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スウェーデン
テロ・誘拐情勢

更新日 2024年04月16日

1 概況
(1)スウェーデン政府は、2023年1月以降、コーラン焼却集会等が繰り返された情勢を受け、2023年8月17日、スウェーデンにおけるテロ脅威レベルを5段階中の3段階目(増大した脅威)から4段階目(高い脅威)に引き上げました。これは、スウェーデンを標的とするテロ攻撃の意図と能力を有した活動家が攻撃を実行に移す脅威が高く、この脅威が長期的に継続する見込みであることを意味します。これまでは、2010年秋にテロの脅威レベルが5段階中の3段階目(増大した脅威)に、2015年11月18日には4段階目(高い脅威)に更に引き上げられましたが、2016年3月2日に3段階目に引き下げられた後は同レベルを維持していました。
(2)公安警察がスウェーデンにおけるテロの脅威とみなし、動向を注視しているのは、暴力的過激主義(暴力的イスラム過激主義、暴力的極右過激主義、暴力的極左過激主義等)の環境下にある個人・小集団・ネットワーク、組織です。特に暴力的イスラム過激主義及び暴力的極右過激主義の思想の周縁部にいる者が、個人的な事情や国際社会で発生したテロや暴動等に感銘を受けて、単独で又は少人数でテロ行為を行うリスクがあるとされています(なかでも、暴力的イスラム過激主義に関しては「2(3)」参照)。直接的なテロ行為に関与しない場合も、過激主義組織への勧誘、テロ資金集め等の形で、スウェーデンへの安全に対する脅威となっています。
(3)テロ脅威レベルの引上げ前後で、スウェーデンにおける具体的なテロは発生していませんが、「アル・カーイダ」、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」、「アル・シャバーブ」、「ヒズボラ」等がスウェーデンへのテロ攻撃を呼びかけています。テロ犯罪を共謀した容疑での逮捕者も出ています。また、2023年10月16日には、ベルギー・ブリュッセル市において、サッカー観戦のため同地を訪問していたスウェーデン人サポーターを標的としたテロが発生し、2名が死亡、1名が負傷する事態となりました。
(4)過去の事例としては、2017年4月に首都ストックホルムの中心部においてトラックが暴走しながらデパートに突入し、5名が死亡し、多数の負傷者が出た事件があります。実行犯はISILの思想の影響を受けていたとされています。また、2022年7月6日白昼、各政党と国民の集中対話の機会であるアルメダーレン政治週間中のゴットランド島ヴィスビュー市において、女性がナイフで刺殺される事件が発生しました。実行犯は北欧抵抗運動(白人至上主義のネオナチ組織)に参加した経歴があり、その後の捜査により、政治スピーチを行うために同地に滞在していた中央党党首を殺害又は重大な暴行を行う準備行為も行っていたことが判明し、同行為について、裁判所はテロ犯罪予備罪に当たると認定しました。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
 以下の各点のほか、「1 概況」のとおり。
(1)テロと評価されるものではありませんが、近年、ストックホルム県、ヴェストラ・ヨータランド県(ヨーテボリが所在)、スコーネ県(マルメが所在)の都市部近郊の一部地域を中心に、ギャング同士の抗争に起因する爆破事件や発砲事件が頻発しています。特に、2023年秋には、ギャング・グループ内の内部抗争に起因する事案も加わり、爆破、発砲、放火の件数が拡大しました。ギャングやギャングの親族が標的であるため、多くの場合は、これらの住宅やその近くの地域で被害が発生していますが、誤認や巻き込まれるなどして一般の人が被害に遭った事件も発生しています。
(2)テロと評価されるものではありませんが、2022年4月のイースター期間中、政治活動家が、警察の認可を得てコーランを燃やす集会を行うことがアラビア語でSNS上に拡散し、リンショーピング(シェッゲトルプ地区)、ノルショーピング(ナヴェスタッド地区等)、ストックホルム(リンケビュー地区)、エーレブロー、マルメ(ローゼンゴード地区)において暴動が発生しました。暴徒の標的となったのは、警察官及び緊急車両等であり、複数の怪我人、緊急車両の損害が生じました。
(3)2023年1月、ストックホルム市内のトルコ大使館周辺で、上記(2)の政治活動家が、イスラム教の聖典(コーラン)の写本を焼却する事案が発生して以降、イスラム教徒の多い国々を中心に反発・抗議が拡大するとともに、スウェーデンに対する暴力的イスラム過激主義からの関心が一層高まりました。さらに、別の活動家により、イスラム教の祝祭日に当たる6月28日にストックホルム市内のモスク付近でコーラン焼却集会が行われたことを皮切りに、同様の集会の申請・実施が続きました。このうち、2023年9月3日、マルメ市内でコーラン焼却集会が実施された際には、現場で暴動が発生したほか、夜間、ローセンゴード地区でも車両・ゴミ収集場への放火や警察・警察車両に対する投石等の暴動が発生しました。
(4)スウェーデン当局は、こうした状況からスウェーデンの治安情勢が徐々に悪化し、テロ攻撃の「正当な標的」から「優先的な標的」となり、またこの脅威が長期的に継続する見込みであると判断し、テロ脅威レベルを5段階中3段階目から4段階目に変更しました。さらに、スウェーデン公安警察は、「イスラエル・ハマス間の対立で緊張する中東情勢を巡る二極化の拡大は、暴力的極右過激主義環境の活動の増大も招いている。」と指摘しています。

3 誘拐事件の発生状況
 スウェーデン(スウェーデン国外で発生したものを含む。)における誘拐の認知件数は、最新の2022年犯罪統計によれば、500件であり、前年(2021年犯罪統計)よりも14件減少しています。犯行目的、犯行主体は様々とされますが、犯罪組織やギャングが身代金目的で誘拐する場合や敵対組織を脅迫する目的で誘拐する場合等が知られています。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 現在のところ、スウェーデンにおいて、日本人及び日本権益を標的とした脅威情報は確認されていませんが、上記1及び2のとおり、政治活動家によるコーラン焼却集会をきっかけに、スウェーデンにおけるテロ攻撃の脅威レベルはこれまでよりも高まっており、スウェーデン政府は、スウェーデンが暴力的イスラム過激主義者にとってテロ攻撃の「優先的な標的」となっているとしています。
 近年は、軍基地や政府関連施設だけでなく、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが世界各地で頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。


テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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