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テロ・誘拐情勢

2016年02月19日

1.概況
(1)イエメンでは、「アラビア半島のアル・カーイダ」(AQAP)や、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の支部を称する組織の活動が活発で、イエメンの軍・治安機関や政府関係者や首都サヌア等を制圧している反政府武装勢力ホーシー派(イスラム教シーア派に属するザイド派の一派、イエメン北部サアダ県が拠点)に対するテロや武力衝突が頻発しています。イエメン国内におけるAQAP、ISIL等のイスラム過激派組織又はこれらの主張に影響された者の活動に注意が必要です。
(2)イエメンでは従来から誘拐・襲撃事件が多発しています。2014年以降、ホーシー派民兵が国内各地で政治活動家、政治家、ジャーナリスト等を誘拐する事件も多発しています。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)イエメンでは、AQAPによるテロが頻発しています。AQAPは、2011年に全国規模で政治的混乱が起こり、政府の治安能力が弱まった隙を突き、南部で勢力を伸張させました。2012年に誕生したハーディ暫定政権が、国内各地でAQAPの拠点への空爆、幹部の殺害、細胞・分子の摘発等を行いましたが、AQAPは中央政府の支配が及ばない地域に逃走したり、都市部に潜伏したまま勢力を維持し、その後もイエメン軍・治安機関、銀行、石油施設、外国の権益への襲撃を続けました。
(2)2014年9月、首都サヌアを制圧後、南部に勢力を拡大したホーシー派は各地でAQAPと衝突し、AQAPはホーシー派を標的としたテロ・襲撃を敢行しました。また、AQAPは、軍・治安機関要員の暗殺や自動車爆弾テロも多く実施しており、引き続き高い活動能力を有しているとみられています。なお、2015年6月、AQAPの最高指導者ナーセル・ウハイシーが米国の無人機攻撃で死亡し、後任にカーシム・ライミーが選出されました。
(3)2014年11月、ISILがイエメンに支部(「州」)の設置を宣言しました。その後、「サヌア州」、「ハドラマウト州」、「アデン―アビヤン州」等がテロ事件の犯行声明を出しており、政府要人やシーア派(ホーシー派)のモスク等を狙ったテロ事件が複数回発生しています。例えば、2015年3月、サヌア市内の2か所のシーア派モスクで同時自爆テロが発生し、少なくとも142人が死亡、260人以上が負傷しました。また、同年12月、アデン市で、アデン県知事の車列に対する自動車爆弾テロが発生し、同知事を含む6人が死亡しました。

3.誘拐事件の発生状況
 イエメンでは従来から国籍を問わず、誘拐事件が多発しています。近年は、治安悪化で多くの外国人が国外退避したこともあり、事件発生件数は減少していますが、危険度が下がったわけではありません。また、従来の誘拐事件の多くは部族組織による犯行ですが、AQAPの関与がうかがわれる事件も少なからずみられます。誘拐の多くは政府への政治的要求目的、身代金目的ですが、人質が最終的にAQAPの手に渡ってしまうケースもあるといわれています。そうした事件に日本人が巻き込まれる可能性は排除できません。
 また、2014年以降、ホーシー派がイエメン政府の国防相を含む複数の政府関係者、政治家の拘束を続けている他、ホーシー派に批判的な政治・人権活動家、ジャーナリスト等多数が誘拐されています。
 なお、2015年には、いずれも犯行主体は不明ですが、フランス人専門家、チュニジア人国際機関職員、ギリシャ人海運会社社員が誘拐されています。

4.日本人・日本権益に対する脅威
 近年、日本人を直接対象としたテロ・誘拐事件は発生せず、また、日本人をテロ・誘拐の標的とする具体的な情報はありません。しかしながら、イエメンでは全土に実効力を有する統治機構が存在せず、治安も極度に悪化していることから、日本人・日本権益がテロ・誘拐事件の標的となる、あるいは、突発的に発生する事件に日本人が巻き込まれる可能性があり、極めて危険です。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。