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バングラデシュ
テロ・誘拐情勢
更新日 2026年05月07日
1 概況
(1)近年のテロ情勢
バングラデシュ政府はテロ対策を強化しており、2016年7月1日にダッカ市内のレストランで発生した襲撃テロ事件(ダッカ襲撃テロ事件)以降、同国内で外国人を巻き込むテロは発生していません。同事件においては、日本人7名を含む多数の外国人が殺害されました(テロリスト5名はその場で死亡)。また、その前年の2015年10月には北西部のロングプールにおいて邦人男性が銃殺される事件も発生しています。
(2)国内のテロ組織等について
上記の二事件は、ジャマトゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)から派生した「ネオJMB」の犯行とされ、バングラデシュ政府によるテロ対策の強化により、同組織構成員が多数殺害又は逮捕されています。
両事件とも、「イスラム国バングラデシュ」と称する組織が犯行声明を発出しましたが、捜査当局は国際テロ組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」と「ネオJMB」との直接的な関係は確認されていないとし、国際テロ組織の思想に影響を受けたJMB構成員が事件を引き起したとの捜査結果を発表しました。ダッカ襲撃テロ事件に関しては、2023年10月30日、最高裁判所高等裁判部(日本における高等裁判所に相当)は下級裁判所で死刑判決を受けた7名の被告人に対し、同被告人らを襲撃に直接参加していないとの理由で死刑から減刑し、終身刑の判決を下しました。当地報道によれば、7名の被告人(うち1名は2024年8月に刑務所から脱獄しようとした際に殺害されました。)のうち6名が、2025年5月に無罪判決を求めて最高裁判所上訴部(日本における最高裁判所に相当)に対して上告許可申請を行いました。
国際的なテロ組織の動向について、当局はバングラデシュ国内での存在を否定していますが、ISILやアル・カーイダ等の国際テロ組織は、映像や雑誌等の様々なメディアを通じ、バングラデシュ国内の外国人を標的とするメッセージを発出しています。
近年の暴力的過激主義組織の動向について、2022年11月、「アンサール・アル・イスラム(AAI)」メンバーの死刑囚2人が首都判事裁判所から脱走しましたが、現在も行方が分かっていません。また、2023年、バングラデシュを拠点とする新たな過激派組織が確認されています。2025年、マレーシアにおいてシリアやバングラデシュのイスラム国(IS)に送金を行うなどの過激派活動に関与した疑いで35人のバングラデシュ人が逮捕される事案が発生しました。複数のバングラデシュ人がパキスタン・タリバーン運動(TTP)に加入し、中には戦闘中に死亡した者がいる例も確認されています。下記4(2)のとおり2024年夏の暫定政権発足後の状況も注視する必要があります。世界的なテロの動向に鑑みても、今後当地でテロ事件が発生する可能性を完全に否定することはできず、引き続き注意が必要です。
2018年の公務員採用における独立戦争時のフリーダムファイター(退役軍人)等の子孫に対する特別枠を割り当てるクオータ制度の廃止決定に対する最高裁判所の違憲判決に端を発し、2024年7月に国内各所におけるデモ活動等の抗議行動が発生しました。結果、8月にハシナ首相(当時)が辞任し、ユヌス首席顧問率いる暫定政権が発足しました。暫定政権は、政党間の対立を緩和し暴力を抑制しながら政治プロセスを進め、その結果、様々な政治勢力による示威活動や衝突等が生じましたが大規模な混乱は生じませんでした。2026年2月12日には総選挙が概ね平和裡に実施されました。今後は、新政権がどのような治安・テロ対策を講じていくかが、当地の治安・テロ情勢を左右する重要な要素となります。
(3)近年の誘拐情勢
2019年に邦人を対象とした拉致監禁事件が発生しましたが、それ以来は現在に至るまで邦人を対象とした誘拐事件は発生していません。
2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)各組織の活動状況
ア 「ジャマトゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」
バングラデシュ政府から非合法組織として活動禁止措置を受けています。2016年、ISILに感化された構成員が「ネオJMB」と称する分派を形成し、ダッカ襲撃テロ事件を起こしました。同事件に関わったとされる構成員の多くは治安当局により殺害又は逮捕されましたが、現在も国内において構成員が継続的に摘発されており、依然として活動中とみられます。
イ 「アンサール・アル・イスラム(AAI)」(別名「アンサールラ・バングラ・チーム(ABT)」)
国際テロ組織「インド亜大陸のアル・カーイダ(AQIS)」の影響を受けているとされ、政府から活動禁止措置を受けています。過去に複数の外国人ブロガー、出版関係者等の殺害に関与したとされ、2015年における連続ブロガー殺害事件後には「AQISバングラデシュ支部」を名乗る犯行声明が発出されています。2019年2月にもブロガー殺害を計画していたとして構成員4名がダッカ市内において逮捕されています。2022年11月には、AAIメンバーの死刑囚2人が首都判事裁判所から脱走し、現在も行方が分かっていません。
(2)各地域の治安情勢
ア チッタゴン丘陵地帯(カグラチョリ県、ランガマティ県、バンドルボン県)
インド及びミャンマーと国境を接するバングラデシュ南東部のチッタゴン丘陵地帯には、仏教系少数民族が100万人以上居住しており、過去において、自治権等を求める反政府組織が結成され、多くの死傷者を出す対立抗争が度々発生しました。1997年に「チッタゴン丘陵地帯和平協定」が締結されて以降、抗争は鎮静化しましたが、民族対立は依然として未解決のままであり、散発的に抗争事件は発生しているなど現地の治安情勢は依然不透明な状況が続いています。
イ 避難民キャンプ(コックスバザール)
バングラデシュ南部のコックスバザールでは、ミャンマーのラカイン州から避難し
てきた100万人以上の「ロヒンギャ(ラカイン州に居住するイスラム教徒)」が避難民キャンプに滞在しています。同キャンプにおける治安情勢は悪化した状態が継続しており、「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」によるロヒンギャ避難民への恐喝、身代金目的の誘拐などの不法行為が横行しているほか、ARSA、ロヒンギャ連帯機構(RSO)及びロヒンギャ犯罪組織がキャンプ内において抗争を度々繰り広げており、銃撃戦に巻き込まれたロヒンギャ避難民が負傷しています。ミャンマーへの帰還が見込めず、絶望状態に陥っている若いロヒンギャ避難民をターゲットに過激派組織が勧誘活動を行っており、今後、ロヒンギャ避難民によるテロの脅威は否定できません。
3 誘拐事件の発生状況
2019年に邦人を対象とした拉致監禁事件が発生して以来、現在に至るまで邦人を対象とした誘拐事件は発生していません。ただし、警察の犯罪統計によれば、2025年中、誘拐事件は1,100件発生しており、2024年の642件と比較すると大幅に増加しています。司法が十分に機能していないこと、親戚や顔見知りによる犯行のため当事者間で解決していること等から届出がされない事件も多数存在しています。
主な犯行主体は、組織的なギャング、警察や情報機関職員に扮した犯罪者、武装組織であり、主な標的は、子ども、労働者、社会的弱者、実業家です。誘拐の目的としては、身代金要求が最も一般的です。当地においても誘拐は重要事件として扱われており、捜査機関が協力して捜査に従事していますが、捜査開始後に被害者が死亡して発見される例もあり、捜査能力は決して高いとは言えません。
4 日本人・日本権益に対する脅威
2015年10月のロングプール邦人殺害事件、2016年7月のダッカ襲撃事件と2年連続して日本人がテロの犠牲となり、いずれも「ISILバングラデシュ」を称する組織による犯行声明が発出されました。また、当時、イスラム過激派は、同襲撃テロ事件を賞賛するメッセージや、新たなテロを呼びかけるメッセージを、映像や雑誌等の様々なメディアを通じて発出しました。
ダッカ襲撃事件以来、バングラデシュ政府はテロ対策を強化しており、外国人を巻き込むテロは発生していません。なお、2024年8月の政変後に発足した暫定政権の下では、前政権で拘束されていた関係者が釈放及び保釈されているという事実があります。また、2024年の抗議活動中に全国の多数の刑務所が襲撃を受け、少なくとも数百人の囚人が脱走しており、その中に、過激派組織の構成員が含まれている可能性は否定できません。2026年2月に実施された総選挙後に発足した新政権は、引き続き法と秩序の維持を最優先課題に位置づけていますが、世界的なテロ発生傾向や、当地において当局の過激派に対する摘発によって爆発物や火器等が押収されていることも踏まえれば、今後もバングラデシュにおけるテロ発生の可能性は排除されません。
イスラム過激派組織によるテロだけでなく、国際テロ組織の影響を受けた自国育
ちの単独犯(ローン・オフェンダー)によるテロにも警戒する必要があります。近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

