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インド

更新日 2020年03月10日

1 概況
 ジャンム・カシミール準州を除き,インドの主要都市においては,近年,死者を伴うテロ事件は発生していませんが,ISIL(イラク・レバントのイスラム国)の思想に感化された者が国内でのテロを企図して逮捕される事案が継続して発生しているなど,依然としてイスラム過激派によるテロの脅威はあるものと考えられます。そのほか,ジャンム・カシミール準州におけるイスラム過激派,インド中東部(チャッティースガル州,ジャールカンド州,ビハール州,オディシャ州等)における極左過激派(ナクサライト),インド北東部(アッサム州,マニプール州,ナガランド州等)における分離・独立主義過激派等のテロ組織が存在し,テロ事案も継続して発生しています。大規模な事案としては,昨年2月,ジャンム・カシミール州プルワマ(当時)において,治安部隊員40名以上が死亡する自爆テロが発生しました。
 誘拐については,外国人が被害者となるものは近年ほとんど発生していませんが,全国で年間10万件以上と,高い水準で誘拐事件が発生しており,引き続き注意が必要です。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)都市部におけるイスラム過激派
 ここ数年,インドの主要都市において死者を伴うテロは発生していませんが,それ以前には各地において,ラシュカレ・タイバ(LeT)やインディアン・ムジャヒディン(IM)等のイスラム過激派による不特定多数の市民を狙ったテロが発生していました。2008年11月には,マハーラーシュトラ州ムンバイにおいて,外国人を標的とした同時多発テロ(165人(日本人1人を含む)死亡,304人(日本人1人を含む)負傷)が発生しました。また,2010年2月にマハーラーシュトラ州プネで爆弾テロ(17人死亡,約60人負傷),同年12月にウッタル・プラデシュ州バラナシでも爆弾テロ(1人死亡,37人(日本人2人を含む)負傷)が発生しました。そのほかにも,2011年7月にムンバイで連続爆弾テロ(27人死亡,約130人負傷),同年9月に首都デリーの高等裁判所前で爆弾テロ(15人死亡,約70人負傷)が発生したほか,2014年5月にタミル・ナド州チェンナイで爆発事件(1人死亡,約10人負傷)が,同年12月にカルナタカ州ベンガルールでも爆発事件(1人死亡,1人負傷)が発生しました。
 ISILの思想に感化された者がインド国内でのテロを企図したとして逮捕される事案も継続して発生しているなど,依然としてイスラム過激派によるテロの脅威はあるものと考えられることから,引き続き注意が必要です。

(2)ジャンム・カシミール準州におけるイスラム過激派
 ジャンム・カシミール準州を中心に活動するイスラム過激派(カシミール過激派)は,イスラムによるインド亜大陸の統治を標榜し,あるいはカシミール地方のパキスタンへの帰属やインドからの独立等を主張しています。昨年2月にはプルワマにおいてジャイシェ・モハンマド(JeM)による自爆テロ事案が発生し,治安部隊員40名以上が死亡しました。同事案を機に空爆が実施されるなど,インド・パキスタン両国による大規模な軍事衝突の可能性にまで発展しました。また,昨年8月には,インド政府により,インド側カシミールの「特別な地位」を見直す決定がなされ,連邦直轄領となった昨秋以降も通信制限や大規模な治安部隊の展開が継続しています。依然としてテロ発生のリスクは高く,予断を許さない状況であり,高い警戒が必要です。

(3)中東部における極左過激派
 極左過激派(ナクサライト)は,極左思想を背景に,貧困層や部族民の利益擁護を掲げて武力闘争を行うマオイスト等の過激派組織の総称であり,チャッティースガル州,ジャールカンド州,ビハール州,オディシャ州等の中部州において,テロ活動を活発に行っていました。近年は,インド政府の取締り等により,その勢力は減退しつつありますが,治安部隊や反対住民に対する襲撃事件は依然として発生しています。これら地域には,政府による治安維持機能が十分に及んでいない地域(密林地帯等)が点在し,治安情勢は不安定であり,注意を要します。

(4)北東部における分離・独立主義過激派
 北東部のアッサム州,マニプール州,ナガランド州等の地域では,インドからの独立や民族の地位向上を目指す分離・独立主義過激派が, 治安部隊や他の部族民に対する襲撃等を行っており,依然として死傷者が出ています。近年は,多くの過激派がインド政府との間で和平協定を結ぶなど,治安状況に顕著な改善傾向が見られますが, アッサム統一解放戦線独立派(ULFA-I)やナガランド民族社会主義評議会カプラン派(NSCN-K)等の一部過激派は未だ闘争を続けており,引き続き注意が必要です。

3 誘拐事件の発生状況
 インド各地で,政治目的や身代金目的等の誘拐事件が多発しています。統計(国家犯罪統計局)によると,2018年中にインド国内で発生した誘拐事件は,105,734件(前年より9,841件増)に上っています。なお,同年中,外国人が被害に遭ったものは4件となっています。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 インド国内において日本人・日本権益を直接的な標的とするテロ組織は確認されていませんが,2008年のムンバイ・テロのように,日本人が都市部でテロに巻き込まれる可能性は否定できず,また,ジャンム・カシミール準州や中東部,北東部において,国際社会の注意を喚起するために実行されたテロ・誘拐事件等に日本人や日本企業等が巻き込まれる可能性も排除されません。また,極左過激派が自らの影響力の強い地域に進出する企業を攻撃する意思を表明していることにも留意する必要があります。
 テロによる日本人の被害は,シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは,日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており,これまでもチュニジア,ベルギー,バングラデシュ,スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。近年では単独犯によるテロや一般市民が多く集まる公共交通機関等(ソフトターゲット)を標的としたテロが頻発するなど,テロの発生を予測し未然に防ぐことがますます困難となっています。
 このように,テロはどこでも起こり得ること,日本人も標的となり得ることを十分に認識し,テロの被害に遭わないよう,海外安全ホームページや報道等により最新の治安情報の入手に努め,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

テロについて

 「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが,一般には,特定の主義主張に基づき,国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は,このような「テロ」に該当するか否かにかかわらず,外務省が報道等の情報に基づいて海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり,本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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