1 概況
(1)タイでは,2016年10月13日にプミポン前国王陛下が崩御し,1年間の服喪期間にあり,多くの国民が弔意を示しています。
(2)2006年のクーデター以降,タクシン元首相を支持する勢力と反対する勢力間の対立が解消されていない状態が続いています。2014年5月22日,クーデターにより軍事政権が発足し,今もなお同政権の施政下にあり,言論や集会の自由を制約する等の規制下にあります。
(3)バンコクや中部のリゾート地等において爆弾事件が発生しており,2015年にはバンコクにおいて日本人が爆発に巻き込まれ負傷する事件も発生しています。
(4)タイ南部では,中央政府の支配に反抗するイスラム系武装勢力によるとみられる襲撃・爆発事件等が頻発しています。これらのテロ活動の主な標的は警察,軍,刑務所等の職員や施設,公共交通機関等となっていますが,ホテルやショッピングセンターなどが対象となることもあります。
(5)タイとカンボジアの国境地域においては,両国の主張する国境線の相違による緊張状態が続いています。現在,タイとカンボジアの両軍は,両国の紛争地域から撤退し,事態はおおよそ沈静化していますが,現在も,同地域には立入制限が設けられており,今後も衝突等不測の事態が発生する可能性が排除されません。
(6)これまでに,タイにおいて日本人・日本権益を直接標的としたテロ事件は確認されていませんが,(3)のように日本人が巻き込まれて被害に遭う事件が発生しています。また,近年,シリア,チュニジア及びバングラデシュにおいて日本人が殺害されたテロ事件や,英国,フランス,ドイツ,ベルギー,トルコ,インドネシア,フィリピン等,日本人の渡航者が多い国でもテロ事件が多数発生しています。このように,世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか,これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており,日本人・日本権益が標的となり,テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。このような情勢を十分に認識して,誘拐,脅迫,テロ等に遭わないよう,また,巻き込まれることがないよう,海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め,日頃から危機管理意識を持つとともに,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。
2 地域情勢
(1)タイ南部3県(ナラティワート県,ヤラー県,パッタニー県及びソンクラー県の一部(ジャナ郡,テーパー郡及びサバヨーイ郡))
:「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)。」
南部地域にはタイからの分離独立を標榜するイスラム系武装勢力が存在し,主にナラティワート県,ヤラー県及びパッタニー県に拠点を設けて活動を続けています。これまでに同集団によるとみられる襲撃,爆発事件が続発しており,死傷者は,軍・警察関係者,教員を含む公務員やその他一般市民,外国人まで広く及んでいるほか,仏教徒のみならずイスラム教徒も被害に遭っています。2017年4月19日には,ナラティワート県,パタニー県,ソンクラー県で,警察署,検問所など13カ所が武装グループの襲撃を受け,2名が死亡,1名が負傷する事件が発生しています。なお,2004年から2016年までに6,850人が殺害され,12,547人が負傷しています。
ア ナラティワート県
ナラティワート県では,2017年4月27日,タイ軍兵士6人が乗ったピックアップトラックが武装グループの襲撃を受け,6人全員が死亡する事件が発生しています。また,2016年9月6日,タクバイ郡の学校前で爆弾が爆発し,女児とその父親が死亡するほか男女8名が重軽傷を負う事件が発生しています。
イ ヤラー県
ヤラー県では,2017年5月23日,パトロール中の兵士が路上に仕掛けられた爆弾や銃による攻撃を受け,兵士2人が死亡する事件が発生しました。また,2015年5月14日,ヤラー県ヤラー市の商業地区や銀行など計14カ所で,武装勢力とみられる集団が即席爆弾を爆発させ,十数人が負傷する事件が発生しています。
ウ パッタニー県
パッタニー県では,2017年5月9日,スーパーマーケットで爆弾が2回爆発し,買い物客ら約60人が負傷する事件が発生しました。また,2016年10月24日,飲食店で爆弾が爆発し,1人が死亡,18人が負傷する事件が発生しています。
エ ソンクラー県の一部(ジャナ郡,テーパー郡及びサバヨーイ郡)
ソンクラー県テーパー郡では,2016年1月18日,カラオケ店で爆弾2発が爆発し,従業員1名が死亡,客,店員ら6名が重軽傷を負う事件が発生しました。
つきましては,南部3県及びソンクラー県の一部(ジャナ郡,テーパー郡及びサバヨーイ郡)への渡航・滞在,及び同地域を通過してのマレーシアへの越境等は,どのような目的であれ止めてください。
(2)ソンクラー県(ジャナ郡,テーパー郡及びサバヨーイ郡を除く)
:「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」
ソンクラー県では,バイクや自動車に仕掛けられた爆発物による爆弾事件が,2013年12月22日,同県サダオ郡のサダオ警察署付近,同郡ダンノークのオリバーホテル付近及び商業施設で,また,2014年5月6日,ハジャイ市のハジャイ警察署及びポンピチャイ通りのコンビニエンスストアで発生しています。
つきましては,ソンクラー県(ジャナ郡,テーパー郡及びサバヨーイ郡を除く)への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には,特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとって下さい。
(3)シーサケート県のプレアビヒア寺院周辺地域(同県のカンボジアとの国境地域東部)
:「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」
ア タイとカンボジアの国境地域においては,両国の主張する国境線の相違による緊張状態が続いています。特に両国がともに領有を主張していた世界遺産プレアビヒア寺院(タイ側呼称:カオ・プラ・ウィハーン遺跡)周辺の国境地域では,カンボジアによる世界遺産登録申請を契機に2008年以降,タイとカンボジア両国軍武力衝突が断続的に発生し,双方に死傷者が出ました。その後,2011年に国際司法裁判所(ICJ)は同寺院周辺を暫定的な非武装地域とし,両軍の速やかな撤退を命じる判決を出しました。
イ 2012年7月18日以降,タイとカンボジアの両軍はICJの命令に基づき,プレアビヒア寺院周辺の地域から軍の撤退を実施して以降事態はおおよそ沈静化していますが,現在も,同地域には立入制限が設けられており,今後も衝突等不測の事態が発生する可能性が排除されません。2014年10月,カンボジアとタイ国境で,短期間の銃撃が発生したとの報道もあります。
ウ 2013年 11月には,ICJにおいて,1962年のプレアビヒア寺院裁判の判決解釈(カンボジアの帰属とするもの)が発表されたものの,判決解釈に関する両国の認識にはなお隔たりがあります。
つきましては,同寺院周辺地域(カンボジアとの国境地域)への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には,特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとって下さい。
(4)首都バンコク
:「レベル1:十分注意してください。」
ア タイ国内の政治情勢としては,2006年のクーデター以降,タクシン元首相を支持する勢力と,同元首相に反対する勢力との間で対立が解消されない状態が続いています。
イ 2013年11月以降の反政府デモにおいて,反政府活動の拠点や,デモ集会・行進の周辺における警官隊との衝突,発砲事件等で死傷者が出る事案が散発的に発生しました。
ウ 2014年5月20日,陸軍が全国に戒厳令を発出,同22日には,陸軍司令官を中心とする「国家平和秩序維持評議会(NCPO)」が統治権を掌握する旨発表し,軍事政権が発足しました。
エ その後,戒厳令は2015年4月1日に解除されましたが,同日,暫定憲法第44条に基づくNCPO命令が発出されました。このNCPO命令において,引き続き,治安維持に係わる,言論や集会の自由が制約される等の規制が存続しています。
オ 2015年8月17日夜,首都バンコク中心部のラチャプラソン交差点において爆発事件が発生し,外国人を含む20名が死亡,日本人1名を含む多数の負傷者が発生しました。また,翌18日昼午後1時20分頃,サートンピア(バンコク中心部チャオプラヤ川のタクシン橋付近の船着き場の水中)で爆発が発生しました(死傷者なし)。
カ 2017年5月22日午前,バンコク戦勝記念塔付近の軍関連病院内において爆弾事件が発生し,タイ人25名の負傷者が発生しました。なお,4月5日には民主記念塔付近で,5月15日には国立劇場付近で,6月16日にはUNESCOの事務所付近で,それぞれ小型爆弾が爆発しています。
つきましては,首都バンコクへの渡航・滞在に当たっては,最新の情報の入手に努める等,不測の事態に巻き込まれることのないよう十分注意してください。
(5)スリン県の一部(パノム・ドン・ラック郡及びガープ・チューン郡のカンボジアとの国境地域)
:「レベル1:十分注意してください。」
タイとカンボジアの国境地域においては,両国の主張する国境線の相違による緊張状態が続いています。2011年4月,スリン県のカンボジアとの国境地域(パノム・ドン・ラック郡のタークワイ寺院周辺及びガープ・チューン郡のタームアン寺院周辺)において,タイとカンボジア両国軍との間で武力衝突が発生し,死傷者が出ています。現在,事態は沈静化していますが,今後も衝突等不測の事態が発生する可能性が排除されません。
つきましては,スリン県パノム・ドン・ラック郡及びガープ・チューン郡のカンボジアとの国境地域周辺への渡航・滞在に当たっては,不測の事態に巻き込まれることのないよう十分注意してください。
3 渡航・滞在に当たっての注意
(1)タイにおいては,南部地域のほか首都バンコクや中部のリゾート地等において爆弾事件が発生しています。不測の事態に巻き込まれることのないよう以下の点に注意してください。
●不特定多数の人が集まる場所(観光施設,公共交通機関,レストラン,ショッピングモール等),軍・警察をはじめとする政府関連施設や宗教関連施設などを訪れる際には,周囲への警戒を怠らないようにする。
●不審物や不審者等を察知した場合には,その場を離れるなど慎重な行動を心がける。
●爆発事件が発生した場合,時間差で第二の爆発が起きる可能性があるため,現場に近づかない。
(2)プミポン前国王陛下の崩御により,多くのタイ国民は弔意を表しています。外国人に対して同様の行動が求められているわけではありませんが,こうした状況を理解し,礼節を持って行動するよう心がけてください。
(3)渡航・滞在に当たっては,「安全対策基礎データ」や「安全の手引き」も参考に,危険を避けるよう行動してください。
また,外務省,在タイ日本国大使館,在チェンマイ日本国総領事館,現地関係機関,報道等から最新情報を入手するよう努めてください。
(4)海外渡航前には万一に備え,家族や友人,職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。
3か月以上滞在する方は,在タイ日本国大使館又は在チェンマイ日本国総領事館が緊急時の連絡先を確認できるよう,必ず在留届を提出してください。(
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/zairyu/index.html )
3か月未満の旅行や出張などの際には,渡航先の最新安全情報や,緊急時の大使館又は総領事館からの連絡を受け取ることができるよう,外務省海外旅行登録「たびレジ」に登録してください。(
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/# )
(5)近隣のミャンマー,ラオス,カンボジア及びマレーシアにもそれぞれ危険情報が発出されていますので,そちらにも留意してください。
(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(外務省代表)03-3580-3311 (内線)2902,2903
(外務省関連課室連絡先)
○外務省領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐関連を除く)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5139
○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐関連)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3047
○外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp (PC版)
https://www.anzen.mofa.go.jp/sp/index.html (スマートフォン版)
http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp (モバイル版)
(現地公館連絡先)
○在タイ日本国大使館
住所:177 Witthayu Road, Lumphini, Pathum Wan, Bangkok 10330
電話:(市外局番02)207-8500又は696-3000
国外からは(国番号66)-2-207-8500又は696-3000
FAX:(市外局番02)-2-207-8510
国外からは(国番号66)-2-207-8510
ホームページ:
http://www.th.emb-japan.go.jp/ ○在タイ日本国大使館領事部
電話:(市外局番02)207-8502又は696-3002(邦人保護)
国外からは(国番号66)-2-207-8502又は696-3002
FAX:(市外局番02)207-8511
国外からは(国番号66)-2-207-8511
○在チェンマイ日本国総領事館
住所:Suite 104-107, Airport Business Park, 90 Mahidol Road,
T. Haiya, A. Muang, Chiang Mai, 50100 Thailand
電話:(市外局番052)012500
国外からは(国番号66)-52-012500
FAX:(市外局番052)012505
国外からは(国番号66)-52-012505
ホームページ:
http://www.chiangmai.th.emb-japan.go.jp/