1. ホーム
  2. 地図からの選択
  3. テロ・誘拐情勢
  4. イラン

イラン
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年03月30日

1 概況
(1)イランはこれまで「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」から複数回テロの標的になっています。2024年1月3日には、南東部のケルマーンにある殉教者墓地付近で発生した爆発事案(少なくとも84人が死亡)についてISILが犯行声明を出しています。また、2022年及び2023年には、南部のファールス州シーラーズの霊廟で2件の銃撃事案があり、ISILが犯行声明を出しています。
(2)首都テヘラン市内では、2017年6月7日に国会事務所建物内及び同市近郊のイマームホメイニ廟周辺において、複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃が発生し(18人が死亡、約50人が負傷)、ISILが犯行声明を出しています。
(3)イラン南東部、南西部並びに北西部及び西部では、分離独立主義組織等が活動しており、治安当局者を標的とした襲撃事件が複数報じられています。
(4)このほか、政府高官など特定個人を標的とする襲撃事件が複数発生しています。また、所属不明のドローンによる軍事施設への攻撃やガスパイプラインへの攻撃等が報じられています。
(5)テロ組織による外国人を標的とした誘拐事案の発生は現在確認されていませんが、テヘラン市内では、金銭目的で外国人を誘拐した事案が報じられています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)南東部
 シスタン・バルチスタン州では、バルーチ系スンニ派反政府組織「ジェイシュ・アルアドル」によるテロ事件や治安部隊との戦闘が散発的に発生しています。2023年12月には同組織が警察署を襲撃し、治安機関員11名が死亡する事案も発生しました。同組織への対応を巡っては、2024年1月、イラン・パキスタン両国が相手国側に同組織の拠点があるとして双方に越境攻撃を行う事案が発生しました。
 また、同地域では武装麻薬密輸組織による誘拐事件や暗殺事件、行政機関や治安機関に対する襲撃事件の発生も報じられています。
 2024年3月時点までの情勢として、シスタン・バルチスタン州では治安機関を標的とした襲撃事件が複数報じられました。
(2)南西部
 アラブ系の住民が多数を占めるフーゼスタン州では、2018年9月22日、同州アフヴァーズにおいて、軍事パレード銃撃事件(25名死亡)が発生しています。本件テロ事件では、ISILが犯行声明を出したほか、2020年11月にはテロを指揮したアラブ系分離主義組織「アル・アフワーズ」の司令官が検挙されたと報じられています。
 また、フーゼスタン州では、武装窃盗団と治安機関との交戦やテロリストの拘束等が報じられています。
(3)西部及び北西部
 西部及び北西部のうち、特にイラク及びトルコ国境付近においては、クルド系分離主義組織「クルド自由生活党(PJAK)」によるイラン治安機関に対するテロが散発的に発生しています。
 2022年9月以降イラン全土で盛り上がりをみせた抗議活動(ヘジャブの着用が不適切だとして拘束された女性の死亡を発端とする抗議活動)では、発端となった死亡女性がクルド系イラン人であったことも影響し、イランでクルド系住民が多く居住する北部・西部の州において激しい抗議活動が継続しました。これを受け、イラン当局は、本件抗議活動の背景にクルド系の分離主義組織が関与していたとして、イラン側が同勢力の拠点とみなすイラク北部のクルディスタン地域に対して、ミサイルやドローンによる越境攻撃を複数回実施しました。
 2024年3月時点までの情勢として、イラン西部において革命ガード(イランの軍事精鋭部隊)の隊員が殺害される事件が複数報じられています。
(4)ISIL関係
 ISILはシーア派国家であるイランに対する明確な敵対心を有しており、2022年から2024年3月時点までの間、以下のISIL関連のテロ事件が発生しました。
 ・ 南部ファールス州シーラーズの中心部に所在するシャー・チェラーグ廟における銃撃事件(2022年10月26日発生:13人死亡)
 ・ 南部ファールス州シーラーズの中心部に所在するシャー・チェラーグ廟における銃撃事件(2023年8月13日発生:1人死亡)
 ・ 南東部ケルマーン州ケルマーン所在の殉教者墓地(ソレイマニ革命ガード司令官の墓地が所在)における自爆テロ事件(2024年1月3日発生:84人死亡)
(5)その他
 ア 政府関係者や関係施設を標的とした襲撃・破壊工作
 イランでは政府高官など特定個人を標的とする襲撃事件や、軍事・政府関係施設に対する破壊工作とされる事案が複数発生しています。
 2022年中では、5月に首都テヘラン東部において革命ガード大佐が銃撃により殺害される事件が発生し、2023年1月28日には、イスファハン近郊の軍事関連施設に対する所属不明のドローンによる攻撃事案の発生が報じられたほか、2024年2月には南部チャハールマハール・バフティヤーリ州及びファールス州所在のガスパイプラインが何者かの攻撃により爆発を起こした事案が報じられました。
 イ 特異事案
 このほか、現時点では個人的動機による犯行とみられているものの、2023年1月27日にテヘランの在イラン・アゼルバイジャン大使館に男が押し入り、大使館関係者3人が死傷する銃撃事件が発生しています。
   
3 誘拐事件の発生状況
 2023年中から2024年3月時点まで、テロ組織による外国人を標的とした誘拐事件は確認されていません。しかしながら、首都テヘラン市内では、犯罪者による身代金を目的とした外国人の誘拐事件の発生が報じられています。イランでは、一般的に外国人は富裕層であると認識されており、高価な物品を身に着けない・目に見えるところに放置しないなど、引き続き十分な注意が必要です。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 現在のところ、イランにおいて、日本人及び日本権益を標的とした脅威情報は確認されていません。しかしながら、上記1(1)の通り、イランではISIL関連のテロ事件が2022年以降3件発生しています。
 近年は、世界的な傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
page TOP