年01月26日

1 概況
(1)アルジェリアでは、2013年1月に発生し日本人10名を含む多数の外国人が犠牲となったイナメナス事件の後から2021年1月までに、治安当局により殺害、逮捕または自ら投降したテロリストは1,000人以上に上ります(うち700人以上はイスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQIM)関係者とされています)。国内の残存テロリスト数の減少により、潜在的な攻撃能力は低減され、活動地域は限定されています。
(2)テロリストの主たる潜伏地域はカビリー地方、中部、及び国境地帯の山間部とみられ、小型の武器を携行して治安当局の警戒網をすり抜けながら移動しています。他の地域と比べて警戒態勢が厳重な首都アルジェにおいては、2017年に、テログループ支援者が逮捕(2件)されたほか、アル・カーイダ(AQ)のテロリストが、AQ指導部からテロ攻撃の指示を受け潜伏していたところを拘束される事案が発生しています。2021年においても、治安当局が逮捕したテログループ支援者の供述を基に、首都アルジェの空港付近において手製爆弾が発見されるなどの事案が発生しています。
(3)また、シリア、イラクでイラク・レバントのイスラム国(ISIL)に参加したアルジェリア人戦闘員の帰還による新たなテロの脅威が大きな問題になりつつあり、既に多くの戦闘員がアルジェリアに帰還していると報じられています。治安当局は、国内はもとより、国境全域に対する警戒態勢の強化を図っていますが、国境・沿岸線が長大なアルジェリアにとって、これらの全てを監視することは困難であり、密入国者に紛れて戦闘員が帰還する危険性も指摘されています。

2 各組織の活動状況及び各地域の治安情勢
(1)イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQIM)
 2007年に首都アルジェにおいて国家機関・国連機関を狙った大規模自爆テロを敢行して以降は、治安当局による掃討作戦・取締強化により、国内でのテロ活動が困難になり、現在、AQIMの活動範囲は北東部山岳地帯(カビリー地方)が中心となっています。AQIMの指導者ドルークデルは、2020年6月にフランス軍によって殺害され、その後、新たな指導者としてアブ・オベイダ・ユスフ・アル・アンナビが指名されていますが、掃討作戦の強化によりその活動も限定的になってきています。
(2)イスラムとムスリムの支援団(JNIM)
 2013年1月のイナメナス事件の実行犯である「覆面旅団」を率いていたモフタル・ベルモフタル(MBM。死亡説もあり。)は、2013年8月、同旅団と「西アフリカ統一聖戦運動(MUJAO)」を統合し、「ムラービトゥーン」を結成しました。MBMは、その声明の中でISILへの連帯を否定し、AQへの忠誠を表明しました。その後、2017年3月に同組織を含むサヘル地域の5つのテログループが統合してJNIMが組織され、地元部族(トゥアレグ族)等とのつながりを活かし、アルジェリア国境地帯、リビア、ニジェール、マリ、ブルキナファソを中心に、サヘル地域の広域で活動しています。
(3)カビリー分離独立運動(Mouvement pour l’autonomie de la Kabylie又はMAK)
 カビリー地方の独立を目指し、議長のフェルハト・メヘニを始めとする主要人物は欧州等に拠点を構えています。構成員については、旧「イスラム救国戦線」(FIS)の流れを汲み、多くの者がテロリストとしての過去を持っているとされていますが、組織の構成員数など詳細な実態については明らかになっていません。
 2021年5月、後述のラシャド運動と共にアルジェリア政府からテロ組織として指定され、かねてから、モロッコから資金援助を受けているとの風評があります。2021年7月、モロッコ政府がMAKの活動を支持するとの声明を発出したことが、アルジェリアがモロッコとの国交を断絶した理由の一つとなっています。MAKに関しては、2021年3月に国内各地でのヒラク(民衆デモ)に際してテロの実行を計画した疑いや、同年8月に発生した大規模森林火災の発生についても関与があったとされ、多数の関係者が逮捕されるなど摘発が相次いでいますが、実際の関与については不透明な部分が多く、組織の実態については明らかになっていません。
(4)ラシャド運動
 FISの流れをくみ、ムスリム同胞団との関わりも指摘されているイスラム原理主義勢力です。主要な人物は欧州に拠点を構えており、SNSを通じてヒラクの参加者を扇動して国家転覆を企てているとされ、2021年5月、MAKと共にアルジェリア政府からテロ組織に指定されています。MAK同様、モロッコからの支援を受け、2021年8月にアルジェリアの主に北東部で発生した大規模森林火災にも関与したとされていますが、実際の関与については不透明であり、詳細な組織の実態も明らかになっていません。
(5)2021年におけるテロ事件の発生件数(新聞報道に基づく集計)は下記の5件(死者8人)となっています。
ア 1月、テベッサ県トリジェン地区を乗用車が走行中、手製爆弾が爆発し、乗車していた市民5人が死亡したほか、3人が負傷。
イ 3月、ティパザで逮捕されたテログループ支援者の供述から、首都アルジェの空港西側のユーカリプトゥス地区に設置された手製爆弾が発見され、治安当局が解体。
ウ 8月、アイン・デフラ県における軍の掃討作戦の際、手製の地雷が爆発。兵士2人が死亡したほか、1人が負傷。
エ 10月、テベッサ県の山岳地方において、放牧中の羊飼いが地面に設置された手製爆弾を踏み3人が負傷。
オ 10月、トレムセン県のモロッコ国境付近において、国境警備隊が偵察パトロール中に手製爆弾が爆発。兵士1人が死亡したほか、2人が負傷。

3 誘拐事件の発生状況
 新聞報道に基づく集計によれば、2021年6月、アイン・デフラ県において、性的暴行を目的に未成年者を誘拐していた12人のグループが警察によって逮捕されていますが、邦人の被害者は発生していません。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 アルジェリアでは、過去、日本人10名が犠牲となったイナメナス事件のような日本権益へのテロ攻撃や観光目的の外国人に対する誘拐・殺害事件が発生しており、今後も日本人・日本権益がテロ等の標的となることが懸念されます。テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

 「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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