海外邦人事件簿|Vol.18 気がついたら大負け、いかさま賭博詐欺

海外旅行先で犯罪に巻き込まれるとすれば、それは多分一瞬の出来事です。しかし、なかには長い時間をかけて行われる犯罪もあって、始末の悪いことにこれらは被害額が大きいのです。その代表的な犯罪に「賭博詐欺」があります。

『東南アジアのベナンに観光旅行した30代の女性Aさん。国内をバスで移動中、ある男Bに声をかけられた。Bの娘が近く日本に留学するので色々話を聞きたいという。

ちょっとした親切心も手伝い、翌日Bと待ち合わせアパートの一室に向かった。娘は不在で、代わりにBの義弟と名乗る男Cが居た。BとCはAさんに「娘が帰ってくるまで、暇つぶしにトランプの勝ち方を教えてあげよう」とトランプをしながら待つことになった。

そのうち、義弟Cが「せっかくだからブルネイ人の金持ちマダムをカモろう」といかさま賭博をAさんに持ちかけてきた。ほどなく件のマダムが現れ、しばらくは予定通り勝っていた。B、Cから「せっかくだから、大金を使ってもっと稼ごう」とAさんにATMで現金をおろすことを提案した。Aさんは限度額いっぱいの4,000ドルを引き落とし、アパートに戻りゲームを続けたが、賭け金が大きくなるに従い負けが込んできて、最後には全額負けてしまった。』

アパートに戻りゲームを続ける

このような賭博詐欺は特に東南アジアの各国での被害が多く、2002年に日本大使館に寄せられた被害だけでも94件。おそらく、どこにも届け出をしないで、「単に賭け事に負けた」と泣き寝入りした日本人は、この数倍はいるでしょう。

ここに挙げたのは2002年大使館に報告のあった一例ですが、その手口は驚くほど一致しています。最初は日本の話をしてあげるはずだったのに、すぐに賭け事に巻き込まれます。小さい賭け金で始めますが、最後には必ず大負けします。本人以外は全員仲間で全てが巧妙に仕掛けられたシナリオ通りにことが進みます。

ところで、Aさんは現金をほとんど持っていなかったのですが、残りはBとCに強要されてクレジットカードで現金を引き落としました。これが賭博詐欺の巧妙さ、被害の深刻さを物語っています。ほとんどの被害者は、これと同様にクレジット限度額一杯まで現金を、またはゴールドなどの貴金属を購入させられているのです。

賭博詐欺に遭わないためには最初の誘いに乗らないことが一番です。最初は純粋な国際交流のつもりが、予想もしない「国際貢献」になってしまいます。

強要されてクレジットカードで現金を引き落とす

(2004年4月26日掲載)

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