=-=-=-=-=-=-=-=
=-=-=-=-=-=-=-=
● 犯罪発生状況、防犯対策
1 犯罪発生状況
かつてアルゼンチンは、他の中南米諸国と比べ、教育・生活水準が高く、治安の良い国と言われていましたが、近年の経済・財政的苦境によって、貧困層および極貧層が増加しており、人口が集中する首都ブエノスアイレス市および同市の南から西にかけて隣接するブエノスアイレス州内の都市を中心に、強盗、窃盗等の犯罪が日常的に発生しています。
また、アルゼンチンでは銃器類が大量に出回っているため、銃器を使用した強盗や殺人、誘拐などの凶悪犯罪も日常的に発生しており、十分な注意が必要です。
一例として、アルゼンチン治安省統計に基づく2024年のブエノスアイレス市での犯罪発生率を東京都と比較すると、殺人は約4倍、傷害は約12倍、窃盗は約5倍、強盗は約1,000倍に達します(人口10万人当たりの発生件数の比較)。
(1)一般犯罪の傾向
報道等によると、多発している一般犯罪の形態は以下のとおりです。なお、これらの事件には、未成年者や麻薬中毒者が関わることも多く、ほとんどの場合、犯人は拳銃等の武器を所持しています。
ア スリ・置き引き
イ ひったくり
ウ 「ケチャップ」強盗(相手に気付かれないように汚臭のする液体をかけ、手助けを装って所持品を盗み取る手口)
エ 「モトチョロス」と呼ばれるバイクを使用したひったくり強盗
オ 路上強盗(銀行から現金を引き出した直後の人物に対する強盗)
カ 「ピラニア」強盗(路上強盗の一種で、集団で襲い金品を強奪する手口)
キ 家主の外出時や帰宅時の隙を突いて行う待ち伏せ強盗
ク 武装した複数犯による侵入強盗
ケ 車両強盗(武装した犯人が走行中の車両を強引に停止させて行う強盗)
コ 車両窃盗
サ 誘拐(短時間誘拐)
シ バーチャル誘拐(誘拐を装い自宅に電話をかけ、身代金を騙し取る手口)
ス 強姦(夜間、早朝の時間帯)
セ マリファナ、コカイン等の大量密輸および不法所持
(2) 銃器等を使用した犯罪
ア 銃器事情
アルゼンチンでは、定められた手続きを経れば、銃の保有は合法です。アルゼンチン国内で正規に登録されている銃(治安機関除く)は約200万丁で、これ以外にも違法な銃が約200万丁流通していると見られており、銃を使用した犯罪が日常的に発生しています。
イ 銃器を使用した手口
銃器を使用した強盗の手口としては、自宅玄関からの出入りや車庫での車の出し入れ時を狙った待ち伏せ強盗が多くあるので、周囲に注意を払うことが肝要です。また、信号待ちで停止中の車のみならず走行中の車に対しても、沿道や歩道橋等から石等を投げ落として停止させ、搭乗者を銃で脅して金品を奪う強盗が発生しています。
ウ 犯罪に遭遇した場合の対処
夜間より昼間の方が安全とは言えますが、昼間でも強盗事件は発生しており、いわゆる「安全な時間帯」というものはありません。街中を通行中に、万一銃声などが聞こえた場合には、姿勢を低くして、事態が落ち着くのを待つか、速やかにその場を離れることが重要です。また、店内で強盗に遭遇した場合には、抵抗せず、大声を上げず、落ち着いて犯人の指示に従うことが、犯人を逆なでせず身の安全を守る上で重要です。
(3)ブエノスアイレス市の犯罪被害多発区域の例
犯罪が比較的多発している地域における各種犯罪等の主な特徴は、以下のとおりです。
ア ボカ地区(BOCA)
タンゴ発祥の地といわれる有名観光地ですが、低所得者層の居住地区でもあり、大通り以外は日中でも注意が必要です。近くに大きなサッカー場があり、特に、サッカーの試合日には多くの観戦者が訪れるため、事件が発生しやすい傾向にあります。また、熱狂的なサポーター間のトラブルも発生しており、トラブルに巻き込まれないためにも対戦相手チームのユニフォームや同系統の配色の衣服等を着用しないことを推奨します。
イ フロリダ通り(FLORIDA)
観光客等で非常に賑わう歩行者通りとして有名であるため、平日でもスリやひったくり等の犯罪が頻発していることから、散策中においても十分注意が必要です。路上行っているヤミ両替については、以下2(4)イを参照ください。
ウ サンテルモ地区(SAN TELMO)
首都で最も古い地区の1つです。週末にはドレーゴ広場においてフェリア(のみの市)が開催され、観光客を含む大勢の人で賑わうことから、スリ、ひったくり等の被害情報が多く報告されており、訪れる際は注意が必要です。
エ モンセラート地区(MONSERRAT)およびサンニコラス地区(SAN NICOLAS)
市内金融街で多くの銀行が設置されており、利用客をターゲットとした強盗やひったくり等の犯罪が発生しています。
オ レティーロ駅周辺およびサンマルティン広場
同駅近傍に大規模スラム街が存在しており、同地を温床とする犯罪グループによるひったくりや置き引きが多発しており、これまで多くの邦人旅行者が被害に遭遇しています。過去には外国人観光客の殺人事件も発生しています。特に駅前のバスターミナルでは、窃盗団による組織的な置き引きやスリ、ケチャップ強盗が日常的に発生しているため、公共交通機関を利用する際は注意が必要です。
カ 首都の三大ターミナル(CONSTITUCION駅、RETIRO駅およびONCE DE SEPTIEMBRE駅)
駅構内ではスリ・窃盗が頻発しており、駅周辺では強盗事件が発生しやすい傾向があります。過去には電車運行の遅延により乗客が暴徒化し、破壊行為を行った事例もあります。
キ レコレータ地区(RECOLETA)
エビータの墓で有名とされるレコレータ墓地の周辺は、昼夜問わず多くの観光客で賑わっているため、ひったくりやスリ等の犯罪が多発する地域の一つです。
ク リーベルプレート(RIVER PLATE)サッカー場周辺
試合の日にサポーター間の騒動に乗じた犯罪が発生することがあるため、観戦に訪れる場合は極力、貴重品等を所持しないことを推奨します。不要なトラブルに巻き込まれないため、対戦相手チームのユニフォームや同系統の配色の衣服等の着用を控えることを推奨します。
2 防犯対策
犯罪被害に遭わないためには「自分の身は自分で守る」との心構えを持ち、最新の治安情報収集に努める、危険な場所には近づかない、多額の現金・貴重品は持ち歩かない、見知らぬ人物を安易に信用せずに警戒するなど、常に防犯を意識した行動をとることが重要です。
以下に留意しつつ、必要な防犯対策を講じてください。
(1) 全般
ア (制服を着用している警察官を含め、)安易に他人を信用しない。
イ 外出時は、隙をつくらず、常に周囲を警戒する。
ウ 華美な服装や人前で大金を見せる等、犯罪者のターゲットになるような行動は避ける。
エ カードで支払いをする場合、サイン前に金額をしっかりと確認する。
オ 両替等でお金を受け取る際は、確実にその場で金額を確認する。
カ 犯罪に巻き込まれた場合、身体の安全を最優先として落ち着いて行動し、犯人に対しては抵抗しない。
(2) 車両運行時の注意事項
ア 深夜や早朝の運転を避ける。
イ ルートの選定に注意し、なるべく交通量が多く明るい道を使用する。
ウ 帰宅時は特に注意し、ガレージの扉の開閉時に隙が生じないよう注意する。
エ 初めて訪れる場所は、明るい時間帯に経路を確認しておく。
オ 極力、窓を閉めて走行し、停車中に不意に物を取られないように警戒する。
(3) 公共交通機関利用時の注意事項
ア タクシー
(ア)タクシーを利用する際は、配車アプリを使用することを推奨します。なるべく流しのタクシーを利用することを控え、利用の際は「無線タクシー」(ラジオタクシー、「RADIO TAXIの看板やフロントガラスに(IRA)と表示されている」)を推奨します。
(イ)トランクに荷物を入れる際は、運転手に格納してもらう、または運転手が運転席から離れている状態で行うことが重要です。トランクに荷物を格納した途端にタクシーが急発進して荷物を奪われる事件が発生しています。
イ レミース
タクシーに代わる安全な交通手段として、レミースと呼ばれるハイヤーがあります。運転手の身なりもきちんとしており、料金はタクシーより高いものの、安心して利用することができます。ただし、一般の車両と区別がつかないため、予約の際には必ず車種、色、車番および運転手名を確認するようにしてください。
ウ バス
(ア)一般に「コレクティーボ」と呼ばれ、ブエノスアイレス市内では24時間運行されています。近年は車内でスマートフォンのひったくりが多く、特にバス停での降車間際に不意に持ち逃げされる事例が頻発しています。いずれも犯人は複数であることが多く、手荒な行動をとる場合もあるため、車内でのスマートフォンの利用は控えることを推奨します。
(イ)バスの運転自体も乱暴で、バス停に接近すると停車前からドアを開け、完全に客が乗り込んでいなくても、ドアを開けたままで発進することも珍しくありません。走行中は、空いている車線に頻繁に車線変更するので、自家用車でバスの脇を併走する場合は注意が必要です。
エ 地下鉄
(ア)ブエノスアイレス市内には、多数の地下鉄の路線があり、運賃が安く便利です。しかし、混雑時には車内およびホーム等でスリやひったくり等が発生していますので、利用の際は、リュックや手荷物、スマートフォンの利用に注意が必要です。
(イ)近年では、電車のドアが閉まる瞬間にスマートフォンをひったくられる事例が多く、乗降口付近ではスマートフォンを使用しないことを推奨します。また、電車の窓が開放されていることが多く、窓越しに貴重品をひったくられる被害も発生しています。
(ウ)車内では物売りが回ってくる光景を見受けられますが、売り子が乗客の膝上等に無理矢理置く商品は、後に回収に戻って来ますので、そのままにしておくか、商品を置かれる前に明確に断ることでトラブルを避けることができます。
(4) 犯罪手口に応じた注意事項
ア 置き引きおよびスリ
空港、ホテルロビー、レストラン、バス、地下鉄等において、ちょっとした隙に、バッグ等を置き引きされたり、金品をすられたりしています。窃盗団は、時間や電車・バスの行先を尋ねる等話しかけて注意を引き付ける役と、スリや置き引きを行う実行犯等に役割を分担し、組織的に犯行に及んでいます。人多く集まる場所等においては、常に適度な緊張感を保ち油断しないことが大切です。
イ 両替詐欺
両替所にてアルゼンチン通貨に換金する際に、高額紙幣を低額紙幣にすり替えられる被害が発生しています。また、市内の路上に立っているいわゆるヤミ両替屋を利用した際に、偽札に替えられた被害報告も寄せられているため、両替の際は銀行を利用することを推奨します。
ウ ひったくり
(ア)グループによる犯行が多く、特定のターゲットに狙いをつけて組織的に犯行に及んでいます。特に、モトチョロスと呼ばれるバイクを使ったひったくりが多く、低速で接近してくる不審なバイク(二人乗りのことが多い)を発見した場合は、速やかに人込みに紛れるか商店の中に入り、危険を回避することが大切です。銀行周辺においては現金を引き出した人が狙われるケースも多く、周囲の状況を確認するなど十分な注意が必要です。華美な服装やカメラ、電子機器類を手にしていると標的となり易くなるため、注意が必要です。
(イ)路上でスマートフォンを操作したり、写真を撮影していると、背後から急にひったくられる事件が多発しています。現地の方が屋外でスマートフォンを使用しているからといって、安心することなく周囲に注意を払うことが大切です。
エ ケチャップ強盗
市内の観光スポット、公園等で多発しています。数人のグループによる犯行が多く、手口は、ケチャップ、廃油、塗料等の液状物質を被害者の衣服につけた後、汚れていることを指摘すると同時に、親切に拭き取りを手伝う様子で接近し、被害者が汚れを拭き取る間に財布や地面に置いたバッグ等を奪って、逃げ去るケースが多いです。万一、何かしらの液体を掛けられた場合に、親切そうな人が近寄ってきても決して相手にせず、速やかにその場を立ち去ることが肝心です。
(5) 場所に応じた注意事項
ア レストラン、インターネット・カフェ等
椅子に掛けたりテーブルの下に置いたりしたバッグが盗まれる置き引き被害が多発しています。携行している荷物への注意を怠らず、貴重品類は身に着けておくことが肝心です。
イ 観光地区
観光スポットから一本裏道に入ると、途端に人通りや街頭の監視カメラが少なくなり、犯罪被害に遭い易くなります。道に迷って、裏通りなどには入らないよう注意してください。また、タンゴ・ショーは深夜まで行われることが多く、終了後の移動には十分な注意が必要です。
ウ バー
(ア)ブエノスアイレスでは、店舗の正面に料金表を提示することが、飲食店に義務付けられています。バーに入る時は、料金表を見て金額を確認することが必要です。料金表が見当たらない場合は、不正な高額料金を請求される可能性もあります。
(イ)若年層が集まる繁華街のクラブ等では、違法薬物が流通しているとされており、興味本位で手を出すと薬物不法所持等の罪で、警察に逮捕・拘禁される恐れもあります。
3 テロ・誘拐
アルゼンチンにおけるテロ・誘拐については、「テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_241.html )」をご確認ください。
※在留邦人向け安全の手引き
在アルゼンチン日本国大使館が在留邦人向けに作成した「安全の手引き」 (https://www.ar.emb-japan.go.jp/files/100158215.pdf )もご参照ください。
- ○外務省 領事サービスセンター(海外安全担当)
電話:(外務省代表)03-3580-3311 (内線)2902
- ○外務省海外安全ホームページ:https://www.anzen.mofa.go.jp/
−−−−−−−−−−
トップページ
−−−−−−−−−−