化学剤の種類や使用方法及び人体への影響には、どのようなものがありますか?
     
化学剤は、その特性により神経剤、びらん剤、血液剤、窒素剤などに分類されています。化学物質は触れたり、口に入れたり、吸引することで人体に悪影響を及ぼすことから、テロの形態としては飲食物及び日用品などへの混入、人体への直接注入、爆発物や噴霧器などを使用した散布などが考えられます。
化学物質に汚染されると、人から人への感染こそありませんが、比較的早く、涙目になる、けいれんする、声が出なくなる、吐き気や窒息、呼吸困難になる等の人体への有害な症状が現れます。一般的に化学テロに使用される可能性が高い化学物質として、びらん剤のマスタードやルイサイト、神経剤のサリンやVXがあげられています。
     
 化学テロが行われたことは、どうやって分かりますか?
     
多くの化学物質には独特の臭いと色がありますが、散布されたことを即座に確認するのは非常に困難です。検知手段を持たずに、化学テロの兆候を判断するためにはこれといった決め手はなく、以下のような不自然な兆候の組み合わせから察知するしかありません。
●多くの小動物に異変が起きたとき(化学物質は人間より先に小動物に影響を与えることが多いとされています)
●付近の植物に、変色する、しおれるなどの異変があったとき
●付近で、吐き気、嘔吐、呼吸困難などの症状が複数の人に出現したとき
●付近で不自然な臭い(アーモンドや干し草、桃の臭い等)がしたとき
●不自然なスプレーの散布があったとき
●散布装置、爆発破片、液体の残った容器など不審物があったとき
     
 化学テロの兆候があった際はどうするべきですか?
     
可能であれば化学テロが起きた場所を把握し、呼吸を妨げない程度の厚い布で口と鼻を覆って疑わしい場所からすぐに離れましょう。建物の中に待機するよう指示を受けた際は、ドアや窓、通風口を防ぎ、できるだけ窓のない中央の部屋に退避しましょう。このとき、部屋をガムテープやビニールシートで密閉することでリスクを低減することができます。
また、屋外などにいる場合は、なるべく汚染地域の風上にいるようにし、できるだけ早く避難場所を見つけるようにしましょう。
化学剤傷病者への治療は一刻を争います。怪しいと感じたら周囲に知らせる、速やかに警察や消防に通報するといった手厚い対応をとった方が、その後の対処も早くなり、救命率の向上につながります。
     
 実際に化学テロの被害にあった際はどうするべきですか?
     
汚染された服(時計やコンタクトレンズなどを含みます)は速やかに処分する必要がありますが、汚染された衣服などをうかつに脱ぐと、露出している皮膚に衣服の汚染された部分が触れる恐れがあります。特に頭からかぶる服を着ている場合には、はさみを使用して切り裂いてから、ビニール袋に密閉しましょう。
その後、汚染物質を多量の暖かい石けん水で軽くこするように洗うと、肌を通して物質を吸収する可能性を大幅に減らすことができます。