1 概況
(1)カメルーンにおいては,2011年10月に行われた大統領選挙で現職のポール・ビヤ大統領が6期目の再選を果たし,比較的安定した政権運営が行われていますが,2017年10月1日,英語圏2州である北西州及び南西州において英語圏独立記念日を巡り,デモ隊と治安部隊が衝突した結果,多数の死傷者が発生したほか,外国人が誘拐され,殺害される事件が発生しています。また,2018年には大統領選挙も控えており,政情が不安定となるおそれがあります。一般犯罪も依然頻発しており,特に雇用の悪化や物価の上昇等を背景として強盗や窃盗事件が多発し,殺人事件も増加しています。犯罪増加の傾向は全国的に見られますが,商業都市ドゥアラで最も顕著に表れており,首都ヤウンデでも顕著となっています。
(2)隣国のチャド,中央アフリカから武装強盗集団が越境してカメルーン国内に侵入しています。特に中央アフリカでは,2013年3月の政変以降,旧反政府勢力セレカの元分子による暴行・略奪が頻発しており,これに反発する一部キリスト教徒の自警団アンチ・バラカによる暴行・略奪も頻発している他,両者の間で激しい衝突を繰り返しています。こうした事態に伴い,元セレカ分子の一部が国境を越えてカメルーン国内に侵入し,カメルーン治安機関との衝突による死傷者が出ています。
(3)極北州では,ナイジェリア北東部を中心に活動しているイスラム過激派組織ボコ・ハラムが勢力を拡大し,カメルーン国内にも侵入しており,2013年以降,ボコ・ハラムの犯行とみられている外国人の拉致事件が連続して発生しているほか,2015年にはカメルーン国内初の自爆テロ事件が発生し,現在も断続的に発生しています。また,ボコ・ハラムとカメルーン軍との衝突も断続的に発生しています。こうしたボコ・ハラムの脅威は,今後,北部州にも及ぶおそれもあります。
(4)これまでに,カメルーンにおいて日本人・日本権益を直接標的としたテロ事件は確認されていませんが,上記のとおり,カメルーンではイスラム過激派組織等によるテロ事件,誘拐事案等が続発しており,外国人も殺害される事案が発生しています。
このような情勢を十分に認識して,誘拐,脅迫,テロ等に遭わないよう,また,巻き込まれることがないよう,海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め,日頃から危機管理意識を持つとともに,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。
2 地域情勢
(1)極北州
レベル4:
退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)
ア 極北州では,ナイジェリア北東部を拠点とするボコ・ハラムがカメルーンに侵入の上,外国人を拉致,自爆テロを実行したり,カメルーン軍を襲撃して大規模な衝突を繰り広げ,数多くの死傷者が出ています。
例えば,2013年2月,極北州のナイジェリア国境付近で,首都ヤウンデ在住の子どもを含む仏人7人が,バイクに乗った武装勢力に誘拐されナイジェリアに連れ去られた事件(同年4月に解放)や,同年11月,コザ地区で仏人司祭が拉致された事件(同年12月に解放)はボコ・ハラムによる犯行の可能性があるとみられています。その後も,2014年4月には同州マルアでイタリア人司祭2人とカナダ人修道女が拉致された事案,同州の中国の建設現場が襲撃され,少なくとも10人が拉致された事案,さらには極北州にあるカメルーン副首相の自宅が襲撃され同夫人が拉致される事件等が発生しており,最近では,2017年5月から7月にかけて,ラマダンの時期を狙ったボコ・ハラムによる連続自爆テロがそれぞれ発生し,約30人の死者が発生しています。
イ こうしたなか,カメルーン政府はナイジェリアとの国境付近に軍を展開させ,ボコ・ハラム掃討作戦を行っており,2014年5月にはポール・ビヤ大統領が「ボコ・ハラムへの宣戦布告」を行いその対決姿勢を明らかにしました。それ以降,ボコ・ハラムによる襲撃は質・量ともに一層過激化しており,今後も,外国人拉致・誘拐,自爆テロのほか,政府・軍を対象とした襲撃事案が続く非常に高い脅威が認められます。
つきましては,極北州に既に滞在している方は,以上の治安情勢にかんがみ,速やかに国外(安全な場所)に
退避してください。また,同地域への渡航は,情勢が安定するまでの間いかなる目的であれ止めてください。
(2)中央アフリカ国境地帯,北部州ナイジェリア国境地帯及びチャド国境地帯
レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)
ア 中央アフリカ国境地帯においては,不安定な中央アフリカ情勢により,多くの中央アフリカ難民がカメルーン国内に逃げ込んでいるほか,侵入してくる元セレカ分子とカメルーン軍との間で衝突が発生し死傷者が出ています。
イ 北部州のナイジェリア国境地帯においては,ナイジェリアのボコ・ハラムが,ナイジェリア側の国境付近の町を襲撃し,住民を殺害し略奪するなどして制圧しつつ南下しています。2014年11月には,ナイジェリア国境付近のケラワでボコ・ハラムの襲撃によりカメルーン兵士1人が殺害されました。その後も同地域におけるボコ・ハラムによる襲撃事件は断続的に発生し,2015年9月には,ケラワで連続自爆テロ事件が発生し,二十数人の死者が出ています。
ウ 北部州のチャド国境地帯においては,2015年3月にトゥボロで商業バスに乗っていた牧夫等8人が武装集団に誘拐される事件が発生し,同年5月には,トゥボロ付近のガザワで,村長宅が武装集団に襲撃され,村長とその妻が殺害され,100頭以上の牛が略奪される事件が発生しています。同地帯には中央アフリカの元セレカ分子がチャド領内を通過してカメルーン国内に侵入してくることがあり,今後も武装集団が身代金目的で外国人を誘拐する可能性が否定できません。
つきましては,同地域への渡航・滞在はどのような目的であれ止めてください。
(3)北部州(ナイジェリア国境地帯・チャド国境地帯を除く),ナイジェリア国境地帯(極北州及び北部州を除く),南西州バカシ半島及びバカシ半島沖
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
ア 北部州は,ボコ・ハラムが勢力を拡大している極北州と近接しており,特に州都ガルアは,極北州との州境からわずか数十kmの地点に位置し,地形上の障害も少ないことから,ボコ・ハラム等のイスラム過激派組織が容易に侵入することが可能となっています。また,ボコ・ハラムのメンバーと一般人との識別は難しく,すでに相当数のボコ・ハラムのメンバーが潜伏している可能性もあり,今後,ボコ・ハラムによる外国人の拉致事件,自爆テロ事件やボコ・ハラムとカメルーン軍との戦闘に巻き込まれる危険性も排除できません。
イ 極北州,北部州以外のナイジェリア国境地帯でも,ボコ・ハラム等のイスラム過激派組織のメンバーが偽造旅券を使用してカメルーン国内に侵入してくる可能性は排除できず,これらの地域への移動及び滞在には危険が伴います。
ウ 南西州バカシ半島沖では,航海中の船舶が武装集団に襲撃され船員が誘拐される事件が多発しています。この傾向は2008年から顕著になっており,カメルーン政府は同事件に対処するため,2009年4月に同沖近くにカメルーン軍所属のBIR(緊急介入部隊)の基地を設置し,バカシ半島沖をパトロールしています。2012年以降発生件数は減少していますが,引き続き注意が必要です。
つきましては,同地域への不要不急の渡航・滞在は止めてください。渡航・滞在する場合には,特別な注意を払うとともに,現地の最新の情報の入手に努め,特に夜間の外出は控えるなど,十分な安全対策をとってください。
(4)北西州及び南西州(ナイジェリア国境地帯を除く地域)
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(引き上げ)
ア 北西州及び南西州は英語圏であり,英語圏の分離独立主義者がいます。同主義者は,英語圏と仏語圏が統合した1961年10月1日を英語圏の独立記念日であると一方的に宣言した上,2017年10月1日には北西州及び南西州において大規模なデモを敢行し,北西州の州都であるBamenda(バメンダ)及び南西州の州都であるBuea(ブエア)において,警察当局とデモ隊が衝突した結果,多数の負傷者が発生しました。そのほか,両州の各都市においても治安部隊との衝突が発生し,報道等によれば,少なくとも17名が死亡し数十名が負傷したとされています。その後も,これら地域において,治安部隊の殺害事件や治安部隊と分離主義武装勢力間による衝突事案が増加しています。このため,カメルーン政府は,英語圏へ夜間外出禁止令を発令するとともに,治安部隊を増派の上,厳しい検問及び取締を実施しており,現在も夜間外出禁止令は継続されています。
イ この地域では,これまで外国人が標的になる事件の発生はありませんでした。しかしながら,2018年3月15日,出勤途中の外国人が分離独立派と見られる者に身代金目的で誘拐された後,殺害されるという事件が発生しており,今後も,同様の誘拐事件が発生する可能性があるほか,不測の事態に巻き込まれる可能性が排除できません。
つきましては,上記の治安情勢にかんがみ,これら地域の危険レベルを1から2へ引き上げますので,不要不急の渡航は止めてください。また,やむを得ず渡航する場合には,特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。
(5)その他の地域
レベル1:十分注意してください。(継続)
ア ドゥアラ市及び首都ヤウンデでは犯罪が多く発生しており,特にドゥアラ市は商業都市という性格上,雑然とした地区も多く,カメルーン国内で犯罪発生件数が最も多い地域です。ヤウンデ市内やドゥアラ市内では,現金等を狙った押し込み強盗が深夜時間帯を中心に頻発しており,また,タクシー運転手が客を装った共犯者と強盗事件を敢行する等の事件も散発しています。その他,両市の大規模な市場は,スリや強盗の巣窟となっています。過去,ヤウンデ市内のモコロ市場で,日本人が強盗の被害に遭い負傷する事件や大使館が所在するバストス地区で徒歩の日本人がバッグをひったくられそうになり負傷した事件が発生しています。2017年10月には,深夜帰宅途中の日本人が,物乞いをやり過ごそうとしたところ,突然,頭部を殴打された後,財布を窃取される強盗傷害事件が発生しています。ドゥアラ市では,日中の市内中心部で日本人が刃物を持った3人組から所持品すべてを強奪される事件が発生しています。市場をはじめ人通りの多いところでは,周囲の状況に十分気を配るとともに,多額の現金を持ち歩いたり人目を引きやすい装飾品を身に着けたりしない等の対策が必要です。
イ バカシ半島沖で発生していた武装集団による船舶への襲撃事案は,減少傾向にありますが,ドゥアラ港をはじめ周辺の港湾施設を訪問する際は引き続き十分注意してください。
ウ アダマワ州では,昼夜を問わず道路封鎖強盗が出没しています。カメルーン政府はこれらの犯罪に対処するために軍内部にBIR(緊急介入部隊)を設置し,北部3州それぞれに拠点を設け,道路封鎖強盗が頻発する国境付近の幹線道路等には重点的に部隊を配置し24時間体制で監視しています。道路封鎖強盗は主に商人や家畜飼いを標的としていますが,旅行客が乗車した長距離バスや国際機関職員が乗車した車両等も被害に遭っていることから,同地方を車両で移動する際は十分な安全対策が必要です。
つきましては,上記地域に渡航・滞在するに当たっては危険を避けて頂くため特別な注意が必要です。治安情勢に関する最新情報の入手に努め,目立つ行動は避けると共に周囲に警戒を払う等,十分に注意してください。特に,深夜早朝の外出は控え,治安部隊の近くや,警察施設及び軍施設に立ち寄ることは避けてください。
3 滞在に当たっての注意
カメルーン滞在中は,下記の事項に十分留意して行動し,あらかじめ危険を避けるようにしてください。また,日本国外務省,在カメルーン日本国大使館,現地関係機関等より最新の情報を入手するよう努めてください。なお,詳細については,「安全対策基礎データ」(
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_098.html )をご参照ください。
(1)在留届,たびレジ
海外渡航の際には万一に備え,家族や友人,職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。
3か月以上滞在する方は,在カメルーン日本国大使館が緊急時の連絡先を確認できるよう,必ず在留届を提出してください。(
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet )
3か月未満の旅行や出張などの際には,渡航先の最新安全情報や,緊急時の在カメルーン日本国大使館からの連絡を受け取ることができるよう,外務省海外安全情報配信サービス「たびレジ」に登録してください。(
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/ )(2)カメルーンと国境を接するナイジェリア,チャド及び中央アフリカの情勢はいずれも不安定です。近年,カメルーンから陸路で,これら諸国へ移動する邦人旅行者が後を絶ちませんが,これら諸国の国境周辺はレベル3又はレベル4を発出している地域が多く,非常に危険ですので,陸路での移動は止めてください。
(3)夜間,特に徒歩での外出は控え,昼間でも複数で行動するよう心掛けてください。なお,凶器(けん銃,ナイフ等)を使用した凶悪事件が多発しているため,これらのケースに遭遇した場合,生命に危険が及ぶ可能性がありますので抵抗は避けてください。
(4)警察・軍当局による検問が日常至る箇所で実施されていますので,外出時には必ずパスポート又はそのコピーを常時携帯するようお勧めします。また,治安当局による検問には素直に応じてください。
(5)近年,カメルーン人と名乗る者が本邦の業者に商取引を持ちかけ,架空の商談を口実として手数料等の名目で金品を騙し取る手口が横行しています。カメルーンからの商談を受けた際には,詐欺事件が頻発していることに留意しつつ,取引相手との交渉に臨んでください。
4 隣国のナイジェリア,チャド,中央アフリカ,コンゴ共和国,ガボン,赤道ギニアについても,別途それぞれ危険情報が発出されていますので,併せて留意してください。
(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902,2903
(外務省関連課室連絡先)
○領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐関連を除く)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5140
○領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐関連)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3047
○海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/ (PC版)
https://www.anzen.mofa.go.jp/sp/index.html (スマートフォン版)
http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp (モバイル版)
(現地大使館連絡先)
○在カメルーン日本国大使館
住所:1513, Rue1828, Bastos-Ekoudou, Yaounde, Cameroun
電話:(市外局番なし)2220-6202,2220-6585
国外からは(国番号237)2220-6202,2220-6585
FAX:(市外局番なし)2220-6203
国外からは(国番号237) 2220-6203
ホームページ:
http://www.cmr.emb-japan.go.jp/jp/index-jp.html