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ネパール
テロ・誘拐情勢

更新日 2023年09月20日

1 概況
 2022年には、マオイスト・チャンド派等、これら反政府組織が関与したとされる爆破、放火、恐喝事件等各種犯罪が散発的に発生しましたが、イスラム過激派(単独犯を含む)による国際テロ事件は発生していません。しかし、過去にはネパールとインド間のオープン・ボーダーを利用して、ムンバイ爆弾テロ事件の首謀者としてインドで指名手配されていた2名のインド人テロリストがネパールに逃亡・潜伏していたところ、2013年にネパール国内のインド国境付近で警察に拘束されるなど、同過激派の出撃拠点や隠れ家として滞在された事例が判明しています。また、インド国境地域には多数のモスクやマドラサ(イスラム神学校)が点在しており、インド人テロリストが、ネパール国内のインド国境付近のムスリムコミュニティ内の協力者から名義貸しを受け、ネパール旅券を取得したことも判明しています。
 2016年7月のバングラデシュでのテロ事件以降、バングラデシュ人の外国渡航が難しくなったことから、ネパールに不法入国したバングラデシュ人が偽造IDを用いてネパール旅券を取得し、外国に渡航しようとした事例も発生しており、ネパールがテロ企図者の潜伏場所やインド、パキスタン、バングラデシュ等周辺国へのテロ活動の拠点となる可能性があり、注意が必要です。
 マオイスト・チャンド派による誘拐、爆破、放火事件等違法行為は毎年多数発生していましたが、2021年3月に政府との合意により、今後平和的活動を行うことが約束され、2023年6月には、ダハル首相率いるネパール共産党(マイオストセンター)ら3つの政党と合同で「社会主義前線」を結成するなど平和的な活動に移行しており、現在は、同派による過激な活動は収束しています。しかしながら、和平合意の不履行などに対し、様々な抗議プログラムを行うなどしており、引き続き同派の活動に注視していく必要があります。
 誘拐については、過去にインド人ビジネスマンや中国人が誘拐された事件が確認されており、2022年8月には、カトマンズにおいて、中国人男性が自宅にいるところをネパール人6名に侵入され、拳銃を示して脅されて誘拐され、親族宛に身代金を要求される事件が発生しています。誘拐事件は、一般犯罪としての犯罪グループによる犯行がほとんどで、多くが身代金目的です。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
ネパール共産党マオイスト(マオイスト・チャンド派)
 内戦(1996年~2006年)を通じて王制打倒を牽引したネパール共産党毛沢東主義派・マオイスト(UCPN-M)が議会主義・現実主義路線に移行した際、これに反発したバイディア派(CPN-M)が2012年6月に分離し、その後2014年6月にバイディア派から更にチャンド派(略称はバイディア派に同じCPN-M)に分裂しました。革命の実施による共産党一党独裁体制の確立を目指す一方で、民族自決を尊重した地方分権も求め、現政治体制の解体による国民主体国家システムの樹立等を目指す同派は、近年、ネパール中西部から極西部の山間地を中心にネパール各地で多くの反政府活動を行っていました。2017年の選挙投票日前後を中心に、度々、内戦時代同様の手法(爆弾および火炎瓶)を使用して暴力的に反政府抗議活動を繰り返しました。2019年2月には、悪徳企業に制裁を行う名目で、手製爆弾を通信会社NCELLの事務所前で爆発させ、付近を通行していた一般人が巻き添えになり死亡する惨事となりました。この結果、同派は政府から犯罪団体と認定され、いかなる活動も禁止されました。
 その後も、このチャンド派を取り締まろうとする政府に反発し、バンダと呼ばれるゼネラルストライキや爆弾の設置、爆破、放火等の暴力行為を頻繁に行いました。2019年5月には、手製爆弾を作成中に誤って爆発させ、一般人を含む数名が死亡する事件が発生しました。
 また、2019年11月に行われた連邦・州議会および地方選挙の補欠選挙を威嚇する爆発事件や、12月には同派による爆弾爆発事件により、3人が死亡、4人が負傷する事件が発生しました。2020年12月にはモラン郡において、報復のために小学校校長を誘拐し殺害するという凶悪事件を起こしました。そのほか、資金源を確保するためとして、ネパール企業、外国企業関係なく企業等に寄付金を要求し、それに応じないと自宅や会社に爆弾を設置するなどして脅すという恐喝行為を行っていました。
 2021年3月の政府との和平合意以降、同派による暴力的・破壊的活動は収束していますが、和平合意の不履行や政府のインフレ政策などに対し、様々な抗議プログラムを行うなどしており、引き続きその活動に注視していく必要があります。

3 誘拐事件の発生状況
 ネパール警察によれば、2023年(ネパール犯罪統計2022-2023)の誘拐事件の発生件数は128件(2022年132件)でしたが、ほとんどが一般犯罪としての犯罪グループによる犯行で、多くが身代金目的です。外国人に対しては、過去にインド人ビジネスマンや中国人が誘拐される事件が確認されており、2022年8月には、カトマンズにおいて、中国人男性が自宅にいるところをネパール人6名に侵入され、拳銃を示して脅されて誘拐され、親族宛に身代金を要求される事件が発生しています。2022年5月の地方選挙期間中には、ルンビニ州東ルクム郡において、マオイストセンター党のメンバー 3 人が、女性を誘拐して殺害した容疑で逮捕されました。
 過去、日本人誘拐事件は発生していませんが、比較的裕福であると思われている日本人が被害に遭う可能性はありますので注意が必要です。
 誘拐事件はインドとの国境地域で特に多発する傾向にあり、誘拐犯はターゲットに近い人物から資産状況に関する情報を入手し、事前に綿密な計画を立て、実行しています。
 防止策としては、「目立たない」、「用心を怠らない」、「行動を予知されない」ことが重要です。
具体的には、
 ・資産状況を、安易に他人に漏らさない。
 ・使用人や運転手の身分調査をしっかりと行い、雇用後も油断しない。
 ・標的とならないために、なるべく目立たない服装や行動に心掛ける。
 ・強固な錠前を門やドア、窓等に設置するなど自宅の警備を強化する。
 ・訪問者(特に見知らぬ者)には自らの安全を確保した上で対応し、少しでも異変を感じたら警察に通報する。
 ・不審な電話がかかってくる、監視や尾行されていると感じる等の誘拐の前兆があれば、警察に通報する。
 ・夜間や単独での外出を避け、行き先や帰宅予定時間等をその都度、信頼できる関係者に伝えておく。
 ・自宅周辺、自宅からまたは自宅までの移動時、不審な車が駐車されているなど通常と違う点がないか観察し、注意を怠らない。
 ・通勤ルート、行動予定をパターン化しない。
などが危機管理上、重要と考えられます。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年では、単独犯によるローンウルフ型テロや、一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等のソフトターゲットを標的としたテロが世界各地で頻発しており、こうしたテロの発生を未然に防ぐことは困難です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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