=-=-=-=-=-=-=-= フィリピン =-=-=-=-=-=-=-=
● 犯罪発生状況、防犯対策
1 犯罪発生状況 (1)発生件数 フィリピン国家警察(Philippine National Police/PNP)が発表した全国犯罪統計によれば、2022年のフィリピン全土の犯罪発生件数総計は約38万件であり、日本と比較して強盗は日本の約4倍、殺人は約6倍、不同意性交は約5倍にのぼります。 犯罪に遭遇する危険性を抑えるためには、日本との違いや主な犯罪手口を理解し、適切な予防策を講じることが重要です。 (2)犯罪の特徴 フィリピンでは、一般市民でも、警察への登録・許可制度に基づく合法的な銃の所持・携行が認められているほか、未登録の銃器や密造銃なども広く出回っているため、銃器による犯罪が発生しやすい環境にあります。また、犯罪を遂行するために過剰な手段をとる犯罪も多く、たとえば、2017年6月にマニラのニノイ・アキノ国際空港近くのリゾート・ホテルにおいて発生した、カジノを狙った強盗事件では、犯人グループが銃を乱射するとともに放火し、38人が火災で逃げ遅れて死亡しました。 罪種別の特徴は以下のとおりです。 ア 窃盗 (ア)スリ・置き引き マニラ首都圏では、スーパーマーケット、ショッピング・モール、公共交通機関(バス、ジープニー、トライシクル、国鉄、高架鉄道(LRT、MRT)等)利用時のスリ被害、ホテルやレストランでの置き引き被害が依然として多発しており、日本人も被害に遭っています。特に、財布、スマートフォン、タブレット端末、ウエストポーチ、セカンドバッグ等の窃盗被害が目立ちます。スーパーマーケットやショッピング・モール等の混雑した場所のほか、エスカレーターやエレベーター、列車の車両、小売店の通路といった狭い空間における集団による犯行が多いのも特徴です。 (イ)ひったくり マニラ首都圏を中心に、主要都市の繁華街等の路上において、オートバイによる携行品のひったくり被害が発生しています。ひったくられた携行品を手放さなかったために転倒して怪我を負った例もあります。 (ウ)物乞い他 マニラ市やセブ市の繁華街等で、急に子供たちに取り囲まれ、小銭等をせがまれて、気を取られている隙にバッグやウエストポーチの中から財布を抜き取られるケースが報告されています。子供たちは、比較的高齢の外国人を対象に犯行に及んでいるようです。 また、こうした子供たちに囲まれて困っているところを助けてくれた親切なフィリピン人に気を許し、一緒に食事をしたところ、睡眠薬強盗の被害に遭ったとの報告も寄せられています。 イ 強盗 (ア)路上強盗 強盗に遭遇した際に、抵抗したり、逃げ出したりして射殺されるケースもたびたび起きています。日本人の被害例は以下のとおりです。 ○歓楽街等を歩行中、2〜3人組の男達に金品を要求され、抵抗した際に発砲を受け負傷した。 ○通勤時、勤務先近くの路上で、銃器を持った犯人に待ち伏せされ、多額の現金の入ったバッグを奪われた。 ○乗り合わせたジープニーで拳銃を持った複数の強盗が乗り込んできて金品を強奪された。 (イ)睡眠薬強盗 睡眠薬強盗事件の被害報告は、ほぼ毎月のように大使館に寄せられています。金銭的な被害にとどまらず、睡眠薬や精神安定剤等は、摂取量や体調によっては身体に重大な影響を及ぼすおそれがあります。旅行者に限らず、長期滞在者も十分に注意してください。主な手口(犯行の流れ)は次のA〜Dのとおりです。 A ショッピング・モール、繁華街、公園、船着き場、観光名所等において、一見裕福そうな老若男女のフィリピン人が、単独、カップルあるいは家族連れを装って、観光案内を持ちかけたり、飲食店等の場所を訊ねたりするなどして、言葉巧みに日本人に近づく。 B 日本人がこれに反応し、立ち止まって話を聞いていると、「親族が日本にいる」、「日本に興味があるので日本の話を聞かせてほしい」、「タガログ語を教えるから日本語を教えてほしい」等と畳みかけ、日本人の親切心に訴えてくる。 C 日本人が意気投合したとみると、頃合いを見計らって「一緒に食事をしよう」などと誘い出し、タクシーでの移動中や、到着したレストランや自宅と称する建物等で、睡眠薬を混入させた食べ物・飲み物をすすめる(1日〜数日行動を共にし、信用させた頃に犯行に及んだ事例も報告されている。)。 D 昏睡させた後、所持品を盗み取る。更に、盗んだキャッシュカード、クレジットカードを使って現金を引き出す。 この他、同様の手口で日本人を誘い出し、目覚めたら「暴行された」などと言いがかりをつけ慰謝料を請求するケース、「いかさま賭博」に巻き込んで多額の現金・スマートフォン等をだまし取るケースもあります。 ウ 殺人 フィリピンでは、毎年、日本人が殺人被害に遭っています(2022年:2件、2021年:1件、2020年:1件、2019年:2件)。 殺人事件の多くは、フィリピン人との商売上のトラブルや、怨恨等に起因するものが多いと推察されます。また、外国人が、夜間に強盗に遭い、抵抗したり、突然逃げ出したりして射殺されるケースもたびたび発生しています。 エ 性犯罪 フィリピン全土で年間約8,000件(日本の約5倍)の不同意性交事件が発生しています。外出時には露出度の高い服装を避け、単独や複数であっても女性のみでは行動しない等の注意が必要です。また自宅でも(高層階を含む)カーテンを開けたまま肌を露出しないよう注意してください。 2 基本的な安全・防犯対策 犯罪被害に遭わないためには「自分の身は自分で守る」との心構えを持ち、最新の治安情報収集に努める、危険な場所には近づかない、多額の現金・貴重品は持ち歩かない、見知らぬ人物を安易に信用せずに警戒するなど、常に防犯を意識した行動をとることが重要です。 犯罪の手口は日々変化していますが、犯罪の特徴を正しく理解し、その手口は常に一つではないことを理解し相応の心構えを持つことで、未然に犯罪被害を防ぐことができます。犯罪に対する基本的な心構えや安全・防犯対策についての詳細は次のとおりです。 (1)基本的心構え ア 犯罪を誘発する環境を作らない(犯行のチャンスを与えない) ホテルを含め、現金その他貴重品を持っていることが周りにわかるような服装や行動を極力見せないように注意してください。 また、自分の名前、住所、電話番号、家族構成、スケジュールなどは必要な相手以外には知られないよう注意してください。 イ 他人の話を安易に信用しない 言葉や習慣に不慣れな外国人にとって、フィリピン人から親切にされると、つい信用しがちになりますが、悪意を持って近づいてくる者もおり、中には複数人のグループで、外国人を信用させた後で犯罪に及ぶケースもあります。また、言葉が分からなくても、現地人に全てを任せないようにしてください。特に注意すべき例は次のとおりです。 (ア)繁華街や観光名所等で言葉巧みに話しかけられても、狙われていると考えて、相手の誘いに乗らない。特に、日本語で話しかけてくる人物には、男女を問わず警戒する。 (イ)ストーリー仕立ての犯罪があることを十分理解し、たとえその出会いが自然に思えたとしても、知り合ったばかりの人の誘いにのって、飲食をともにしたり、その人の家に行ったり、泊まったりしない。 (ウ)家族の事故による治療・入院費用や滞在査証延長手続に必要な経費等を直ちに振り込むよう連絡を受けた場合には、安易に信じることなく、まずは本人や所属先などに事実関係を確認する。 ウ 生命と身体の安全を最優先に考える 凶器(特に銃器)を使用した犯罪が多いフィリピンでは、殺人目的でなくても、生死に関わる事態に発展する危険があります。強盗などに襲われた場合は、相手が凶器を所持していることを想定し、絶対に抵抗せず、生命と身体の安全を最優先に考え、落ち着いて行動してください。たとえば金品の要求に応じようとポケットやバッグに急いで手を伸ばすと、反撃すると誤解され攻撃される可能性もあるので、身体を動かすことなく「ポケットに入っている」などと口頭にて説明するか、指だけで差し示して犯人に取らせるようにしてください。 エ Facebook、LINEやTikTok等のSNSの使用に注意を払う Facebook、LINEやTikTokといったSNSでの詐欺が世界中で発生しています。フィリピンでも多くのSNSが利用されていますが、個人情報の取り扱いに注意する等、細心の注意が必要です。 (2)公共施設等での安全対策 公共施設等においては、以下の安全対策をとってください。 ○利用する施設の非常口、避難経路をチェックする。 ○周囲で発砲音等が聞こえた場合には、悲鳴をあげたり、叫んだりせず、可能な限りすばやくその場を離れる。移動ができない場合には、直ちに安全な場所(遮蔽物の後ろ)に身を隠す。 ○隠れる場所がない場合は、銃声の方向に足を向けて床に伏せるなど、できる限り身を低くする。 ○さらに放火等の可能性も想定し(多くの場合屋内の階段等が使用不可となる)、隠れた場所にとどまることなく、避難のタイミングと退路を考える。 (3)外出・交通機関利用時の安全対策 外出する際の安全対策は以下のとおりです。 ア 基本的対策 ○服装、持ち物は、できるかぎり華美なものを避け、なるべく目立たないものにする。 ○多額の現金、パスポート等の貴重品は持ち歩かない(パスポートコピーの携行を推奨)。 ○やむを得ず貴重品を携行する際には、一カ所にまとめず、分散して携行する。特に財布と携帯電話は別々に持つようにする(金品を奪われた時に連絡手段がなくなることを防ぐため)。 イ スリ、置き引き ○ズボンの後ろポケットに財布や携帯電話を入れない。 ○むやみに人前で財布やスマートフォン、タブレット端末等を取り出さない。 ○常に手荷物から目を離さない。混雑しているエレベーターやエスカレーターなど、身動きのとれない閉鎖空間では特に注意する。 ○繁華街や乗り合いバスなど人混みの中では、常に用心し、バッグの中の財布の位置に気をつける(すぐ取り出せるところに入れない)。 ウ ひったくり ○スマートフォンや携帯電話を操作しながら、また、音楽を聴きながら等の「ながら歩き」はしない(周囲への注意力が低下するため)。 ○車と対向する側の歩道を選択し、できるだけ車道から離れた側の端を歩く。 ○バッグ等は車道と反対側に携行するか、身体の正面で持つように心がける。(肩掛け式のバッグはたすきがけにすることが望ましい。リュックサック式のものは、背後からジッパーを開けられる、または刃物で切り裂かれ財布等を奪われることがあるので注意。) ○ひったくり犯はオートバイを使うことが多いため、被害に遭った場合は、身の安全を第一に考え、抵抗せずバッグから手を離す。 エ 強盗 ○銀行、ATM、両替所等からの帰り道などは特に周囲の状況に注意する(犯人は、あらかじめ狙いを定めて犯行に及ぶため)。 ○万一被害にあった際は、相手が凶器を持っていることを想定して抵抗せず、また、急いでバッグやポケットに手を入れたり、走り出したりするなどの突然の挙動を避ける。 オ 睡眠薬強盗、美人局 ○見知らぬ人に軽々しくついて行かない。また提供されたもの(飲食店等においては、自分が注文したものではないもの)を不用意に口にしない。 ○初対面の人を信用せず、電話番号や連絡先を教えたり、不用意に共に行動したりしない。 カ 性犯罪等 ○可能な限り夜間の一人歩きは避ける。 ○薄暗い公園などや人通りの少ない路地等には近づかない・立ち入らない。 ○危険を感じたら、躊躇せず周りの人に助けを求める。逃げる際は、明るい方向や人がいる方向に逃げる。 ○ホイッスル・防犯ブザー等大きな音が出るものを身につけ、危険が迫っていると感じた場合に使用する。 キ テロ等 ○周囲の状況に注意を払い、不審な人物や状況を察知したら速やかにその場を離れ、できるだけ滞在時間を短くする等、その場の状況に応じた安全確保に努める。 ク 公共交通機関での移動 ○公共交通機関(LRT、バス、ジープニー等)の利用は極力避ける。 ○タクシーを利用する際は、極力複数名で利用する。 ○流しのタクシーは極力利用しない(店、ホテル等に呼んでもらう)。 ○比較的安全とされるGrabタクシー(タクシーアプリ)でも、完全には信用しない。 3 その他の安全・防犯対策 (1)脅迫対策 フィリピンでは多く発生している犯罪のひとつですが、用意周到に計画されたものから、いたずら電話に近いものまで、脅威の程度は様々です。自ら安易に真偽(信憑性)のほどを判断せず、また相手の要求をそのまま受け入れることもせず、まずは大使館および警察等関係当局に相談してください。 (2)ぼったくり フィリピンでは、相手が外国人と分かると法外な料金を請求するような業者は、商店や飲食店に限らず、弁護士や葬儀社等、多岐にわたりますので、十分な注意が必要です。 ただし、近年フィリピンの物価・人件費等は上昇傾向にあり、高額だからと言って「ぼったくり」とは限りません。事前によく確認するとともに、見積書や請求書、領収書等で内訳を確認し、感情的にならず、不明な点があれば細かく店員に尋ねるなど、冷静な判断、対応に努めることも必要です。 4 テロ・誘拐情勢 テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_013.html )をご確認ください。 5 安全の手引き 在フィリピン日本国大使館が作成した「安全の手引き」(https://www.ph.emb-japan.go.jp/files/100336435.pdf )をご参照ください。
○外務省 領事サービスセンター(海外安全担当) 電話:(外務省代表)03-3580-3311 (内線)2902
○外務省海外安全ホームページ:https://www.anzen.mofa.go.jp/
−−−−−−−−−− トップページ −−−−−−−−−−