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● 風俗、習慣、健康等

1 風俗、習慣
(1)暴力的な言動は嫌悪される
 フィリピンでは、相手が誰であっても、公衆の面前で罵倒し、恥をかかせる行為はタブーとされています。たとえ自分の家族に対する暴力的な言動であっても、周囲からいやがられます。従業員を他の従業員の面前で叱責したために暴行・脅迫を受けた例や、自分の配偶者や子への叱責を他人から訴えられ、警察に逮捕された例もあります。
 フィリピン人のプライドの高さを理解し、良好な関係の構築に努め、他人だけでなく知人、家族等に対しても、絶対に暴力的な言動をとらず、諍いや争いを避け、たとえ相手に非があっても恨まれないように行動することが肝要です。金銭トラブルや男女問題等には特に注意してください。

(2)個人情報保護に関する意識の乏しさを認識する
 フィリピンでは、個人情報保護に関する法律は2012年に制定、2017年に施行されていますが、その意識は希薄です。たとえば婚姻許可申請者の氏名・住所等が市役所に一定期間掲示されたり、滞在許可申請者の情報が入国管理局のホームページに掲載されたりすることは一般的で、何らかの事件・事故に巻き込まれた場合、警察等当局が当事者・被害者の氏名等を一方的に公表することもあります。
 日本とは個人情報の取り扱いがまったく異なることをあらかじめ十分理解する必要があります。

2 健康
(1)気候と健康
 フィリピンは熱帯性モンスーン気候であり、年間を通して高温・多湿です。都市部では、大気汚染や室内の強い冷房等により、呼吸器感染症(上気道炎(いわゆる風邪)、咽頭炎、気管支炎等)を繰り返す例もみられます。
 日頃から十分な休養と睡眠を取ることが大切です。無理のない日程を立て、体調が優れないと感じたときは、身体に負担のかかる行動を控える等、日頃から心身の健康・体調管理を心がけてください。

(2)衛生
 水道水は、水道管や貯水タンクの汚れ、汚物の混入等により、大腸菌等に汚染されている可能性がありますので、飲用・製氷には市販のミネラル・ウォーターの利用をおすすめします。
 食品はよく加熱し、調理後早めに食べるよう、また、生野菜や刺身等は衛生状態に信頼のおける店以外では食べないよう心がけてください。なお、市中の高級レストランでの飲食は概ね問題はありませんが、大衆食堂や屋台等では食材や食器類等の衛生管理が不十分なため、食中毒にかかる可能性が高く、注意が必要です。

(3)感染症
 ア 経口感染症(食中毒)
 全土で季節に関係なく発生しています。特に、腸チフス、細菌性およびアメーバ赤痢、A型肝炎等が広範に発生していますので、飲料水や食品(特に生野菜・果物類、魚介類等)の管理・調理・摂取には、十分な注意が必要です。下痢が2〜3日で止まらない場合には検査・治療が必要ですので、医療機関の受診をおすすめします。なお、フィリピンでは公衆トイレの衛生状態が悪く、一般的にトイレ後の手洗い等はあまり習慣化されていませんので、市販の消毒用ハンドジェルなどを常に携行することをおすすめします。

 イ デング熱
 デング熱は、年間を通じてフィリピン全土で発生しています。デング熱は病原ウイルスを持ったネッタイシマカ、またはヒトスジシマカ等に刺されることによって感染し、蚊に刺されないことが予防策となります。長袖・長ズボンなどの着用により肌の露出を少なくし、昆虫忌避剤(虫除けスプレー等)を使用する等十分な防虫対策を行うことが肝心です。感染すると、通常は激しい頭痛、眼球深部の痛み、関節痛や筋肉痛、発疹等が現れ、発熱が5日間ほど続きます。重症化すると、まれに死亡率が高いデング出血熱やデングショック症候群を発症することもありますので、感染が疑われる場合は、速やかに医療機関で受診するようにしてください。
(参考)感染症広域情報:アジア・大洋州におけるデング熱の流行https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2017C013.html

 ウ マラリア
 パラワン島、カガヤン峡谷、ミンドロ島、スールー諸島およびミンダナオ島の一部の地域において感染例が認められています。デング熱同様、蚊に刺されないことで予防できますので十分な防虫対策を行ってください。これらの地域(特にパラワン島)に2週間以上滞在する場合は、抗マラリア薬の予防内服が有効とされますので、事前に専門医に相談してください。

 エ 住血吸虫症
 住血吸虫の幼虫が含まれる水に触れることによって感染します。国土の10分の1が流行地域と言われており、池、湖沼、河川等淡水での作業・水遊び等は住血吸虫症感染の危険があります。小川、水田、道路の側溝等で作業等を行う必要がある場合は、長靴や防水服を着用する等、十分な防水(防虫)対策を講じるようにしてください。また、水遊びや遊泳は、海または適切に塩素が加えられたプールの利用をおすすめします。

 オ ジカウイルス感染症
 ジカウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染するほか、母胎から胎児への感染、輸血や性交渉による感染リスクも指摘されています。感染しても無症状(不顕性感染)や軽症で感染に気づきにくいこともありますが、妊娠中に感染すると胎児に小頭症等の先天性障害を来すおそれが指摘されていることから、妊娠中または妊娠が見込まれる方は、流行地域への渡航を可能な限り控えるなど、十分な注意が必要です。
(参考)感染症広域情報:ジカウイルス感染症に関する注意喚起
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2018C043.html

 カ ポリオ
 フィリピンでは1993年に最後の野生ポリオウイルス患者が報告され、2019年9月以降はポリオウイルス2型(cVDPV2)の発生が報告されています。世界保健機関(WHO)は、フィリピンを含むポリオ発生地域に渡航する前に予防接種(追加接種を含む)を受けるよう呼びかけていますので、専門医に相談してください。
(参考)広域情報:ポリオの発生状況
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2023C045.html

 キ HIV感染・エイズ、性感染症
 フィリピンでは1984年以来11万人以上の感染者が報告されています。近年、フィリピンではHIV感染者数が増加傾向にあり、保健省は、毎日およそ49人(2013年は13人程度)の新規感染者が報告されているとして、公衆衛生上の危機と表明しています。正しい知識を持つとともに、節度ある行動を心がけてください。

(4)新型コロナウイルス関連情報
 2020年3月以降、フィリピンでも猛威を振るっていたCOVID-19は、2023年12月現在、新規感染者、死者数は社会的に大きな問題とはなっておらず、ほぼ従来通りの生活に戻っています。一方で入国時にPhilippines Travel Information System (eTravel)の入力・提示が求められるなど、多少の影響は残っているため、常に最新の情報を得る必要があります。
 また、現在フィリピンでは新型コロナウイルスに関連した行動規制はありませんが、発熱などの体調不良時には宿舎で静養する、病院に行くなど、ご自身の健康に配慮した無理のない行動を心がけてください。
なお、新型コロナウイルス感染症に限らず、様々な感染症の予防には、手洗い、うがいや換気といった基本的な対策が有効ですので、ご留意ください。

(5)医療事情
 「世界の医療事情」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/asia/phili.html )においてフィリピン国内の衛生・医療事情や現地医療機関の情報を案内していますので、渡航前には必ずご覧ください。

(6)海外旅行保険への加入
 海外旅行保険に加入していなかったために、病気やケガに伴う治療や緊急移送などで多額の出費を余儀なくされたケースが少なくありません。
 旅行・滞在中の予期せぬトラブルに備え、十分な補償内容の海外旅行保険に加入することをおすすめします。詳しくは海外旅行保険加入のおすすめ(https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/hoken.html )をご確認ください。

3 自然災害
 フィリピンでは、台風、地震、火山活動等による自然災害の発生が少なくありません。直接の被害だけでなく、航空機や船などの交通機関がストップしたり、また電話やインターネットが不通になったりするなど、外部との連絡が寸断され、物資の供給が十分に及ばなくなることもあります。

(1)台風
 フィリピンには毎年台風が上陸し、全土が被害を受けています。
 2013年11月に観測史上最大級の猛烈な台風30号(フィリピン名:ヨランダ)が東部ビサヤ地方に上陸し、死者・行方不明者約8千人、負傷者約2万9千人を出すなど甚大な被害をもたらしました。また、2021年12月に台風22号(フィリピン名:オデット)が横断し、直撃したセブやビサヤ地域をはじめミンダナオ北部に甚大な被害(死者407名)をもたらしました。
 台風シーズンは8月〜12月頃ですが、それ以外に大雨や集中豪雨により、道路の冠水、洪水や土砂崩れ等の被害が発生することもあります。日本やフィリピンの気象庁等関係当局から台風の進路を含む最新の情報を入手するよう努めてください。

(2)地震
 地震はフィリピン国内の広い地域で比較的頻繁に発生しており、2013年10月にはビサヤ地域ボホール島を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生し、死者・行方不明者230人、負傷者約1千人を出すなど大きな被害をもたらしました。2023年11月には、ミンダナオ地方南東部でマグニチュード6.8の地震が、2023年12月にはミンダナオ地方北東部で、津波を伴うマグニチュード7.4の地震が発生しています。
 地震発生の際には、まず頭部を守り、避難路を確保し、一旦揺れが収まったら火の元を確認し、余震・本震に備えてください。また、直後は津波や、土砂崩れの危険があるため、そのおそれのある場所や地域から速やかに安全な場所に避難してください。

(3)火山活動
 マニラ首都圏から北西約100kmにあるピナトゥボ火山が1991年に20世紀最大級と言われる大噴火を起こし(火砕流等により死者数百名)、2013〜14年にルソン島南東部・アルバイ州にあるマヨン火山が噴火して延べ6万5千人以上が避難しました。2020年1月には、ルソン島南部バタンガス州のタール山で火山活動が活発化し噴火したことから、当局は警戒レベル4(危険な噴火が差し迫った状態)に引き上げ、山頂から半径14kmの立入り禁止に加え、危険地域に居住する20万人を超える住民を避難させました。
 2023年12月現在の主な火山の噴火警戒レベルは次のとおりです。
 ア レベル2(中程度の火山不安定性)
 ・マヨン火山(ルソン島南東部・ビコル州)
 イ レベル1(低レベルの火山不安定性)
 ・タール火山(ルソン島南部、バタンガス州)
 ・カンラオン火山(ビサヤ地方ネグロス島北部・西ネグロス州)
 ・ブルサン火山(ルソン島南東部・ソルソゴン州)
 ウ レベル0(正常)
 
 ・ピナトゥボ火山(ルソン島南部・パンパンガ州、タルラック州、サンバレス州の境界)
 
(参考) ○日本気象庁(台風情報) ( https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#4/22.873/131.502/&elem=root&typhoon=all&contents=typhoon
     ○フィリピン国家災害リスク削減管理委員会(https://www.ndrrmc.gov.ph/ )
     ○フィリピン気象庁(https://www.pagasa.dost.gov.ph/
     ○フィリピン火山地震研究所(https://www.phivolcs.dost.gov.ph/


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