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フィリピン
テロ・誘拐情勢

更新日 2025年02月25日

1 概況
(1)フィリピンでは、イスラム過激派組織である「アブ・サヤフ・グループ(ASG)」、「ダウラ・イスラミヤ(DI)」、「バンサモロ自由戦士(BIFF)」のほか、共産党傘下の武装組織である「新人民軍(NPA)」等の過激派組織が活動しています。
(2)ミンダナオ地方では、1960年代に独立運動や自治権獲得運動を展開した「モロ民族解放戦線(MNLF)」や、そこから分離した「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」は、当初武装闘争路線を取っていましたが、その後、フィリピン政府との和平路線に転じました。1996年にはフィリピン政府とMNLFは最終和平合意に達し、また、フィリピン政府とMILFの対話の結果、2018年にバンサモロ基本法が成立し、イスラム教徒の多い地域における住民投票を経て、2019年にバンサモロ暫定自治政府(BTA)が発足しました。今後、2025年の議会議員選挙を経てバンサモロ自治政府が発足する予定ですが、2024年9月にフィリピン最高裁判所がスールー州をバンサモロ自治地域の領域外であるとする同州の申立てを認める決定をしたため、同選挙が実施されるかの先行きは不透明な状況です。
 また、ミンダナオ地方の中部・西部にはASG、DI及びBIFFが存在しています。国軍はこれらイスラム過激派に対する掃討作戦を実施していますが、これらのイスラム過激派はテロ活動を行っています。
共産勢力(NPA)は、全国各地に拠点となる支配地域(ゲリラ・フロント)を設置し、革命税を徴収するとの名目で民間企業や富裕層に対する恐喝を行ってきました。しかし、国軍が各地で掃討作戦を実施してきた結果、フィリピン政府は、2022年6月にはサンボアンガ半島、同年10月にダバオ地域(ダバオ市と周辺5州)におけるNPAの解体を宣言しました。また、2024年12月には、サンボアンガ半島地方における共産主義テロ組織が根絶され、サンボアンガ半島地方でのテロ組織の影響を受けた村がなくなったと声明を出しています。
(3)また、ミンダナオ地方では、2016年9月にダバオ市で発生した爆弾テロ事件を受けて国家非常事態宣言(全土が対象)が、2017年5月に発生した南ラナオ州マラウィ市におけるイスラム過激派の市街地占拠事件を受けて戒厳令(ミンダナオ地方対象)が、それぞれ発令されました。しかし、2017年10月、マラウィ市周辺地域で続いていた治安部隊との衝突の終結を受け、2019年12月、戒厳令は解除されました。また、国家非常事態宣言についても、ミンダナオ地方の治安状況が大幅に改善されたとして、2023年7月に解除されました。他方、ミンダナオ地方では2023年6月、9月、10月、12月及び2024年9月に警察官や兵士に対する襲撃事件や大学での爆発事件が、2024年5月にはコタバト市の教会に手榴弾が投げ込まれる事件が発生しており、不安定な治安情勢が続いているといえます。
(4)ISILはフィリピン国内でISILに忠誠を誓う組織が起こしたテロ事件を支持する声明を発出しつつ、フィリピン国外のイスラム過激派に対してフィリピンへの集結を呼びかけるなど、フィリピン国内外のイスラム過激派との共闘関係を維持しています。今後、フィリピン国外のイスラム過激派のフィリピンへの侵入により、フィリピン国内でのイスラム過激派の活動が活発になる可能性もあります。
(5)ミンダナオ地方の危険レベルの高い地域と首都マニラ等の状況は異なりますが、フィリピン全土においてテロ事件や誘拐事件に巻き込まれないように注意する必要があります。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)「アブ・サヤフ・グループ(ASG)」
 ASGはミンダナオ地方西部のバシラン州とスールー州に拠点があるイスラム過激派で、主に誘拐事件や爆弾テロ事件を起こしており、一部は「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」に忠誠を誓っています。2019年1月のスールー州ホロ大聖堂爆発事件はASGの犯行と見られています。
(2)「ダウラ・イスラミヤ(DI)」
 DIは、ミンダナオ地方中部の南ラナオ州と南マギンダナオ州を拠点とするイスラム過激派です。2017年5月23日、イスラム過激派の「DIマウテ・グループ」は、南ラナオ州マラウィ市における市街地占拠事件を起こし、事件の終結まで約5か月を要しました。国軍による掃討作戦の結果、「DIマウテ・グループ」は弱体化したものの、その後、2023年12月にマラウィ市のミンダナオ国立大学で発生した爆発事件を起こしたと見られています。
(3)「バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)」
 BIFFは「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」から離脱したイスラム過激派で、南マギンダナオ州に拠点があり、主に南マギンダナオ州やコタバト州西部で路線バスに対するテロ事件を起こしています。国軍は掃討作戦を継続しています。
(4)新人民軍(NPA)
 共産勢力(NPA)は、全国各地に拠点となる支配地域(ゲリラ・フロント)を設置し、革命税を徴収するとの名目で民間企業や富裕層に対する恐喝を行ってきました。しかし、国軍が各地で掃討作戦を実施してきた結果、フィリピン政府は、2022年6月にはサンボアンガ半島、同年10月にはダバオ地域(ダバオ市と周辺5州)、におけるNPAの解体を宣言しました。また、2024年12月には、サンボアンガ半島地方における共産主義テロ組織が根絶され、サンボアンガ半島地方でのテロ組織の影響を受けた村がなくなったと声明を出しています。しかし、国内各地には残存勢力があり、NPAのメンバーが再結集する可能性も否定できません。

3 誘拐事件の発生状況
 過去にはフィリピン全域で犯罪組織による身代金誘拐事件、ミンダナオ地方を中心にイスラム過激派による誘拐事件が多数発生しており、特に外国人を対象とする身代金誘拐事件の場合、身代金が要求され、人質が殺害されるなど残虐な事件もありました。
 イスラム過激派による誘拐事件についても、2016から2017年にかけては、スールー州周辺海域でクルーザーや漁船などを襲撃し乗組員を拉致する身代金誘拐事件が多数発生しました。
 現在、こうした誘拐事件の発生は減少傾向にありますが、2022年には40件の誘拐事案(疑い事案含む)が発生しており、2024年には外国人が誘拐後に殺害される事案も発生しました。
フィリピン警察は誘拐対策として、日々の移動ルートや時間を固定しない(ルーティンを避ける)、隣人と良好な関係を築く、周囲に気を配り、人気が少ない場所では一人で行動しない等を案内していますので、ご留意ください。


4 日本人・日本権益に対する脅威
(1)上記2の各組織等が、特に日本や日本人を明示的に標的とした攻撃を企図しているとの情報には接していません。
(2)フィリピンにおいてテロ・誘拐事件による日本人の被害は近年確認されていませんが、これらの組織が敢行するテロには、外国人誘拐や民間人を含む不特定多数を標的とする爆弾テロなどがあるため、フィリピン国内に滞在する日本人がその被害にあう可能性は排除できません。また、2024年10月には、NPAネグロス支部がフィリピン政府や日系企業を非難する声明を発出していますので、引き続き注意が必要です。
(3)近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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