海外邦人事件簿|Vol.39 凶悪化する いかさま賭博の手口

いかさま賭博の巧妙な手口については、Vol.18「気がついたら大負け、いかさま賭博詐欺」でお話ししましたが、最近のいかさま賭博は手口が凶悪化し、密室での銃による脅迫や強姦未遂事件まで発生しており、今後、旅行者が殺人や傷害、強姦の被害に遭うなど最悪の事態に発展するおそれもありますので、改めてその手口などについてお話しします。

いかさま賭博は多くの場合、単独や少人数で旅行する日本人旅行者が標的とされています。特に日本人の若者は、人気のある「極貧旅行」をテーマにしたテレビ番組の影響もあってか、現地の人々とのふれあいを求め、声をかけられると安易に心を許してしまう傾向にあります。犯行グループは、こういった日本人の若者の特性を十分に把握し、巧妙なアプローチをかけてきます。

典型的な例として、旅行者に対し、まず現地の女性が声を掛け、共通の話題を作り出し、友好的な雰囲気を醸し出して警戒心をやわらげる手口が多く見られます。最近は、これに加えて、意表をついてほぼ拉致に近いかたちで旅行者を巻き込み、その後は銃などで脅し、要求に応えざるを得ない状況に旅行者を追い込む手口も見受けられます。

銃などで脅し、要求に応えざるを得ない状況に旅行者を追い込む

タイで最近見られた具体的な手口としては、まず犯行グループが市内の観光地やデパートで、単独や少数の旅行者を物色して、勧誘役が片言の日本語や英語で「妹が近いうちに日本へ行くので日本のことを教えて欲しい」、「そのかわいい帽子はどこで買ったの?」などと親しげに接触してきます。その後自宅(犯行グループのアジト)へ招待すると言って、タクシーなどで郊外へ移動します。自宅に連れ込まれた旅行者は、食事をご馳走され、楽しく歓談します。うち解けてくると、ブラックジャックなどの賭博に誘われ、最初は掛金も犯行グループから提供されますが、そのうちに、ブルネイや香港、シンガポールなどの富豪と称する人物が現れ、掛金が高騰していきます。途中から掛金は旅行者自身が用意しなければならないなどと言われ、クレジットカードのキャッシングや貴金属店でのゴールドの購入を強制され、被害額が数百万円に達することもあります。途中で、どうも雰囲気がおかしいので、ゲームをやめようとしたら監禁され、銃で脅されたり、女性の場合は身体を触られたりし、掛金の調達を迫られるケースもあります。

賭博に誘われ、掛金の調達を迫られる

タイでは、外国人を自宅に招き入れることは本当に特別なことです。わざわざ自宅に招かなくても、市内にはおいしい料理を提供するレストランや露店がたくさんあるからです

親しげに話しかけてくる見知らぬ人に対しては、「相手にせず、安易に信用しない、不用意に誘いに乗らない」ことが賢明です。現地の人々とのふれあいは、海外旅行の醍醐味でもありますが、こうした旅行者の心につけ込んで卑劣な犯行を企てる犯罪グループが待ちかまえていることをくれぐれもお忘れなく

(2005年9月7日掲載)

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