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アフガニスタン
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年03月14日

1 概況
(1)アフガニスタンでは、米軍の撤退に伴い、反政府武装勢力であったタリバーンが2021年7月下旬から地方都市部への進攻を開始し、8月15日には首都カブールを制圧、9月6日には抵抗勢力の最後の拠点となっていたパンジシール県を制圧し、翌9月7日、「暫定政府」の閣僚代行等を発表しました。その後、アフガニスタン全土において、タリバーンによる事実上の統治が継続しています。
(2)タリバーンによるカブール制圧後も引き続き、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)ホラサーン州(ISKP)」によるシーア派住民やタリバーン関係者、外国関連機関、民間人等を標的としたテロ攻撃が継続して発生しています。他方、タリバーンは、ISKPの掃討活動を継続的に実施するとともに、国内の治安対策を強化しました。これにより、2022年中旬以降、ISKPによるテロ攻撃数は減少傾向となっています。しかし、国内には依然として一定数のISKP構成員が潜伏しているとされます。
(3)また、タリバーンからの攻撃によって国を追われた旧共和国の関係者らが中心となって結成された国民抵抗戦線(NRF)やアフガニスタン自由軍(AFF)などの反タリバーン勢力とタリバーンとの間での銃撃戦が起きているほか、これら反タリバーン勢力によるタリバーン検問所や車両の爆破などが継続して発生しています。
(4)アフガニスタン各地において、主に身代金目的とみられる高級ビジネスマンや子供などを対象とした誘拐事件がしばしば報告されています。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)ホラサーン州(ISKP)」
 独自のイスラム法解釈に基づき、カリフ制国家である「イスラム国」の建国及びスンニ派イスラム教徒の保護を目指すスンニ派過激武装組織ISIL系の組織で、アフガニスタン及びパキスタンにおいて、スンニ派以外のイスラム教宗派(シーア派及びそれを信奉するハザラ人等)及びイスラム教以外の宗教を標的としてテロ活動を継続しています。アフガニスタンにおいては、共和国の後継者で異端であるとしてタリバーンに対してもテロ攻撃を行っているほか、外交団などに対する攻撃も実行しており、2022年には、ロシア、パキスタン及び中国権益に対してテロを実施しました。その後、タリバーンによる掃討作戦を受けて勢力が後退したとみられ、2023年においては外国権益に対するテロ攻撃は報告されませんでした。しかしながら、タリバーンによる統治の失敗を印象づけることも目的に、今後も外国権益を対象としたテロ攻撃を実行する可能性があります。
(2)「アル・カーイダ(AQ)」
 欧米諸国に協力するイスラム政権を打倒し、カリフ制国家の復興を目指す過激派武装組織で、主に米国及びその同盟国を主な攻撃対象とする「グローバル・ジハード」を主張し、イスラエル、米国及びその同盟国(シオニスト及び十字軍と呼称)に対するテロ攻撃を行ってきました。2011年の米国同時多発テロ以降もアフガニスタンで活動を継続していたAQは、駐留外国軍及び治安当局の掃討作戦を受けて著しく勢力を後退させ、タリバーンがカブールを制圧した2021年8月以降、AQによるテロ活動は確認されていません。2023年9月の報道によると、米国情報当局はAQに対する最新評価として「アフガニスタン及びパキスタン国内におけるAQの活動は歴史的に最も低い水準にあり、復活の可能性は低い」としているほか、同年10月時点で、タリバーンは、アフガニスタンにおいてもはやAQは存在しないと対外的に述べています。なお、AQはかねてよりタリバーンとの連携を維持してきましたが、2020年2月29日の米・タリバーン合意において、タリバーンはAQとの関係を断つことに合意したとされます。しかしその後も、2022年7月31日にカブールに潜伏していた当時のAQ指導者を無人機による攻撃にて殺害したことを米国が発表しているほか、国連により、AQとタリバーンが関係を維持していることが指摘されています。
(3)「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」
 支配領域(パキスタン北西部・ハイバル・パクトゥンハー(KP)州を中心)におけるイスラム法の施行のためパキスタン政府の打倒を目指すスンニ派過激武装組織です。KP州を中心としたパキスタン全域のほか、アフガニスタン東部及び南東部のパキスタンとの国境沿いの地域を中心に存在し、パキスタン国内において、政府当局を標的とするテロ活動を行っています。タリバーンに忠誠を誓っているとされ、アフガニスタンにおいては、タリバーンがTTPに対し、前述した地域において資金及び武器類の調達等を行っていると指摘されています。
(4)反タリバーン勢力
 「1 概況」のとおり。

3 誘拐事件の発生状況
(1)2023年においては、アフガニスタン各地で主に身代金目的と推察される高級ビジネスマンや年少者などを対象とした誘拐事件がしばしば報告されています。誘拐事件の総数に関する統計データなどは公表されていませんが、タリバーン当局による取締り及び捜索活動による誘拐犯の拘束及び被害者の解放などがしばしば報告されています。
(2)外国人を対象としたものは、同年6月19日にカブール市において、何者かがトルコ人技術者を誘拐したもの1件でした。なお、同技術者は翌日、タリバーン治安部隊によって解放され、容疑者1人が拘束されました。邦人を対象とした誘拐事件については、2010年4月に邦人ジャーナリストがタリバーンとみられる武装集団に誘拐された事例(同年9月に解放)を最後に確認されていませんが、前述した身代金目的と推察される誘拐事件が発生している状況に鑑みると、邦人も十分にターゲットとなり得る状況です。
 
4 日本人・日本権益に対する脅威
(1)アフガニスタンにおける直近の邦人被害事案としては、2019年12月にナンガハール県においてNGO代表の邦人医師が車両に乗っていたところを武装勢力から銃撃を受け、殺害された事件があります。それ以前の邦人の被害事案としては、2008年8月に、邦人NGO職員が武装勢力に誘拐され殺害されたほか、2010年4月には邦人ジャーナリストが誘拐される事件(その後9月に解放)も起きています。
(2)ISKPによるテロ攻撃は減少傾向となっていますが、依然としてアフガニスタンにおけるテロ攻撃の脅威は継続しており、大規模なテロ等が発生する可能性も否定はできません。過去の事案を考慮すると、高度な警備対策を講じている場合であっても被害を完全に防ぐことは困難であり、アフガニスタン支援を行う援助機関関係者等であっても、テロに巻き込まれることや直接の標的となる可能性があります。
(3)近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独実行犯によるケースが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続するリスクが高いといえます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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