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● 犯罪発生状況、防犯対策

1 フィリピンにおける犯罪
(1)発生件数
 フィリピン国家警察(Philippine National Police/PNP)が発表した全国犯罪統計によれば、2021年(暦年)のフィリピン全土の犯罪発生件数総計は約23万件で、前年に比べて4割以上減少していますが、日本と比較して強盗は日本の約4倍、殺人は約6倍、性的暴行は約6倍にのぼります。
 窃盗など不特定のターゲットを狙うことが多い犯罪はそれほど減っていない一方で、殺人等凶悪犯罪は減少しており、新型コロナウイルス感染症対策の隔離措置や行動制限のために、犯罪の機会が減少している可能性が考えられます。
 しかしながら、新型コロナウイルスの感染状況が改善し、各種規制の緩和により収束の兆しがうかがわれつつある現状(2022年4月現在)においては、犯罪件数は増加し、失業や貧困が急速に拡大している状況も加えて、コロナ禍前以上に増えることが懸念されています。
 犯罪者のターゲットにならないように努めることで、犯罪に遭う危険をある程度抑えられます。そのためには、日本との違いや主な犯罪手口・予防策等を理解し実行することが重要です。

(2)犯罪の特徴
 フィリピンでは、一般市民でも、警察への登録・許可制度に基づく合法的な銃の所持・携行が認められているほか、未登録の銃器や密造銃なども広く出回っているため、銃器犯罪を生みやすい傾向にあります。また、目的に比べて過剰な手段をとる犯罪も多く、たとえば、2017年6月にニノイ・アキノ国際空港にほど近いリゾート・ホテルで、カジノを狙った強盗犯が発砲と放火を行い、38人が火災で逃げ遅れて死亡する事件が発生しました。
 罪種別の特徴は以下のとおりです。

 ア 窃盗
(ア)スリ・置き引き
 マニラ首都圏では特に、スーパーマーケットやショッピング・モール、公共交通機関(バス、ジープニー、トライシクル、国鉄、高架鉄道(LRT、MRT)等)利用時のスリ被害、ホテルやレストランでの置き引きの被害が依然として発生しており、日本人も被害に遭っています。特に、財布、スマートフォン、タブレット端末、ウエストポーチ、セカンドバッグ等の窃盗被害が目立ちます。エスカレータやエレベータの中、スーパーマーケットやショッピング・モール等の混雑した場所、列車の車両、小売店の通路といった狭い場所での集団の犯行による被害が多いのも特徴です。これらの場所では十分な注意が必要です。

(イ)ひったくり
 マニラ首都圏を中心に、主要都市の繁華街等の路上において、オートバイによる携行品のひったくり被害が発生しています。普段から歩く場所、バッグ等の持ち方に注意するとともに、ひったくられた携行品にしがみついたために怪我を負う例もありますので、無理に抵抗しないことも必要です。

(ウ)その他
 マニラ市やセブ市の繁華街で、急に子供たちに取り囲まれ、小銭等をせがまれて、気を取られている隙にバッグやウエストポーチの中から財布を抜き取られるケースが報告されています。子供たちは、比較的高齢の外国人を対象に犯行に及んでいるようです。
 一方で、こうした子供たちを追い払ったフィリピン人と懇意になったものの、最終的には睡眠薬強盗の被害に遭ったとの報告も寄せられていますので、くれぐれも最後まで気を許すことのないよう注意が必要です。

 イ 強盗
(ア)路上強盗
 強盗に遭い抵抗したり、逃げ出したりして射殺されるケースもたびたび起きています。日本人の被害例でも、歓楽街等を歩行中、男性2〜3人組に拳銃で脅されたり、実際に発砲を受け負傷する事件、複数の少年に取り囲まれ慌てるうちに財布やバッグを奪われる事件、通勤時勤務先近くの路上で銃器を持った犯人に待ち伏せされ多額の現金の入ったバッグを奪われる事件、乗り合わせたジープニーで拳銃を持った複数の強盗に襲われる事件、歩行中に後方から走り寄った二人組のオートバイにハンドバッグ等をひったくられる事件等が発生しています。

(イ)睡眠薬強盗
 睡眠薬強盗事件の被害報告は、新型コロナウイルスの流行前は、ほぼ毎月のように大使館に寄せられていました。金銭的な被害にとどまらず、睡眠薬や精神安定剤等は、摂取量や体調によっては身体に重大な影響を及ぼすおそれがあります。旅行者に限らず、長期滞在者も十分に注意してください。主な手口は次のとおりです。
 a 老若男女のフィリピン人が単独、カップルあるいは家族連れを装って、ショッピング・モール、繁華街、公園、船着き場、観光名所等において、日本人旅行者を狙って、言葉巧みに観光案内を持ちかけたり、飲食店等の場所を聞くなど、親切そうに近づき、親族が日本にいる、日本に興味があるので日本の話を聞かせてほしい、タガログ語を教えるから日本語を教えてほしいと話しかける等、被害者の心理を突いてくる。
 b 被害者がこれに応じると、頃合いを見計らってレストランや自宅と称する家等に案内し、あるいはタクシーの中で睡眠薬を混入させた食べ物・飲み物を勧める(1日〜数日行動を共にし、信用させた頃に犯行に及んだ事例も報告されている。)。
 c 昏睡させた後、所持金品を盗み取る。また、更には盗んだキャッシュカード、クレジットカードを使って現金を引き出す場合がある。
 d 中には、繁華街等で金銭をせがむ子供たちに取り囲まれてしまい、困っていたところをある人物に助けられ、その後、お礼の気持ちでこの人物と食事をともにした結果、事件に巻き込まれる。
 e 目覚めると見知らぬ家におり、「暴行された」などとして慰謝料を請求される。
 f 同様の手口で「いかさま賭博」に巻き込まれ、多額の現金・スマートフォン等をだまし取られる。

(ウ)ホテル・銀行・商業施設などの強盗被害
 2018年1月、首都圏内のホテルにおいて、押し入った複数の強盗犯により、レセプションから多額の現金等が奪われる事件が発生しています。
 2020年3月、日本人の利用者も多いフィリピン首都圏サンファン市のグリーンヒルズ・モールにおいて、銃で武装した元警備員が人質をとって立て籠もる事件が発生しました。

 ウ 殺人
 残念ながら、フィリピンは世界でも日本人の殺人事件が最も多い国のひとつとなっていて、日本人が巻き込まれる事件が毎年発生しています(2021年:1件、2020年:1件、2019年:2件、2018年:2件、2017年:3件)。
 事件の多くは、フィリピン人との商売上のトラブル、怨恨等に起因するものと推察されます。また、外国人が、夜間、強盗に遭い、抵抗したり、突然逃げ出したりして射殺されるケースもたびたび起きています。

 エ 性犯罪
 フィリピン全土で年間約8,000件(日本の約6倍)の性的暴行事件が発生しています。外出時には露出度の高い服装を避け、単独や複数でも女性だけで行動しない等の注意が必要です。また自宅でも(高層階でも)カーテンを開けたまま肌を露出しないように注意してください。

2 基本的な安全・防犯対策
 犯罪手口は日々変化していますが、犯罪の特徴を正しく理解し、その手口は常に一つでないことを理解した上で、相応の心構えをもっておけば、未然に犯罪被害を防いだり、怪我の防止に役立ちます。ここでは、主にフィリピンで長期滞在する方を対象として、犯罪に対する基本的な心構えや安全・防犯対策を詳細に説明していきます。

(1)基本的心構え
 ア 犯罪を誘発する環境を作らない(犯行のチャンスを与えない)
 ホテルを含め、現金その他貴重品を持っていることが周りにわかるような服装や行動を極力見せないように注意してください。
 また、自分の名前、住所、電話番号、家族構成、スケジュールなどは必要な相手以外には知られないよう注意してください。

 イ 他人の話を安易に信用しない
 言葉や習慣に不慣れな外国人にとって、フィリピン人から親切にされると、つい信用しがちになりますが、悪意を持って近づいてくる者もおり、中には複数人のグループで、外国人を信用させた後で犯罪に及ぶケースもあります。また、言葉が分からなくても、現地人に全てを任せないようにしてください。特に注意すべき例は次のとおりです。
 (ア)繁華街や観光名所等で言葉巧みに話しかけられても、狙われていると考えて、相手の誘いに乗らない。特に、日本語で話しかけてくる人物には、男女を問わず警戒する。
 (イ)ストーリー仕立ての犯罪があることを十分理解し、たとえその出会いが自然に思えたとしても、知り合ったばかりの人の誘いにのって、飲食をともにしたり、その人の家に行ったり、泊まったりしない。
 (ウ)家族の事故による治療・入院費用や入管での滞在査証延長手続に必要な経費等を振り込むよう求めるような連絡を受けた場合には、安易に信じることなく、本人や所属先などにも事実関係を確認する。

 ウ 生命と身体の安全を最優先に考える
 凶器(特に銃器)を使用した犯罪が多いフィリピンでは、殺人目的でなくても、生死に関わる事態に発展する危険があります。強盗などに襲われた場合は、相手が凶器を所持していることを想定し、絶対に抵抗せず、生命と身体の安全を最優先に考え、落ち着いて行動してください。たとえば金品の要求に応じようとポケットやバッグに手を伸ばすと、反撃すると誤解され攻撃される可能性もあるので、身体を動かすことなく「ポケットに入っている」などと説明するか、指だけで差し示して犯人に取らせるようにしてください。

(2)公共施設等での安全対策
 ○利用する施設の非常口、避難経路をチェックする。
 ○周囲で発砲音等が聞こえた場合には、悲鳴をあげたり、叫んだりせず、避難経路から可能な限りすばやくその場を離れ、外に移動ができない場合には、直ちに安全な場所(遮蔽物の後ろ)に身を隠す。
 ○隠れる場所がない場合は、銃声の方向に足を向けて床に伏せるなど、できる限り身を低くする。
 ○さらに放火される可能性も想定(多くの場合屋内の階段等が使用できなくなります)し、隠れた場所にとどまることなく、避難のタイミングと退路を考える。

(3)外出・交通機関利用時の安全対策
 ○服装、持ち物は、華美なものをできるかぎり避け、なるべく目立たないものにする。
 ○ズボンの後ろポケットに財布や携帯電話を入れない。
 ○外出時には、多額の現金、パスポート等の貴重品は必要がない限り持ち歩かない。
 ○やむを得ず貴重品を携行する際には、1つのバッグに入れず分散して携行する。
 ○特に財布と携帯電話は別々に持つようにする(奪われた時に連絡手段が全てなくなることを防ぐため)。
 ○むやみに人前で財布やスマートフォン、タブレット端末等を取り出さない。
 ○スマートフォンや携帯電話を操作しながら、音楽を聴きながら等「ながら歩き」はしない(周囲への注意力が低下するため)。
 ○予め狙いを定めて犯行に及ぶ事例が多いことから、銀行、ATM、両替所等からの帰り道などは周囲の状況に十分注意する。
 ○繁華街や乗り合いバスなど人混みの中では、常に用心し、バッグの中の財布の位置に気をつける(すぐ出せるところや、ズボンの後ろポケットからスリ盗られることが多い)。
 ○混雑しているエレベータやエスカレータなど、身動きのとれなくなりそうな場所はなるべく利用しない。
 ○常に手荷物から目を離さない。
 ○薄暗い公園などや人通りの少ない路地等には近づかない・立ち入らない。
 ○可能な限り夜間の一人歩きは避ける。
 ○車と対向する側の歩道を選択し、できるだけ車道から離れた側の端を歩く。
 ○バッグ等は車道と反対側に携行するか、身体の正面で持つように心がける。(肩掛け式のバッグはたすきがけにすることが望ましい。リュックサック式のものは、背後からジッパーを開けられる、または刃物で切り裂かれ財布等を奪われることがあるので注意。
 ○ひったくり犯はオートバイを使うことが多いため、被害に遭った場合は、身の安全を第一に考え、抵抗せずバックから手を離す。
 ○移動の際は公共交通機関(LRT、バス、ジープニー等)の利用は極力避ける。
 ○タクシーを利用する際は、極力複数名で利用する。
 ○流しのタクシーは極力利用しない(店、ホテル等に呼んでもらう。)。
 ○比較的安全とされるGrabタクシーでも、完全には信用しない。
 ○周囲の状況に注意を払い、不審な人物や状況を察知したら速やかにその場を離れ、できるだけ滞在時間を短くする等、その場の状況に応じた安全確保に努める。
 ○ホイッスル・防犯ブザー等大きな音が出るものを身につけ、危険が迫っていると感じた場合に使用する。
 ○危険を感じたら、躊躇せず周りの人に助けを求める。逃げる際は悲鳴をあげ続け、明るい方向や人がいる方向に逃げる。
 ○万一被害にあった際は、相手が凶器を持っていることを想定して抵抗せず、また、急いでバッグやポケットに手を入れたり、走り出したりするなどの突然の挙動を避ける。
 ○見知らぬ人に軽々しくついて行かないよう、また提供されたもの(飲食店等においては、自分が注文したものではないもの)を不用意に口にしないよう心がける。
 ○初対面の人を信用せず、電話番号や連絡先を教えたり、また、相手が女性であっても不用意に共に行動したりしない。

(4)違法行為に関与してしまわないための注意
 フィリピンに限らず、外国では、日本では罪にならないことで処罰されたり、日本よりも重い刑罰が科されたりすることがあります。

 ア 写真・ビデオ撮影等の禁止
 空港や鉄道、軍・警察等の政府関連施設、各種立入禁止区域およびその周辺地域での撮影は禁止と考え、撮影する場合は事前に当局者や係員に確認し許可を得るなど、慎重な行動を心がけてください。

 イ 麻薬等違法薬物
 現在フィリピンでは、国を挙げて覚醒剤などの違法薬物対策に取り組んでおり、これまで以上に薬物犯罪の取り締まりが強化されています。外国人も例外ではありません。
 興味を示さないことは当然ですが、繁華街の路地裏など麻薬・薬物犯罪の温床となるような場所には近づかない、見知らぬ人物から不審なもの(タバコ、高級茶葉と称される例が多い)を購入しない、預からないなど、違法薬物に関わらないよう細心の注意を払ってください。次の点にも留意してください。
 (ア)警察によるおとり捜査も実施されており、興味を示した観光客等が、密売人と思しき人物から何らかの薬物を見せられ、これを手にした時点で現行犯逮捕されることもある。「ただ、実物を見てみたかっただけなのに…」等の言い訳は通用しないので留意する。
 (イ)自分では気付かないうちに「運び屋」として利用される可能性もあるので、出国の際、見知らぬ人物または知り合ったばかりの人物から、「○○氏へおみやげを持って行って欲しい。」などの依頼を受けた場合は、毅然とした態度で断る。さらに、知らない間に手荷物に薬物等を入れられてしまうこともあるので、空港などでは手荷物の管理を徹底することが肝要です。

 ウ 賭博行為
 フィリピンでは、フィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)が運営する施設や公営競馬、公営闘鶏などを除き、賭博は禁止されています。私的賭博行為は処罰の対象となり、違法賭博の取締りに関する大統領令により、違法賭博に関する情報提供者には報償金が与えられるようです。
 違法賭博に関与した外国人は、身柄を拘束されるだけでなく、保釈されたとしても、その後の公判期間中は出国を停止され、有罪となれば、禁固刑を科されたり国外退去となったりする例もあります。私的賭博に関わらないよう十分注意してください。

 エ 売買春
 売買春はフィリピン刑法においても厳しい量刑が定められており、未成年者に対するわいせつ行為や売買春の勧誘や強要を行った場合、最高で終身刑等が科されることもあります。
 フィリピンでは、売買春に絡む恐喝、美人局(つつもたせ)や詐欺まがいの手口に巻き込まれる外国人旅行者が少なくありませんが、多くの場合、旅行者側に遵法意識が欠けていることが原因となっています。誘いに乗ることのないようくれぐれも留意してください。

 オ 喫煙・飲酒場所
 フィリピンでは、全土において指定された場所以外での喫煙(電子たばこ含む)・飲酒を禁じる大統領令が施行されており、警察官や自治体の係員等が厳格な取締り活動を行っています。歩行喫煙・飲酒や吸い殻のポイ捨て等を見とがめられると、通報を受け、初犯でも罰金が科されます。常にモラルある行動を心がけましょう。

 カ ぼったくり
 フィリピンでは、相手が外国人と分かると法外な料金を請求するような業者は、商店や飲食店に限らず、弁護士や葬儀社等、多岐にわたりますので、十分な注意が必要です。
 ただし、近年フィリピンの物価・人件費等は上昇傾向にあり、高額だからと言って「ぼったくり」とは限りません。事前によく確認するとともに、見積書や請求書、領収書等で内訳を確認し、感情的にならず、不明な点があれば細かく店員に尋ねるなど、冷静な判断、対応に努めることも必要です。

3 脅迫対策
 フィリピンでは多く発生している犯罪のひとつですが、用意周到に計画されたものから、いたずら電話に近いものまで、脅威の程度は様々です。ただし簡単に真偽(信憑性)のほどを判断せず、また相手の要求をそのまま受け入れることもしないで、大使館または警察等関係当局に相談してください。

4 テロ・誘拐情勢
 テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_013.html )をご確認ください。

5 安全の手引き
 在フィリピン日本国大使館が作成した「安全の手引き」(https://www.ph.emb-japan.go.jp/files/100336435.pdf
)をご参照ください。


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