海外邦人事件簿|Vol.47 おいしいメールと国際詐欺

先日、外務省に次のようなお便りを頂きました。 『ある日突然、アフリカの産油国の弁護士という人からメールが送られてきました。現地で成功した日本人夫妻が航空機事故で亡くなったが、子供がいなかったため12億円以上の遺産は処分されていない。偶然その日本人の名前が自分と同じであり、親族として遺産相続手続きをするので、契約書等に署名し、手続き料200万円とともに、すぐに送って欲しいというものでした。メールの差出人は、夫妻の遺産管理を任されている弁護士であり、必要あらば雇用契約書を送るとのことでした。その後、差出人から電話も貰いましたが、海外安全ホームページで419事件のことを知っていたので、契約をせずに済みました。情報の掲載に感謝します。』

419事件を知っていたので、被害にあわずに済む

「通称419事件」とは、FAXやメールで架空の取引を持ちかけ、手数料や前金などの名目でお金を振り込ませるという手口の犯罪で、Vol.4「日本国内で遭う国際詐欺事件」でもお話ししましたが、この種の国際的詐欺事件は、手を変え、品を変え、今でも絶えません。

犯罪者も知恵をしぼり、いろいろな話をでっち上げているようです。一例を紹介すると、次のようなものがあります。

『私は英国のサッチャー元首相の夫、デニス・サッチャー卿(故人)の弁護士です。貴殿は、恵まれない人々を救う活動をされたので、デニス・サッチャーの遺産の一部を相続する事ができます。』

『私はアンゴラ反乱軍の亡くなったリーダーの娘です。父親の遺産約10億円が政府に没収されないよう協力してもらえませんか。』

『私はアメリカの特殊部隊の司令官です。タリバンに対する秘密作戦遂行中に、麻薬絡みの現金40億円を発見しました。荷物に現金を隠してアフガニスタンを出国しましたが、貴殿の銀行口座を借りて安全に保管したいのです!』

また、個人だけではなく、団体がターゲットとされることもあるようです。 『アフリカに住んでいた日本人が莫大な遺産を遺して亡くなりました。同人の遺言により遺産は貴団体に贈られることになりました』

このような話が、例えば慈善団体や研究所、大学などに持ちかけられます。うかうかと話に乗ると、遺産の現金化や海外送金の手数料、現地政府に納める税金など、経費が必要であるとして数百万円の送金を求められます。そして手数料を払い込んだが最後、以後の連絡は途絶えます。

通常、日本ではこのような甘言にだまされることはないにもかかわらず、多くの場合、緊急性を訴え、何十億円もの金銭がかかわっている事を強調し、しかも絶対の秘密厳守を求める日常とは異なる海外での意外性にだまされてしまうという特徴があります。

インターネットで接触してきただけの見ず知らずの他人に対し、銀行の口座番号など自分の情報を教えたり、話にのってお金を振り込んだりすると、とんでもないことに巻き込まれるかもしれませんし、一度FAXやe-mailで返事を返すと共犯の疑いをかけられる危険性があります。このようなe-mailを受け取ったら、「世の中にそんなにウマい話はない」と疑い、不用意に反応したりせず、不法な誘いは無視し、確認を要する案件に思える場合には弁護士等国際法に通じた方に相談されることをお勧めします。

緊急性を訴え、何十億円もの金銭がかかわっている事を強調し、だまされてしまう

残念なことに、海外の犯罪者には「日本人は、金持ちでだましやすい。」と思われているようです。

旅先で出会った人から飲み物などを勧められたら要注意です。また、飲み物だけではなく、クッキーやチョコレート、飴、くだもの等の食物に仕込まれたり、タクシーのクーラーの吹き出し口に仕掛けられた睡眠薬の犠牲になった旅行者も大勢いますのでご用心ください。

「あなたを狙う犯罪者は、必死になって親切で優しい親日家を演じている」ということをお忘れなく。

(2006年4月26日掲載)

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