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インド
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年09月25日

1 概況
 ジャンム・カシミール準州を除き、インドの主要都市においては、近年、死者を伴うテロ事件は発生していませんが、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)や「アル・カーイダ」(AQ)の思想に感化された者が国内でのテロを企図して逮捕される事案が継続して発生しているなど、依然としてイスラム過激派によるテロの脅威はあるものと考えられます。そのほか、ジャンム・カシミール準州におけるイスラム過激派、インド中東部(チャッティースガル州、ジャールカンド州、ビハール州、オディシャ州等)における極左過激派(「ナクサライト」)、インド北東部(アッサム州、マニプール州、ナガランド州等)における分離・独立主義過激派等のテロ組織が存在し、テロ事案も継続して発生しており、引き続き予断を許さない情勢が続いています。
 誘拐については、外国人が被害者となる事案数は多くはありませんが、全国で年間10万7,000件以上と、高い水準で誘拐事件が発生しており(2022年中)、引き続き注意が必要です。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)都市部におけるイスラム過激派
 ここ数年、インドの主要都市において死者を伴うテロは発生していませんが、それ以前には各地において、「ラシュカレ・タイバ」(LeT)や「インディアン・ムジャヒディン」(IM)等のイスラム過激派による不特定多数の市民を狙ったテロが発生していました。2008年11月には、マハーラーシュトラ州ムンバイにおいて、外国人を標的とした同時多発テロ(165人(日本人1人を含む)死亡、304人(日本人1人を含む)負傷)が発生しました。また、2010年2月にマハーラーシュトラ州プネで爆弾テロ(17人死亡、約60人負傷)、同年12月にウッタル・プラデシュ州バラナシでも爆弾テロ(1人死亡、37人(日本人2人を含む)負傷)が発生しました。そのほかにも、2011年7月にムンバイで連続爆弾テロ(27人死亡、約130人負傷)、同年9月に首都デリーの高等裁判所前で爆弾テロ(15人死亡、約70人負傷)が発生したほか、2014年5月にタミル・ナド州チェンナイで爆発事件(1人死亡、約10人負傷)が、同年12月にカルナタカ州ベンガルールでも爆発事件(1人死亡、1人負傷)が発生しました。
 ISILやAQの思想に感化された者がインド国内でのテロを企図したとして逮捕される事案も継続して発生しています。2020年8月、首都デリーにおいて、独立記念日におけるテロを企図したなどとして逮捕されたISIL関係者とみられる者の居宅から大量の爆発物が押収されるなど、依然としてイスラム過激派によるテロの脅威はあるものと考えられることから、引き続き注意が必要です。

(2)ジャンム・カシミール準州におけるイスラム過激派
 ジャンム・カシミール準州を中心に活動するイスラム過激派(カシミール過激派)は、イスラムによるインド亜大陸の統治を標榜し、カシミール地方のパキスタンへの帰属(あるいはインドからの独立)、同地方からのヒンドゥー教徒の排除等を主張しています。同地域ではテロ事案が頻発していましたが、2019年8月、インド政府により、ジャンム・カシミールの「特別な地位」を廃する決定がなされて以降、同地域に対する多くの治安要員派遣が継続している一方、これに反対する勢力らによる大規模テロの危険性も指摘されているなど、依然としてテロ発生のリスクは高く、予断を許さない状況です。また、2021年10月以降、ムスリムでない市民がテロの標的とされ、イスラム過激派が犯行声明を発出するという事例も把握されています。

(3)中東部における極左過激派
 極左過激派(ナクサライト)は、極左思想を背景に、貧困層や部族民の利益擁護を掲げて武力闘争を行うマオイスト等の過激派組織の総称であり、チャッティースガル州、ジャールカンド州、ビハール州、オディシャ州等の中部州において、テロ活動を活発に行っていました。近年は、インド政府の取締り等により、その勢力は減退しつつありますが、治安部隊や反対住民に対する襲撃事件は依然として発生しています。これら地域には、政府による治安維持機能が十分に及んでいない地域(密林地帯等)が点在し、治安情勢は不安定であり、注意を要します。

(4)北東部における分離・独立主義過激派
 北東部のアッサム州、マニプール州、ナガランド州等の地域では、インドからの独立や民族の地位向上を目指す分離・独立主義過激派が、 治安部隊や他の部族民に対する襲撃等を行っており、依然として死傷者が出ています。2023年5月にはマニプール州内において、多数派のメイテイ族が指定部族入りを要求したことにより少数派のクキ族との間で部族間衝突が発生し、大規模暴動に発展する事態となり、インド北東部の治安情勢に大きな影響を及ぼしました。特段外国人を標的とする暴動ではありませんが、日本人はマニプール州等北東部出身者と容姿が似ていることから暴動に巻き込まれる可能性があり特に注意が必要です。また、マニプール州を除くインド北東部における近年の治安情勢は、多くの過激派がインド政府との間で和平協定を結ぶなど、治安状況に顕著な改善傾向が見られますが、 「アッサム統一解放戦線独立派」(ULFA-I)等の一部過激派は未だ闘争を続けており、引き続き注意が必要です。

3 誘拐事件の発生状況
 インド各地で、政治目的や身代金目的等の誘拐事件が多発しています。国家犯罪統計局によると、2022年中にインド国内で発生した誘拐事件は、107,588件(前年より5,881件増)に上っています。そのうち、外国人が被害に遭ったものは7件(前年より4件増)です。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 インド国内において日本人・日本権益を直接的な標的とするテロ組織は確認されていませんが、2008年のムンバイ・テロのように、日本人が都市部でテロに巻き込まれる可能性は否定できず、また、ジャンム・カシミール準州や中東部、北東部において、国際社会の注意を喚起するために実行されたテロ・誘拐事件等に日本人や日本企業等が巻き込まれる可能性も排除されません。また、極左過激派が自らの影響力の強い地域に進出する企業を攻撃する意思を表明していることにも留意する必要があります。テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が多く集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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