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● 犯罪発生状況、防犯対策

1 犯罪発生状況
(1)一般犯罪
ア 凶悪犯罪
 チリは中南米では比較的治安の良い国と考えられていましたが、最近では殺人、強盗、性犯罪等の凶悪犯罪を含め、各種犯罪が増加傾向にあり、治安情勢は悪化しています。置き引き、スリ、ひったくり等の盗難被害が多く発生していますが、拳銃使用による強盗、夜間に歩行者に車を横付けし、複数人で暴行・金品を強奪する事件、通りすがりにいきなり刃物で切りつける強盗等の凶悪事件も発生しています。また、最近は、比較的安全とされていた邦人が多く居住する、サンティアゴ市東部地区でも住居への侵入窃盗、ショッピングセンターでの強盗、車上狙い等の犯罪が発生しています。強盗に抵抗したため、刃物で刺され、あるいは鈍器で殴られ重傷を負う事例も散見され、過去には、日本人が殺害された事件も発生しています。特に、夜間は複数でも出歩くのは大変危険ですので十分注意が必要です。この犯罪傾向は貧富の差が広がるにつれ地方へも拡大しており、これまでに犯罪発生の少なかった観光地や地方都市にまで及んでいます。

イ 窃盗
 レストランやカフェにおいて、バッグ等を椅子の背もたれに掛けたり、足下や座席の横に置いていたところを盗まれる被害や、ショッピング中、商品を見ているすきに、バッグから財布を抜き取られる被害が多発しています。また、空港、地下鉄、バスターミナル等の交通機関においても置き引きやスリは多発しています。手荷物は自分の身体の前面で持ち、また、食事中も膝の上に置くなど、身体から離さないように十分注意する必要があります。路上で鳥の糞が付いている等と声を掛けられたり、衣服にケチャップを付けられるなどされ、拭いている隙にバッグなどを奪われる事件や、外出中に暴行を受け、持っている携帯電話を奪われる事件が多発しています。旅行者や大きな荷物を持っている人が狙われています。声をかけられても荷物を置かない、路上では極力携帯電話を使用しない、危険を察知したらすぐにその場から離れるなどの注意が必要です。

(2)デモ・集会
 2019年10月18日以降、地下鉄運賃の値上げに反対する抗議活動から発展した政府に対する大規模な抗議活動がサンティアゴ市内や地方で行われ、一部の抗議活動参加者が暴徒化し、放火、及び略奪のほか、治安部隊との衝突等の暴力行為に発展し、死傷者が出ました。その後、新型コロナウイルスの影響もあり事態は沈静化していますが、毎年10月18日に数万人規模の記念抗議活動が行われています。このほかにも、教育環境の改善を求める学生デモ、収監者の解放を求める抗議活動など、社会情勢に関連する活動が、主にサンティアゴ市セントロ地区で発生し、一部暴徒化したデモ隊による、バス放火や商店襲撃などが発生しているため、注意が必要です。また、2019年の社会騒擾以降も、国民の不満の火種は依然燻っており、再燃の可能性を残しています。2023年12月に予定されている、新憲法制定のための国民投票に向けて、制憲プロセスが進んでいますが、同国民投票の結果は未だ予測が困難な状態であり、引き続き状況を注視する必要があります。

(3)先住民問題
 南部の第8州(ビオビオ州)、第9州(ラ・アラウカニア州)、第10州(ロス・ラゴス州)、第14州(ロス・リオス州)では、先住民問題が長期化しています。先住民系の一部過激派による発砲事件や放火事件などが発生しており、未だ根本的な解決に至っていないことから、注意が必要です。南部における暴力事件の増加を受け、2022年5月16日、ボリッチ大統領は、軍を動員して治安維持活動を行うことを可能にするため、南部のアラウカニア州2県、ビオビオ州2県に対して、非常事態宣言の再発令を行いました。また、2023年6月21日、土地問題解決のための、「平和と理解のための委員会」が創設されましたが、南部における暴力事件は継続しています。
 2005年以降、アナーキストによる爆破事件が散発的に発生しています。これまでは人に危害を加えることを目的とするケースはまれでしたが、2014年9月8日にサンティアゴ市内を走る地下鉄1号線エスクエラ・ミリタール駅のビル店舗街において、14人が負傷する爆弾事件が発生しました。
 2017年1月にはチリ銅公社(コデルコ)会長宛の小包爆弾事件、2019年1月には、サンティアゴ市内プロビデンシア区所在のバス停において封筒爆弾事件が発生し、エコテロリストを名乗るグループ、「野生化する個人主義者たち(ITS)」が犯行声明を出しています。2019年7月には、サンティアゴ市内ウエチュラバ警察署内において小包爆弾事件が発生し、複数の警察官が負傷しました。2023年5月には、治安に関するシンクタンクである、「市民の平和財団」事務所付近において、時限爆弾が置かれる事件が発生しました。
 このように、チリは治安の良い国という意識を改め、個々の防犯意識を向上させる必要があります。

(4)テロ・誘拐
 チリのテロ・誘拐については、テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_251.html)をご確認ください。

2 日本人の被害例
 空港、駅、バスターミナルやショッピングセンター、レストラン、カフェ、スーパーなど、人混みでのスリ、置き引き、ひったくり等の被害が多発しているほか、空き巣等の住居侵入窃盗も散見されます。また、過去には、強盗により日本人が殺害された事件も発生しています。主な被害状況は次のとおりです。

(1)強盗
ア 夜間、路上を歩いていたところ、1台の車両が急停車し、乗っていた3〜4人の犯人から拳銃で脅され、パスポート等が入った鞄やポケット内から財布や携帯電話を強奪された。
イ 2人の男に羽交い締めにされて細い路地に連れ込まれ、ナイフで脅されて所持していた現金、パスポート等在中のバッグを強奪された。
(2)窃盗(スリ、置き引き、ひったくり等)
ア レストランのテラスで食事中、パスポート、財布等が入った鞄をテーブルの横に置いていたところ、気づかないうちに盗まれていた。
イ モール内にあるスーパーにおいて、カート内に現金等が入ったビジネスバッグを置いて買物をしていたところ、一瞬のうちに盗まれた。
ウ バスターミナル待合室において、パスポート、携帯電話、カメラ等が入った鞄を隣に置いてバスを待っていたところ、気づかないうちに鞄を盗まれていた。
エ 地下鉄(満員電車)で移動していたところ、気づかないうちに鞄を開けられ、現金、パスポート、及び財布を盗まれた。
オ 広場において、ケチャップをかけられ、財布、パスポート等が入った鞄を路上に置いたところ、一瞬のうちにその鞄を盗まれた。
カ 空港において、乗り合いタクシー運転手を装った男に声を掛けられ乗車したところ、営業許可を受けていない白タクであり、高額な料金を騙し取られた。
キ 車両を路上に駐車し、用事を済ませて戻ったところ、窓ガラスが割られてロックを外されており、車内から子供用品が入ったリュックサックを盗まれた。
ク 車両で移動中、タイヤがパンクしたため停車し、タイヤ交換をしていると、男3人が支援を申し出てきたので修理を手伝ってもらったところ、気づかないうちに車内後部座席に置いていた現金、パスポート、携帯電話、パソコン等が入ったリュックサックを盗まれた。
ケ モール内において、両替所に並んで順番を待っていたところ、手に持っていた現金をひったくられた。
コ 大通り沿いの歩道において、携帯電話を操作していたところ、道路上を走ってきたバイク(2人乗り)の後部座席に乗っていた男に携帯電話をひったくられた。
サ ホテルにおいて、朝食をとり部屋に戻ったところ、施錠してあった部屋から現金が盗まれていた。

(3)空き巣
 アパート内に男女4人組が管理人の目を盗んで侵入し、不在の男性宅の玄関の鍵を壊し、居室内から財布、デジタルカメラ等が盗まれた。 

(4)デモ・集会
 車両で移動中、複数のデモ抗議活動者に囲まれたため、スピードを出し通り過ぎようとしたところ、投石等により助手席及び後部ガラスを割られ、負傷(軽傷)した。

3 防犯対策
(1)基本的な防犯対策
 犯罪被害に遭わないためには「自分の身は自分で守る」との心構えを持ち、最新の治安情報収集に努める、危険な場所には近づかない、多額の現金・貴重品は持ち歩かない、見知らぬ人物を安易に信用せずに警戒するなど、常に防犯を意識した行動をとることが重要です。
犯罪被害に遭わないための予防策が大切であり、 基本的な防犯対策として、次の事項に留意してください。
ア 周囲の状況に十分注意する。
イ 歩行中やショッピング中などには、時々振り向くなど、周囲を警戒していることを態度で示す。
ウ 不審な人物が近づいてきたら、直ちにその場から離れる。
エ 手荷物は身体から離さず、特に人混みでは、身体の前面に持つようにする。
オ 多額の現金や貴重品は持ち歩かない。外出時は貴金属などを身に着けない。携帯電話やパソコン等を人前で使用しないなど、目立たない服装・言動を心がける。
カ 人通りの少ない場所や、夜間の一人歩きは避ける。
キ 生命と身体の安全を最優先する。強盗に遭っても、相手が武器を持っていることを想定し抵抗しない。
ク 空港や市内両替所で多額の両替をしない。
ケ 駐車の際は、路上駐車を避け、また、完全に施錠するとともに、外部から見える場所に荷物等を置かない。

(2)観光シーズンの留意点
 南半球に位置するチリにおいては、夏の観光シーズンとなる12月から2月にかけて、日本人を含む多くの観光客が訪れ、その観光客を狙った犯罪が例年多発していますので注意が必要です。この傾向は首都サンティアゴのみならず、特に夏休みシーズンには、バルパライソ(世界遺産)を訪れる観光客を狙った強盗被害や窃盗被害が急増します。
 バルパライソでは、有名な観光地であるプラット埠頭、ソトマジョール広場、5月21日広場やケーブルカーに向かう路地や階段、さらには丘の上において、銃器等を使用した強盗被害をはじめ、置引きやスリ、ひったくりの被害が報告されています。観光地ではシーズンを問わず同様の犯罪が多発していますので、一目で観光客と分かる目立つ服装や行動は取らない、持ち物は肌身離さず持ち、常に周囲に気を配り警戒していることを悟らせる等、防犯対策を心がけてください。また、カラマやアントファガスタから長距離バスを利用する観光客は、バス停周辺だけでなく、バス車内においても盗難等の被害が多発していますので、貴重品の管理には十分注意してください。
 サンティアゴ国際空港では、違法タクシー(白タク)の強引な客引きによる料金詐欺や、乗車させた後に強制的にATMで引き出させた現金を奪う被害が発生しています。違法タクシーは利用せず、空港内のタクシーカウンターでチケットを購入し、正規のタクシーを利用することをおすすめします。また、出迎え者を装って違法タクシーに乗車させ、高額な料金を請求する事案も発生していますので、身分証等で出迎え者について確認し、営業許可を受けていない違法タクシーは乗車しないよう注意が必要です。

(3)公共交通機関利用時
ア 地下鉄は比較的安全ですが、車内でのスリや置き引きに注意してください。
イ バスは地域によって車内での恐喝・強盗事件が発生することがあります。安全と言われている地域で利用する際も、乗客が少ないときは、運転席の近くに座るよう心掛けてください。また、混雑したバス車内ではスリ等の被害に注意してください。
ウ タクシーは、外国人旅行者が目的地まで遠回りされる被害に遭う事例が報告されています。また、料金の支払に当たり、カード払いで一桁多い金額で決済されたり、渡した紙幣を運転手が素早く少額の紙幣にすり替え、強引に不足分を支払わせたり、偽札とすり替えたりする事件が発生しています。タクシーを利用する際は、信頼のおける配車サービスを利用するようおすすめします。

5 犯罪被害危険地域
(1)サンティアゴ市セントロ地区(中心街)は、夜間及び週末には人通りが無くなりますので注意が必要です。アルマス広場では昼間でも外国人を狙ったスリやひったくりが発生しています。また、有名なサンタルシアの丘では麻薬の売買が行われているほか、サンティアゴ市南部のラ・フロリダ区、プエンテアルト区、西部のマイプ区、東部のペニャロレン区、中部のニュニョア区では強盗、銃器犯罪等が多発しています。

(2)サンティアゴ市北部のセロ・ナビア地区、南部のビクトリア地区、ラ・レグア地区等には貧民街があり、麻薬の売買が絡んだ銃器による強盗・殺人が多発していますので、決して立ち入らないでください。

(3)サンティアゴ市東部のプロビデンシア区、ビタクラ区及びロ・バルネチェア区では、空き巣等の住居侵入強窃盗事件や、高級レストランでの置き引き、駐車場等における車両強盗、ナイトクラブ前での、諍いによる発砲事件が発生しています。

(4)太平洋に面した観光地であるビーニャ・デル・マル、バルパライソでは、旅行者を狙うグループによる武器を使用した強盗事件が多発しています。独り歩きは避け、人通りの少ない場所へは立ち入らないでください。


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