●8月16日、世界保健機関(WHO)は、国際保健規則(IHR)に基づき、ポリオウイルスの国際的な拡散に関する第36回緊急委員会を開催。8月25日付同委員会声明によれば、同委員会は、ポリオウイルスの国際的な広がりについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」の3か月の延長を勧告しました。
●ポリオ発生国(アフガニスタン、マラウイ、モザンビーク、パキスタン、マダガスカル、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、アルジェリア、ベナン、ボツワナ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、ガーナ、インドネシア、イスラエル、ケニア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、 ソマリア、スーダン、トーゴ、英国、米国、イエメン、ザンビア、ジブチ、カナダ、エジプト、エリトリア、エチオピア、ガンビア、モーリタニア、セネガル、ウガンダ、ウクライナ)に渡航される方は、現地での行動様式や感染に応じて追加の予防接種を検討してください。
1 第36回緊急委員会
8月16日、世界保健機関(WHO)は、国際保健規則(IHR)に基づく第35回緊急委員会を開催し、8月25日付の同委員会声明によれば、現在発出されている公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の勧告をさらに3か月延長することを決定しました。
2 ポリオの発生状況
世界保健機関(WHO)は、2014年5月5日、ポリオウイルスの国際的な広がりが、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC、Public Health Emergency of International Concern)」であることを宣言していますが、上記1の第36回会合において、現在の状況が引き続きPHEICに該当するとの見解を示すとともに、発生状況を以下のとおり評価しています。
(1)評価
○「ポリオウイルス(野生型(WPV1)、ワクチン1型(cVDPV1)又は3型由来(cVDPV3)の感染があり、国際的に感染を拡大させるリスクがある国」
・野生型:アフガニスタン(最新の検出:2023年7月23日)
マラウイ(最新の検出:2021年11月19)
モザンビーク(最新の検出:2022年8月10日)
パキスタン(最新の検出:2023年7月17日)
・ワクチン1型:マダガスカル(最新の検出:2023年5月8日)
モザンビーク(最新の検出:2023年2月27日)
マラウイ(最新の検出:2022年12月1日)
コンゴ民主共和国(最新の検出:2023年5月11日)
コンゴ共和国(最新の検出:2022年10月15日)
○「局所的感染の証拠の有無に関わらず、ワクチン由来ポリオ(cVDPV2)に感染した状態にある国」
・アルジェリア(最新の検出:2023年7月10日)
・ベナン(最新の検出:2023年3月15日)
・ボツワナ(最新の検出:2023年7月4日)
・ブルンジ(最新の検出:2023年6月15日)
・カメルーン(最新の検出:2023年6月8日)
・中央アフリカ(最新の検出:2023年6月14日)
・チャド(最新の検出:2023年5月25日)
・コンゴ共和国(最新の検出:2023年4月11日)
・コートジボワール(最新の検出:2023年6月21日)
・コンゴ民主共和国(最新の検出:2023年5月23日)
・ガーナ(最新の検出:2022年10月4日)
・インドネシア(最新の検出:2023年2月23日)
・イスラエル(最新の検出:2023年2月13日)
・ケニア(最新の検出:2023年6月16日)
・マラウイ(最新の検出:2023年1月2日)
・マリ(最新の検出:2023年4月28日)
・モザンビーク(最新の検出:2023年2月27日)
・ニジェール(最新の検出:2023年1月23日)
・ナイジェリア (最新の検出:2023年6月20日)
・ソマリア(最新の検出:2023年5月25日)
・スーダン(最新の検出:2022年11月28日)
・トーゴ(最新の検出:2022年9月30日)
・英国(最新の検出:2022年11月8日)
・米国(最新の検出:2022年10月20日)
・イエメン(最新の検出:2023年5月29日)
・ザンビア(最新の検出:2023年6月6日)
○「もはやポリオウイルス(野生型(WPV1)又はワクチン由来(cVDPV))の感染はないが、野生型又はワクチン由来の再感染に対して影響を受けやすい国」
・野生型:なし
・ワクチン型:
ジブチ(最新の検出:2022年5月22日)
カナダ(最新の検出:2022年8月30日)
エジプト(最新の検出:2022年8月29日)
エリトリア(最新の検出:2022年3月2日)
エチオピア(最新の検出:2022年4月1日)
ガンビア(最新の検出:2021年9月9日)
モーリタニア(最新の検出:2021年12月15日)
セネガル(最新の検出:2022年1月17日)
ウガンダ(最新の検出:2021年11月2日)
ウクライナ(最新の検出:2021年12月24日)
(WHO発表(英文))
https://www.who.int/news/item/25-08-2023-statement-of-the-thirty-sixth-meeting-of-the-polio-ihr-emergency-committee(2)パキスタン政府は、WHOの緊急勧告に伴い、同国に4週間以上滞在する外国人を含めた全ての人にポリオ予防接種を義務化しており、WHOが推奨する国際予防接種証明書にて接種の記録を確認しています。
(3)以上を踏まえ、ポリオ発生国(アフガニスタン、マラウイ、モザンビーク、パキスタン、マダガスカル、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、アルジェリア、ベナン、ボツワナ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、ガーナ、インドネシア、イスラエル、ケニア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、 ソマリア、スーダン、トーゴ、英国、米国、イエメン、ザンビア、ジブチ、カナダ、エジプト、エリトリア、エチオピア、ガンビア、モーリタニア、セネガル、ウガンダ、ウクライナ)への渡航を予定している方及び現地に滞在している方は、以下3を参考にポリオの予防接種を検討してください。特に、現在ポリオウイルス感染者の発生が報告されている地域に渡航する場合は、以前に予防接種を受けていても、現地での行動様式や感染に応じて追加接種をご検討ください。現地の小児定期予防接種一覧、医療機関情報等については、渡航・滞在先の在外公館のホームページをご参照ください。
(参考)
厚生労働省ホームページ:ポリオ(急性灰白髄炎)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/厚生労働省検疫所FORTHホームページ:海外渡航のためのワクチン
https://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html3 ポリオについて
(1)感染源
ポリオ(急性灰白髄炎)は、感染者(特に小児)の糞便又は咽頭分泌液との直接接触等によってポリオウイルスが人の口の中に入り、腸の中で増えることで感染します。増えたポリオウイルスが再び便の中に排泄されて、この便を介してさらに他の人に感染します。まれに汚染された水や食物などからも感染します。成人が感染することもありますが、主に小児で起こります。
(2)症状
潜伏期間は3~21日(通常は7~21日)、感染しても90%~95%は無症状(不顕性感染)です。4~8%は軽症であり、発熱、風邪のような症状や胃腸症状(咽頭痛、咳、発汗、下痢、便秘、悪心など)が見られます。また、感染者の1~2%は、頭痛、嘔気、嘔吐、頸部及び背部硬直などの髄膜刺激症状を呈します。感染者の0.1~2%が典型的な麻痺型ポリオとなり、1~2日の風邪のような症状の後、解熱に前後して急性の筋肉、特に下肢の麻痺(急性弛緩性麻痺)が起きることが多いです。発症から12か月過ぎても麻痺又は筋力低下が残る症例では、永続的に後遺症が残る可能性があります。
(3)治療
麻痺の進行を止めるための治療や、麻痺を回復させるための治療が試みられてきましたが、現在、特効薬などの確実な治療法はありません。麻痺に対しては、残された機能を最大限に活用するためのリハビリテーションが行われます。
(4)予防
ア 予防接種
日本の定期の予防接種では、平成24年8月までは経口生ワクチンが使用されていましたが、平成24年9月以降は注射の不活化ポリオワクチンが使用されています。ポリオが発生している国に渡航する人は、追加の予防接種を検討してください。
なお、生ポリオワクチンを接種した場合、ワクチンウイルスが体外に排泄されるため、極めてまれではありますが、接種後便中に排泄されるワクチンウイルスから免疫のない子供や大人に感染し、麻痺をおこすこともありますので、接種後の衛生管理にも注意してください。ただし、日本国内で主に用いられている不活化ポリオワクチン接種(注射によるもの)では、基本的にこのようなことが起こることはないとされています。
イ 感染予防
ポリオの流行地では以下のような感染予防対策を心がけ、感染が疑われる場合には、直ちに医師の診察を受けてください。
●こまめに石けんと水で手洗いし、特に飲食の前、トイレの後は念入りに手洗いを励行する。
●野菜や果物は安全な水で洗い、食物は十分加熱してから食べる。
●乳製品は殺菌処理されたもののみ飲食する。
●飲料水や調理用の水はミネラルウォーターを使用する。水道水を利用する場合は、一度十分に沸騰させた後使用する。安全な水から作ったと確認できる氷以外は使用しない。
(5)予防接種証明書
ア 国内での予防接種証明書
国内での予防接種証明書の取得については、予防接種を実施した医療機関にご相談ください。
イ 海外での予防接種証明書
海外での同証明書の取得については、渡航先の日本国大使館にご照会ください。
4 在留届及び「たびレジ」への登録のお願い
海外渡航前には、万一に備え、家族や友人、職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。3か月以上滞在する方は、緊急事態に備え、必ず在留届を提出してください。
(
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/index.html )
また、3か月未満の旅行や出張などの際には、海外滞在中も安全に関する情報を随時受けとれるよう、外務省海外旅行登録「たびレジ」に登録してください。(詳細は
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html 参照)
(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902、2903
(外務省関連課室連絡先)
○外務省領事局政策課(海外医療情報)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)4919
○外務省 海外安全ホームページ:
http://www.anzen.mofa.go.jp/ (携帯版)
http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp(現地在外公館連絡先)
各国の在外公館は以下の外務省ホームページをご参照ください。
○外務省ホームページ:在外公館リスト
https://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/index.html