イスラエル
テロ・誘拐情勢
更新日 2023年05月15日
1 概況
(1)イスラエル並びにヨルダン川西岸地区及びガザ地区からなるパレスチナ自治区におけるテロ事案は、近年増加傾向にあります。2022年3月以降、テロリストの取締継続に伴い、治安部隊と武装パレスチナ人との衝突やテロ事案の発生により死傷者数が増大しており、ヨルダン川西岸地区及びエルサレムを中心に高い緊張状態が継続しています。イスラエル保安庁統計によれば、2022年中、パレスチナ人テロリスト等による攻撃によって、2014年以来最多となる31人が死亡したほか、282人が負傷しました。イスラエル治安当局の取組みにより、既存のテロ組織等による大規模かつ組織的なテロ計画については未然の摘発が進められているものの、個人等による単発の事案を完全に防止することは困難とされています。
(2)主にヨルダン川西岸地区内のイスラエル人入植地(入口付近のバス停等)やイスラエル兵士が配置されている交差点、同地区とイスラエルとの境界の検問所等において、銃器や刃物等を使用してイスラエル治安要員を狙う事案や車両での突入事案が散発しているほか、入植者とパレスチナ人との衝突も散発しています。
(3)ヨルダン川西岸地区以外でも、2022年中及び2023年4月までの間に、テルアビブ等の複数の都市において銃器等を使用したテロ事案や車両での突入事案が発生したほか、エルサレムでは爆弾テロ事案が発生し、死傷者が出ました。
2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)パレスチナ自治区では、ハマス、パレスチナ・イスラミック・ジハード(PIJ)等の武装組織がガザ地区を拠点に活動しており、一部の組織は断続的にイスラエルに対する攻撃を行っています。上記1のとおり、今後もイスラエル治安部隊がヨルダン川西岸地区における取締りを継続し、パレスチナ人との衝突が発生すれば、更なるテロ事案が起きる可能性は排除されません。
(2)近年、イスラエルにおいて、「アル・カーイダ」や「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)、それらの関連組織によるテロは確認されていません。しかし、2020年1月にISILが「ユダヤ人との闘い」を呼び掛ける演説を発表し、また、2022年4月には、3月にベエルシェバ等で発生したISIL支持者によるテロ事件を受け、更なる攻撃を支持者に呼び掛けているため、近隣国のISIL関連組織や、自己過激化した個人が、イスラエル国内でテロを実行する可能性に留意する必要があります。
(3)イスラエル北部と国境を接するレバノン南部には、イスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」(対イスラエル抵抗運動を標榜)のほか、パレスチナ人過激派組織や国際的なイスラム過激派組織の影響を受けているとされる組織が存在しています。イスラエル北部では、2023年3月、道路脇に設置されたとみられる簡易爆発装置(IED)が爆発し、付近にいた男性1名が重傷を負っており、イスラエル軍は、ヒズボラが関与した可能性が高いと明らかにしました。また、2023年4月、レバノン南部からイスラエルに向けて発射された30発以上のロケット弾や、シリアからゴラン高原に向けて発射された6発のロケット弾については、いずれもパレスチナ人過激派組織によるものとみられています。イスラエル北部で不安定な治安情勢が続いていることから、レバノン等を拠点とする武装組織・過激派組織によるテロの可能性についても注意が必要です。
3 誘拐事件の発生状況
2022年に「誘拐及び逮捕・監禁」の罪状で660件(前年607件)が検挙され、454人(同455人)が逮捕されています。近年、外国人を標的とした誘拐事件は公表されていませんが、誘拐の被害に遭わないよう、自分の身分や行動予定を安易に他人に知らせないなど、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。
4 日本人・日本権益に対する脅威
これまでに、イスラエル及びパレスチナ自治区において、日本人・日本権益を直接の標的としたテロ事件は発生していません。他方、イスラエル及びパレスチナ自治区におけるテロ事案が近年増加傾向にあることに留意する必要があります。
また、単独犯によるローンウルフ型テロや、一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等ソフトターゲットを標的としたテロが世界各地で頻発しており、こうしたテロの発生を未然に防ぐことは困難です。
テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。