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パキスタン
テロ・誘拐情勢

更新日 2021年05月11日

1 概況
 パキスタンにおいては、テロ発生件数が2009年(2,586件(死者3,021人))をピークに減少傾向にあった中、2014年12月に発生したペシャワールにおける学校襲撃事件を受け、テロを許さないとの気運がかつてなく高まり、アフガニスタンとの国境地域において既に開始されていた軍事掃討作戦、都市部における取締りの強化をはじめとする各種テロ対策が政府一丸となって進められてきました。
 2020年においても、テロ対策の奏功による改善傾向は継続し、テロ発生件数146件(前年比-36%)、死者220人(前年比-38%)、負傷者547人(前年比-25%)と7年連続での減少となりました。
(1) 発生地域
 2020年は、KP州(旧連邦直轄部族地域(旧FATA)を含む)におけるテロが79件(死者100人、負傷者206人)となっており、次にバロチスタン州が42件(死者95人、負傷者216人)と続きます。
 パキスタン最大の都市シンド州カラチでは、15件(死者17人、負傷者65人)発生しています。首都イスラマバードにおいては、2020年中のテロの発生はありませんでした。(2019年は1件(死者2人、負傷者1人))。
(2) 攻撃対象
 2020年では、146件中84件が軍・治安機関関係者に対するテロであり最多となっています。続いて、民間人(「少数宗派」、「メディア関係者」等に当てはまらない一般市民)に対するテロが29件、次いで部族長老6件、シーア派法学者・コミュニティ、スンニ派指導者・コミュニティ、政治指導者・政治家がそれぞれ4件となっています。
(3) 攻撃手法
 2020年は、即製爆破装置(IED)によるものが68件、銃撃によるものが56件と大多数を占め、そのほか、手榴弾12件、ロケット攻撃4件、自爆3件と続きます。
(4) 自爆テロ
 2020年において、自爆テロの発生は3件であり、発生場所としては、バロチスタン州2件、KP州1件となっています。
(5) テロ情勢の特徴
 2020年のパキスタンにおけるテロ情勢の特徴として、大規模かつ不特定多数を狙ったテロが減少し、攻撃対象の過半数が軍・治安関係者であることが挙げられます。数値的に見れば大きく改善傾向にあると言えますが、依然として一般市民が巻き込まれるテロも発生しており、依然として予断を許さない状況が続いています。
(統計出典:「パキスタン平和研究所」)

2 主な組織の動向
(1) パキスタン・タリバーン運動(TTP)
 TTPは、アフガニスタンのタリバーンに影響を強く受けた部族地域の過激派とその他国内過激分子の緩やかな連合体として2007年末に結成され、政府機関等に対する攻撃を繰り返し、一時はかなりの勢力を形成しました。政府による掃討作戦の影響を受け、ここ数年、組織勢力の衰退が見えるものの、依然としてTTPはパキスタンにおける最も警戒すべきテロ組織です。2020年8月、TTPは、2014年以来分裂していたジャマートゥル・アハラール(JuA)、さらにイスラマバード近郊で小規模なテロを繰り返していたヒズブル・アハラール(HuA)との再統合を発表するなど、勢力の拡大を図っている様子がうかがえます。TTPは、2020年中、46件(死者56人、負傷者123人)のテロを行っており、2020年中のテロ発生件数の約3割を占めており、引き続きパキスタン最大の脅威であると言えます。
(2) 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)
 2020年には、ISILは、パキスタン国内で2件のテロを行いました。ISILのパキスタンへの浸透は2017年以降大きな関心事項となっていましたが、アフガニスタンにおけるタリバーンとの勢力争いやアフガニスタン軍等の攻撃により、大きな打撃を受けていることがうかがわれます。しかし、ISILが支配領域を失ったことにより、前線に展開していたパキスタン人戦闘員がパキスタンに帰還するなどの懸念があり、またISILの思想に共鳴した組織・個人がローン・ウルフ型のテロを実行するなどの可能性も否定できません。
(3) スンニ過激派
 宗派主義に基づくテロも、パキスタンの治安上の主要課題の一つとされています。最も危険なスンニ過激派組織とされるラシュカレ・ジャングビ(LeJ)は、これまでに主としてシーア派コミュニティを対象にテロを繰り返しています。主要幹部が治安当局に殺害されたことにより、攻撃能力が衰退したと見られていますが、2020年中は1件のテロを実行しており、引き続き注意が必要です。
(4) カシミール過激派
 ラシュカレ・タイバ(LeT)はムンバイ同時多発テロ(2008年)、ジェイシェ・ムハンマド(JeM)はインド国会議事堂襲撃事件(2001年)を実行したとの声明を発するなど、カシミール過激派は、主にパキスタン国外におけるインド権益を攻撃してきました。
 しかし、2019年2月、JeMの構成員を名乗る人物(インド人)がインド北部ジャンムー・カシミール州(当時)の主要幹線道路において実行した治安部隊に対する自爆テロを契機として、インド空軍機がパキスタン領空を侵犯し、「空爆した」と発表する事態に発展するなど、今後も、これらの組織によるテロを契機として、インド・パキスタン二国間の緊張が激化する可能性は否定できません。
(5) バローチ民族主義諸派
 バロチスタン州のパキスタンからの分離独立を志向するバローチ民族主義諸派は、同州各地でテロ活動を行っています。2018年、バロチスタン解放軍(BLA)は、在カラチ中国総領事館を襲撃するなど、バロチスタン州内で治安機関、軍に対して散発的に攻撃しました。2019年、バロチスタン州グワダルの中国人エンジニアが宿泊していた高級ホテルに対する襲撃も実行しています。
 犯行手口が多様化し、その標的も中国人を直接狙ったものになってきており、中パ経済回廊(CPEC)の進展に伴い、国内の開発格差等をめぐるバローチ人の不満が高まり、各種インフラ整備及び中国権益に関連する施設等に対するテロ攻撃を行う可能性は否定できません。

3 誘拐事件の発生状況
 パキスタンにおける誘拐事件は、パキスタン人対象のものがほとんどであり、2020年中、パキスタンにおいて日本人及び外国人を標的とした誘拐事件は発生していません。しかし、過去には件数は多くないものの、外国人を対象としたものが発生しています。直近では、2019年、イスラマバード市内において中国人が行方不明となり後日遺体で発見されたもの、また同市内においてドイツ人が行方不明となったものの2件が発生しました。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 現在、パキスタンにおいては、日本人・日本権益をテロの直接の標的とする具体的な動向は見られていませんが、テロに巻き込まれる可能性や誘拐のターゲットになる可能性は恒常的に存在しています。
 これまでも、国際テロ組織であるアル・カーイダやISIL関係者を名乗る者が、日本を攻撃対象として名指ししたことがあります。こうしたことから、日本人・日本権益についても、攻撃の巻き添えのみならず、直接の標的とされる可能性もあり、引き続き厳重な警戒が必要です。このような情勢を十分に認識して、誘拐、テロ等に遭わないよう、また、巻き込まれることがないよう、海外安全ホームページや報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め、日頃から危機管理意識を持つとともに、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

 「テロ」について国際的に確立した定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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