マレーシア
安全対策基礎データ
- 犯罪発生状況、防犯対策
1 一般犯罪
2020年におけるマレーシアの犯罪届出件数は、65,623件であり、前年比で17,852件減少しています。
マレーシアの犯罪発生件数は、年々減少傾向であるものの、スリや置き引き・ひったくりなどの「街頭犯罪」や家屋への侵入窃盗の発生も高水準にあることから、注意が必要です。
主な凶悪犯罪の届出件数は、次のとおりです。
(1)殺人:253件(前年比60件減少、人口10万人あたりの発生率は日本とほぼ同じ)
(2)強盗:7,326件(同2,402件減少、人口10万人あたりの発生率は日本の約19倍)
(3)強制性交等:1,582件(同156件減少、人口10万人あたりの発生率は日本の約4倍)
2 防犯対策
海外では、言語・習慣等が異なるため、「自分の身は自分で守る」という覚悟を持つことが重要です。
犯罪に巻き込まれないための予防策が大切であり、その主なものは次のとおりです。
(1)第三者や関係者の注意が及びにくい環境(状況)を避け、警戒を強化する
ア 時間的要素:深夜・早朝、観光シーズン、年末年始、祝祭日、大規模行事実施日など
イ 場所的要素:観光地など(例:史跡・名勝地)、イベント会場(意識が一点に集中するため、身辺の注意がおろそかになりがちとなる)、大規模商業施設(ショッピングモール等)の出入口など
ウ 人的要素:高齢者同士、子供連れ、カップル、集団(観光ツアー客、修学旅行、視察団など)
(2)多くの人が集まりやすい場所(状況)を避け、警戒心を強める
ア 路上(特に道路側の歩道、交差点、路地と大通りの境目など)
イ 空港・駅・バスターミナルその他交通の要衝
ウ 大規模商業施設、観光スポット、宗教関連施設など
(3)犯罪遭遇リスクを下げる
ア リスクの高い環境下に長時間いない(なるべく近づかない、滞在時間を短くする、常時非常口や脱出ルートを確認・シミュレートする)
イ 避難しやすい態勢作り(動きやすい服装と歩きやすい靴を着用し、手荷物は最小限にとどめる)
ウ 安全情報の収集
(ア)信頼できる情報源を確保する(各国外務省・大使館や報道機関の発表など)
(イ)ソーシャルメディア情報を鵜呑みにしない
(ウ)「良好な人間関係」の構築(社内、近所、地元住民の口コミは情報収集の基盤)
(4)万一事件事故に巻き込まれた場合は「安全第一」
強盗には抵抗せずに金品を渡し、速やかに現場から離脱して「二次被害」を避ける。胸ポケットから財布等を取り出すしぐさをしない。
(5)長期滞在時に犯罪被害に巻き込まれないための注意事項
ア 犯罪者は、事前に下見をすることが多いので、平素から住居周辺に気を配り、不審者が徘徊している場合などはガードマンや警察に通報するよう心掛ける。
イ 玄関のドアや防犯グリル(格子)を常に施錠し、ドアチェーンをかけ、来訪者応対時の確認を確実に行う。
ウ メイドやガードマン等が犯罪者の手引きをする例もあるので、警戒を怠らない。
エ 家族の行動、居場所等を常に把握し、変更が生じる場合は、必ず連絡を取り合う。
オ 普段から不審電話を警戒し、電話機の近くには緊急連絡先リストやメモ等を常備する。
カ 自宅に多額の現金を置かない。旅券などの貴重品は金庫や厳重に鍵のかかる場所に保管する。
キ 夜間外出時には、敢えて室内照明を点灯させておくなど、不在であることを気付かれないようにする。
ク 家を長期間留守にする場合は、あらかじめ郵便物や新聞等の処理を信頼のおける近隣者や知人に依頼しておく。
ケ 在宅中に侵入者に気付いたときは、速やかに警察に通報(警備会社への通報装置を利用するなど)し、侵入者との接触を避ける(施錠可能な部屋に立てこもるようにする)。
コ 空き巣は、騒ぎ立てられて居直り強盗(殺人)に急変する例が多いので注意が必要。
3 日本人の犯罪被害例
マレーシアで在留邦人および短期滞在者が遭遇する代表的な犯罪は、上記でも紹介した「街頭犯罪」(スリ・置き引き、・ひったくり等)です。また、路上強盗やタクシー強盗の被害もしばしば報告されています。
このほか、インターネットを介した詐欺(振り込め詐欺、ロマンス詐欺)も、発生しています。これらの詐欺は、日本人のみならず諸外国民も多数被害に遭っていることから、各国大使館でも、インターネット上での接点しかない「知人」に、不用意に金品を送付しないよう警戒を呼び掛けています。以下に、日本人がよく遭遇する犯罪被害例を紹介します。
(1)置き引き
空港の出入国時、ホテルのチェックイン・チェックアウト時、飲食店での雑談中、周囲への警戒が緩む隙を狙い、バッグ等から財布等の貴重品を抜き取られる、またはスーツケースや鞄等を盗まれるのが典型例です。
犯人は、声を掛ける、小銭をわざと落とす、子供を近づけるなどの手段で被害者の警戒・注意をそらし、犯行に及びます。「外出中は常に警戒心を保持する」意識を持つことが重要です。
日本人が被害に遭った過去の事例では、ビュッフェ・スタイルのレストラン(ホテルの朝食時が多い)で不用意に荷物や携帯電話を置いたまま席を外し、盗難に遭った事案が多数報告されています。
(2)スリ(集団スリ)
マレーシアではスリ被害が多数発生しており、バス等の公共交通機関の車内や、駅・大規模商業施設など、人が密集する場所が狙われます。複数で被害者の周りを取り囲み、被害者や周囲の人々に気付かれないように犯行に及ぶ集団スリや、職務質問名目で財布を預かり、一部の現金を抜き取る手口もあります。集団スリの場合、被害品を盗む実行犯が直ちに周辺にいる共犯に被害品をリレー式で手渡し、その場を立ち去るケースが多く、狙われると被害阻止は極めて困難です。
スリ被害の予防は、人混みを出来る限り避けつつ、トートバッグ等の蓋、チャックの無いバッグ、ズボンのポケットなど、盗まれやすい場所には貴重品を入れないことが重要です。併せて、バッグ等は常に自分の目に見える範囲で所持し、人混みでは開口部等を手で押さえておく等、警戒を明示することも重要です。
(3)ひったくり
日本と同様、マレーシア国内の主要都市では、背後から接近してきた二人乗りまたは単独のバイクに手荷物を強奪されるひったくりが頻発しており、女性および高齢者の被害が多数報告されています。ひったくりの際の転倒や、抵抗して路上を引きずられて大怪我を負う例も多数あります。
したがって、手荷物は極力少なくするとともに、バッグ等はたすき掛けで道路側にさらさないなど、常に自らが標的とされていないか周囲を警戒することが肝要です。
(4)強盗(特に刃物を使ったもの)
マレーシアでは、「パラン刀」と称する大型の山刀が常用されているため、これで被害者を傷つけて金品を奪う路上強盗が多数発生しています。犯人は、被害者が抵抗等する場合には躊躇なく切りつけ、金品を全て強奪します。このため、深夜までの飲酒や夜間の外出、単独行動は厳に慎むとともに、万一、同様の被害に遭遇した場合には、抵抗せずに身の安全を最優先とすることが重要です。
(5)昏睡強盗(泥酔あるいは薬物を盛って貴重品を盗むもの)
観光地等で知り合った見知らぬ人物と意気投合し、共に飲食したところ意識を失い、目覚めたときには所持品が無くなったというのが典型的な例です。手口としては、薬物を入れた飲み物を勧める、トイレ等で中座した隙に飲食物に混入する等があります。
被害防止には、見知らぬ人物との飲食は相応のリスクがあることを理解し、飲食を勧められても不用意に口にしないことが重要です。また、食事中に席を離れた場合には、それ以降飲食しない等の警戒も必要です。
(6)自動車強盗(接触や追突を偽装して車両を強奪)
高速道路等を走行中、後続車両から追突・接触され、路肩に停車して降車したところ、相手車両から複数の犯人が現れて暴行を加えられた上、車両を強奪される事案が度々発生しています。
交通事故に遭遇した際は、24時間以内に警察(交通警察)に届け出ればよいことから、事故状況に不審な点がある、あるいは複数の男性が相手方車両に乗車している場合は、自動車強盗の可能性を疑い、車両から降りる前に相手をよく観察し、不審点があれば、直ちに離脱して警察署等へ移動することをお勧めします。
(7)タクシーをめぐるトラブル(白タク、運転手による強盗・強制性交等)
マレーシアのタクシーは、運転が荒く、料金トラブルも多い傾向があるほか、運転手による乗客からの金品強奪、女性客への暴行等が頻発し、安全面でも問題を抱えています。このため、最近はGRABやdacseeなどといった「配車アプリ」を利用して、事前に運転手と支払料金を確認した上でタクシーを利用する客が増えており、ホテルや駅などでタクシーを拾う場合でも流しを拾わずに配車アプリで探す方が主流となっています。したがって、タクシーを利用する際は、流しのタクシーを避けてこれら配車アプリを活用し、事件やトラブルを避ける事をお勧めします。
(8) クレジットカード犯罪・スキミング
インターネットの普及により、オンラインによる決済が頻繁に利用されており、これに伴い、不正アクセス等による商品購入等の不正使用事案や、クレジットカード、キャッシュカード等のスキミング事案も発生していますので、十分に注意してください。
(9)いかさま賭博、当選金詐欺
クアラルンプール市では、ブキ・ビンタンやKLCC、チャイナタウン等を中心に、見知らぬ男女から声を掛けられ、民家に誘われてトランプ・ゲーム(ブラック・ジャック)に興じて、金品を騙し取られるという事案が発生しています。
また、路上を散策中に「企業キャンペーンの無料くじ」を引くよう誘われ、引いたところ「高額商品が当選したので事務所に来て欲しい」と言われるがまま移動し、手数料や手付金の名目で金銭を支払わされる事案が発生しています。
いずれの事案も、不用意に犯罪集団の本拠地に付いていくことによって発生していることから、見知らぬ人からの誘いには警戒心を持って対応し、不用意に相手に付いて行かないことが重要です。
4 マレーシアを相手先とする各種詐欺(「オークション詐欺」、「ロマンス詐欺」など)
マレーシアでは、携帯電話の購入や銀行口座の開設が容易な上、アジア・中東方面との航空便のアクセスが良好であることから、世界各地の犯罪集団がマレーシアを拠点に各種詐欺を行っています。特に、インターネットを介した商取引や国際交流を悪用した「オークション詐欺」や「ロマンス詐欺」は、日本を含む各国大使館が警戒を呼びかけており、注意が必要です。
なお、マレーシアで犯罪被害に遭遇した場合、警察への被害申告は被害者本人が行う必要があり、大使館を含む第三者が被害申告を行うことは出来ません。このため、マレーシア国外からマレーシアに居住する人物と取引を行う場合には、相手方が信頼に足るものかよく見極め、詐欺被害に遭遇するリスクがあることを承知の上で行う必要があります。以下に、典型的な犯罪被害例を紹介します。
(1)「オークション詐欺」
携帯電話やカメラのレンズ等、コンパクトで高額な商品をヤフーなどのオークションサイトに出品していたところ、マレーシアから「出品価格よりも高額で購入するので、直接取引で直ちに商品を送付して欲しい」との偽造の国際送金書類を添付したメールを受信。相手が示した住所に商品を送付するも、それ以降連絡が取れなくなるもの。
オークションサイトの規定に反して直接取引を行うため、補償もできず泣き寝入りとなることが多い。
(2)「ロマンス詐欺」(振り込め詐欺)
SNS等を通じて知り合った外国人異性(主に欧米人と称する男女)から、「あなたに会うため日本を訪れようとしたが、経由地のマレーシアで警察(入国管理局)に捕まり、保釈金が必要」、「あなた宛に送った小包(現金、贈り物)等が税関当局で留められた。後日送金するので、関税(手数料)を肩代わりして欲しい」等のメールを受信。海外送金サービス等でマレーシアあるいは日本の銀行口座に送金したところ、連絡が取れなくなる。また、不足しているとして、何度も送金を要求される場合もある。
誰にも相談せずに送金してしまうケースが多く、複数回送金した結果、被害額が数百万円に上ることも珍しくない。
相手のプロフィールはでたらめで、顔写真や身分証は画像加工ソフトで切り貼りした代物であることが多い。
(3)手数料詐欺
マレーシアあるいは第三国に居住する人物から、「遺産」「研究費」「寄付」等の名目で多額の送金をする旨メール等で連絡。しばらくすると「為替手数料」「送金手数料」「臨時口座開設手数料」「通関手続料」等、様々な名目で送金を促すメールが送りつけられ、詐欺と気づくまで送金し続けてしまうもの。
当該人物から送りつけられる書類は、もっともらしい公的機関や企業等のロゴや連絡先が示されているが、実際には存在しない、あるいは既に閉鎖されているものが多い。また、文書を精査すると旧英国植民地のマレーシアから発出された文書なのにアメリカ英語で記載されているなどの矛盾点が認められることがある。
5 テロ・誘拐情勢
テロ・誘拐情勢については、こちら(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_017.html)をご確認ください。
※ 在留邦人向け安全の手引き
現地の在外公館(日本大使館・総領事館等)が在留邦人向けに作成した「安全の手引き」もご参照ください。
(1)在マレーシア日本国大使館 https://www.my.emb-japan.go.jp/files/100260848.pdf
(2)在ペナン日本国総領事館 https://www.penang.my.emb-japan.go.jp/safety/safetymanualPENANG2020.pdf
(3)在コタキナバル領事事務所 https://www.kotakinabalu.my.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000048.html- 査証、出入国審査等
手続や規則に関する最新情報については、駐日マレーシア大使館(電話:03-3476-3840、ウェブサイト:https://www.kln.gov.my/web/jpn_tokyo/home )等にお問い合わせください。
現在、新型コロナウイルスの流行に伴い、入国制限措置や入国に際しての条件、行動制限措置がとられることがありますので、詳細は駐日マレーシア大使館、マレーシア入国管理局(ポータルサイト:https://ww.imi.gov.my/)等にお問い合わせいただくほか、在マレーシア日本国大使館のHP(https://www.my.emb-japan.go.jp/itpr_ja/my_seigen.html)をご確認ください。)
1 査証
2021年11月現在、非マレーシア国籍者によるマレーシアへの入国は一部の者に限られ、かつ、事前にマレーシア入国管理局から入国許可を取得する必要があります(新型コロナウイルス感染拡大防止対策の一環)。宗教活動、調査研究活動、テレビ・映画撮影等の目的の場合は、必ず査証が必要です。
なお、旅券は有効期間(残余期間)が6か月以上ないと入国を拒否されるので、注意してください。
2 出入国審査
(1)入国時、入国審査官から入国目的・滞在期間を尋ねられ、旅券に滞在期間が記載されます。
2011年6月1日から、生体認証システム導入により、両親指および両人差し指の指紋登録が求められています。
長期滞在予定者は、入国後、必要に応じて延長手続を行います。また、手続には相当の日数を要するため、早めに行うことが必要です。また、ワクチンの予防接種証明書は、入国制限対象国や国内の汚染地区を通過して来ない限り提示を求められることはありません。
(2)サバ州およびサラワク州では、別途異なった入出域管理を行っており、入域にはクアラルンプール等マレー半島部のマレーシア国内から旅行する場合でも、旅券を提示して入出域許可を受ける必要があります。
3 所持金の申告
マレーシア政府は、マレーシア人および外国人を含む全ての旅行者に対し、一定額以上の通貨の国外への持出しや国内への持込みについて、以下のとおり規定しています。
(1)マレーシア貨
10,000米ドル相当を超えるマレーシア貨の持出しはマレーシア中央銀行(バンク・ネガラ)の許可が必要で、持込みについては税関に申告する必要があります。
(2)外貨
10,000米ドル相当を超える外貨(トラベラーズ・チェックを含む)を所持している場合は、税関に申告が必要です。申請書は空港の入国管理局事務所、あるいは税関で入手できます。
4 通関
(1)免税品の持込みは、葉巻煙草225g(紙巻き煙草200本に相当)、酒類1リットル、衣類3着・靴1足、パーソナルケアおよび衛生のための電化製品はそれぞれ1つ、調理食品は150リンギを超えない額、その他規定されていない製品については、タイヤとチューブを除き、500リンギを超えない額が、それぞれの上限となっています。また、麻薬類、ポルノ等の出版物・絵画・写真・読本・石版刷りカードおよび彫刻、銃器類、短剣・ナイフ等が主な輸入禁止品です。
(2)医療用麻薬を含む医薬品の携帯による持込み、持出しの手続については、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index_00005.html )をご確認ください。
5 空港税
空港税は、一般的に航空券購入の際に代金の中に含まれています。- 滞在時の留意事項
1 マレーシアの滞在期間と滞在資格
(1)滞在期間の延長、在留資格の変更手続は入国管理局(Immigration Office)で行います。滞在期間を超えての滞在または在留資格外の活動は、それぞれ罰せられ、国外退去となる場合があります。早めに手続をすることが肝要です。
なお、1年以上滞在する長期雇用契約者用査証(Employment Pass)を取得した人には、入国管理局から「Expatriate Identification Card」が発給されます。
(2)就労目的の場合は、必ず入国前に査証が必要です。
2 旅行制限
旅行に関する制限はありませんが、軍事関係施設、宗教施設、危険地域等の中には、入域禁止あるいは監督官庁の許可取付けを必要とする施設があります。また、国立公園内での動植物の捕獲・採集は禁止されており、他の地域についても禁止されている場合があるので、許可が必要か確認してください。
3 写真撮影の制限
博物館、寺院・モスク、軍事施設等には撮影禁止区域があるため、撮影前に確認が必要です。なお、撮影禁止区域には、その旨の表示があります。また、地元の一般市民(特にイスラム教徒の女性)を撮影する場合は、事前に本人の了解を得る必要があります。勝手に撮影して反感を招かないよう配慮してください。
4 旅券の携行
日本人旅行者が検問中の警察官から旅券の提示を求められ、(紛失により)不携行であったため警察に身柄を拘束されたことがありました。置き引きやひったくりに十分に注意しつつ、旅券は常時携行する必要があります。
なお、旅券紛失の際は、速やかに警察に紛失届けをするとともに、最寄りの日本国大使館もしくは総領事館において旅券もしくは「帰国のための渡航書」の発給を受けてください。
5 交通事情
(1)道路事情
ア マレーシアの交通手段は、高架電車、バス、タクシー、自家用車、オートバイが一般的です。
イ 道路は、都市部においては大抵舗装されており、交差点の多くが信号のないロータリー式交差点(ラウンド・アバウト)になっています。
ウ 主要道路は、朝・夕のラッシュ・アワー、昼の時間帯および雨天時など大変混み合います。
エ 一般的に車優先の道路構造であるため、歩行者の安全性を考慮した横断歩道や歩道橋等が十分に整備されていません。
オ 郊外では、家畜の車道進入があるので注意が必要です。
カ 道路標識はマレー語表記のものが多く、信号機は低い位置に設置されています。
(2)規則
交通規則(左側通行、シートベルトやヘルメット着用、飲酒運転禁止、法定速度遵守等)は日本とほぼ同じです。しかし、ラウンド・アバウトにおける右側からの進入車両優先等、認識していなければわからないような規定・規則がありますので、特に車を運転する場合は、基本的な交通規則を十分に習得しておいてください。
(3)交通事故
交通事故の主な原因は、車の急増および未熟な運転技能の他、無謀な追越し、速度超過、定員超過等、運転モラルの欠如および交通規則無視があります。特にオートバイは、庶民の足になっていますが、マナーの悪さは甚だしく、そのため主要道路では車との接触事故が多発しています。
なお、過去に日本人が起こした車両交通事故の原因としては、脇見運転、スピード違反、二車線道路での無理な追越し等があります。事故を起こさないよう、また遭わないように注意して運転することが肝要ですが、万一事故に遭遇した時の主な措置は次のとおりです。
ア 交通事故に巻き込まれたり、事故を起こしたりした場合は、直ちに警察に連絡し、負傷者がいる場合は救急車を呼び、とりあえず安全な場所に運ぶなどの救護措置をとるとともに、警察の指示に従って事故届(被害届)の提出等の対応を行ってください。また、保険会社にも連絡して対応を依頼するとともに、事故が大きな場合には、在マレーシア日本国大使館等最寄りの日本の在外公館にも連絡してください。
イ マレーシアでは、事故の届け出は交通警察に対し24時間以内に行うこととされています。この規定に反すると、届け出ができなくなるのみならず、保険等の適用まで無効とされてしまうことがありますので、軽い物損事故等であっても、後刻、必ず交通警察への届け出を行ってください。なお、物損事故等の場合、事故を起こした相手からその場で示談を迫られるようなことも少なくありませんので、禍根を残さないよう、ドライブレコーダーを設置する、携帯カメラ等で証拠写真を撮影しておくなどが有用です。
6 犯罪防止
(1)麻薬等違法薬物
マレーシアにおいても、麻薬等違法薬物に関わる規制は非常に厳しく、外国人も例外ではありません。危険薬物法(1983年改正)によれば、ヘロイン・モルヒネ15g以上、あるいは大麻(マリファナ、カンジャ)200g以上の所持は死刑、また、それ未満でも無期懲役等の重刑が科されます。麻薬関係の違反者は、外国人であっても厳しく処罰されており、「外国人旅行者だから少しぐらいは大丈夫だろう」などという考えは絶対に通用しません。
麻薬撲滅のため、空港、警察署、病院など至るところに“DADAH DEATH”(麻薬=死)を掲示し、また、テレビ放映等でもその恐ろしさを訴えています。
麻薬犯罪に巻き込まれないためにも、次のことに留意ください。
ア 自分では気付かないうちに「運び屋」として利用される可能性もあるので、入出国の際に、見知らぬ人物や知り合ったばかりの人物から、「△△氏へのおみやげに、この箱を持って行って欲しい。」などの依頼を受けた場合は、毅然とした態度をもってこれを拒否する。
イ 警察が摘発のための捜査を行う場合は、とりあえず現場にいる人すべてを逮捕するので、路地裏等麻薬取引が行われている可能性が高い場所には絶対に立ち入らないようにする。
ウ 自動車に麻薬を積んでいる場合もあるので、事情を知らずに同乗し、一緒に検挙されることのないよう、ヒッチ・ハイク等は絶対にしない。
(2)銃器不法所持
銃器は法律で厳しく規制されています。マレーシアでは、モデルガン所持も犯罪行為になります。
過去に、日本人の短期商用出張者がモデルガンをマレーシアに持ち込んで、「模造銃砲類所持違反」容疑で警察に身柄を拘束され、その後、裁判の結果、有罪(罰金刑と拘留)となった事案が発生しています。
(3)その他
賭博や売買春行為等には、厳しい規制と罰則が適用されます。十分御留意ください。そのほか、思想、宗教活動にも厳しい制限があり、国の治安を損なう危険性のある印刷物(例えば、共産主義等に関するもの)の発行・販売は禁止されています。
7 在留届の提出
マレーシアに3か月以上滞在される方は、緊急時の連絡等に必要ですので、到着後、遅滞なく在マレーシア日本国大使館、在ペナン日本国総領事館、在コタキナバル領事事務所に「在留届」を提出してください。また、在留届の届出はオンラインの在留届電子届出システム(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet )からできます。また、住所その他届出事項に変更が生じたとき、または日本への帰国や他国に転居する(一時的な旅行を除く)際には、在留届電子届出システムにて、その旨を届け出てください。
8 「たびレジ」の登録
在留届の提出義務のない3か月未満の短期渡航者の方(海外旅行者・出張者を含む)は、外務省海外旅行登録「たびレジ」への登録をお願いします(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/ )。「たびレジ」に渡航期間・滞在先・連絡先等を登録すると、滞在先の最新の安全情報がメールで届き、緊急時には在外公館からの連絡を受けることができます。安全情報の受け取り先として、家族・同僚等のメールアドレスも追加登録できますので、併せてご活用ください。- 風俗、習慣、健康等
1 風俗
マレーシアは、憲法上イスラム教を国教(連邦の宗教)と定めており、人口の60%以上を占めるイスラム教徒(マレー系とごく一部の中国系およびインド系)の間では、次のような教義、風俗、習慣があるので留意する必要があります。
(1)酒、豚は摂らない。
(2)左手は不浄とされているので、握手、物の受渡しは右手を使う。
(3)人差し指で指すことは、失礼なこととされているため、親指を使う。
(4)頭は、身体の神聖な部分とされているため、子供の頭はなでたりはしない。
(5)婦人に対しては、こちらから握手を求めない。
(6)日没から夕方の祈りの時間が始まるので、日没後1時間程度は、訪問および電話を避ける。また、イスラム教徒を招待する夜の行事には、開始時間の配慮が必要。
(7)イスラム教徒は毎年、イスラム歴に従って約1か月間、日の出から日没までの間は、飲食・喫煙等を断つ「断食」がある。この期間中、イスラム教徒を食事に招待する等の交際は、相手の都合を配慮して行う必要がある。
2 集団礼拝
イスラム教では、金曜日が集団礼拝の日とされており、その機会を利用して、政治的スピーチやデモが行われ、それが大規模化、暴徒化する場合があります。また、その際、モスク等宗教施設やデモ等を狙ったテロや襲撃が行われることもありますので、特に金曜日には不用意に宗教施設等に近づかないようにしてください。
3 衛生
(1)水道水の衛生は比較的保たれていますが、地域や場所によっては十分に殺菌されていない場合もあるため、飲用には適しません。飲用水は、浄水器を通した後、煮沸したもの、もしくはミネラルウォーターをお勧めします。
また、水道水によるコンタクトレンズの洗浄は、避けた方が無難です(肉眼で確認困難な微粒子でレンズに傷が付くため)。なお、洗面、入浴などの日常生活においての利用に問題はありません。
(2)食品は、生(なま)ものは気を付ける必要がありますが、十分に加熱処理を施したものであれば安全と言えます。ただし、熱帯では細菌増殖が活発なため、加熱処理後の作り置きには気を付ける必要があります。
ア 野菜類は寄生虫感染の危険性があるので、食べ方(生、加熱処理)に気を付ける必要があります。
イ 生の魚介類は、寄生虫感染やA型肝炎等に罹患する危険性が高いため、加熱調理を基本にするなど十分注意を払う必要があります。
ウ 卵は十分加熱していないと、サルモネラ菌に感染する可能性があります(この菌は、卵の「しろみ」に存在し、米国FDA(食品医薬局)は半熟卵も食さないよう注意を促しています)。
4 健康
(1)消化器系感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸チフス)
生食により、コレラ、腸チフス等の伝染病に感染するおそれがあります。予防策としては、前述のとおり食物に十分に加熱処理を施し、調理後は時間を置かずに食べることが肝要です。
(2)結核
結核患者の発生率はいまだに高い状況です。罹患者と同室で過ごす等により長時間、接触がある場合は、感染の危険性がありますので、メイド等を雇用する場合は気を付ける必要があります。
(3)デング熱(ウイルス感染症)
デング熱は、日中活動するネッタイシマカ等を媒介とする感染症で、症状は風邪に似ており、感染から2~7日目に頭痛、関節痛および筋肉痛を伴う高熱を発し、また血小板が急激に低下して発疹が見られることもあります。高熱は5日ほど続き、全身の倦怠感は、その後も暫く残ります。
予防ワクチンや治療薬はなく、対症療法による治療が行われます。このため、虫除けや蚊取り線香、殺虫剤の使用の他、長袖シャツや長ズボンを着用するなど、蚊に刺されないよう注意することが大切です。
また、出血やショック症状を伴う重症型としてデング出血熱があります。デング熱とほぼ同時に発症経過しますが、解熱の時期に血漿漏出や血小板減少による出血傾向に基づく症状が出現し、死に至ることもあります。
(参考)感染症広域情報:アジア大洋州におけるデング熱の流行
http://www2.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/pcinfectioninfo.asp
(4) 狂犬病
マレーシアでは、2017年以降、国内の一部の地域(東マレーシアに位置するサラワク州)で狂犬病の感染が確認されており、ほぼ全例で死亡が報告されています。犬に限らず野生動物には不用意に接触しないようにしてください。万が一接触し感染の恐れがある場合には、速やかに医療機関を受診して適切な処置を受けてください。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する疾患です。犬などに噛まれた場合、必ず当日中に病院を受診し、ワクチンの接種などについて相談してください。
(5)ポリオ
マレーシアでは、2000年にポリオ根絶を宣言していましたが、2019年12月、東マレーシアに位置するサバ州において、27年振りとなるポリオ感染者が確認され、現在までにサバ州で4例が報告されています。マレーシア政府によるポリオ予防接種キャンペーンや環境調査等の措置が執られているものの、現在、特効薬などの確実な治療法はないため、サバ州へ渡航予定の方は、追加の予防接種を検討してください。
5 医療機関
クアラルンプール市内の主要な病院の中には、医療水準が日本と同等レベルのものがあり、日本人が診療を受けるのに特に問題はないとされています。日本への留学経験があり、日本語で診療が可能な医師も一部の医療機関に勤務していますが、多くの場合、日本語は通じないため、英語による診療となります。
(1)受診方法
予約が望ましいですが、直接来院して診察を受けることも可能です(但し、その場合は長時間待たされることもあります)。往診は通常は行われていません。
(2)緊急医療体制
緊急番号999(注)に電話してAmbulance部門に繋いでもらい、自分の住所、電話番号、具体的な症状を伝えれば救急車を手配してもらえます。但し、999をダイヤルした場合には、全て自動的に国・公立病院(General Hospital等)に移送されますので、私立病院への搬送を希望する場合は、当該病院に直接連絡を取るようにしてください。なお、交通事故などの突然の怪我についても、自分で説明する事が可能であるならば、私立の病院に搬送してもらうよう、救護者にお願いしてください。
なお、国・公立病院(General Hospital等)の医療費は安価ですが、医師数、技術面、検査機械、入院施設等の設備面では、私立病院の方が充実している場合が多いので、入院先の選定は慎重に行う必要があります。
(3)「世界の医療事情(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/asia/malaysia.html)(マレーシア)および(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/asia/kotakinabalu.html )(コタキナバル)」において、国内の衛生・医療事情等を案内しています。その他、必要な予防接種等については、厚生労働省検疫所ホームページ(https://www.forth.go.jp/destinations/country/malaysia_singapore.html )を参考にしてください。- 緊急時の連絡先
[クアラルンプール]
◎警察・救急車:999
◎火災:994
[ペナン]
◎警察・救急車:(04)999
◎火災:(04)994
[コタキナバル]
◎警察:(088)221-191(ホットライン)
◎救急車:(088)250-555
◎火災:(088)994
[ジョホールバル]
◎警察・救急車:(07)999
◎火災:(07)994
在マレーシア日本国大使館 (市外局番03)2177-2600
国外からは(国番号60)-3-2177-2600
在ペナン日本国総領事館 (市外局番04)226-3030
国外からは(国番号60)-4-226-3030
在コタキナバル領事事務所 (市外局番088)254-169
国外からは(国番号60)-88-254-169- 問い合わせ先
外務省
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311
○領事サービスセンター
電話:(外務省代表)03-3580-3311(内線)2902、2903
(関連課室連絡先)
○領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐関連を除く)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5145
○領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐関連)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3047
○海外安全ホームページ
http://www.anzen.mofa.go.jp/ (PC版・スマートフォン版)
http://www.anzen.mofa.go.jp/m/mbtop.html (携帯版)
(現地公館連絡先)
○在マレーシア日本国大使館
住所:11, Persiaran Stonor, Off Jalan Tun Razak, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia
電話:(03)2177-2600
ホームページ:http://www.my.emb-japan.go.jp/Japanese/index.htm
○在ペナン日本国総領事館
住所:28th Floor Menara BHL, 51 Jalan Sultan Ahmad Shah, 10050 Penang, Malaysia
電話:(04)226-3030
ホームページ:http://www.penang.my.emb-japan.go.jp/index_jp.htm
○在コタキナバル領事事務所
住所:18th Floor, Wisma Perindustrian, Jalan Istiadat, Likas, 88400 Kota Kinabalu,
Sabah, Malaysia (P.O.Box 440)
電話:(088)254-169
ホームページ:https://www.kotakinabalu.my.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
※本情報記載の内容(特に法制度・行政手続き等)については、 事前の通告なしに変更される場合もありますので、渡航・滞在される場合には、渡航先国の在外公館または観光局等で最新情報を確認してください。