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● 犯罪発生状況、防犯対策
1 犯罪発生状況
2023年におけるマレーシアの犯罪届出件数は、52,444件であり、前年比で1,631件増加しています。
マレーシアの凶悪犯罪発生件数は、近年減少傾向にありましたが、コロナ禍以降において人流が活発となったことを背景に2023年から増加に転じています。スリや置引き・ひったくりなどの街頭犯罪や家屋への侵入窃盗の発生件数は引き続き高水準にあることから、十分注意が必要です。
主な凶悪犯罪の届出件数は、次のとおりです。
(1)殺人:258件(前年比18件増加、人口10万人あたりの発生率は日本とほぼ同じ)
(2)強盗:4,558件(同31件減少、人口10万人あたりの発生率は日本の約12倍)
(3)強制性交等:1,914件(同202件増加、人口10万人あたりの発生率は日本の約2.6倍)
2 防犯対策
犯罪被害に遭わないためには「自分の身は自分で守る」との心構えを持ち、最新の治安情報収集に努める、危険な場所には近づかない、多額の現金・貴重品は持ち歩かない、見知らぬ人物を安易に信用せずに警戒するなど、常に防犯を意識した行動をとることが重要です。
犯罪被害に遭わないための予防策が大切であり、次の点に留意して犯罪被害に遭わないように注意してください。
(1)第三者や関係者の注意が及びにくい環境(状況)を避ける、警戒を強化する。
ア 時間的要素:深夜・早朝、観光シーズン、年末年始、祝祭日、大規模行事実施日など。
イ 場所的要素:観光地など(例:史跡・名勝地)、イベント会場(意識が一点に集中するため、身辺の注意がおろそかになりがちとなる)、大規模商業施設(ショッピングモール等)の出入口など。
ウ 人的要素:高齢者同士、子供連れ、カップル、集団(観光ツアー客、修学旅行、視察団など)。
(2)多くの人が集まりやすい場所(状況)を避け、警戒心を強める。
ア 路上(特に道路側の歩道、交差点、路地と大通りの境目など)。
イ 空港・駅・バスターミナルその他交通の要衝。
ウ 大規模商業施設、観光スポット、宗教関連施設など。
(3)犯罪遭遇リスクを下げる。
ア リスクの高い環境下に長時間いない(なるべく近づかない、滞在時間を短くする、常時非常口や脱出ルート
確認・シミュレートする)。
イ 避難しやすい態勢作り(動きやすい服装と歩きやすい靴を着用し、手荷物は最小限にとどめる)。
ウ 安全情報の収集
(ア)信頼できる情報源を確保する(各国外務省・大使館や報道機関の発表など)。
(イ)ソーシャルメディア情報を鵜呑みにしない。
(ウ)「良好な人間関係」の構築(社内、近所、地元住民の口コミは情報収集の基盤)。
(4)万一事件事故に巻き込まれた場合は、身の安全を第一に考える。
強盗には抵抗せずに金品を渡し、可能な限り速やかに現場から離れ「二次被害」を避ける。
(5)長期滞在時に犯罪被害に巻き込まれないための注意事項
ア 犯罪者は、事前に下見をすることが多いので、平素から住居・職場等周辺、通勤経路等に気を配り、不審者が徘徊している場合などはガードマンや警察に通報するよう心掛ける。通勤等移動経路については、不定期に変更する。
イ 玄関のドアや防犯グリル(格子)を常に施錠し、ドアチェーンをかけ、来訪者応対時の確認を確実に行う。
ウ メイドやガードマン等が犯罪者の手引きをする例もあるので、警戒を怠らない。
エ 家族の行動、居場所等を常に把握し、変更が生じる場合は、必ず連絡を取り合う。
オ 普段から不審電話を警戒し、電話機の近くには緊急連絡先リストやメモ等を常備する。
カ 自宅に多額の現金を置かない。旅券などの貴重品は金庫や厳重に鍵のかかる場所に保管する。
キ 夜間外出時には、敢えて室内照明を点灯させておくなど、不在であることを気付かれないようにする。
ク 家を長期間留守にする場合は、あらかじめ郵便物や新聞等の処理を近隣者や知人に依頼しておく。
ケ 在宅中に侵入者に気付いたときは、速やかに警察に通報(警備会社への通報装置を利用するなど)し、侵入者との接触を避ける(施錠可能な部屋に立てこもるようにする)。
コ 空き巣は、騒ぎ立てられて居直り強盗(殺人)に急変する例もあるので抵抗しないなどの注意が必要。
3 日本人の犯罪被害例
マレーシアで在留邦人及び短期滞在者が遭遇する代表的な犯罪は、上記でも紹介した「街頭犯罪」(スリ・置引き、・ひったくりなど)です。また、路上強盗やタクシー強盗の被害もしばしば報告されています。
このほか、メールやウェブサイトを通じた「オンライン詐欺」の被害も増えています。最近では、「高リターンが得られる」との誘い文句による「投資詐欺」が最も多く、次いでオンラインショッピングなどで注文したが商品が届かない、又は偽物が送りつけられたとの被害や、銀行員等を装った「電話詐欺」の被害も確認され
ています。これらの詐欺は、日本人を含めて外国人も多数被害に遭っていることから、各国の大使館でも、インターネット上での接点しかない「知人等」に、不用意に金品を送付しないよう警戒を呼び掛けています。以下に、日本人がよく遭遇する犯罪被害例を紹介します。
(1)置引き
空港の出入国時、ホテルのチェックイン・チェックアウト時、飲食店での雑談中、周囲への警戒が緩む隙を狙い、バッグ等から財布等の貴重品を抜き取られる又はスーツケースや鞄等を盗まれるといったケースが典型例として挙げられます。
犯人は、声を掛ける、小銭をわざと落とす、子供を近づけるなどの手段で被害者の警戒・注意をそらし、犯行に及びます。よって、「外出中は常に警戒心を保持する」意識を持つことが重要です。日本人が被害に遭った過去の事例では、ビュッフェ・スタイルのレストラン(ホテルの朝食時が多い)で不用意に荷物や携帯電話を置いたまま席を外し、盗難に遭った事案が多数報告されています。
(2)スリ(集団スリ)
マレーシアではスリ被害も多数発生しており、バス等の公共交通機関の車内や、駅・大規模商業施設など、人が密集する場所が狙われます。複数で被害者の周りを取り囲み、被害者や周囲の人々に気付かれないように犯行に及ぶ集団スリや、職務質問名目で財布を預かり、一部の現金を抜き取る手口もあります。集団スリの場合、被害品を盗む実行犯が直ちに周辺にいる共犯に被害品をリレー式で手渡し、その場を立ち去るケースが多く、狙われると被害阻止は極めて困難です。
スリ被害の予防は、人混みを出来る限り避けつつ、トートバッグ等の蓋やチャックの無いバッグやズボンのポケットなど、盗まれやすい場所には貴重品を入れないことが重要です。併せて、エスカレーターや階段を利用する際は、バッグ等は常に自分の目に見える範囲で所持し、人混みでは開口部等を手で押さえておく等、警戒を明示することも重要です。
(3)ひったくり
日本と同様、マレーシア国内の主要都市では、背後から接近してきた二人乗り又は単独のバイクに手荷物を強奪されるひったくりが頻発しており、女性及び高齢者の被害が多数報告されています。ひったくりの際による転倒や、抵抗して路上を引きずられた結果、入院をするほどの大怪我を負う例も多数あります。
したがって、手荷物は極力少なくするとともにバッグ等は、たすき掛けにして道路側にさらさないなどの対策をとるとともに、常に自らが標的とされていないか周囲を警戒しつつ行動することが肝要です。
(4)強盗(特に刃物を使ったもの)
マレーシアでは、「パラン刀」と称する大型の山刀が常用されているため、これで被害者を傷つけて金品を奪う路上強盗が多数発生しています。犯人は、被害者が抵抗等する場合には躊躇なく切りつけ、金品を全て強奪します。
このため、深夜までの飲酒や夜間の外出、単独行動は厳に慎むとともに、万が一、同様の被害に遭遇した場合には、抵抗せずに身の安全を最優先とすることが重要です。
(5)昏睡強盗(泥酔あるいは薬物を盛って貴重品を盗むもの)
観光地等で知り合った見知らぬ人物と意気投合し、共に飲食したところ意識を失い、目覚めたときには所持品が無くなったというのが典型的な例です。手口としては、薬物を入れた飲み物を勧める、トイレ等で中座した隙に飲食物に混入する等があります。
被害防止には、見知らぬ人物との飲食は相応のリスクがあることを理解し、飲食を勧められても不用意に口にしないことが重要です。また、食事中に席を離れた場合には、それ以降飲食しない等の警戒も必要です。
(6)自動車強盗(接触や追突を偽装して車両を強奪)
高速道路等を走行中、後続車両から追突・接触され、路肩に停車して降車したところ、相手車両から複数の犯人が現れて暴行を加えられた上、車両を強奪される事案が度々発生しています。
交通事故に遭遇した際は、24時間以内に警察(交通警察)に届け出ればよいことから、事故状況に不審な点がある、あるいは複数の男性が相手方車両に乗車している場合は自動車強盗の可能性を疑い、車両から降りる前に相手をよく観察し、不審点があれば、直ちにその場を離れ警察署等へ移動することをおすすめします。
(7)タクシーをめぐるトラブル(白タク、運転手による強盗・強制性交等)
マレーシアのタクシーは、運転が荒く、料金トラブルも多い傾向があるほか、運転手が乗客から金品を強奪する、女性客を暴行するなどの事件が頻発するなど、安全面でも問題を抱えています。
このため、最近は「配車アプリ」を利用して、事前に運転手と支払料金を確認した上でタクシーを利用するケースが多くなっており、ホテルや駅などでタクシーを拾う場合でも流しを拾わずに配車アプリの利用が主流となっています。
したがって、タクシーを利用する際は、流しのタクシーを避けてこれら配車アプリを活用し、事件やトラブルを避けることをおすすめします。
(8) クレジットカード犯罪・スキミング
インターネットの普及により、オンラインによる決済が頻繁に利用されており、これに伴い、不正アクセス等による商品購入等の不正使用事案や、クレジットカードやキャッシュカードのスキミング事案も発生していますので、十分に注意してください。また、買い物の際に、PINコードなどが読み取られないよう手元を隠すなどの防衛策を講じてください。
(9)いかさま(カード・トランプゲーム)賭博、当選金詐欺
クアラルンプール市では、ブキ・ビンタンやKLCC、チャイナタウン等を中心に、見知らぬ男女から声を掛けられ、民家に誘われてトランプ・ゲーム(ブラック・ジャック)に興じた結果、金品を騙し取られるという事案が発生しています。
また、路上を散策中に「企業キャンペーンの無料くじ」を引くよう誘われ、言われるがまま引いたところ「高額商品が当選したので事務所に来て欲しい」と言われて移動したところ、手数料や手付金の名目で金銭を支払わされる事案も発生しています。
いずれの事案も、不用意に犯罪集団の本拠地に付いていくことによって発生しています。もうけ話をむやみに信用しないよう注意するとともに、見知らぬ人からの誘いには警戒心を持って対応し、不用意に相手方を訪ねることはしないことが重要です。
(10) 航空機内における盗難
旅客機内に持ち込んだ手荷物内の貴重品が盗まれるといった被害が確認されています。国内線・国際線を問わず、機内に現金等の貴重品を持ち込む際には、極力、座席上の収納棚に入れた手荷物内に入れることなく、可能な限り身体に近いところで保持するようにして下さい。機内のお手洗いを使用する際も、できるだけ現金、クレジットカード、旅券等の貴重品は身に付けておく等の意識を持つようにしてください。
4 マレーシアを相手先とする各種詐欺(「投資詐欺」、「オークション詐欺」、「ロマンス詐欺」など)
マレーシアでは、携帯電話の購入や銀行口座の開設が容易な上、アジア・中東方面との航空便のアクセスが良好であることから、世界各地の犯罪集団がマレーシアを拠点に各種詐欺を行っています。特に、インターネットを介した商取引や国際交流を悪用した「投資詐欺」、「オークション詐欺」、「ロマンス詐欺」等の各種詐欺は、日本を含む各国大使館が警戒を呼びかけており、注意が必要です。
なお、マレーシアで犯罪被害に遭遇した場合、警察への被害申告は被害者本人が行う必要があり、大使館を含む第三者が被害申告を行うことは出来ません。このため、マレーシア国外からマレーシアに居住する人物と取引を行う場合には、相手方が信頼に足るものかよく見極め、詐欺被害に遭遇するリスクがあることも念頭に置いておく必要があります。以下に、典型的な犯罪被害例を紹介します。
(1)「投資詐欺」
フェイスブックやテレグラムなどSNS上の投資広告や、マッチングアプリを通じて知り合った外国人から「仮想通貨等のプロジェクトに参加すれば高リターンが得られる」などの投資話を持ちかけられ、投資をすれば利益が得られると誤信させた上、架空の投資を継続させながら、投資金名目やその利益の出金手数料名目などで金銭等をだまし取るもの。
投資当初は配当金が得られていたが、途中から連絡が取れず、多額の損失を出すケースも発生している。
(2)「オークション詐欺」
携帯電話やカメラのレンズ等、コンパクトで高額な商品をヤフーなどのオークションサイトに出品していたところ、マレーシアから「出品価格よりも高額で購入するので、直接取引で直ちに商品を送付して欲しい」との偽造の国際送金書類を添付したメールを受信。相手が示した住所に商品を送付するも、それ以降連絡が取れなくなるもの。
オークションサイトの規定に反して直接取引を行うため、補償もできず泣き寝入りとなることが多い。
(3)「ロマンス詐欺」(振り込め詐欺)
国際交流サイト等を通じて知り合った外国人異性(主に欧米人と称する男女)から、「あなたに会うため日本を訪ねようとしたが、経由地のマレーシアで警察(入国管理局)に捕まってしまった。釈放には保釈金が必要」、「あなた宛に小包で送った現金(贈り物)がマレーシア税関当局で留められた。後日送金するので、関税(手数料)を肩代わりして欲しい」等のメールを受信。銀行の海外送金サービス等を利用してマレーシアに送金したところ、連絡が取れなくなる。あるいは、何度も送金を要求されるというもの。
相手方のプロフィールはでたらめで、顔写真や身分証を精査すると画像加工ソフトで切り貼りした代物であることが多い。しかし、誰にも相談せずに送金してしまうケースが多く、複数回送金した結果、被害額が数百万円に上ることも珍しくない。
(4)クレジットカード・キャッシュカードをめぐる詐欺
携帯電話に知らない番号から架電があり、「あなたの名義でクレジットカードが作成され多額の使用履歴があり、不正な取り引きがある」と言われ、既存の銀行担当者を騙り、言葉巧みに銀行口座番号やパスワード、クレジットカードやキャッシュカードのセキュリティコードを聞き出した上で、口座から預金を引き出されたり、カードが不正利用されたりする詐欺被害が多数発生している。
(5)手数料詐欺
マレーシアあるいは第三国に居住する人物から、「遺産」「研究費」「寄付」など各種名目で多額の送金をする旨メール等で連絡。しばらくすると「為替手数料」「送金手数料」「臨時口座開設手数料」「通関手続き料」など、様々な名目で送金を促すメールが送りつけられ、詐欺と気づくまで送金し続けてしまうもの。
当該人物から送りつけられる書類は、もっともらしい公的機関や企業等のロゴや連絡先が示されているが、実際には存在しない、あるいは既に閉鎖されているものが多い。また、文書を精査すると旧英国植民地のマレーシアから発出された文書なのにアメリカ英語で記載されているなどの矛盾点が認められることがある。
5 テロ情勢
マレーシアのテロ・誘拐情勢については、テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_017.html )をご確認ください。
※ 在留邦人向け安全の手引き
現地の在外公館(日本大使館・総領事館)が在留邦人向けに作成した「安全の手引き」(https://www.anzen.mofa.go.jp/manual/malaysia_manual.html )も御参照ください。
- ○外務省 領事サービスセンター(海外安全担当)
電話:(外務省代表)03-3580-3311 (内線)2902
- ○外務省海外安全ホームページ:https://www.anzen.mofa.go.jp/
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