イラン
テロ・誘拐情勢
更新日 2022年03月18日
1 概況
(1)2017年6月7日、首都テヘラン市内の国会事務所建物内及び同市近郊のイマームホメイニ廟周辺において、複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃によりイラン人18名が死亡、約50名が負傷するテロ事件が発生しました(イラク・レバントのイスラム国(ISIL)が犯行声明を発出)。ISILは、シーア派国家であるイランに対する明確な敵対心を依然として有しており、上記テヘランでのテロ事件後も、ISILの思想に感化された分子の拘束事案が発生しており、2021年中も、治安当局により、イラン国内に入国していたISIL関係者が検挙された事案等が報じられました。
(2)イラン南東部のシスタン・バルチスタン州には、「ジェイシュ・アルアドル」及び「アンサールル・フォルガン」と称されるバローチ系スンニ派組織の活動がみられ、2021年中、「ジェイシュ・アルアドル」によるテロ行為や治安当局者の誘拐が報じられました。
(3)イラン南西部のフーゼスタン州には、「アル・アフワーズ」と称されるアラブ系反政府組織の活動がみられ、2021年中、同組織と関連を有する者によるテロ行為が報じられました。
(4)イラン西部のクルディスタン州、ケルマンシャー州及び北西部の西アゼルバイジャン州の特にイラク及びトルコとの国境付近において、クルド系分離主義組織「PJAK(クルド自由生活党)」によるテロの発生が報じられており、昨年9月には革命ガードが頻発するテロ攻撃に対する報復措置として、隣接するイラク・クルディスタン地域に対する軍事作戦を実施しました。
2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)南東部
南東部アフガニスタン・パキスタン国境付近においては、「ジェイシュ・アルアドル」によるテロ事件や治安部隊との戦闘が散発的に発生しています。また、活動低調とみられていた「アンサールル・フォルガン」は2018年12月6日、チャーバハールの警察本部に対する自動車爆弾テロを実行しました。
また、同地域では武装麻薬密輸組織による誘拐事件や暗殺事件、行政機関や治安機関に対する襲撃事件の発生も報じられています。
(2)南西部
アラブ系の住民が多数を占めるフーゼスタン州では、2018年9月22日、同州アフヴァーズにおいて、アラブ系分離主義組織「アル・アフワーズ」による軍事パレード銃撃事件(25名死亡)が発生しました。本件テロ事件では、2020年11月、テロを指揮した「アル・アフワーズ」の司令官が検挙されたと報じられています。
フーゼスタン州では、2021年中も治安機関に対するテロ攻撃が複数報じられています。
(3)西部及び北西部
西部及び北西部の特にイラク及びトルコ国境付近においては、「PJAK」によるイラン治安機関に対するテロが散発的に発生しています。
2021年9月、革命ガードは頻発するテロ攻撃に対する報復措置として、イラク・クルディスタン地域に対し、短距離ミサイルによる砲撃を行いました。
(4)ISIL関係
上記のとおり、ISILはシーア派国家であるイランに対する明確な敵対心を依然として有しています。2020年中は、ISIL関連報道はありませんでしたが、2021年には、ISILがイラン国内に侵入を試みて撃退された事案及びイラン国内でISIL関係者が逮捕された事案が報じられました。
3 誘拐事件の発生状況
2021年3月2日、「ジェイシュ・アルアドル」がシスタン・バルチスタン州サラヴァーン市を移動中であった革命ガード技術部隊の車両を襲撃し、5名を殺害、3名を拉致したと報じられており、誘拐事件の発生が特に多いシスタン・バルチスタン州においては、引き続き十分な注意が必要です。
4 日本人・日本権益に対する脅威
現在のところ、イランにおいては、日本人及び日本権益に対するテロの脅威は高いとはみられていません。しかし、巻き添え等の偶発的被害に遭う可能性、あるいは日本が親米国家とみられていることから、イランと米国の外交的な緊張状態が高まった場合等においては、日本が直接的な標的とされる可能性は完全には排除できません。
また、単独犯によるローンウルフ型テロや、一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等のソフトターゲットを標的としたテロが世界各地で頻発しており、こうしたテロの発生を未然に防ぐことは困難です。
テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。