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● 犯罪発生状況、防犯対策

1 一般犯罪
(1)概況
 パキスタンの治安当局は犯罪発生件数を公表していませんが、シンクタンク等からの情報によると、治安当局による犯罪検挙件数は増加しています。イスラマバード、カラチ、ラホールなどの大都市においては、顕著に犯罪発生件数が増加していますので注意が必要です。
 現在、パキスタンにおいては各地域情勢に応じて、「レベル4:退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)」、「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」、「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」の危険情報が発出されています。特にレベル4および3の地域にはいかなる目的であれ、渡航・滞在は止めてください。

(2)犯罪発生状況
ア スリ
 乗り合いタクシーやバスの車内および商店等、不特定多数の人が集まる場所において、スリなどの窃盗被害が発生しています。
イ 偽警察官による窃盗等
 ホテルやマーケット等の周辺で、警察官を装った者(いわゆる偽警察官)による窃盗・強盗・詐欺事件が発生しています。イスラマバード市内のマーケットにおいて、偽警察官に身分証明書の提示を求められたヨーロッパの外交官が、現金の入った財布を持ち逃げされる事件が発生したほか、2018年3月には、カラチ市内を歩いていた日本人旅行者が、実際には存在しない情報機関所属の警察官を名乗る人物から所持品を検査された後、拳銃で脅され現金を強奪される被害も発生しました。
ウ 強盗
 パキスタン各地で、白昼、銀行や商店を襲う強盗事件が発生しています。また、路上歩行中や車両での移動中に、銃器・刃物等で脅され金品や車両を強奪される事件も発生しています。銀行で現金を下ろした人を尾行して、自宅に戻ったところを襲う手口のほか、走行中の車両の前方を塞ぐ、車両の前に人が飛び出して急ブレーキを掛けさせる、道路上に障害物を置くといった手段で停車させ、銃で脅して金品や車両を強奪する手口もあります。さらに、けん銃を携行した複数の強盗犯が、渋滞で停車中の車両を次々と襲うといった事案も発生しています。2022年8月にはイスラマバードにおいて国連職員が外交団地区に向かって車で通勤中、前方に割り込んできた車両に停車させられ、降りてきた男性に銃を突き付けられ金品を強取される事案が発生しました。また、2022年7月には、ラホールにおいて外国人女性が自宅を警備していた警備員に銃を突き付けられ、さらに手足を縛られ現金やオートバイを強奪される事案が発生しています。
エ 武装強盗団(ダコイト)
 また、ダコイトと呼ばれる武装強盗団による車両強奪のほか、バスの乗客を装った人物が他の乗客の現金を強奪するなどの犯罪も発生しています。通常ダコイトは郊外で出没する傾向にありますが、最近は都市部でも出没しています。
オ 性犯罪
 パキスタンでは、夜間を中心に強制わいせつや強姦等の性犯罪が多く発生しています。特に女性の一人歩きや夜間の外出は避ける必要があります。また、性犯罪の被害者は女性に限らず、子供や青年なども含まれるため、注意が必要です。2022年6月には、イスラマバードにおいて外国人女性の自宅を警備していた警備員が寝室に侵入し、同女性をレイプする事案が発生しました。

2 その他治安情勢
(1)インドとの管理ライン(LoC)等付近一帯
 パキスタンとインド間の軍事停戦ラインである管理ライン(LoC)では、過去に両軍による散発的な銃撃・砲撃事案が発生し、民間人の死傷者も発生しました。2021年2月に停戦の厳正な遵守が合意されて以降、特筆すべき武力衝突こそ発生してはいませんが、2022年3月にはインドからのミサイルがパンジャブ州ハーネーワール県のミアン・チャヌ近辺に着弾しました。このほか、国境周辺は麻薬や武器の違法取引やテロリストの避難場所になっています。同地域一帯に対しては、従来危険レベル4(退避勧告)およびレベル 3(渡航中止勧告)が発出されていますので、どのような目的であっても同地域への渡航は止めてください。
(2)大規模デモ活動
 2022年5月にイスラマバード、シンド州のカラチおよびパンジャブ州のラホールにおいて前与党であるパキスタン正義運動(PTI)によるデモ活動が暴徒化し、一部地域ではデモ隊による放火が行われ、死傷者も発生しました。また、2023年3月にはカーン前首相(PTI党首)の私邸が所在するラホールのザマンパークや、イスラマバードの裁判所施設が所在するG-11地区において治安部隊とPTI支持者が衝突するなど、政府の政策等に対する抗議活動が各地で発生しています。

3 防犯対策
 一般的な防犯対策は以下のとおりです。また、常に最新の治安状況の情報収集に努めるとともに、十分な安全対策を行い、不測の事態に巻き込まれないよう十分注意してください。
(1)一般犯罪に遭わないための対策
ア 夜間単独での外出は極力避ける。
イ 知らない人から声をかけられても安易に信用しない。
ウ 多額の現金を持ち歩く場合は、財布の他に数か所に分けて携行するなどの予防措置を取る。
エ 高級品や宝飾品は極力持ち歩かない。
オ 長距離を移動する際には、陸路を極力避け空路を利用する。
カ 車での移動の際は、窓を完全に閉め、ドアは確実にロックする。
キ 運転中に不審車両の接近等に気付いた場合は、安全な場所まで移動し、不用意な停車や減速はしない。
ク 誘拐の予防として、自らの身は自らが守る心構えを持ち、誘拐の危険度に応じた対策(通勤時の安全対策、住居の警備強化、日常行動上の注意等の総合的な対策)をとり、「目立たない」「用心を怠らない」「行動を予知されない」という3原則を踏まえた行動を心掛ける。また、日頃から行動パターン(通勤時間、使用する道や施設)に変化を加え、狙われにくくする。

(2)強盗等に遭遇した場合の基本行動
ア 車両の運転中は、車間距離を十分確保するなど、常に周囲を警戒する。また、車両強盗への対処方法をあらかじめ想定するとともに、運転手にも基本的な行動について指導しておく。
イ 万一、銃を至近距離で向けられた場合には、身体の安全を第一に考え、以下の点に注意して対処する。
・抵抗しない。
・抵抗と捉えられるような急な動作はしない(シートベルトを外そうとする動きは銃を取り出す動きと誤解される可能性があるので注意。)。
・パニックにならない(ゆっくり深呼吸して、気持ちをできるだけ落ち着かせる。)。
・聞かれた質問や指示された行動には素直に従い、無駄な抵抗はしないことを行動で示す。
・過度な解放要求や質問された以外の内容の情報提供は避ける(不要な人物、あるいは面倒な人物であると思われると、即座に殺害される可能性がある。)。
・犯人を刺激しない。
・所持品に執着しない。
・犯人の特徴をできるだけ覚える(車両ナンバー等に関しても同様。ただし犯人の顔を直視しない。)。
・身体の安全が確保された段階で警察等へ通報する。

3 テロ・誘拐
(1)テロ・誘拐等発生状況
 2021年8月のタリバーンによるカブール制圧以降、地域情勢は不安定化し、パキスタンにも大きな影響が及んでいます。2022年11月にはパキスタン・タリバーン運動(TTP)がパキスタン政府との停戦協定の破棄を宣言し、直後にバロチスタン州やイスラマバードで自爆テロが発生するなど、パキスタン全土にテロの脅威が高まっています。また、TTPがかつてのように活動資金獲得のために誘拐や恐喝行為に及ぶ可能性も排除できません。
 これまでに、パキスタンにおいてテロによる日本人の被害は確認されていませんが、軍、警察治安当局関係者および中パ経済回廊(CPEC)関連事業の従事者を標的としたテロ事件が発生していますので、テロの被害に遭わないよう、海外安全ホームページや報道等により最新の治安情勢の入手に努め、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。詳細については、「テロ・誘拐情勢」(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_011.html )をご確認ください。

(2)テロ事件や不測の事態に巻き込まれないための対策
 日頃から細心の注意を払い、高い危機意識を持って行動することが重要であり、常に最新の治安関連情報の入手に努めてください。
ア 大型商業施設や外国人がよく利用する商業施設、ホテルのロビー等、多数の人が集まる場所での用事は短時間で済ませ、常に周囲の状況に注意を払いつつ、不審な状況を察知した場合には、速やかにその場から離れる。
 特にテロの標的となり得る以下の場所には極力近づかない。
(ア)政府、軍および警察関連施設(含む車両、検問所等)
(イ)報道機関
(ウ)中パ経済回廊(CPEC)関連事業サイト
(エ)モスクや教会等の宗教関連施設
(オ)外国資本のホテルや飲食店等の欧米関連施設
(カ)不特定多数の人が利用する一般の市場(青空市場を含む)
イ デモ・集会が行われている場所には決して近づかず、自身の移動中に遭遇した場合には、速やかにその場から離れる。
ウ ラマダン(断食月)やイード(犠牲祭)などの宗教行事の期間は、不要不急の外出は控える。

(3)テロ事件に遭遇した場合の対応
 テロ事件に遭遇することを日頃から想定しておくことが重要です。特に初めて訪れる場所では、以下の行動を迅速にとれるよう、避難経路・身を隠せる場所等をあらかじめ確認するようにしてください。
ア 爆発音や銃声を耳にしたら、その場に伏せ、直ちに低い姿勢を取る。
イ その後、建物や身を隠すことの出来る壁などの陰に隠れる。
ウ 周囲の状況を確認し、可能であれば爆発音や銃声がした場所から、低い姿勢を保ちつつ速やかに離脱する。
エ 屋内等の閉鎖空間から退避する場合、限られた出入口に避難者が殺到することで発生する将棋倒し等の二次被害に遭わないよう留意する。

※在留邦人向け安全の手引き
 在パキスタン日本国大使館が在留邦人向けに作成した「安全の手引き」(https://www.pk.emb-japan.go.jp/files/100197303.pdf )も参照してください。


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