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イラン
テロ・誘拐情勢

更新日 2023年03月06日

1 概況
(1)2017年6月7日、首都テヘラン市内の国会事務所建物内及び同市近郊のイマームホメイニ廟周辺において、複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃によりイラン人18人が死亡、約50人が負傷するテロ事件が発生しました。本事件について、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」が犯行声明を発出しました。ISILは、シーア派国家であるイランに対する明確な敵対心を有しており、2022年10月26日には、南部ファールス州シーラーズの中心部に所在するシャー・チェラーグ廟において、13人が死亡、少なくとも数十人が負傷するテロ事件も引き起こしています。
(2)イラン南東部、南西部及び北西部並びに西部では、分離独立主義組織等が活動しており、2022年にも、これらの地域において、治安当局者を標的とした襲撃事件が複数報じられました。
(3)テロ組織によるテロ攻撃以外のものとして、イランでは政府高官など特定個人を標的とする襲撃事件が複数発生しているほか、所属不明のドローンによる軍事施設への攻撃等が報じられています。
(4)誘拐情勢に関し、2022年には、テロ組織による外国人を標的とした誘拐事案の発生は確認されていませんが、テヘラン市内では、金銭目的で外国人を誘拐した事案が報じられているため、注意が必要です。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)南東部
 シスタン・バルチスタン州では、「ジェイシュ・アルアドル」によるテロ事件や治安部隊との戦闘が散発的に発生しました。また、活動低調とみられていた「アンサールル・フォルガン」は2018年12月6日、チャーバハールの警察本部に対する自動車爆弾テロを実行しました。
 また、同地域では、武装麻薬密輸組織による誘拐事件や暗殺事件、行政機関や治安機関に対する襲撃事件の発生も報じられています。
 2022年にも、シスタン・バルチスタン州では治安機関を標的とした襲撃事件が複数報じられました。
(2)南西部
 アラブ系の住民が多数を占めるフーゼスタン州では、2018年9月22日、同州アフヴァーズにおいて、アラブ系分離主義組織「アル・アフワーズ」による軍事パレード銃撃事件(25名死亡)が発生しました。本件テロ事件については、2020年11月に、テロを指揮した「アル・アフワーズ」の司令官が検挙されたと報じられています。
 2022年にも、フーゼスタン州では治安機関を標的とした襲撃事件が複数報じられました。
(3)西部及び北西部
 西部及び北西部の特にイラク及びトルコ国境付近においては、クルド系分離主義組織「クルド自由生活党(PJAK)」によるイラン治安機関に対するテロが散発的に発生しています。
 2022年9月以降イラン全土で盛り上がりをみせた抗議活動(ヘジャブの着用が不適切だとして拘束された女性の死亡を発端とする抗議活動)では、発端となった死亡女性がクルド系イラン人であったことも影響し、イランでクルド系住民が多く居住する北部・西部の州において激しい抗議活動が継続しました。これを受け、イラン当局は、本件抗議活動の背景にクルド系の分離主義組織が関与しているとして、イラン当局が同勢力の拠点とみなすイラク北部のクルディスタン地域に対して、ミサイルやドローンによる越境攻撃を複数回実施しました。
(4)ISIL関係
 ISILはシーア派国家であるイランに対する明確な敵対心を有しています。2022年10月26日に南部ファールス州シーラーズの中心部に所在するシャー・チェラーグ廟において発生した銃撃事件(13名死亡)では、ISILが犯行声明を発出しており、その後、イラン情報省は同銃撃事件に関連して26名の外国人を拘束したと発表しています。
(5)その他
 イランでは、政府の高官などの特定個人を標的とする襲撃事件や、軍事・政府関係施設に対する破壊工作とされる事案が複数発生しています。
 2022年には、5月に首都テヘラン東部において革命ガード大佐が銃撃により殺害される事件が発生し、2023年1月28日には、イスファハン近郊の軍事関連施設に対する所属不明のドローンによる攻撃事案の発生が報じられています。
 このほか、イランに所在する在外公館に対する襲撃事件として、2023年1月27日に在イラン・アゼルバイジャン大使館に男が押し入り、大使館関係者3名が死傷する銃撃事件が発生しています。
   
3 誘拐事件の発生状況
 2022年には、テロ組織による外国人を標的とした誘拐事件は確認されていません。しかしながら、首都テヘラン市内では、犯罪者による身代金を目的とした外国人の誘拐事件の発生が報じられています。イランでは、一般的に外国人は富裕層であると認識されており、高価な物品を身に着けない・目に見えるところに放置しないなど、引き続き十分な注意が必要です。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 現在のところ、イランにおいては、日本人及び日本権益に対するテロの脅威は高いとはみられていません。しかし、2022年には、10人以上が犠牲となるテロ事件が発生しており、巻き添え等の偶発的被害に遭う可能性は否定できません。
 また、日本は親米国家とみられていることから、イランと米国の外交的な緊張状態が高まった場合等においては、滞在中の日本人や日本権益がテロや襲撃事件等の直接的な標的とされる可能性は完全には排除できません。
 さらに、単独犯によるローンウルフ型テロや、一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等のソフトターゲットを標的としたテロが世界各地で頻発しており、こうしたテロの発生を未然に防ぐことは困難です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

 「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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