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アフガニスタン
テロ・誘拐情勢

更新日 2025年03月28日

1 概況
(1)アフガニスタンでは、米軍の撤退に伴い、反政府武装勢力であったタリバーンが2021年7月下旬から地方都市部への進攻を開始し、8月15日には首都カブールを制圧、9月6日にはアフガニスタン共和国の最後の拠点となっていたパンジシール県を制圧し、翌7日、タリバーン「暫定政権」の閣僚代行等を発表しました。その後、アフガニスタン全土において、「暫定政権」による事実上の統治が継続しています。
(2)「暫定政権」成立後も引き続き、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)ホラサーン州(ISKP)」によるシーア派民間人や「暫定政権」メンバー、外国機関関係者、観光客等を標的としたテロ攻撃が継続して発生しています。一方、「暫定政権」は、ISKPの掃討活動を継続的に実施するとともに、国内の治安対策を強化しました。これにより2022年中旬以降、国内全体におけるISKPによるテロ攻撃の件数は減少傾向となっています。しかし、2024年5月17日には、中央部バーミヤン県において外国人観光客グループに対する銃撃事案があり、複数人の外国人観光客が犠牲となりました。さらに、同年12月11日には、首都カブールの難民帰還省敷地内における自爆攻撃により、ハリーロルラフマン・ハッカーニ「難民帰還大臣代行」が殺害される事案が発生しています。依然として国内におけるテロ攻撃の脅威は継続しており、今後、更なる大規模テロ等が発生する可能性が存在します。
(3)また、アフガニスタン共和国の関係者らが中心となって結成された国民抵抗戦線(NRF)やアフガニスタン自由軍(AFF)などの反抗勢力と「暫定政権」との間での銃撃戦が起きているほか、これら反抗勢力による「暫定政権」の施設や検問所、パトロール車両への襲撃・爆破などが継続して発生しています。反抗勢力の狙いはあくまでも「暫定政権」の打倒ですが、攻撃に民間人が巻き込まれる事例が確認されているほか、2024年10月20日には、AFFが、民間人や観光客も利用するカブール国際空港に対する迫撃砲攻撃を実行しています。
(4)アフガニスタン各地において、主にビジネスマンや子供などを対象とした身代金目的とみられる誘拐事件がしばしば報告されています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)ホラサーン州(ISKP)」
 独自のイスラム法解釈に基づき、カリフ制国家である「イスラム国」の建国及びスンニ派イスラム教徒の保護を目指すスンニ派過激武装組織ISIL系の組織で、アフガニスタン及びパキスタンなどにおいて、スンニ派以外のイスラム教宗派(シーア派及びそれを信奉するハザラ人等)及びイスラム教以外の宗教関係者を標的としたテロ活動を継続しています。アフガニスタンにおいては、アフガニスタン共和国の後継者であり異端であるとして、「暫定政権」メンバーに対してテロ攻撃を行っているほか、外交団などに対する攻撃も実行しており、2022年には、ロシア、パキスタン及び中国権益に対してテロを実施しました。その後、「暫定政権」による掃討作戦を受けて勢力が後退したとみられ、2023年においては外国権益に対するテロ攻撃は報告されませんでした。しかし、2024年には、ISKPは前述の外国人観光客の銃撃事案(5月17日)や「難民帰還大臣代行」の殺害事案(12月11日)などを実行しており、引き続き、一定の攻撃実行能力及びその意志を有していることがうかがえます。
(2)反抗勢力
「1 概況」のとおり。
(3)「アルカイダ(AQ)」
 欧米諸国に協力するイスラム政権を打倒し、カリフ制国家の復興を目指す過激派武装組織で、主に米国及びその同盟国を主な攻撃対象とする「グローバル・ジハード」を主張し、イスラエル、米国及びその同盟国(シオニスト及び十字軍と呼称)に対するテロ攻撃を行ってきました。2001年の米国同時多発テロ以降もアフガニスタンで活動を継続していたAQは、駐留外国軍及び治安当局の掃討作戦を受けて著しく勢力を後退させ、タリバーンがカブールを制圧した2021年8月以降、AQによるテロ活動は確認されていません。
 AQは、かねてよりタリバーンとの連携を維持してきました。しかし、2020年2月29日、タリバーンは、米・タリバーン合意において、AQとの関係を断つことに合意したとされ、「暫定政権」成立後も、同「政権」は一貫して、アフガニスタンにおいて、もはやAQは存在しないと対外的に述べています。それにも関わらず、2022年7月31日、米国は、カブールに潜伏していた当時のAQ指導者を無人機による攻撃で殺害したことを発表しています。その後も、国連や米国は、アフガニスタン国内にAQが存在しており、「暫定政権」は引き続きAQと関係を維持していると指摘しています。
(4)「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」
 パキスタン北西部・ハイバル・パクトゥンハー(KP)州を中心とした主な活動領域におけるイスラム法の施行のため、パキスタン政府の打倒を目指すタリバーンスンニ派過激武装組織です。KP州を中心としたパキスタン全域のほか、アフガニスタン東部及び南東部のパキスタンとの国境沿いの地域を中心に存在し、パキスタン国内において、政府当局を標的とするテロ活動を行っています。タリバーンに忠誠を誓っているとされ、国連安保理は、「暫定政権」がTTPに対し、資金及び兵たん(武器、活動拠点及び訓練)面の支援を行っていると指摘しています。

3 誘拐事件の発生状況
(1)アフガニスタン各地において、主に身代金目的とみられるビジネスマンや有力者の子息などを対象とした誘拐事件が継続的に報告されています。誘拐事件の総数に関する統計データなどは公表されていませんが、「暫定政権」による取締り及び捜索活動による誘拐犯の拘束及び被害者の解放などがしばしば報告されています。
(2)外国人を対象とした最近の誘拐事件は、2023年6月19日、カブール市において、何者かによってトルコ人技術者が誘拐された事例が確認されています。なお、同技術者は翌日、「暫定政権」治安部隊によって解放され、容疑者1人が拘束されました。邦人を対象とした誘拐事件については、2010年4月に邦人ジャーナリストがタリバーンとみられる武装集団に誘拐された事例(同年9月に解放)を最後に確認されていませんが、前述した身代金目的と推察される誘拐事件が発生している状況に鑑みると、邦人も十分にターゲットとなり得る状況です。
 
4 日本人・日本権益に対する脅威
(1)アフガニスタンにおける直近の邦人被害事案としては、2019年12月にナンガハール県においてNGO代表の邦人医師が車両に乗っていたところを武装勢力から銃撃を受け、殺害された事件があります。それ以前の邦人の被害事案としては、2008年8月に邦人NGO職員が武装勢力に誘拐され殺害されたほか、2010年4月には邦人ジャーナリストが誘拐される事件(その後9月に解放)も起きています。
(2)タリバーンによるISKPの掃討活動を経てテロ攻撃は減少傾向となっていますが、前述のとおり依然としてアフガニスタンにおけるテロ攻撃の脅威は継続しており、今後大規模なテロ等が発生する可能性も否定はできません。過去の事案を考慮すると、高度な警備対策を講じている場合であっても被害を完全に防ぐことは困難であり、アフガニスタン支援を行う援助機関関係者等であっても、テロに巻き込まれることや直接の標的となる可能性があります。
(3)アフガニスタンに限らず、一般的に、近年は、世界的傾向として、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で不特定多数が集まる場所を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 また、外国人を標的とした誘拐のリスクも排除されず、注意が必要です。
テロ・誘拐はどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」については国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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