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テロ・誘拐情勢

2018年06月21日

1.概況
(1)2014年6月末,イスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)が「カリフ国家」を宣言して以降,イラク北部及び西部を中心に勢力を拡大させていましたが,米国主導のコアリションの支援を得たイラク政府軍による掃討作戦の結果,イラク国内支配地域は急速に縮小し,2017年12月9日にアバーディー首相はISILからのイラク全土解放を宣言しました。
(2)しかしながら,ISIL分子の残党がサラーハッディーン県,キルクーク県,アンバール県,ニナワ県等の地域でテロ活動を継続しており,また,営利目的の誘拐事件が頻繁に発生しているなど,極めて厳しい治安情勢が続いています。
(3)クルディスタン地域北部の山岳地帯においては,クルディスタン労働党(PKK)に対するトルコ軍による空爆等の掃討作戦が続いています。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)2014年6月以降, ISILは,ニナワ県モースル,サラーハッディーン県ティクリート及びアンバール県ファッルージャ等を占拠するなどイラク北部及び西部を中心に勢力を拡大しました。これに対して,イラク軍等は米国主導のコアリションによる空爆支援を受けながらISILの拠点に対する攻撃を行い,2015年4月にティクリート,2016年2月にラマーディーを解放し,同年3月からはモースル解放作戦が開始され,約9か月に亘る戦闘の末2017年7月にモースルがISILから解放されました。その後,政府軍は戦線をアンバール県アーナ(9月に解放),そしてキルクーク県ハウィージャ(10月に解放)と進め,イラク国内最後のISILの拠点たるアンバール県ラーワ及びカーイムに進軍し,11月に両地からISILを駆逐しました。12月初旬にはイラク西部の砂漠・国境地帯で抵抗を続けるISIL残党を駆逐して同地帯の大半を掌握したことから,12月9日にアバーディー首相がイラク全土解放と最終勝利を宣言しました。
(2)各地域の治安情勢については,以下のとおりです。
ア 首都バグダッドにおいては,イラク治安部隊による厳重な警備体制が敷かれているバグダッド国際空港,インターナショナルゾーン及び両所を結ぶ幹線道路及び市内主要部の治安状況は安定しつつありますが,それでも2018年1月にルサーファ地区で爆発事件(38人が死亡,105人が負傷)が発生しています。
イ 解放作戦の「勝利宣言」はなされたものの,イラク北部のモースル,タルアファル,ハウィージャ等においては,国内避難民の増加やISILによるテロ活動等が治安に及ぼす影響が引き続き懸念されるとともに,エルビル県やスレイマニーヤ県においても, ISIL分子の逮捕や隠れ家の摘発が散発的に報じられるなど,依然としてISIL残党の掃討作戦が継続しています。また,トルコ国境付近の山岳部では,トルコ軍がPKKに対する空爆等の掃討作戦を行っています。
ウ 南部4県(バスラ県,ズィーカール県,ミーサーン県,ムサンナー県)及び中南部3県(カルバラ県,ナジャフ県,ディワーニーヤ県)においては,ISIL等による影響は限定的ですが,2017年5月にバスラ県北西部の幹線道路上で自爆テロが発生し,2017年9月にもズィーカール県ナースィリーヤ近郊で襲撃及び自爆テロ攻撃が発生しているなど,注意が必要です。また,部族間の対立による小火器を使用した小競り合いや犯罪集団による身代金目的等の誘拐が局所的に発生しています。

3.誘拐事件の発生状況
 2017年中,イラクでは営利目的の誘拐事件がバグダッドを始めとする各地で確認されています。最近では同年10月に国際空港に到着したレバノン人2名が空港出発後に行方不明となり,後日治安部隊に救出された事案が発生しました。近年外国人を標的とした誘拐事件の発生件数は減っているものの,依然として注意が必要です。

4.日本人・日本権益に対する脅威
(1)イラクでは,過去に複数の日本人がテロや誘拐の被害に遭っています(2003年11月にティクリート近郊で日本人外交官殺害事件,2004年4月にファッルージャ近郊で日本人人質事件2件,同年5月にバグダッド郊外で日本人ジャーナリスト襲撃・殺害事件,同年10月に日本人旅行者人質・殺害事件,2005年5月に日本人襲撃事件)。
(2)ISILからの全土解放宣言は表明されていますが,ISIL分子の残党等によるテロは依然として発生しており,現時点で日本人及び日本権益に対する具体的脅威を示す情報には接してはいないものの,ISILは過去に我が国を標的とする声明を発出していることもあり,引き続き十分な警戒が必要です。


(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等2015年8月末現在の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。