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イラク
テロ・誘拐情勢

更新日 2021年06月09日

1 概況
(1)イスラム過激派組織「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)は、2014年6月末に「カリフ国家」を宣言して以降、イラク北部及び西部を中心に勢力を拡大させていましたが、米国主導の有志連合の支援を得たイラク治安部隊等による掃討作戦の結果、ISILのイラク国内における支配地域は急速に縮小し、2017年12月にはアバーディー首相(当時)がISILからのイラク全土解放を宣言しました。しかしながら、ISIL分子の残党は、依然としてバグダッド県を含むイラク各地でテロ活動を継続しています。
(2)昨今の中東情勢の緊張の高まりを受け、イラク国内の米国権益(米国大使館、米軍駐留施設等)に対するロケット弾や無人機を使った攻撃や、走行中の有志連合軍用物資の運搬車列に対する簡易爆弾等による攻撃が頻発しています。
(3)クルディスタン地域北部の山岳地帯においては、「クルディスタン労働党」(PKK)に対するトルコ軍による空爆等が行われています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)各組織の活動状況
ア イラク・レバントのイスラム国(ISIL)
 2014年6月以降、ISILは、ニナワ県モースル、サラーハッディーン県ティクリート及びアンバール県ファッルージャ等を占拠するなど、イラク北部及び西部を中心に勢力を拡大させました。これに対して、イラク軍等は米国主導の有志連合による空爆支援を受けながらISILの拠点に対する攻撃を行い、2017年12月初旬にはイラク西部の砂漠・国境地帯で抵抗を続けるISIL残党を駆逐してこれら地域の大半を掌握したことから、同年12月9日にアバーディー首相(当時)がイラク全土解放と最終勝利を宣言しました。
 このようにISILはイラク国内の支配地域を失いましたが、イラクにおけるISILの活動は継続し、特に2019年3月にISILがシリア国内での支配地域を失って以降は、千人以上のISIL戦闘員がイラクに侵入したとの情報もあります。現在も、特にイラク北部及び西部の各県(ニナワ県、サラーハッディーン県、キルクーク県、ディヤーラ県及びアンバール県)において、ISILの掃討作戦に当たるイラク治安部隊等への攻撃や一般市民を狙ったテロが頻発しています。また、バグダッド県においても、一般市民を狙ったテロが発生しています。
イ その他
 2018年以降、イランとの関係が深いとされる民兵組織の一部が、主にイラク国内の米国権益(米国大使館、米軍駐留施設等)を標的とした攻撃を繰り返しています。米イラン関係の緊張が高まる中、2019年12月、米国は米軍駐留基地に対する攻撃の報復として民兵組織の拠点を空爆し、その後、これに反発するデモ隊が在イラク米国大使館を襲撃する事案が発生しました。これに対し、2020年1月、米国はイランのソレイマニ革命ガード・コッヅ部隊司令官等をバグダッド国際空港近郊で空爆により殺害しています。その後も、米国権益や米軍駐留基地に対するロケット弾や無人機を使った攻撃が継続しており、また、2020年夏頃からは、有志連合軍用物資の運搬車列を狙った幹線道路上での簡易爆弾等による攻撃が頻発しています。

(2)各地域の治安情勢
ア 首都バグダッド
 イラク治安部隊による厳重な警備体制が敷かれているバグダッド国際空港、インターナショナルゾーン(IZ)、両所を結ぶ幹線道路(空港道路)及び市内主要部の治安状況は比較的安定していますが、2021年1月に市内中心部のバーブ・アルシャルキー地区にあるタヤラーン広場の市場で自爆ベストを用いたISILによる連続自爆テロ(32人死亡、110人負傷)が発生したほか、同年3月には、アダミヤ地区にあるアインマ橋東側近くで手榴弾を用いたテロ(1人死亡、31人負傷)が発生しています(犯行主体不明)。同年6月にもカーディミーヤ地区のモスク付近で爆発があり(4人死亡、20人負傷)、ISILが犯行声明を発出しています。   
 また、米国権益を標的としたロケット砲による攻撃が頻発しているほか、2020年9月には、空港道路において、英国大使館の車両や、EU代表部の車両後方を走っていた車両が簡易爆弾による攻撃に巻き込まれる事案がそれぞれ発生しています。
イ イラク北部及び西部
 ニナワ県、キルクーク県、サラーハッディーン県、ディヤーラ県及びアンバール県では、米軍の支援を受けたイラク治安部隊によるISIL残党の掃討作戦が行われていますが、ISIL分子による治安部隊や一般市民に対するテロ等が続いており、多数の死傷者が発生しています。
 2020年8月には、エルビルからモースルに向けて走行中の国連世界食糧計画の車両がニナワ県内で簡易爆弾による攻撃を受け、乗車していた職員が負傷する事案が発生しています。
ウ クルディスタン地域
 エルビル県やスレイマーニーヤ県においては、ISIL分子の逮捕や隠れ家の摘発が散発的に報じられるなど、依然としてISIL残党の掃討作戦が継続しています。
 エルビル市においては、2018年3月に爆弾テロ事件が発生したほか、同年7月には、エルビル県庁舎がテロリスト3人に襲撃され、人質1人が死亡する事案が発生しています。また、2019年7月にはレストランで発砲事件が発生し、トルコ総領事館職員1人を含む3人が殺害されています。
 エルビル国際空港付近では、2020年10月、2021年2月及び4月に米国権益を標的にしたとみられる攻撃事案が発生し、2021年2月の事案では市民2人が死亡(ほか数人が負傷)しました。同年4月の事案では、初めて無人機を使用した攻撃が行われています。
 また、トルコ国境付近の山岳地帯では、トルコ軍がPKKに対する空爆等を行っています。
エ 上記以外の地域
 ISILによる影響はほかの地域に比べ限定的ですが、有志連合軍用物資の運搬車列に対する簡易爆弾による攻撃が度々発生しています。

3 誘拐事件の発生状況
 イラクでは、営利目的の誘拐事件がバグダッドをはじめとする各地で多数確認されていますが、近年、外国人を標的とした誘拐事件の発生件数は減少しています。2020年中、報道で明らかになった誘拐事件は以下のとおりです。 
(1)2020年1月24日、バグダッド市内カッラーダ地区のフランス大使館近くでフランス人3人が誘拐され、数週間後に釈放された。
(2)2020年7月20日、バグダッド市内カッラーダ地区でドイツ人1人が誘拐され、1週間以内に釈放された。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 イラクでは、過去に複数の日本人がテロや誘拐の被害に遭っています(2003年11月にサラーハッディーン県ティクリート近郊で日本人外交官殺害事件、2004年4月にアンバール県ファッルージャ近郊で日本人人質事件2件、同年5月にバグダッド郊外で日本人ジャーナリスト襲撃・殺害事件、同年10月に日本人旅行者人質・殺害事件、2005年5月に日本人襲撃事件が発生。)。
 ISILからの全土解放宣言は発出されていますが、ISIL分子の残党等によるテロは依然として発生しています。現時点で日本人及び日本権益に対する具体的脅威を示す情報には接していませんが、ISILは過去に日本を標的とする声明を発出していることもあり、引き続き十分な警戒が必要です。

テロについて

 「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このような「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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