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● 犯罪発生状況、防犯対策

1 犯罪発生状況
(1)殺人事件
 エルサルバドルは、2014年から2018年までの5年間、人口10万人あたりの殺人事件発生件数が武力紛争当事国を除いた中では世界で最も高い国でした。その背景には犯罪集団マラス(※)の存在が大きく、2015年8月、エルサルバドル最高裁判所は、マラスを「テロ組織」と認定し、これ以降マラスの取締りが強化されました。
 2015年は人口10万人あたりの殺人事件発生件数が105人と、過去最も高い年となりましたが、同年をピークに殺人事件は減少傾向にあります。その後、2019年6月に発足したブケレ大統領政権は、治安対策に重点を置き、犯罪地域コントロール計画(PCT)や2022年3月27日に発効した例外措置体制(憲法で保障される権利の一時的制限措置)によりマラスの取締りを強化しており、2022年の殺人件数は496件、2023年は156件と、大幅に減少しました。
 なお、例外措置体制については、逮捕状なしでの容疑者の逮捕・拘束が可能であるため、不当な拘束や誤認拘束に関して、国内外から問題提起がなされており、今後、マラス側からの反発、拘束者の大量脱走等による治安悪化の可能性も否定できない状況となっております。

※マラスについて
 マラスとは米国に居住する中米移民らで結成されたギャング組織に所属していた若者らが、当時の米国の政策により母国に強制送還されたことがきっかけとなり、中南米一帯に広まり存在感を高めていったギャング集団のことです。
 マラスは、ありとあらゆる犯罪への関与が疑われており、特に殺人事件の背景にはマラスの存在が大きく、強盗、恐喝、違法薬物販売等の犯罪行為で得た金を、路線バスの購入、ナイトクラブ・バー、洗車場、パン屋といった正規の商売に投資することでマネーロンダリングを行っています。また昨今では携帯電話のSNS機能を使用し、メキシコ、グアテマラ等の国外の犯罪組織との間で、犯罪に関する指示、情報共有を行っているという情報もあります。 
 エルサルバドル国内のマラスの代表的なものには、「MS13」、「18レボルシオナリオス(18R)」 、「18スレーニョス(18S)」があり、小規模なものとして「ミラダ・ロカ」、「マオ・マオ」、「マラ・マキナ」等があります。

(2)その他各種犯罪
 2020年前半は、新型コロナウイルスの感染防止対策により、人々の外出が厳しく制限された関係で、全ての犯罪で発生件数が減少したものの、2020年後半から2021年にかけては、再び増加に転じ、2019年の犯罪件数と比較してほとんど変化がなく、平時に戻ったという見方がなされています。
 上記(1)のとおり2022年3月27日に発効した例外措置体制により、殺人事件は大幅に減少しましたが、窃盗事件については増加傾向にあり、強姦事件についてはさほど減少しておらず、治安が良くなったとは言い難い状況です。

2 犯罪多発地域
(1)サンサルバドル県 サンサルバドル市(首都)旧市街区(セントロ)周辺 
 全国で発生する事件の約3分の1が首都サンサルバドル市で発生しており、セントロ地区(旧市街区)でも様々な事件が発生しています。セントロ地区には、古い教会、劇場、図書館等の観光名所があるため、近年、多くの旅行者が訪れていますが、セントロ地区に位置する中央市場は、過去にマラス組織間のテリトリーの境界線上に位置していたため、市場の販売員がマラス間の抗争に巻き込まれて殺害される事件や、治安機関とマラス間の銃撃戦が発生した経緯もあることから、これらの地区への立ち入りはなるべく避けてください。
 旧市街周辺は、宿泊費の安いホテルが集中していることもあり、旅行者が危険な地域と認識せず出入りすることが多いようですが、過去に日本人が被害者となった事件・事故の多くはこの地域で発生していますので、旧市街付近での宿泊は避けることをおすすめします。また、この地域に限らず、ホテルに宿泊する際は、入口に警備員が配置されている警備がしっかりとしたホテルを選ぶことをおすすめします。

(2)首都圏周辺都市
 首都周辺の都市(イロパンゴ市、ソヤパンゴ市、デルガド市、メヒカノス市)においても殺人、強盗、恐喝、暴行、性犯罪、ひったくり、麻薬売買等の犯罪が発生しています。

3 エルサルバドル国内の注意を要する地区
 エルサルバドル国内の10都市区に対し、外務省の「危険情報」として危険レベル2(不要不急の渡航は止めてください。 )が、その他国内全域に対しても危険レベル1(十分注意してください。)が発出されています。エルサルバドル国内の注意を要する地区についての詳細は、危険情報(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_244.html#ad-image-0 )をご確認ください。

4 日本人の被害例
(1)レストランにて昼食を取るために警備員が常駐している駐車場へ車両を駐車し、貴重品の入ったバックを車内に置いたまま約10分程度車両を離れた際に、車両の扉をこじ開けられ、貴重品の入ったバッグを窃取された。
(2)徒歩で移動中、数人の強盗犯に刃物で襲撃され、パスポートや財布が入ったバッグを強奪された。その際、刃物で腹部を刺され負傷した。
(3)自転車旅行者が、10人以上の武装集団にけん銃等で襲撃され、パスポートを含む所持品(総額40万円以上)を強奪された。その際、けん銃で殴られる等したほか、靴も強奪された。
(4)長距離バスターミナル付近の安宿に宿泊した際、現金などが入った荷物を盗まれた。
(5)宿泊先のホテルで寝袋、現金、航空券を盗まれた。
(6)出勤途中に強盗に遭い、所持品全てを強奪された。
(7)銀行で現金を引き出し、帰宅する途中に、2台のバイクに分乗した4人組の男にけん銃で脅され、現金、腕時計等を奪われた。
(8)宿の客引きと口論になり、周辺にいた男2人から投石を受け、顔面を数針縫う怪我を負った。
(9)市内レストランにおいて窃盗に遭い、現金およびクレジットカードの入った財布を盗まれた。
(10)セントロ地区(旧市街)を散策中に、首に掛けていたカメラを強奪された。

5 防犯対策
 犯罪被害に遭わないためには「自分の身は自分で守る」との心構えを持ち、最新の治安情報収集に努める、危険な場所には近づかない、多額の現金・貴重品は持ち歩かない、見知らぬ人物を安易に信用せずに警戒するなど、常に防犯を意識した行動をとることが重要です。
 犯罪被害に遭わないための予防策が大切であり、次の点に留意して犯罪被害に遭わないように注意してください。

(1)犯罪が多発している地域(特に危険レベル2の地区。上記3ご参照)への、不要不急の立ち入りはしないでください。
(2)常に周囲の状況や人の動きに気を配り、自分の荷物から目を離さないでください。
(3)外出の際、明るい時間帯であれば、危険レベル2地区以外は徒歩での外出も状況に応じて可能ですが、それ以外の時間帯の移動に際しては、自家用車や配車サービス(UBER等)もしくは信頼できるタクシーを利用してください。
(4)国民の日常の移動手段とされている路線バスですが、現地の人も乗車に対して懸念を示すほど、車内では窃盗等の事件が発生していることから路線バスへの乗車は控えてください。
(5)多額の現金、高価な貴金属は身につけず、現金は分散して所持し、携帯電話も含め、出し入れはなるべく人目につかないよう注意してください。
(6)強盗・窃盗事件は、昼夜を問わず発生しているため、時間帯を問わず外出の際は注意してください。また、人通りの少ない場所を歩いている間に被害に遭う傾向にあるため、人通りの少ない通りや路地への立ち入りは避けてください。また、万が一被害に遭った場合は、自身の安全を第一に行動し、絶対に抵抗せず、相手を刺激したり、不用意に懐やポケットに手を入れる行為(武器を取り出そうとしているものと誤解される恐れがある)は避けてください。強盗対策として、ポケットに20ドル程度の現金、使わない携帯電話を持っておき、金品を要求された際は、それらを目配せ等で相手に差し出すことも有効です。
(7)宿泊する際は、警備のしっかりしたホテルを選び、貴重品は金庫等の安全な場所に保管してください。
(8)ATMで現金を引き出す際は、近づいてくる人物がいないか等、周囲の状況に注意を払ってください。
(9)「周辺を案内する」と誘われ、人気のない所へ連れて行かれ所持品を全て奪われる事件が発生していますので、声を掛けられても、安易に信用しないでください。
※ 在留邦人向け安全の手引き
 在エルサルバドル日本国大使館が在留邦人向けに作成した「安全の手引き」(https://www.sv.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000640.html )もご参照ください。

6 テロ・誘拐
 エルサルバドルのテロ・誘拐については、テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_244.html )をご確認ください。 


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