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バングラデシュ
テロ・誘拐情勢

更新日 2025年02月14日

1 概況
(1)2015年10月に北西部のロングプールにおいて邦人男性が銃殺されました。さらに、2016年7月1日にダッカ市内のレストランで発生した襲撃テロ事件(ダッカ襲撃テロ事件)において、日本人7名を含む多数の外国人が殺害されました(テロリスト6名はその場で死亡)。これらの事件は、ジャマトゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)から派生した「ネオJMB」の犯行とされ、バングラデシュ政府によるテロ対策の強化により、同組織構成員が多数殺害又は逮捕されています。

(2)日本人が殺害された両事件とも、「イスラム国バングラデシュ」と称する組織が犯行声明を発出しましたが、当地捜査当局は国際テロ組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」と「ネオJMB」との直接的な関係は確認されていないとし、国際テロ組織の思想に影響を受けたJMB構成員が事件を引き起したとの捜査結果を発表しました。2023年10月30日、高等裁判所は下級裁判所で死刑判決を受けた7名の被告に対し、同被告らを襲撃に直接参加していないとの理由で死刑から減刑し、終身刑の判決を下しました。

(3)バングラデシュにおいて、国際的なテロ組織の動向は、これまでのところ確認されていませんが、ISILやアル・カーイダ等の国際テロ組織は、映像や雑誌等の様々なメディアを通じ、外国人を標的とするメッセージを発出しています。そのような中、バングラデシュ政府は、テロ対策を強化しており、ダッカ襲撃テロ事件以降、外国人を巻き込むテロは発生していません。 2021年11月10日にはダッカ管区に設定されていた危険レベルが2から1に引き下げられ、チッタゴン丘陵地帯の危険レベル2以外は全て危険レベル1となりました。

(4)その後、2018年の公務員採用における独立戦争時のフリーダムファイター(退役軍人)等の子孫に対する特別枠を割り当てるクオータ制度の廃止決定について、最高裁判所高等裁判部が2024年6月に違憲としたことに端を発し、同年7月2日以降、同制度の改革を求める学生団体により、ダッカ市内及び地方都市を含むバングラデシュ全土においてデモや交通封鎖等による抗議行動が発生し、抗議行動を行う学生団体と対立する学生組織や治安機関等との間で衝突が起き、多数の死傷者が発生しました。同月19日には、外出禁止令が発出されたほか、通信インフラが極めて不安定な状況になる中、バングラデシュ全土で危険レベルをレベル2に引き上げました。

(5)国内各所におけるデモ活動等の抗議行動を通じ、ハシナ政権(当時)の退陣を求めるなど要求が先鋭化した結果、同年8月5日、ハシナ首相(当時)が辞任しました。翌6日、軍により外出禁止令が解除され、同月8日、ユヌス首席顧問率いる暫定政権が発足しました。暫定政権は、法と秩序の回復を最優先課題に位置づけ、軍に治安判事権限を与える法令発出や改革委員会の設立など、様々な改革に向けた取組を進めているほか、法執行機関による治安改善の取組を強化しました。過激な抗議活動が収束し、政変時と比べ情勢は落ち着きを取り戻したことを受け、同年12月、危険レベルは夏の政変の前の時点の水準に戻し、チッタゴン丘陵地帯を除くバングラデシュ全土でレベル1に引き下げました。

(6)近年の治安機関による、テロ計画を有する過激主義者の摘発事例について振り返れば、2022年11月には、「アンサール・アル・イスラム(AAI)」メンバーの死刑囚2人が首都判事裁判所から脱走し、現在も行方が分かっていません。また、2023年にはバングラデシュを拠点とする新たな過激派組織が確認されています。下記4(2)のとおり昨年夏の暫定政権発足後の状況も注視する必要があります。世界的なテロの動向に鑑みても、今後当地でテロ事件が発生する可能性を完全に否定することはできず、引き続き注意が必要です。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)各組織の活動状況
ア 「ジャマトゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」
 バングラデシュ政府から非合法組織として活動禁止措置を受けており、2016年にはISILに 
感化された構成員が「ネオJMB」と称する分派を形成し、ダッカ襲撃テロ事件を起こしました。同事件に関わったとされる構成員の多くは治安当局により殺害又は逮捕されましたが、国内において爆弾等の武器と共に構成員が継続的に摘発されているのと同時に、インド領内において潜伏していた幹部が逮捕されるなど、依然として活動中とみられます。
イ 「アンサール・アル・イスラム(AAI)」 別名「アンサールラ・バングラ・チーム(ABT)」
 国際テロ組織「インド亜大陸のアル・カーイダ(AQIS)」の影響を受けているとされ、政府 から活動禁止措置を受けています。過去に複数の外国人ブロガー、出版関係者等の殺害に関与したとされ、2015年における連続ブロガー殺害事件後には「AQISバングラデシュ支部」を名乗る犯行声明が発出されています。2019年2月にもブロガー殺害を計画していたとして構成員4名がダッカ市内において逮捕されています。2022年11月には、AAIメンバーの死刑囚2人が首都判事裁判所から脱走し、現在も行方が分かっていません。

(2)各地域の治安情勢
ア チッタゴン丘陵地帯(カグラチャリ県、ランガマティ県、バンドルボン県)
 南東部のインド及びミャンマーと国境を接するチッタゴン丘陵地帯には、仏教系少数民族が100万人以上居住しており、過去において、自治権等を求める反政府組織が結成され、多くの死傷者を出す対立抗争が度々発生しました。1997年に「チッタゴン丘陵地帯和平協定」が締結されて以降、抗争は鎮静化しましたが、民族対立は依然として未解決のままであり、散発的に抗争事件は発生しているなど現地の治安情勢は依然不透明な状況が続いています。
イ 避難民キャンプ(コックスバザール)
 現在、バングラデシュ南部コックスバザールでは、ミャンマーのラカイン州から避難してき た約100万人の「ロヒンギャ(ラカイン州に居住するイスラム教徒)」が避難民キャンプに滞在しています。キャンプ内におけるギャング同士の抗争が報じられ、またイスラム系援助団体を含む、多くの団体が支援を行っていますが、中には過激派組織による支援も含まれている可能性があるとされています。また、キャンプ周辺においては、避難民の流入による賃金下落、物価上昇、森林の喪失等、地元社会に多大な負担がかかっており、地元住民の不満の増大が指摘されています。このため、今後の動向を注視する必要があります。
 また、2023年においては、避難民のリーダー殺害事件やキャンプ内における誘拐・麻薬の摘発・避難民への暴行・脅迫、武器工場の摘発等が見られました。当局は否定しているものの、これらの背景には、「ロヒンギャ救世軍(ARSA)」が関与しているとも言われています。このほか、過激派組織やロヒンギャ犯罪組織が、強奪、誘拐及び麻薬取引を独占する目的で、その優位性を主張するため、キャンプ内において縄張り争いを行っています。

3 誘拐事件の発生状況
 2019年に邦人の拉致監禁事件が発生していますが、それ以降、現在に至るまで邦人を対象とした誘拐事件は発生していません。一方で、2024年12月に約5年ぶりに警察が公表した犯罪統計によれば、2024年中、国内で642件の誘拐事件が発生しています。2024年の件数は、過去数年と比較して増加していますが、これは、政変後に前政権与党の支持者らが、報復として誘拐される事件が相次いだことを反映しているためだと考えられます。報道によれば、バングラデシュ人を対象とした誘拐事件には、上記のような政治目的のものに加え、富裕層を対象とした身代金目的のもの、貧困層の年少者を対象とした労働力または性的搾取目的のものがあります。2019年以降、邦人を対象とした誘拐事件は発生していませんが、引き続き注意が必要です。

4 日本人・日本権益に対する脅威
(1)2015年10月のロングプール邦人殺害事件、2016年7月のダッカ襲撃事件と2年連続して日本人がテロの犠牲となり、いずれも「ISILバングラデシュ」を称する組織による犯行声明が発出されました(前出)。また、当時、イスラム過激派は、同襲撃テロ事件を賞賛するメッセージや、新たなテロを呼びかけるメッセージを、映像や雑誌等の様々なメディアを通じて発出していました。
(2)バングラデシュ政府はテロ対策を強化しており、ダッカ襲撃テロ事件以降、外国人を巻き込むテロは発生していません。2024年の政変後に発足した暫定政権は、法と秩序の回復を最優先課題に位置づけています。但し、暫定政権発足後、前政権下で拘束されていた関係者が釈放及び保釈されているという事実があり、また、2024年の抗議活動中に全国の多数の刑務所が襲撃を受け、少なくとも数百人の囚人が脱走しており、その中には、過激派組織の構成員が含まれている可能性は排除できません。世界的なテロ発生傾向や未だ当地において当局による過激派に対する摘発によって爆発物や火器等が押収されていることも踏まえれば、今後もバングラデシュにおけるテロ発生の可能性は完全には排除されません。
(3)イスラム過激派組織によるテロだけでなく、国際テロ組織の影響を受けた自国育ちの単独犯によるテロにも警戒する必要があります。
(4)近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
 テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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