=-=-=-=-=-=-=-=

=-=-=-=-=-=-=-=
● 犯罪発生状況、防犯対策

1 テロ情勢等
 インドは、着実な経済発展を遂げており、社会情勢は全般的に安定しています。他方、宗教間対立や多民族といった複雑な国内事情もあって過激派組織も活動しており、テロ事件も発生しています。これまでに、インドにおいて日本人・日本権益を直接標的としたテロ事件は確認されていませんが、2008年のムンバイ・テロのように、日本人が都市部でテロに巻き込まれる可能性は否定できず、また、ジャンム・カシミール準州や中東部、北東部において、国際社会の注意を喚起するために実行されたテロ・誘拐事件等に日本人や日本企業等が巻き込まれる可能性も排除されません。
 このような状況を十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、海外安全ホームページや報道等により、最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて十分な安全対策を講じるよう心がけてください。
 詳細については、テロ・誘拐情勢(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcterror_001.html )をご確認ください。

2 一般犯罪情勢
 インドの都市部では、人口の集中、失業者の増大、貧富差の拡大を背景として、一般犯罪の発生件数が増加傾向にあります。窃盗、強盗、詐欺、強姦等の犯罪が多発しており、十分注意が必要です。
(1)強盗・窃盗
 特に日本人旅行者が、複数犯(犯人の一人が旅行者の注意を引きつけている隙に、もう一方が所持品を盗む等)によるスリや置き引き等の被害に遭ったり、バスや列車内でわずかな隙に置き引きに遭う事例も多発しています。どのような場所でも、自分の持ち物から手と目を離さないよう注意する必要があります。 
 ATMの利用に不慣れな人に親切心を装って近づき、実際に操作しながら利用方法を教えてカードの暗証番号を聞き出し、一連の処理が終わった後にカードを偽物とすり替え、後で本物のカードと暗証番号を使って現金を引き出す事例が発生しています。また、ATMで現金を引き出した人を狙う強盗事件も発生しているため、ATM利用時は周囲の状況にも十分注意してください。
               
(2)睡眠薬強盗
 外国人旅行者が、睡眠薬強盗の被害に遭う事例が発生しています。旅行中に親しくなったインド人から勧められた飲食物に睡眠薬が混入されていて、それを口にしたことで意識が混濁状態となったところで金品を盗まれるというものです。見知らぬ人から勧められた飲食物は決して口にしないでください。使用される睡眠薬は非常に強力で、1〜2日間意識が戻らない場合もあり、入院が必要となった事例もあります。
 インドでは、嫌なものをはっきりと断れない日本人は格好の標的と見られています。数日間にわたって親切に接して信用を得た上で犯行に及ぶ例もあります。親切にされたことに対し過度に恩を感じず、警戒を怠らないことも肝要です。

(3)詐欺
 個人旅行者が、安易に見知らぬ者を信用し、物品購入やツアー参加を勧められ、クレジットカードを第三者に渡して詐欺に遭う事例や、高額な代金の支払いを強要される事例が増えています。特に個人で旅行をする方は、英語等最低限の語学力、インドに関する基礎知識を身につけた上で渡航するように心掛けてください。親切そうに近づいてくる人からの勧めに安易に応じず、はっきり意思表示することが極めて重要です。

(4)通貨偽造
 海外で印刷された偽札が大量にインド国内で流通しているとされています。現地通貨(ルピー)に両替する際は、必ず銀行やホテル等、外貨買取証明書(Encashment Certificate)が発行される場所で換金してください。レートが良いからといって街中の政府非公認の両替屋を利用した場合には偽札が混じっている可能性があります。

(5)麻薬関連
 外国人旅行者を狙った麻薬密売が発生しています。比較的容易に麻薬等薬物が手に入るため、興味本位で所持・使用した結果、逮捕され、数年間収監された事案も発生しています。麻薬所持・使用については、厳しい刑罰が科せられますので、絶対に手を出さないでください。

(6)強姦等性犯罪
 インド全土で、女性が性暴力等の被害に遭う事件が増えています。最近でも日本人を含む外国人女性を狙った事件が発生しており、デリー、コルカタ、アグラ、ジャイプール、リシケシュ、ブッダガヤ等では、日本人女性旅行者が性的暴行を受けた上に金品等を奪われる極めて悪質な事例が発生しています。日本語で話しかけ、日本での滞在経験に言及するなどして旅行者を安心させてだます巧妙な手口も発生しており、注意が必要です。
 女性の単独行動、特に夜間の不要な外出を避けるとともに、見知らぬ人や知り合って間もない人を安易に信用せず、少しでも不審に感じた場合には、はっきりと断ることが重要です。                      

(7)交通事故
 特に都市部では全般的に交通事情が劣悪で、狭い道路に人や乗り物等が集中しています。交通事故に遭わないよう、常に周囲に注意を払ってください。

3 主要都市・地域別の犯罪情勢
(1)デリー
 一般犯罪発生件数は増加傾向が継続しており、特に、強盗、強姦等の凶悪犯罪は、他の主要都市と比較しても高い水準にあります。武装強盗事件やオートバイ等を使用したひったくり等の犯罪はデリーのみならず、近郊都市のグルガオンやノイダにおいても発生しており、注意が必要です。
 デリー空港から市内に向かう際にタクシーやオートリキシャ(三輪タクシー)を利用し、連れて行かれたホテルから高額な宿泊料金の支払いを要求されたり、旅行会社に無理矢理連れて行かれ、高額なツアーを組まされたりする被害が頻発しています。特に安宿街で有名なデリー駅前のパハールガンジ、カロルバーグおよびそれに隣接するコンノートプレイス周辺の旅行会社は注意が必要です。例えば、本来一泊10米ドル程度のホテルの宿泊料を200〜300米ドルにつり上げられたり、数千米ドルのツアーを無理矢理組まされたりするといった例も珍しくありません。これは、タクシーやオートリキシャの運転手が悪徳ホテルや旅行会社と結託しているケースがほとんどで、このような被害に遭わないため、デリー空港から市内へ移動する際は事前にホテルを予約し、旅行会社やホテルが手配したドライバー付きレンタカーやタクシー、地下鉄を利用してください。
 デリー旧市街や市内の遺跡等外国人観光客が集まる地区では、外国人旅行者を狙った睡眠薬強盗が頻発していますので、見ず知らずの他人から勧められた飲食物は、決して口にしないでください。

(2)バラナシ
 ヒンドゥー教の一大聖地とされているバラナシでは、巡礼者(年間100万人を超える)や観光客をターゲットにしたゆすり、たかり、詐欺、窃盗、強盗、強姦等の犯罪が多発しています。親切そうに声を掛けてくる人には注意が必要です。 
 なお、2010年12月には、バラナシのガンジス川岸のシトラガート付近で宗教儀式の最中に爆弾が爆発し、1人が死亡、日本人2人を含む少なくとも37人が負傷するテロ事件が発生していますので、常に最新の治安情報の収集に努めてください。

(3)ムンバイ
 ムンバイはインドの主要経済都市として発展し、多くの異なる人種、宗教、階層の人々が混在しています。多数派のヒンドゥー教徒と少数派のイスラム教徒の歴史的な対立を背景とした禍根が今も残っており、状況は改善しつつあるものの、それが火種となって暴動等に発展する可能性は否定できません。また、ヒンドゥー教徒の特定の階層者や農民が地位向上を求めて起こす大規模デモが暴徒化するおそれもあることから、最新の情報の収集に努め、デモ等には近づかないようにしてください。
 その他、異なる宗教を背景とした2大暴力団をはじめとするギャングが複数活動しており、恐喝、麻薬売買、強盗、売春、殺人等の犯罪に深く関わっているため、当局は取り締まりを強化しています。
 なお、2008年11月、ムンバイ市内の最高級ホテルや中央駅、病院,レストラン等十数か所がイスラム過激派テロリストによる襲撃(銃の乱射や手榴弾の投てき等)を受けるという連続テロ事件が発生し、日本人1人を含む160人以上が死亡し、日本人1人を含む300人以上が負傷する大惨事となりました。常に最新の治安情報を収集し、テロの標的とされる可能性がある場所には近づかないようにしてください。
 
(4)チェンナイ
 チェンナイは他州都に比べ治安は良好とされていましたが、2014年5月にはチェンナイ中央駅に停車中の列車内で爆弾2個が爆発し、乗客1名が死亡、14名が負傷するテロ事件が発生しました。
 また、チェンナイ市内および近郊の駅、空港、繁華街、混み合った電車やバスの中では、携帯電話およびネックレス等装飾品を対象としたスリやひったくり等に十分な注意が必要です。
 
(5)ベンガルール
 ベンガルールでは、日本人が被害者となる凶悪事件は発生していないものの、統計上は犯罪が非常に多く発生しています。日常生活において危険を感じるようなことがなくても、決して治安が良好であるとはいえないことを日頃から認識しておく必要があります。
 市内には悪質なオートリキシャの運転手がおり、特に夜間これらを利用する際は、ゆすり等の犯罪被害に遭うことがありますので、一人では利用せず、信用のおけるタクシーを利用する等の安全対策が必要です。

(6)コルカタ
 コルカタでは、スリや置き引きなどの窃盗や、殺人、強盗、強姦等の事件が日常的に発生しています。特に窃盗は駅周辺や繁華街等(サダルストリートやニューマーケットなど)で発生することが多く、パスポート、金品等の貴重品を盗まれる事案が発生しています。
 また、旅行者が飲食物に睡眠薬などを混入され、強盗や暴行(性的暴行を含む)を受ける被害、言葉巧みに誘われ、一緒に食事をしてその代金を支払わされたり、多額な買い物をさせられたり、架空の話を持ちかけられる詐欺に遭う事例も多く、暴行事件に至る場合もあります。

(7)ブッダガヤ
 ブッダガヤは仏教の聖地と言われ、日本人を含む多くの外国人旅行者が訪れますが、言葉巧みにツアー旅行やバイクのレンタルなどを勧められ、クレジットカードで料金を支払った後、当初言われていた金額よりも高額な料金を請求されるなどの詐欺被害や、勧められた滞在先で睡眠薬強盗の被害、また、女性に対する性的暴行事件も発生しています。親しげに声をかけてくる人を安易に信用せず、警戒を怠らないようにしてください。

4 日本人の被害例
(1)悪質なタクシーやオートリキシャ、旅行会社による詐欺
 空港からのタクシーやオートリキシャ、バスターミナルや駅で日本人旅行者が、意図せず旅行会社に連れて行かれ、高額なホテルを予約させられたり、法外な価格のツアーや危険地域へのツアーを組まされたりするなど、様々な被害に遭っています。
* タクシーやオートリキシャの運転手が「あなたが予約したホテルは満室だ・潰れた」等と言って、違うホテルを探すふりをして、旅行者を自分の仲間の旅行会社に連れて行く。
* 駅等で宿泊先等を探している旅行者に「政府観光局の職員だ」と偽って声を掛け、旅行者を自分の旅行会社に誘い込む。

 インドを旅行する際は、(i)渡航前に旅行日程、宿泊先等を日本でアレンジをする、(ii)渡航前に東京のインド政府観光局で旅行会社を推薦してもらう、(iii)インド入国後であれば、空港、ニューデリー駅、ホテル等にあるインド政府観光局の機関であるITDC(India Tourism Development Corporation)に申し込む、のいずれかの方法で計画することをお勧めします。ただし、ITDCを名乗って偽りの勧誘をする事例や紛らわしい名前の機関名・企業名を使う事例も多発していますので注意してください。
 インド到着後に国内旅行を予約する場合には、大手の信頼できる旅行会社の利用が望ましいですが、個人営業の旅行代理店で地方旅行のツアーを組む場合には、(i)旅行日程・内容等、算出根拠を示した請求書を作らせる、(ii)請求書内容をきちんと確認した上で代金を支払い、領収書を受け取る、の2点を必ず行ってください。万一、後日過大請求等が確認された場合、上記の書類がなければ払い戻し請求そのものが不可能となります。領収書を出し渋るような業者は信用できないと考えて間違いありませんので、絶対に利用しないでください。

(2)睡眠薬強盗
 デリーを始め、インド各地で、特に若い単独の旅行者を対象とした睡眠薬強盗が発生しています。
* 単独、または複数(子供連れの場合もある)の見知らぬ者から、駅や列車内、観光地等で親しげに声をかけられ(片言の日本語を使い親切を装って声を掛ける場合もある)、その場で飲み物(チャイ(紅茶)やジュース等)や食べ物(クッキー、ビスケット、アイスクリーム等)を勧められるままに飲食したところ、急に意識がなくなって昏睡状態に陥り、金銭等、貴重品を奪われ、路上に放置される(路上に放置されれば、生命に重大な危険が及ぶことも十分に考えられます)。

(3)商品購入をめぐる詐欺
 アグラ、ジャイプール、ゴア、スリナガルで頻発しています。
* 声を掛けてきた者やオートリキシャやタクシーの運転手に、宝石店やじゅうたん屋に連れて行かれ、商品を日本国内に届けて欲しいなどと持ちかけられる。店員からは、「取りあえずクレジットカードで支払いをしてもらうが、商品は帰国後指定した店に直接発送する。商品到着後、支払いをキャンセルした上で礼金を渡す」などと支払いを迫られる。あるいは、「日本の取引先に宝石を送りたいが、輸出許可等が面倒なので、とりあえずあなたのクレジットカードで購入したことにして日本まで運んで欲しい。日本で商品と引き換えに購入代金と礼金をもらって欲しい」等と言葉巧みにクレジットカードでの決済を迫られる。どちらの場合も商品は届かなかったり、二束三文の商品であったりしたというものです。旅行者がこれを断ると、脅迫まがいに支払いを強要されたり,数日間軟禁状態におかれたりした事例もあるため、店に連れて行かれる前にはっきりと断る等の対応が必要です。

(4)カード詐欺
 第三者に旅券やクレジットカードを預けたり、暗証番号を教えたりしないことが基本です。
* 声を掛けてきたインド人と親しくなり、低料金で全ての列車に予約なしで乗れる便利なカードがあるので購入してあげると話を持ちかけられ、暗証番号を教えてクレジットカードと旅券を渡して購入を依頼したところ、後刻多額の金額が引き落とされた。

(5)結婚詐欺
 単独の女性旅行者が狙われます。女性が結婚の申し出を受け、相手男性にお金を渡した後、だまされていたことに気付き、返金を要求しても、脅迫されたり、暴力をふるわれたりしてインドからの出国を強要された事例もあります。
* 親切そうに声を掛け近付いてきた男性に映画や食事、観光案内に誘われ、付き合って一緒に行動していると、男性から「愛している」「結婚しよう」等と言い出される。女性がその気になると、数日後には、インドの結婚には持参金(ダウリー)が必要である、親族の病気や事業に失敗してお金が必要である等を理由にお金を要求される。

(6)列車、バス内における強盗および盗難被害
 列車およびバス内で、強盗および盗難被害が相次いでいますので、貴重品を身から離さないなど、十分な注意が必要です。
* バラナシ〜コルカタ間の夜行寝台列車内(4人用一等コンパートメント)で、旅行者が武装集団に襲われ、旅券、航空券等の所持品を強奪された上、顔面に暴行を受けた。
* デリー〜バラナシ間やバラナシ〜コルカタ間の列車内で日本人旅行者が現金やパスポート、貴重品等を盗まれた。
* 長距離の乗り合いバスを利用した日本人旅行者が就寝中に貴重品等を盗まれた。
* 列車に乗り込んで荷物を棚に置くわずかな間に貴重品の入ったバッグを盗まれた。

5 防犯対策
 上記状況を踏まえ、以下の防犯対策を実施する等、安全に万全を期してください。
* 最新の治安情報の収集に努める。
* 意思をはっきりと示す程度の英語等、最低限の語学力を身につける。
* 現地での風習等、インドに関する基礎知識を身につける。
* 夜間帯の出入国を極力避ける。深夜・未明に到着した場合は、夜が明けるまで行動は控える。
* 空港、駅、バスターミナル等で声を掛けてくるタクシー・オートリキシャには絶対乗らない。                     
* 外出(特に徒歩移動)の際には、時折振り返るなどして不審者(物)の有無を確認し、身の回りの安全に十分注意する。
* 夜間の徒歩での外出は避ける。
* タクシーに乗る際は、車両番号を控えておく。
* 特に女性の単独行動・1人旅は避け、2人以上で行動する。
* 求婚された場合、結婚詐欺を疑う。
* 過度な肌の露出を避ける。
* 貴重品を露出せず、常に身体から離さない。
* ホテルはできる限り事前に予約し、極端に安いホテルは避ける。
* 声をかけてくるオートリキシャやタクシーの運転手を安易に信用しない。
* 見知らぬ者の車に乗ったり、家に宿泊したりせず、飲食物を勧められても口にしない。
* クレジットカードを利用する際は、サインをする前に必ず通貨の単位や金額を確認する。
* 外から店内が見通せない店には一人で入らない。

※在留邦人向け安全の手引き
 在インド日本国大使館および総領事館が在留邦人向けに作成した「安全の手引き」(https://www.anzen.mofa.go.jp/manual/india_manual.html )もご参照ください。


−−−−−−−−−−
トップページ
−−−−−−−−−−